審査員研修 その4 修了試験

12.01.04
5日間(研修機関によっては6日間のところもあるし、分割して開催するところもある)審査員講習を受講すれば審査員登録できるのかというと、そうではない。修了試験がある。
修了試験とはどういうものか?
CEARの環境マネジメントシステム審査員研修コース承認基準(TE1100-6版)によると、次のように定めている。
5.7.5.1 フォーマルコース実施期間中に、CEARが依頼する力量試験を実施しなければならない。
 中略
5.7.6 再試験
CEARが依頼する力量試験に不合格で、継続的観察評価には合格した研修生についてはコース終了日から1年以内であれば、一度だけ再試験を受けることが許されなければならない。
これを読むと、CEARが作成した試験問題を、研修機関が実施することになっているようだ。
CEARとは産業環境管理協会環境マネジメントシステム審査員評価登録センターのこと。

私は15年も前、JABが審査員研修機関を認定する制度のときに、研修を受けて試験を受けているので、現方式の試験を受けたことはなく、現在はどのようなものが行われているのか分からない。
当時は研修機関によって、選択問題があるところと、文章をひたすら文章を書かせるところがあったと記憶している。実を言って私はQMSの研修を2回、EMSの研修を1回受けた。なぜQMSを2回受けたのかというと、試験で落第したわけではなく、審査員研修機関によって内容が異なるのか知りたかったからだ。そのために自費で余分に30万円もかけて受講したのかと驚くかもしれないが、本当の話である。だから都合3回、中野、赤坂、神田で審査員研修を受けた。そのとき研修機関によって試験問題の形式が違った記憶がある。
当時、受講生は基準いっぱいの20人いたが、毎回2人くらいは不合格になったようだ。それで最終日の試験のとき、二人くらい受験者が増えた。前回あるいは前々回不合格になった人なのだろうと推察した。受講に30万円もかけたのに、再試験が1回だけとは厳しいなんておっしゃる方がいるかもしれない。そんなことはないだろう。敗者復活戦があるだけありがたいと思うべきだ。

ところで、一般的に資格試験あるいは検定試験での合格率はどれくらいなのだろうか?
公害防止管理者は20%くらいである。計量士は14%、環境計量士は19%(H21年)、普通車のAT免許でも6割である。危険物乙4類が35%(H23年)、新司法試験でも23.5%(H23年)である。私の知る限り一番合格率の低いのは剣道8段で、1%以下である。

表にまとめてみると・・・
合格率
資格や検定など
〜100%特別管理産業廃棄物管理責任者(恒例)、ISO審査員
〜90%英検5級80.4%(2011)、漢字検定8級82.8%(2011)
〜80%ここに該当する試験が見当たらなかった
〜70%普通車のAT免許(毎年)、英検4級69.1%(2011)、eco検定64.1%(2011)、秘書検定3級61.1%(2011)、アマチュア無線4級64%
〜60%英検3級50.1%(2011)、珠算3級50.0%(2011)
〜50%販売士検定試験2級54.7%(2011)、アマチュア無線3級46%
〜40%危険物乙4類35%〜48%、珠算1級30.8%(2011)
〜30%新司法試験23.5%(2011)、英検2級25.0%(2011)、アマチュア無線1級21%
〜20%計量士は14%(2009)、環境計量士は19%(2009)、公認会計士14.9%(2006)、税理士14.5%(2006)、中小企業診断士(二次)19.6%(2005)、宅地建物取引主任者17.1%(2006)、技術士(二次)11.3%(2011)、漢字検定1級10.7%(2011)
〜10%剣道8段1%(恒例)、司法書士3.5%(2006)、行政書士2.6%(2005)、弁理士6.8%(2006)、英検1級8.4%(2011)

英検5級とか漢字検定8級と比較しても、ISO審査員の修了試験は厳しいものとは思えない。
意味なく難しい試験はどうかと思うが、司法試験の23%なら妥当かと思うし、危険物が35%なら合格した人はやったぞと誇りをもてるだろう。
私が審査員修了試験よりも合格率が高いものとして思い当たるのは、特別管理産業廃棄物管理責任者しかない。ネットで「特別管理産業廃棄物管理責任者アンド合格率」で検索すると、ヒットするのは「冗談を言っているのですか」とか「居眠りしないようにね」というものしかなかった。
どう考えても、審査員研修を20人が受けて9割の18人が一発合格とは、難易度が低すぎる。まして敗者復活戦があり、それまで含めると合格率はどうなのだろうか? 9割以上であることは間違いない。
私の知り合いは毎年だれかは審査員研修を受講しているが、1発合格しなかった人はいない。
LMJが「どの様に訓練しても20%の監査員に向かない人がいる」とのたまわったと言われている。監査の神様が語ることが真実なら、20人受講して4人は永久に不合格にならなければならないはずだ。
おっとご本家のLMJではどうなのだろうか?
ISO19011によると、審査員・監査員に求められるのは、個人的特性、監査の力量、専門知識であるが、この研修では監査の知識がメインである。だからLMJのいう20%は個人的特性と専門知識に関わるもので、監査の知識は受講者全員が理解したのかもしれない。

19011.jpg
ISO19011:2002より引用

なおカリキュラムによれば、審査員研修では礼儀作法も教えるらしい。審査で傲慢な態度で、タメ口を聞く、上から目線の審査員の方々は、修了試験を受けなかったのだろうか?
あるいは修了試験では「訪問先では相手が若くても『坊や』と呼んではいけません」などという問題は出なかったのかもしれない。

ともかく、合格率9割であれば、それはもはや試験とはいえず、小学校ならドリル、大人なら単なる復習であろう。とすると審査員研修の修了試験とは、特別管理産業廃棄物管理責任者と同じく、落とす試験ではなく合格させるための試験なのだろうか?
もし審査を受けている企業が、審査員研修と修了試験の実態を知れば、審査に対する信頼感は相当低下すると思う。もちろん、大手企業などではISOを担当している社員に審査員研修を受けさせているだろうが、多くの企業はそのようなことに大金を費やしてはいないだろう。

修了試験で審査員に必要なすべてをチェックすることはできない、というご意見もあるだろう。その通りだ。また、審査報告書やCAR(不適合通知)などは認証機関によって書式も書き方も異なるだろうから、そんな些事まで研修で教えることもない。しかし最低限、ひと様の会社に行ってまともな挨拶と言葉使いができるとか、規格を正しく理解しているかを試験することは必要である。
しかし、審査員研修の講師が規格を理解していないということもある。それどころか研修機関のパンフレットに「有益な側面」などと書いてあるのを見ると、研修機関が間違っているわけで、そんな研修機関を承認したこと自体間違っているのではないかという気がする。
いや、待てよ、CEARの「環境マネジメントシステム審査員研修コース承認基準」に「環境側面の抽出」とか「著しい環境側面の特定」などとあるところを見ると、そのような審査員評価登録機関を認定したJABの力量を疑うしかない。日本のISO関係機関はすべからく力量がないのかもしれない。

ここ数回、だらだらとISO審査員研修について書いてきた。
いろいろと考えると、審査員として飯を食っていくのでないなら、審査員研修など受ける意味がないことは明白だ。おかしな講習を受けて間違えた規格解釈を覚えてしまっては大変だ。いや審査員として身を立てるにしても、研修を受けるべきか否かを再検討すべきかもしれない。
但し、前述した某審査員研修機関は私の理解とおりのことを教えているようだ。
しかしこんなことを考えると、ISO審査員がちゃんとISO規格を理解しているかくらいは誰かが責任をもって審査して、合否を判定してほしいと思う。私の過去20年間の経験からは、おかしな審査の経験ばかりだ。
以前、審査前に力量を確認しようと審査員に会って雑談をしたことがある。「審査前に異議申し立てについて説明してもらわなければなりませんよ」というと、相手は私を宇宙人のように見つめた。私は当時の基準であるガイド66を説明して、異議申し立てを説明する義務を教えたが、そんなことをせずに忌避するべきだったろうか。ただそんなことで忌避をすると、その認証機関から派遣できる審査員がいないのではないかと懸念する。だってその審査員は、その認証機関のエースだと聞いていた。

本日のまとめ
私の語っていることをいいがかりと思っている方も多いだろう。特に、認証機関や審査員、あるいは審査員評価登録機関の方はそう思うだろうと推察する。
しかし、現実の審査員の力量を省みてください。現実の審査員研修機関のパンフレットを確認してください。私は有益な側面があると信じている審査員に来てほしくありません。私の勤め先は環境側面の抽出などしてませんから、間違いなく不適合になるでしょう。著しい環境側面を特定ですか・・そうですか、<丶´Д`>

本日の迷い
いっそのこと、今後はノンジャブに頼もうか
だが、ノンジャブなら質が良いのだろうか? それも分からない。



ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(2012.01.04)
もう金輪際、受けるものかと思い知りました。

ぶらっくたいがぁ様のブログをきっかけに書きはじめました。
少しでもお役に立てば幸いです。
少なくても読者が一人はいたわけです。ありがたいことです。

名古屋鶏様からお便りを頂きました(2012.01.04)
いっそのこと、今後はノンジャブに頼もうか
ピー・・・ガタガタ・・・
オオット、ソノヨウナ発言ハJAB神デアルE塚教授ニ弓ヲ引ク反逆行為トミナサレマス。
ヨッテ、タダチニ・・・

追伸。
とりあえずアホが量産される仕組みがよく分かりました。
『金型』がアホでは仕方ありませんし、金工師もアホで、その上に金工師の師匠もアホですからどうしようもありませんわ。

名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
形が崩れた金型が多いようですが、まっとうな金型(研修機関)もあることがわかりました。ぜひとも審査員になりたい人はそういうところに行って学ぶべきでしょう。
名古屋鶏様や私が、アホ審査員の審査を受けて苦しんできたわけですが、これからの審査員はまっとうな研修機関で学んでまっとうな審査員になってほしいと思います。
とはいえ、体制の中枢を刷新しないと・・・アッツ、君は誰だ!

身はたとひ あいその野辺に朽ちぬとも 留め置かまし大和魂(おばQ松蔭辞世の句)
上記の意味:この身はISOの片隅で死ぬことになっても、日本人としての心はとどめておきたい。

ダストコマンダー様からお便りを頂きました(2012.01.17)
いろいろな件
おばQ様
ごぶさたしております。いつも拝読させていただいております。少なくとも一人は・・・等と書いておられますが、カウンターからしますと週初めは100人超の来訪者ですね。
その後の内容につきまして。
* 私の通った学校の試験は「オープンブック形式」なるものでした。
何か独特の方式なのかなあと思っていたら、なんとテキスト参照可でした。事前に出る箇所も教えてくれたりして。(そのすべてが出たわけではありませんが) そこにアンダーラインを引いて付箋を付けておけば、後は書き写すだけです。その「作業」が出来ない方が居なくなるという以上のふるいわけは為されない合格基準ですね。
一度テレビでその様子を流して見れば良いと思います。カ○ニ○グOKの実態を。

長くなりそうですので残りはまた次回にさせていただきます。
( 出入り禁止の気配もありそうですが・・・ )

ダストコマンダー様 ご無沙汰しております。
お祝いありがとうございます。そうですか、ダストコマンダー様もお読みになっておられましたか、
同志ぶらっくたいがぁさんが審査員の研修でも受けようかとおっしゃったので、それについて駄文をひねったのです。なぜか、これでアクセスが増えたようです。不思議なことです。
審査員研修機関の経営を考えようという方がいたのか、ひょっとして刺客がのぞいているのかと心配です。
審査員の修了試験は、オープンブックのところも過去にあったようです。ただテキストをめくるのが大変でしょから、テキストを見ることが許されても合格につながったかどうかは分かりません。現在の審査員研修の終了試験は受けたことがないので分かりません。
ところで 出入り禁止 とはなんでしょうか?
ここはオープンブックならぬ、オープンマインド、オープンアクセスですから


続きを読みたい方は → 審査員研修 その5
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