天狗退治 その1

12.11.25
ISOケーススタディシリーズとは

藤本と五反田が環境保護部を去ってから、そのぶん山田が工場の監査や指導に行くことが多くなった。とはいえ、藤本たちの新事業立上げ支援や彼らへの指導教育がなくなったわけで、山田の負荷が増えたというわけではない。1年半くらい前の、藤本が来る前の状態に戻ったというわけだ。そして今の横山横山は当時の森本森本よりもはるかにパワーアップしており、むしろ山田は楽になったといえる。そして毎週くらい出張があるのも気分転換になり面白く感じている。
横山の成長は目覚ましく、今でも若干独走するところはあるが、努力家であり最近は全体を考えて対策を打つのが身についてきたようで山田は安心している。今は横山の立てる監査計画や派遣者の決定でおかしいと思うようなことはない。ひょっとすると、決裁することを除けば、山田がいなくても動いていくのかもしれない。
横山にすれば、山田が監査業務に身を入れてくれるようになったので、自分が出張することはだいぶ減って負担が軽くなり、監査計画は横山に自由に任せてくれるので、ハッピーな気分である。

山田は日経エコロジー誌をながめている。環境保護部で購読しているので回覧されるのだ。山田は心中、この雑誌は大した中身はないので、紙とエネルギーの浪費だし、費用削減のためにも次年度の購読は止めるべきだと思っている。
脇から横山が声をかけてきた。横山は山田が日経エコロジーを読んでいるときは、話しかけても大丈夫と踏んでいるのだ。まあ、それは当たっている。
以前、山田は廣井が雑誌を読んでいると話しかけても良いと判断したが、横山もそんなテクニックを身に付けたようだ。
横山
「山田さん、こんな話をしてよいのかどうかと思うのですが・・・」
山田
「はい横山さん、なんでしょうか?」
横山
内山
「先週、甲府工場に監査に行ったのですが、あそこの内山さんってご存知ですか?」

鷽八百社にどんな工場があったか忘れてしまいました。とりあえず思いついた地名からつけました。
内山である→

内山の顔は似顔絵ソフトで作りました。しかしそのままでは顔の線が細く縮尺表示するときれいにならないので、ペイントでヨイショヨイショってあちこち修正しました。よって所要時間が1時間近くかかりました。馬鹿みたいですね。
山田
「顔と名前は知っています。若い人ですね。30くらいだったかな?」
横山
「そうです。若くてバリバリ仕事をしている感じの方です。その人が、上司の橋本課長を悪く言うのですよ。下の意見を聞かないとか、事なかれだとか。もしそれが本当なら問題だなあと思いました」
山田
「横山さん、そういうことには注意した方が良いですね。本社の人が来ると工場の人はあることないこと言うことがありますから。私たちは工場の人ではないので、直属上長を飛び越した告げ口の窓口に思われたり、不満のガス抜きになることもあります。そんなわけで、我々は、そのようなことが事実としてもうかつなことはできません」
横山
「おっしゃる通りです。ただなにか非常に大きな問題だというようなことを言ってましたので、一言山田さんに伝えておいた方が良いかと思いました」
山田
「横山さんを責めているわけではありません。お話してくれてありがとう。なにかのときに状況を見ておきます」
横山
「山田さんには来週、岩手工場の監査に行っていただくことになっています。その監査に工場派遣の監査員として、その内山さんが参加します。もしできればそれとなく聞いていただけるとよろしいかと思います」
山田
「わかりました」



翌週である。
山田はもう雪がちらついている岩手工場に着いた。明日から三日間、岩手工場の監査である。監査員は、山田が責任者、甲府工場から 内山、関連会社の鷽山形機械から大倉という50代の環境課長が参加している。
従来は工場の監査には環境保護部と社内の工場から監査員を出していた。それを横山は鷽八百の社内の監査にも、関連会社の環境担当者を監査員として参加させるようにルールを見直した。それがグループの一体感をますし、関連会社の環境管理レベルと上げると説明して、山田も廣井も了解したのだ。そのとき山田は横山もなかなかやるわいと思った。

居酒屋 午後一杯、山田たちは岩手工場を借りて、監査側の打ち合わせを行う。
打ち合わせの後、ホテルから出て近くの居酒屋で監査側の懇親会を行った。大倉とは初対面だし、もう二度と会わないかもしれない。監査する前に一緒に飲み食いすることは、気心を知るというか親近感を増す。
山田が挨拶する。
山田
「明日から三日間よろしくお願いします。仕事の話は既にしてしまいましたので、特に何も話すことはありません。まあ岩手の酒を飲んで楽しく語り合いましょう」
お酒
最初は固くなっていた大倉と内山も飲むにつれくだけてきて、話が弾んだ。
2時間近く飲んで一旦お開きということで、ホテルへ帰る途中でラーメンを食べた。ホテルのロビーに着くと、内山が山田にもう少し飲みましょうと誘う。山田もちょっと飲み足りない感じがしたのでそれに応じた。大倉にも声をかけたが、大倉は明日からの監査の勉強もしなければならないという。初めて監査に参加した人は、事前勉強をしっかりしなければと思うらしい。予習はやるにこしたことはないが、酔った頭で先方が提出した資料や法律を読んでもあまり意味がないのは事実である。
二人はまたホテルを出て、別の居酒屋に入る。
先ほどは酒で行ったので今度は焼酎にしようかなんて話をする。
ほどなく内山が言い出した。
内山
「山田さん、私の上司は環境管理の改善をしようと提案すると、みな却下してしまうのですよ。私は費用改善とか省力とかいろいろ改善策を考えているんですが、実行できないのです。山田さんから話をしてもらえませんかね。橋本課長は積極的に改善しようなんて気はないようなんですよ」

山田は、横山が言ったとおりだなという感じで聞いている。
内山
「橋本課長は別の部署から異動になってきましたので、環境の仕事を理解していないんですよ。だから部長のいうことに従うだけで我々の提案は全く無視なんです」
そんな話が延々と続いた。
山田ははじめは黙って聞いていたが、これはいかんなあと思った。
山田
「内山さん、私は内山さんと会うのはこれで三回目だったよね」
内山
「そうでしたっけ、覚えていません」
山田
「3年前、甲府の関連会社に監査に行ったときに初めてお会いしたと思う。そのとき内山さんがどんな話をしたか覚えているかい?」
内山は山田がそんなことを言ったので、変な顔をした。
内山
「覚えていませんね」
山田
「関連会社に行く途中のファミレスで昼飯を食ったのだが、そのときあなたは当時甲府工場の環境課長だった土門さんが部下の提案を相手にしないので不満だ語っていた。覚えていないだろうけど。
その次に会ったのは1年前、お宅の工場のISO審査で出された不適合がおかしいので相談に乗ってほしいと言われて、甲府工場にお邪魔したことがありました。その時も夜、居酒屋で土門さんへの不満を語っていましたね」
内山
「私がいつも不満ばかり言っているということですか」
山田
「いつも言っているかどうかはわからない。しかし私があなたにお会いしたときは必ず上司への不満を語っています」
内山
「つまりなんですか、私が仕事をしないで不満ばかり語っていると思われているということですか」
山田
「誰もそんなことを言ってないよ。まず仕事をしているか、していないかなんて、言葉の端にも出ていないでしょう。
ただ、私が思ったことを正直に言うと、初めに内山さんに会ったとき土門さんへの不満を語るのを聞いて、そのお話が本当かもしれないと思いました。もちろんそれが事実か否かは土門さんにお会いしないとわからない。
しかし、土門さんが課長の時は土門さんへの不満を語り、課長が変わると橋本さんへの不満を語るのをみると、上司に恵まれない人だと思うよりも、この人は常に上司に不満を持っているのかなと思うのが普通だ」

内山内山は不満そうな顔をしている。
山田
「我々は会社で働いているわけだ。学校と会社は何が違うなんて言われるけど、学校はお金を払って、会社はお金をもらうというのが一番の違いだ。そして会社では組織の目的を達成するために協力するという使命があるのだから、楽しいことばかりはないし、自分勝手なこともできない。要するに自分の望む通りにできないのは当然だ。しかし自分の思い通りにならないから不満だと言ってはいけないってことだよ」
内山
「私は甲府工場の廃棄物削減ではものすごい成果を出しているんですよ。そういう実績を見てほしいですね」
山田
「あなたが努力して成果を出したことと、自分が好き勝手なことができるかどうかは無関係でしょう」
内山
「私の提案を採用してくれればもっと改善効果があると考えますが」
山田
「つまりなんですか、あなたがもっと権限があれば一層の改善ができるということですか?」
内山
「そうですよ。例えば工場から出る廃棄物を有価物として売れるようにするには量が少ないとどうにもならないんです。そのためには近隣の関連会社の廃棄物を全部まとめて売れるようにするとか方法はいろいろあると思うんです。だけどそういうシステムを作りましょうっていっても上司が了解しないんです」
山田
「会社では地位によって権限も大きくなるが、責任も大きくなる。もっともそれは当たり前だ。責任と権限は表裏だから。だが地位が上がると権限が大きくなるだけでなく、情報量も増える。だから内山さんが持っている情報の範囲では最善の施策と思えても、より情報を持っている人から見ると部分最適、全体不適ということもある。そういう考えはできませんか?」
内山
「私が知らないことで、その方法がうまくいかないということですか?」
山田
「そういうこともあるかもしれないが、そればかりではない。
例えば現時点、甲府工場には重要な課題があって、それを実現するために人的パワーを投入することが優先しているのかもしれない。それに比較して、内山さんの改善提案は劣後であるかもしれない。それは橋本課長でないとわからない。
ともかく上司が代わっても、いつも不満があるとなると、あなたが不満ばかり持っていると思われてもしょうがない。人を論評することは、あなた自身が評価されることだから注意した方が良い」
内山
「上長は好き勝手して良いということですか?」
山田
「誰だって好き勝手して良いなんてことはないよ。社長だって自由であるわけではない。しかし組織において命令権というものがあり、上司の命令が法律や公序良俗に反しない限り部下は従わなければならない。従わなければ就業規則違反だ。
そしてもう一つ大事なことは、命令した人は、それが失敗しても部下に対して責任を負わないということだ」
内山
「へえ、責任を負わないのですか?」
山田
「指揮が悪くても作戦が失敗しても指揮官は部下から責任を問われることはなく、上官に対してのみ責任を負うというのは組織の常識だ。
おっと、勘違いしてはいないだろうけど、部下あるいは担当者は担当した仕事が失敗しても責任を問われない。ひとえに命令に従って実行したか否かが問われる。命令に従って失敗した場合は責任はないが、命令に従わない場合は、結果的に成功しても命令に従わなかったという責任問題になる」
内山
「つまり橋本課長は島田部長の命令のみを聞けばよく、部下の意見を聞かなくてもよいということですか?」
山田
「組織論においてはそのとおり。部下は、直属上長の命令のみを実行する義務があり、内山さんは部長の命令を聞く必要はない。というかそんなことも知らないで会社で仕事をしているのが驚きだ。
もちろん橋本課長が自分の部署の一層の活性化を図りより良いアイデアを求めることはやぶさかではない。軍隊でも参謀というのはその役を果たすために存在する。しかしその場合でも決定するのは指揮官である課長であり、責任を負うのも課長だ。結果責任を負わない担当者が、自分の意見を採用しないと不満を持つのは論理的ではない」
内山
「僕はそんな理屈に納得できません。大体、軍隊と会社では上司と部下の関係は違います」
山田
「これは屁理屈とかではない。論理を積み重ねればそうなるのは必然だ。企業において仕事をしているのは担当者ではなく課長だ。そういうことも理解できないなら、組織では働くことはできないよ」
内山は山田の言葉が気に入らなかったらしく、その後は黙ったままだった。山田も酒がまずくなり内山を置いて早々に引き揚げた。
山田は橋本課長とは面識はあるが、親しくはない。さて、内山のことはどうしたものかと考えた。工場の環境担当者の不満解消にまで関わるほど本社はヒマではない。余計なことをすることもないが、ちょっと気にはなった。



岩手工場の監査から戻った朝、山田は横山に声をかけた。
山田
「横山さん、内山さんに会ったよ」
横山
「まあ、それで例の件はお話されたのですか?」
山田
「うん、こちらから水を向けるまでもなく、向こうから橋本課長への不満を話してきた」
横山
「まあ・・・やはり」
山田
「実は先日、横山さんと話した時、話さなかったのだけどね、もう3年前になるが内山さんから前の上司の土門課長の悪口をさんざん聞かされたことがあった。そのときはなるほどと思ったんだけど、上司が変わっても不満を語るのいかがなものかなと思ったわけだ」
横山
「そう言うことがあったのですか、それで」
山田
「そんな先入観もあったのだけど、今回の内山さんの話を聞くと、上司の問題というよりもご本人の問題のように思えた。私は思ったことをはっきり言う方だから、自分の考えを変えた方が良いと言ってきたよ」

横山はうなずいて
横山
「私が監査に行くようになると、工場の担当者からいろいろと話を聞かされます。もっともそんなときの話に、素晴らしい上司だとか、うちの課長は有能だなんてことはありませんね。上司に対する不満がほとんどです」
山田
「私が入社した頃は、会社が終わると上司や先輩が部下や後輩を引き連れて飲むというのが普通だった。特に営業はそういうケースが多かった。もう25年以上前の話だ。酒を飲みながら上司が仕事の仕方とか心構えなんかを教えたものだ。それが良いか悪いかはともかく、そういう時代だった。今はみなさん個人生活を大事にするので、そういう時代じゃないかもしれない。しかしコミュニケーションが少なくなっているのかもしれないね。ともかく不満を持ったなら、他の人にこぼすよりも、上司にぶつけてお互いに議論すべきじゃないだろうか。
おっと、横山さんも私にいろいろと不満を持っているかもしれないですね。不満があれば、他に人に愚痴らず、直接私に文句を言ってほしいですね。それが社会人というものでしょう」
横山
「人間ですから考えが違うことは当然です。でも会社はゲゼルシャフトですから同じ目的実現に協同するのがそもそも求められていますよね。まずそれを守るのが最低限でしょう。といっても内山さんの場合、真実はどうなのかは私にはわかりませんが」
山田
「私にもわかりませんよ」
横山
「山田さんはお聞きになっているかもしれませんが、私が内山さんにあったとき、鷽八百社内の環境担当者の横通しの連絡会を構築すると言ってました。そういうのは本社として放置しておいてよいのですか?」
山田
「まあ、その内容次第だろうね。同じような仕事をしている人の連絡会や勉強会をしても別に誰も問題だとは言わないよ。政治家じゃないんだから。でも、会社の時間内で行うなら当然、職制の承認が必要だし、お金がかかるならどうするんだろうね。メールならともかく、出張して会合を持つだけでもお金はかかるんだから」
山田がそう言ってその場は終わったが、まもなく放っておけなくなる事態になるのであった。



数日後、山田が朝メールチェックをしていると、甲府工場の橋本課長からメールが入っていた。内山の件かなと予想してメールをあけると果たしてその通りだった。
やれやれ、俺の前では上司をあげつらい、上司の前では俺をあげつらうのか、彼は不満分子というよりも、我がままな子供だなと山田は思った。
とりあえず橋本課長に心配無用と返事を返す。そして内山のことを忘れて溜まっているメールを片付け始めた。

しばらくして廣井が山田に声をかけた。
廣井
「オーイ、山田よ、甲府工場の内山って知っているか?」
山田
「ハイ、若いやつですね。先週の岩手工場の監査で一緒でした」
廣井
「甲府工場の島田部長から、奴を本社で1年くらい修行させたいって依頼があったんだが・・・」
山田
「人手は間に合っています。環境保護部の人員計画通りですから、人数が増えると部門費がオーバーしますよ」
廣井
「お前、内山のことを知っているか?」
山田
「はい先ほど申しましたように面識はあります」
廣井
「お前もだんだん俺に似てワルになってきたようだ。奴のことを知っているんだろう。内山は甲府工場の問題児だ。島田部長は千葉工場の森本の一件を知っているんで、こいつも鍛え直してほしいというわけだ」
山田
「実は内山の直属上長の橋本課長から、私に嘆きメールが来てますので状況は想像つきます。
ただ、森本と内山は問題児といってもタイプが異なります。森本は天動説でしたが内山は不満分子です。森本のようなケースであれば、本社で環境技術や考え方を教育する意味はあると思います。しかし内山は人間教育せんとだめです。本社は人格鍛錬や修行の場じゃありません」
廣井
「まあ、頼られたんだ。工場の期待に応えるのが本社ってもんだよ。頼むぜ、1年間お守りしてくれや」

ということで次回に続きます。

先日、名古屋鶏様と話したことですが、映画でも漫画でも主人公の前に強敵が現れて、それを倒すと更なる強敵が現れます。ドラゴンボール、スラムダンク、キャプテン翼、燃えよドラゴン、ベストキッド、やわら、みなしかり
強敵が現れる限り物語は続くのです。いや物語が続くためには更なる強敵が現れなければならないようです。
このケーススタディもそうなのでしょうか?

内山さんのような人に会ったことがあるのかというご質問がおありでしょう。
もちろんあります。それも一人や二人ではありません。見分け方を考えるまでもなく、そういう人は顔に「私は不満分子です」と書いてあるのですぐわかります。
まず上長の悪口、不満を言うのですが、上長が代わっても不満は消えません。それじゃあ不満をなくすには、自分が消えるしかないじゃないですか。
それと、自分はすごい成果を出していると言いますね。もっとも自分は大した仕事をしていないと言いながら不満を言うのはおかしいと、彼らなりに考えているのかもしれません。
こういった不満分子には、特に若く有能な人に多いですね。その理由は苦労や失敗をしていないからでしょう。有能な人物なら、創意工夫をこらして廃棄物削減、省エネ、事故・故障の低減、情報システムの改善などを行い、その結果としてある程度の成果を出すことができるでしょう。それで自分が有能だと思い込み、より大きな権限を持てば一層の改善ができる、あるいは全社やグループ企業に広めるのが自分の使命だと思い込んだりする。その思いを純真だと見ることもできるが、会社というのはそう簡単ではない。
なにをするにも人物金のリソースが必要であり、会社に限らずすべての組織においてリソースは限られている。良いことならすぐに実行すべきだと思うかもしれない。しかし、良いことと言っても、すぐにしなければならない良いことと、すぐにした方が良いこと、しないよりはした方が良いこと、しなくても良いこと、しないほうが良いことなどのランク付けがある。
またある活動は、特定の範囲において改善になっても、全体的に見れば改善ではないこともあるし、事業全体をみれば実施すべきではないこともある。極端な例をあげれば定款にないことはできない。
管理者の仕事とは、まさにそういったことを判断し実施させることだ。しかし自分の成果に酔っている人は、自分の考えたことをすぐに実行すべきだとしか見えないことが多い。
年間1千万円の廃棄物費用の20%、200万円を削減をして自分の成果がすばらしいと思う人はいるが、その工場における重要性の位置づけを理解しないのである。
年間1千万の廃棄物を出す工場なら、生産高は100億以上にはなるだろう。100億の200万は0.02%であり、工場の経営レベルでは重要課題ではないだろう。

もちろんそうでない人も大勢いる。小さな会社で、お金がない、人がいない、物もないというナイナイ尽くしのところでも頑張っている人も大勢知っている。
また職場ではお互いの考えを常に確認し、相互理解に努めている人たちもいる。やりたいことと、やるべきことは違うということを理解している人もいる。
すると先ほど「特に若く有能な人に、こういう不満を持つ人が多い」と書いたのは誤りで、正しくは「特に若く自分を有能だと思っている人に、こういう不満を持つ人が多い」と言うべきだろうか。つまり有能ではなく勘違いなのだろう。

実は私も常に現状に不満を持っていました。しかし文句があると陰で語ることはせず、直接ご本人にその旨をお伝えしました。そのほうが手間がかからないし、効果も直接的でよろしいでしょう。
それと私は現場では優秀な技能者でした。また人を指導するのも得意でした。しかし現場監督に抜擢されると、人を使うことが不得意であることが判明しました。ということで私のラインに沿った昇進というのはありませんでした。そしてそれに不満を持ったことはありません。自分の実力を認識していたからです。
その後リストラとなるわけですが、専門職としては力量があったのでしょう。なんとか生き延びました。
ともかく私は昇進しないことに不満は持ちませんでしたが、能がないと思ったことはなく、自分の分野においては人並み以上であるという誇りは持っていました。

うそ800 本日の問い
おおい、○○君、見ているか? 君も少しは進歩したんだろうか?

次回に続きます


名古屋鶏様からお便りを頂きました(2012/11/25)
久しぶりに有望なルーキーの登場ですね。楽しみにしております。
こーゆータイプは周りがお膳立てをすると「自分の手柄」で、孤立させると「周りが非協力的だ」と憤慨します。一種のテンプレですね。
さて、どう料理されるのか。参考にさせて頂きます。

名古屋鶏様 素早いですね
うーん、これは短編で2回で終わろうとしているんですが、終わらせないという意思表示なんでしょうか
困りました



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