マネジメントとシステム考 2

12.05.12
前回の続きである。
品質でも環境でも、エネルギーでも、ISO規格では「マネジメントシステム」という語が用いられている。私はそんなISOマネジメントシステム規格とかそれに基づく認証なんてものに関わって20年になる。今まで疑問も持たずにマネジメントシステムという言葉を使っていたが、突然マネジメントシステムという言葉がおかしいということに気が付いた。いったい全体「マネジメントシステム」というものは、なんだろうか?
そんな深い意味じゃないが、素直に考えると「マネジメントシステム」という言葉は変だ。変というのも変だが、言葉の意味としておかしいような気がする。「マネジメント」と「システム」という言葉は、重なるところもあるし、重ならないところもある。それをつなぎ合わせた「マネジメントシステム」とはなんだろうか?
では本日は「マネジメントシステム」について愚考する。

もちろんISO規格で、マネジメントやシステムという語句はちゃんと定義されている。
ISO9000:2005では、
「3.2.6マネジメント」とはcoordinated activities to direct and control an organization. 組織を指揮し、管理するための調整された活動
「3.2.1システム」とは、set of interrelated or interacting element. 相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり
「3.2.2マネジメントシステム」とは、system to establish policy and objectives and to achieves those objective. 方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム

もうここで変だなと思うことがある。
マネジメントの定義と、システムの定義と、マネジメントシステムの定義がどうも整合していないように思える。
前述したようにISOの「マネジメント」とは「組織を指揮し、管理するための調整された活動」であり、「システム」とは「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」だから、これを組み合わせれば「組織を指揮し、管理するための調整された活動を行うための、相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」となると愚考する。
あるいはつながりが逆で「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まりを、指揮し、管理するための調整された活動」という可能性もなくもない。
なお、ISOで定義された言葉は、その定義を代入しても意味が変わらないことが保証されている。
ISO9000:2005 3で「(定義された)用語は、その用語の定義の全文と置き換えることができる」と記述されており、その事例も示されている。
しかし、ISOの「マネジメントシステム」の定義は「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」であり、ISOの「マネジメント」と「システム」の定義を組み合わせたものではない。
つまりISOの定義によると
「マネジメントシステム」≠「マネジメント」+「システム」
である。(等号=ではなく等号否定≠であることに注意ください)
実際には
「マネジメントシステム」>「マネジメント」+「システム」
のようになると思われる。
ここまでは、ご異議ござらんか?

不思議なことは、それだけでなく、マネジメントシステム規格ごとに「〇○マネジメントシステム」という語が定義されている。
ISO9001:2008の「3.2.3品質マネジメントシステム」の定義は、 to direct and control an organization with regard to quality 品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム
ISO14001:2004の「3.8環境マネジメントシステム」の定義は、 part of an organization's management system used to develop and implement its environment policy and manage its environmental aspect. 組織のマネジメントシステムの一部で、環境方針を策定し、実施し、環境側面を管理するために用いられるもの

私には縁がないが、ISO27001:2005情報技術−セキュリティ技術−情報セキュリティマネジメントシステムでは、情報セキュリティマネジメントシステムの定義は「マネジメントシステム全体の中で、事業リスクに対する取組み方に基づいて、情報セキュリティの確立、導入、運用、監視、レビュー、維持及び改善を担う部分
ISO50001:2011エネルギーマネジメントシステムでは、エネルギーマネジメントシステムの定義は「エネルギー方針及びエネルギー目的を確立する、相互に関連した、又は相互に作用する要素の集合、並びにそれらの目的を達成するためのプロセス及び手順」とある。
いやはや、ISO規格であっても、ここまで〇○マネジメントシステムの定義がバラバラでは、それもまた疑問である。

ISO規格ではマネジメントとシステムの語は上記のように・・さまざまに・・定義されている。しかし一歩下がって一般的な言葉の意味から考えると、どうも腑に落ちない。いやどうも変な気がする。
まず個々の「マネジメント」と「システム」の意味からはじめる。
「マネジメント」とはMacmillan辞書によると
the control and operation of a business or organization.
the people who control and operate a business or organization.
the process of controlling or managing something.

上記から「マネジメント」とは、事業や組織を統制し動かすことである。ISOの定義と大きく異なるのは「coordinated調整された」という形容詞がないことだ。現実には管理しないマネージャーや他部門との調整に気を使わない管理職が多いのだから、この形容詞は蛇足だろう。それとも現実のマネジメントはISOでいうマネジメントではないのだろうか?
もちろん現実の会社の多くはマネジメントされておらず、アノミー状態であるという可能性も否定できない。ただ、そういう論理なら、ほとんどの会社はISOの定義を満たさないのだから、ISO認証できないはずだが・・
ここはISOの定義を、coordinatedを省いて一般の辞書のように「activities to direct and control an organization. 組織を指揮し、管理するための活動」と修正すべきだろう。まあ、それはここの本題ではない。次に進もう。

「システム」とは同じくMacmillan辞書によると
a set of connected things that work together for a particular purpose.
a set of organs, tubes, etc. in your body that work together.
a set of pieces of equipment or computer programs that work together.
a method of organizing or doing things.
rules that decide how a society, country, or organization should operate and that cannot be changed even though they seem unfair to you.
your body considered as a set of connected organs, tubes, etc.

「システム」とはなんらかの目的を達成するために、いくつかの要素が連携したものである。他のカテゴリーにおける定義でも、システムとは何らかの目的のために存在するという定義がふつうである。

INCOSEの定義では「システムとは、定義された目的を成し遂げるための、相互に作用する要素を組み合わせたもの。これにはハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、人、情報、技術、設備、サービスおよび他の支援要素を含む」とある。

INCOSE(The International Council on Systems Engine)
ISOのシステムの定義には「目的を達成するため」というフレーズがない。
ちなみに英英辞典で「Management system」をひくと、ISOの定義とか、ISO規格の説明しか出てこない。要するに英語では「Management system」という熟語は一般的に使われてはいないようだ。

さて、今までは、準備運動、肩慣らし、前提条件の確認、相撲で言えば仕切りである。では制限時間いっぱいである。
マネジメントシステムはなんのためのシステムなのだろうか?
というのは一般語でシステムとはなんらかの目的を達成するために、いくつかの要素が連携したものである。いや待てよ、いくつかの要素が連携するには目的が必要であるはずだ。目的がなくて複数の要素が関係するということはありえない。人が大勢集まっても組織ではないし、歯車をたくさん置いておいてもひとりでに組み合わさることは絶対にない。
しかし不思議なことに、ISOの定義でマネジメントシステムは「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」となっていて、目的が与えられていないで、自らが定めるように書いてある。
品質マネジメントシステムでも「品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム」となっていてシステムの目的がない。ISO規格では、定義された用語を代入しても意味が変わらないことが保証されていることを踏まえて、これにマネジメントシステムを代入すると
「品質に関して組織を指揮し、管理するための+『方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム』」
環境マネジメントシステムでも「組織の+『方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム』+の一部で、環境方針を策定し、実施し、環境側面を管理するために用いられるもの」
となり、いずれにしてもその存在目的は明示されているが、己の存在目的というか、その方針や目標をそのシステムが自ら決定するというのが再帰代名詞のように感じるのは私だけだろうか?
まあ、そう考えるのは私だけとして、ISOの定義の「マネジメントシステム」単独では、その存在目的を明示していないというのはおかしなことだ。あるいは、ISO規格を作った人は、マネジメントシステムというものが単独では使わずに、さまざまなMS規格の定義が代入されることを前提にして、目的を記載しなかったのだろうか? それならば「マネジメント」のように単独では使わないことを明記しておくべきだろう(ISO9000:2005 3.2.6注記参照)。あるいは目的を持たないマネジメントシステムが存在するのだろうか、私にはわからない。

では次に進む。
一般的な「マネジメント」と「システム」の意味から「マネジメントシステム」を考える。
まず「マネジメント」とは、辞書から「事業や組織を統制し動かすこと」で、「システム」は辞書から「目的を達成するためにいくつかの要素が連携したもの」である。ということは、まず目的があり、それを実現するためにシステムが作られ、システムを動かすことがマネジメントということになる。ここまでは、よろしいでしょうか?
fig1.jpg
図1 一般の辞書の定義によるマネジメントとシステムの関係図
番号は設定される順序を示す。
それらを踏まえて「マネジメントシステム」を考えると、単純にふたつを合わせて下図のようになるのだろうか?
つまり「システムを統制するためのマネジメントのためのシステム」である。
fig2.jpg
図2 辞書の定義によるマネジメントシステムの関係図
番号は設定される順序を示す。
ところが面白いことに、ISO9001とISO14001のマネジメントシステムの定義は、図2とは全く異なる。
ISO9001 品質に関して組織を指揮し、管理するための方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム
ISO14001 組織の方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステムの一部で、環境方針を策定し、実施し、環境側面を管理するために用いられるもの

QMSとEMSはマネジメントシステムの考えが微妙に違うが、その違いは環境において「より大きなシステムの一部である」ということと「環境側面の管理」というのが余分なだけだから、とりあえずは同じということにする。上記定義の「マネジメントシステム」を図に表すと次のようになると思われる。
fig3.jpg
図3 ISOの定義をもとにマネジメントシステムの関係を示す
番号は設定される順序を示す。
ここで気になることがある。図1と図2で示した「達成すべき目的」は、システムの外部から与えられたものであるのに対して、図3においては、マネジメントシステムが目的達成のための組織ではなく、目的のみならず更に上位である方針を、マネジメントシステム自身が定めることになっている。ここが私が再帰代名詞のように感じるところだ。
しかしよく見ると、システムの目的はpurposeであり、システムが作る目的はobjectiveである。だからそれは問題というか矛盾ではないことがわかる。そう考えると、問題は原語が異なる語に、日本語では同じ「目的」に訳したことにある。
これを修正すると、ISOが定義するマネジメントシステムは図1とほとんど同じではないかという気がしてきた。
但し、図1の全体を包含するものではなく、図1のシステム部分だけでもなく、ちょっと変なのだ。そのイメージを図4に示す。
fig4.jpg
図4 ISOの定義をもとにマネジメントシステムの関係を示す
番号は設定される順序を示す。
要するに、ISOのマネジメントシステムは、システム部分だけでなく、マネジメントの一部と達成すべき目的の一部を含むもののように見える。それは全体から特定の機能を切り出した単純明快なものではなく、恣意的に切り取ったように思える。
恣意的とは「自分の思うまま、気まま、好き勝手」
システムの一般的な意味から考えると、このようなものにシステムという言葉を使うべきではないように思える。あるいはだからシステムではなくマネジメントシステムと称したのだろうか? だって一般語としてマネジメントシステムという言葉はないから。しかし、ISOの定義のマネジメントとシステムとマネジメントシステムくらいは整合させるべきじゃなかったのだろうか?

では定義だけでなく、規格本文が意味しているマネジメントシステムについて考えたい。
それぞれの規格条項は、はたしてマネジメント、システムの要素、方針・目的に関わるものに区分してみたい。とりあえずISO14001について考える。

表1 ISO14001要求事項の分類案
●:主、△:従
項番マネジメントの行為システムの要素方針・目的関連
4.1一般要求事項      
4.2環境方針  
4.3.1環境側面    
4.3.2法的及びその他の要求事項    
4.3.3目的、目標及び実施計画  
4.4.1資源、役割、責任及び権限  
4.4.2力量、教育訓練及び自覚    
4.4.3コミュニケーション    
4.4.4文書類    
4.4.5文書管理    
4.4.6運用管理    
4.4.7緊急事態への準備及び対応    
4.5.1監視及び測定    
4.5.2順守評価    
4.5.3不適合並びに是正処置及び予防処置    
4.5.4記録の管理    
4.5.5内部監査  
4.6マネジメントレビュー  

ほとんどがシステムの要素であり、規格のタイトルである「要求事項」らしく思われる。しかしマネジメントの行為もあるし、上位概念としての方針の制定やマネジメントレビューもある。どうもこの辺になると、理屈で範囲を決めたようには思えない。はっきりいって論理の一貫性がなくつじつまが合わない。恣意的といった理由だ。
マネジメントシステム規格のガイド83というものが2012年にできたそうだ。今後制定されるマネジメントシステム規格は、このガイドに従って策定され、構造的にもその性格も整合性をとるという。
私は、そういう観点ではなく、ISOの規格の守備範囲を、システムの要素のみとして、マネジメントの判断についてはスコープ外であることを明確にして除くべきではないかと考える。
規格の構成だけでなく規格が規定する範囲を、もう少し理屈が通るようにすべきだろう。例えばISO14001:2004の、4.2環境方針と、4.3.3目的目標を設定すること、4.6経営者による見直しについては規格では枠組みだけ述べることとして、その決定は経営者の専決事項であることを明確にしなければならない。
そもそもISO審査で、審査員が組織の経営者が定めた環境方針の内容や、マネジメントレビューを審査するということは僭越であろう。
経営者と審査員のどちらが上位なのか?
ISO審査は経営者のために行うのか? 一般社会のために行うのか? なんて観点ではない。ISO審査が一般社会に代わって組織の環境経営の仕組みを審査することにみなしたとしても、企業の存在意義に関わる根源的な経営判断レベルを審査員が判定できるのか? ということだ。
もっと階層が低いこと、たとえば省エネを優先するか廃棄物削減を優先するか、いやもっと階層を下げて省エネの目標値にしてもISO審査員が口を挟んではいけないのだ。
現実には、本社の指示で省エネ1.8%を目指している工場に審査に行って「未達になると大変だから達成可能な値に下げなさい」という審査員がいるし、反対に省エネ法に基づき1%を目標にしている工場に審査に行って「目標は高いほど良いから高い目標にしなさい」という審査員もいる。
そのようなことは経営判断なのだ。審査員風情がコメントすることではない。ちなみに私の現役時代は審査の前に審査員に会い、環境方針と目標の設定にはコメントするなと審査員に釘を刺しておいた。そうしないととんでもないことになる。いや、そうしてもトンデモナイことは常に起きたのだが。
トンデモナイことというのは、訳の分からないことを審査で言い出すことだ。いくら私でも、論理的でない人や、規格の基礎も分からない人はやはり手におえない。
逆のケースもある。
私が子会社の監査に行って、トンデモナイことを見つけた場合で、その会社がISO14001認証していたときは、その認証機関に行って「次回はしっかり見てくれよ」と抗議したのはもちろんである。
この場合のトンデモナイことというのは、順守評価の仕組みがないとか、点数方式で環境側面を決めてはいるが、結果として適正な環境側面をとらえていないことなどである。
といっても、その効果はなかったようだ。審査員がトンデモナイことを見つける力量がなかったのか、指摘しても売り上げに関わるから目をつぶっていたのかはわからない。

ともかく、現行の規格の文言上は、経営判断レベルに審査員がコメントどころか不適合を出しても良いことになり、現実にそういうおせっかいな不適合や観察はジャラジャラとある。
本質的な問題や法に関わることを指摘するとそれこそ問題だから、単に言い回しだけ見直せばよいようなことを指摘するように認証機関が審査員を指導しているのかもしれない。
もしこの論議に苦情、異論がある認証機関があれば、ぜひともアイソス誌などで誌上討論会をしたいね。それとも、認証機関が相手ではなく、JABやISO-TC委員が当事者なのかもしれない。

本日のまとめ
現行の「マネジメントシステム」の「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」という定義で、方針や目標を定めることは実情に合わないだけでなく、理屈からおかしいと思う。そのような記述は削除すべきだろう。
マネジメントシステムであるなら、その要求事項は「定められた方針及び目標を、達成するためのシステム」に限定すべきだ。

本日の本音
審査で方針にいちゃもんつけてはいけないというのは私の確信である。はたして組織の経営者の定めた方針にコメントつける力量というか見識があるとお考えの審査員はいるのだろうか?
ISO-TC委員であろうと、そんなことができるはずがない。力量という観点ではなく、経営責任という観点からそう言える。

本日のエッセンス
審査で余計なおせっかいというか、マネジメントレベルに意見したり不適合を出したりするのは、ISO規格が中途半端なためではないのか、ということが本日のメインテーマである。
それ以外の文章は、まあ私のタイプの練習である。



Yosh師匠らお便りを頂きました(2012.05.12)
とうた様、
漸く解つて来たやうな気がします。
要するに英語では「Management system」という熟語は一般的に使われてはいないようだ。
といふことは、あなたの文中にもあるやうに;
もちろんISO規格で、マネジメントやシステムという語句はちゃんと定義されている。
ISO9000:2005では、
「3.2.6マネジメント」とはcoordinated activities to direct and control an organization. 組織を指揮し、管理するための調整された活動
「3.2.1システム」とは、set of interrelated or interacting element. 相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり
「3.2.2マネジメントシステム」とは、system to establish policy and objectives and to achieves those objective. 方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム

であつて、其れ等が同じ詞でも、 “Macmillan辞書”にある世間に通用する意味によらないで、”ISO”では其のやうに定義してるのではありませぬか?

Yosh師匠 毎度ありがとうございます。
おっしゃるとおりです。
私の本音は、屁理屈をこねて「マネジメントシステムのISO規格で、経営に関わるようなことを決めるのはおかしいです」と主張しているにすぎません。
Yosh社長だって、そう思うでしょう。A製品を売るかB製品を売るかは審査員が良し悪しを判定できることではありませんし、売り上げを5%増を目指すか、7%増を目指すかも社長が決めることです。
そんなことに審査員がいちゃもんつけるのは困りますよね


名古屋鳥様のウェブサイトからの転載です(2012.05.13)
マネジメントシステム愚考。
ウチの会社がISO14001に関わったのが、2003年頃だったと思います。
その時◯代先生から、初めて「環境マネジメントシステム」なる言葉を聞いた思い出があります。
「そら、なんじゃらほい?」と思いましたね。
その内に、他人の事業所の審査なんかを拝見させて頂く機会を頂戴し、横から見ていると、審査員閣下がおごそかにも「・・・バッテリーに電気を溜めると水素ガスが発生するという環境側面の抽出が抜けているでおじゃる!」とか宣うワケですわ。
すると列席各位の受審側が「へへぇー!」とかしこまって、「・・・バッテリーの側面・・と」とメモを取るんです。
それを見た鶏は「へー、これが『環境マネジメントシステムっちゅうモンかい。細かいもんやのぉ』と感心したものです。
時は過ぎ。
そんなモノが規格の要求でも何でもない、ただの「知ったか」に過ぎないことを知ってしまった今となっては、「アホか」としか思わなくなりましたね。
「青い鳥」は最初から手元にあったんですよ。
我々は元より、「水質管理」をしていましたし、「エネルギー管理」や「騒音防止」、「廃棄物の適正処理」なんかをしてきたわけです。だって、ISO遙か以前から工場は水質汚濁防止法やら騒音防止法の対応に苦慮してきたわけですし、電気や燃料費を抑制するために省エネに心血を注いできたわけです。
つまり「環境マネジメント」とは「水質管理」であり「エネルギー管理」であり、「騒音防止管理」だった、というオチでして。後になって、マネジメントという言葉の包含するところは「管理」であって「経営」ではないと、緑紙を持っている友人に聞きました。あぁ、成る程なと得心したものです。

環境管理に求められる「結果」は、順法であり、汚染の予防であり、又は資源やコストの抑制です。
この時、水質や騒音など、それぞれの「マネジメント(管理)」に求められる結果をより「確実に」する。「絶対」でもなければ「気合」でも「博打」でもない、「高い確率でコントロールする技術」、それが「システム」ではないかと思うのです。

「結果を確実にする」ためには、「求められる結果が何か」を明らかにしないと話になりません。日本人は勝手に自主目標を立てちゃいますけどね。でも、自主目標の前に規制値をクリアしないと。
この、「求められる結果」がつまり「目的・目標の設定」です。また、それらに関わる重要な業務を担当する人間には力量を付けさせる必要があります。「力量、教育訓練」ですね。
これら「目的・目標」や「力量、教育訓練」は「マネジメントシステムの『要素』」と呼ばれます。

つまり、鶏がイメージする「システム」とは、各マネジメントを「縦糸」とすると、そこに突き刺さる「横糸」のようなものです。縦糸と横糸がキレイに編み上がることで、ひとつの「マネジメントシステム」という織物が出来上がるというか。

各、管理の要素、例えば教育や緊急事態の対応などは何も欧米から教えられるまでもなく、日本にだって普通に存在していたものです。しかし、それを体系立て要点をまとめる、ってのが・・まぁ、「管理技術」ってモンなんでしょうかねぇ・・・



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