ケーススタディ 株主総会

13.05.29
ISOケーススタディシリーズとは

今回はISO規格とか環境遵法や事故防止に関するお話ではなく、ケーススタディ物語の流れのつなぎ的なお話です。お気に召さなければごめんなさい。



山田は、横山から提出を受けた昨年度の監査報告をチェックしている。最近では横山も一人前になり、ミスがほとんどないのはもちろん、報告のまとめ方もなかなか堂に入っており、チェックというよりも確認程度である。横山が優秀でやる気があるからだろうと山田は思う。間違っても自分の指導が良かったからだと思うほど、山田は傲慢とか自信過剰ではない。
とはいえ、完璧というのはない。山田はあちこちに朱を入れたり、ポストイットを貼りつけてたりしている。
廣井が山田を呼んだ。山田が首を伸ばして廣井の方を見ると、おいでおいでしている。
山田は廣井の机に行く。
山田
「廣井さん、なんでしょうか?」
廣井
「来月末、株主総会だろう。それで例年通りだが、経営陣のための環境に関する説明資料を作れという依頼が来ている」
山田
「もうそんな季節ですか」
廣井
「そういうことだ。アベノミクスで世の中は好景気になりつつあるが、今回の決算までは民主党の悪影響が大だね。まあそれでも当社は並み以上の業績だとは思うが。
それはさておき、今年は山田がメインでというか、お前に取りまとめてほしいんだ」
山田
「あれ、中野さんでは・・」
廣井
「うーん、いいからお前がやれ
依頼内容はいつもと同じだ。過去一年間の環境活動と問題点、他社との比較、世の中の環境問題と当社の対応、そんなことのサマリーとQ&Aだな。偉い人というのは準備がしてあれば安心するようだ。
総務部への回答は10日後だが、部内で確認したいので・・・そうだな1週間後までに山田案をまとめてほしい」

廣井はそういって総務から来た資料をドサット山田に渡して、次の瞬間はもうそんなことは忘れたように別の資料を読み始めた。
山田はおとなしく自席に戻ったが、ちょっと変だなとひっかかった。そもそも山田は遵法と事故そして省エネや廃棄物削減の環境パフォーマンスの担当であり、中野課長は広報と製品対応の担当だ。昨年まで総会対応は中野課長がしており、山田は自分の担当部分の下書きと中野が忙しいときに手伝うくらいだった。今年、山田に仕事が回ってきたのはどういう風の吹き回しなのか?
ひょっとすると中野が異動になるのだろうか? あるいは山田を広報担当にするという廣井の腹づもりなのか? それとも他に・・

株主総会は6月末、まだひと月あるが、各担当からの資料を総会担当の総務部が取りまとめ、内容を確認し経営陣に説明などすることになる。それで山田はドラフトを5月末までには作らねばならない。過去一年間、当社グループでは報道された違反や事故はなかったので、他社の事故や違反の状況を調べてその対応状況、製品の環境性能や工場の環境パフォーマンスの改善が他社に劣っていないこと、法改正の対応状況、その他環境に関わる諸状況が人並みというか他社並みであることを説明するデータを集める必要がある。
とはいえ、事故や違反のデータは、今見ている横山からの昨年度の監査報告に盛り込まれている。また環境パフォーマンスのデータは、情報システムで工場や関連会社すべてから収集している。手に入っていないのは製品関係で、それと他社の事故や違反状況は集めなければならないなと山田は頭の中で考えた。それからQ&Aだが、昨年度のものを参考にすれば二日もあればなんとかなるだろう。
つまり手持ちの情報でまにあうものと、自分が動けば済むもの、そして中野に協力してもらう必要があるものに分けられる。山田は頭の中でそのへんの見積もりをして、ほぼ1週間あれば大丈夫と踏んだ。明日から動けば間に合うだろう。そしてそれを忘れてとりあえずの監査報告に集中した。



次の朝、山田は製品関係の説明事項のパートの更新と、製品関係のQ&Aの加除修正について中野と相談した。
中野
「山田君、話は分かった、頼まれたことは期限までにするから心配するな。
だけど、この仕事が山田君に回ったということはどういうことだろう?」
山田
「まさか、中野さんが異動するとも思えませんし・・」
中野
「僕が異動するよりも廣井さんが異動する可能性が大きいなあ。彼は来年の3月に役職定年のはずだからどうなるのだろう?」
山田
藤本部長の時にお聞きしましたが、役職定年の1年くらい前から人事と本人で方向を検討するとのことですが」
中野
「そうだろうなあ、いろいろと準備もあるだろうし。とはいえ環境保護部では子会社に出向ということもありえないだろう。廣井さんは優秀だが、環境以外については全くの未知数だからね。当社グループで事業所長以上になって、環境だけ担当していればいいなんて仕事はないだろうなあ〜。課長クラスならともかく
考えられるとすると業界団体への出向があるくらいだろうか。工業会の環境担当部署ならありえるなあ。まあ人事のことは外部の者には全く予想はつかんね」
山田
「ともかく製品関係についてはお願いします」
中野
「まかしとけって。でも山田君、株主総会といっても10年前とは様変わりだよ。今じゃいわゆる総会屋のような人はいないし、むしろ株主から建設的な質問が多い方が好まれている。ひと昔前なら30分とか40分という短時間で終わるのが良いと思われていて、各社とも時間の短さを競ったらしいが、今ではあまり短時間だと裏で何かしたのかと疑われてしまう」
山田
「そうなんですか? ともかく質問を受けて役員が立ち往生するようではまずいですから、よろしくお願いします」

その後、山田は横山と打ち合わせて事故、違反、環境パフォーマンスのデータ収集を依頼した。横山も今は監査の端境期はざかいきでヒマなので喜んで請け負った。横山も新しい仕事にチャレンジするのが好きなのだ。
山田はQ&Aを主に作成することになる。もちろん全体まとめもしなければならない。だが株主総会対応の資料作成も大した手間はかからないのだなと思った。
一段落すると再び廣井が山田にこの仕事を依頼した意図が気になってくる。廣井が役職定年後どうなるのかも気になる。山田は藤本を思い出した。即、藤本に電話をする。藤本が会社にいたので早速今日の昼飯を一緒に食べる約束をした。
山田は11時半頃、横山にちょっと藤本さんのところに行ってくると言って出掛けた。
横山横山 は恨めしそうな顔をして山田を見送った。


藤本とは地下鉄の池袋駅から出たところで待ち合わせた。
藤本
「おお、山田さん、お久しぶり。うまい店を見つけたから案内するよ」
山田は藤本の案内でてんぷら屋に入った。
食べながら話をする。
藤本
「おれんところが順調になると、とたんに山田さんも廣井部長も来なくなったねえ。現金なもんだ アハハハ」
山田
「便りのないのが良い便りというのと同じく、お宅が順調なら我々がお邪魔することもありません」
藤本
「おかげさまで我々三人分の仕事量はあるし、損益もなんとかというところだ。もちろん今でも環境保護部からのお仕事が半分近く占めているのは事実だが、それでもだいぶ外販の仕事を確保してきたよ。当社グループ以外にもコンサルの仕事が取れるようになったのが大きい」
山田
「コンサルと言いますとISOですか?」
藤本
「いやいや、今はどこでもISO認証とか維持の仕事は少ないと思う。もっと具体的で実のある省エネとか廃棄物とか儲かる改善の相談だな」
山田
「失礼ですが藤本さんのところで、省エネのコンサルなどできるのでしょうか? 技術的なという意味ですが」
藤本
「確かに省エネの具体策、つまり圧縮空気のロス対策とかボイラーの断熱向上なんてのは我々にとっては無理だ。しかし世の中にはまだ環境配慮というと『紙・ごみ・電気』とか省エネは空調温度を上げるという程度の発想が多い。というかそれくらいしか知らないんだな。
少しレベルアップした会社でも、改善策の費用対効果とか実施事項のプライオリティを考えるまでに至らないところが多い。我々は省エネ機器を売りこもうとかしないので、ある意味下心なく客観的にその会社が何をすべきかを教えてくれると思われているんだ」
山田
「なるほど、そうしますと環境改善コンサルですか?」
藤本
「そういったところだ。その会社の実情を把握してどんなことが問題か、何を優先して改善すべきかといったことを提言をする。そして具体的方向が決まれば、業者の紹介や交渉などを手伝っている。
川端も五反田も、ISO認証と違って大局的に見ていろいろ指導できるというのが新鮮で面白いようだ」

正直言って私はそのようなビジネスがあるのかどうかは知らない。しかし省エネとか、廃棄物、化学物質管理などセグメントを限定したコンサルはウジャウジャいるが、その会社の全体をみて改善のプライオリティを考えて提案するコンサルが最も必要なものではないかと思う。何もわからない人に、どんな改善をしたらよいのかを教えてくれる人が必要なのだ。
大きな企業とか企業グループなら上位組織の環境部門が指導しているかもしれないが、そんなところでも多くの場合、本当の環境管理とバーチャルISOの二つが存在している。本当の意味のEMSが機能しているところは少ないのではないだろうか。いや、ISO14001が侵入してきてから、真のEMSが駆逐されてしまったのではないかという気もする。「公害防止に関する環境管理の在り方」に関する報告書なんてのはそういう風潮への反論だったのだろうけど・・・効果はあったのだろうか?
日本経済が停滞しているのはISOのせいではないかとさえ思える。ISO認証業界の人たちはそんな実態を知らず、己が偉い、己が正しいなんて勘違いをしているのだろうなあ 嘆
おっとそんなことをしているコンサルはたくさんいると突っ込みがあるかもしれない。しかしISO認証企業、特に自治体や非製造業の環境目的・目標を見れば、そんなコンサルティングが行われていないのはあきらかで、環境管理の初歩というか考え方の基本からの指導が必要なことは明白だ。
だが藤本のしているビジネスが未来永劫存在価値があるのかと考えると、そうは思えない。突き詰めれば企業の真の改善は、企業の組織や情報システムを含めた仕組みの改善と、個人の力量向上につきるのではないだろうか。


山田
「今日お邪魔したのはですね、まあ定期的なと言いましょうか、御社の経営が大丈夫か確認に来たのもありますが・・」
藤本
「それと暇つぶしだろう、分っているって。今は監査がない時期だからね」
山田
「ハハハ、藤本さんにはかなわないなあ。
いや、そうじゃなくて、環境保護部の人事異動があるのか知りたかったのです。藤本さんは顔が広いから何かご存知かと思いまして」
藤本
「おいおい、人事異動って普通は4月10月で通知はそのひと月前だろう。今は5月だよ、時期外れもいいところだ」
山田
「そう言えばそうなんですが・・・廣井さんはことし役職定年ですよね。何か聞いてませんか?」
藤本
「廣井さんもそんな歳か・・・本来なら私のところに来て、私の後を継いでこの事業で会社を興して初代社長になるのが穏当なところだろうなあ。とはいえ、そんな話は聞いてはいない」
山田
「藤本さんはまだ60ですよね。ですからそれはないでしょう。藤本さんの場合、63歳くらいまでやっていただくことになるでしょうねえ。もちろんそれまでには事業を独立した会社にしていただかないと」
藤本
「まあ今の調子では、なんとかなりそうだね。既に人手も足りなくてあと一人くらい欲しいと考えているのだが。今なら人件費は十分負担できると思う。山田さんのお勧めはいないかね?」
山田
「私は鷽八百グループ各社を歩いているので、優秀だと思う人は結構知っていますが、地方から東京に住まいを移るのは難しいでしょうねえ」
藤本
「そうだろう、まあ何かあったら教えてほしい」
山田
「廣井さんの話ですが、何もご存じないですか?」
藤本
「ないな、昔馴染みにあったらそれとなく聞いておこう。だけど山田さんはそんな他人の人事を気にするような人ではなかったと思うけど」
山田
「そうなんですが、廣井さんが動くとなると中野課長とか私とか大幅な異動を伴うと思うのですよ。実を言いまして既に中野課長の仕事が私に指示されたりしていますので・・疑心暗鬼なんです」
藤本
「なるほどなあ〜、もちろん廣井部長が異動すれば、わしのところへの仕事とか支援なども大きく変わることもあるだろう」
山田
「環境担当役員の異動は、今回の株主総会では提起されていませんから、廣井さんが代わってもすぐにそうはならないでしょう。ただ役員の任期は1年ですから、まああと2年ですね。2年後までには藤本さんのところは事業も採算も安泰で独立していないといけませんね」
藤本
「ISOという切り口からでは事業の先行きはみえないね。だけど環境をベースにして業務の効率化とか費用改善という提案ができれば仕事はあると思う。ともかく実績を作っておかないと次がない。言い換えると実績を出せば口コミでひとりでに仕事は増えていく」
山田
「そのお仕事に非常に興味がありますね、具体的にはどんなものなのですか?」
藤本
「飯も食べたしオフィスに行こう。今日は川端は出張だが、五反田がいる。彼に話を聞くと面白いよ」



二人は藤本のビルに移った。
オフィスに入ると五反田がパソコンを叩いている。気配を感じて五反田が顔を上げた。
五反田
「おお、山田さん、お久しぶりです」
山田
「ご無沙汰しています。藤本さんから聞きましたが順調だそうですね」
五反田
「損益的にはともかく、仕事はありますね。それも最近は内容が変わってきて、いえISOなんかではなく、環境配慮とか費用削減などをどうしたらいいかという相談が多いです。お客様は非製造業がほとんどですね。そういう会社の改善は私の経験からピーンとくるんですよ」
山田
「なるほど、面白そうなお仕事ですね」
五反田は立ち上がって給茶機からコーヒーを三人分もってきて、藤本と山田が座っているテーブルに自分も座った。
五反田藤本山田
コーヒーコーヒーコーヒー
五反田
「藤本本部長からお聞きになったのでしょうけど・・・考えると面白いですね。
会社員て誰でも自分の仕事ではプロだと思うんですよ。経理なら経理のプロ、営業なら営業のプロですよね。だけど環境のためとか言われると頭が真っ白になってしまうのでしょうか。裏紙を使えと言われるとひたすら裏紙を使う。
情報セキュリティとかはとりあえずおいといてですよ、裏紙を使うことによる改善効果はいかほどか、費用対効果はどうかなんて考える人はまずいませんね。長いものに巻かれろという発想なのか、無用なごたごたを起こさないという気遣いなのか・・」
藤本
「まったくだ。裏紙使用が会社にいかほどの貢献があるのか、環境保護にいかほど役に立つのか考えもせずに、言われたとおりしているのを傍から見ているとしっかりしろと言いたくなるよ」
五反田
「会社によっては情報セキュリティのことがあり、裏紙使用の前に使用済側の全面に網目印刷をしてから使っているところもあります。そんなことをするなら何もしないで破棄して新しい紙を使うほうがトナーと電力の無駄が省け環境に良いと思いますよ、まあ理解できませんわ」
藤本
「私が知るかぎり、裏紙使用によって費用がこれだけ節約できる、環境保護にこれだけ貢献するということを示していた会社はなかったね」
山田
「おっしゃる状況はよくわかります。いやしくもビジネスをしているなら、するべきことは紙ごみ電気ではありませんよね。しかしいったいどうしてそんなアホなことをしているのでしょうか?」
五反田
「結局ISOなるものが出現したとき、その宣教師たちがその本質を説明しなかったということでしょうねえ。そして審査員も規格の真意を理解できず、ばかばかしい点数法とか教条的環境目的を広めて、そして今はそれが根をはやしている。今更それを否定することは己の過去を否定することになり・・・結局そのまま続行ということじゃないのですか」
山田
「なるほど」
五反田
「だから我々がそんな役に立たないことを止めましょう、会社が儲かって働く人が楽になって環境に良いことをしましょうというと、初めはそんなことあるのかとか、それでもいいのかと疑うのです。でも一旦始まるとすぐに理解していただき喜んでもらえます」
山田
「仕事のプロなら聞いたことを鵜呑みにせずに、考える、疑うことが当たり前でしょうけど・・」
五反田
「日本のだめISOの時期は失われた20年と全く重なりますね。もちろんISOのためにデフレになったわけではありません。右肩下がりの経済とデフレで自信喪失したものだから、バカバカしいISOに唯々諾々と従ったのかもしれませんねえ〜」

そんな話を1時間ほどして山田は会社に戻った。もちろん雑談だけでなく、藤本からここ数か月の損益状況、仕事量などの資料を見せてもらった。もっとも山田だって営業のプロだったから、壁に貼ってあるスケジュール表や机の上の資料などを眺めれば仕事が盛況かどうかの見当は付く。藤本一派の仕事はまあまあ順調であるということは間違いない。



数日が経過した。山田は横山と中野からの情報を元に、株主総会用の資料を作成し、Q&Aについても最新化を図ってドラフトを作った。
そして廣井にその旨を報告すると、廣井は中野と山田を集めて中を見て、ああだこうだという。
山田は修正し、また廣井が注文を付ける。そんなことを二三度繰り返した。
やっと廣井の了解が出て総務に送る。



数日して今度は総務から山田に招集がかかり、関係部門が集まって株主総会用の資料の審議と修正検討が繰り返される。
していることが株主からの問い合わせへの対応ではなく、株主総会のために役員が勉強する資料のレビューなのだから山田は内心あきれた。鷽八百機械工業も大企業なのだ。いや大企業病なのだ。各部門がミスをしないこと、それが目的のように思える。仮に総会で質問を受けて役員が即答できないことがあっても、それで良いのではないかと思うのだが。
日にちが過ぎて役員の事前勉強用資料が完成した。今度はそれぞれの役員からのご下問がくるだろうから、それへの対応となる。
実際に問い合わせが来たのは、山田の上長に当たる環境担当役員からだけだった。他の役員はそれぞれの役割を勉強するのに忙しく、環境まで目が届かなかったのだろう。



総会当日は廣井が役員のバックアップで陪席する。大臣答弁の際に後ろにいる官僚と一緒だ。そして環境保護部のメンバーはオフィスで待機して、役員と廣井が答えられない場合に備えている。
実際には環境に関する質問はなく、鷽八百社の株主総会はシャンシャンと終わった。総務によると40分で終わったので成功だったという。山田にはその感覚が分からない。
とにかく株主総会が終了して山田はほっとした。別に山田の資料が良くても悪くても関係なかったようだ。



数日後、廣井が打ち合わせコーナーで一人コーヒーを飲んでいるので、山田もコーヒーを持って隣に座った。
山田
「廣井さん、話しかけてよろしいですか?」
廣井
「なんだ?」
山田
「なぜ今回私が株主総会対応の資料をとりまとめたのでしょうか? 中野さんのご担当と思いますが」
廣井
「中野君ももう長年こんなことをしてきてさ、彼が作るのはマンネリなんだよね。山田にやらせればすこしは彼に競争心、向上心が湧くかと思ってさ、今回はお前にやらせてみたのさ」
山田
「なあんだ! そうなんですか、私はひょっとして私が広報担当になるのかとか、中野さんが他所に出ていくのかと考えてしまいましたよ」
廣井
「ハハハハ、そう読んだか。残念ながら今のところそういう予定はないな」
山田
「実は正直なことを言いますとね、廣井さんがいなくなるのかと思っていましたよ」
廣井
「俺も正直なことを言うが、俺の役職定年後はまだ未定だ」

うそ800 本日の雑談
会社で働いている人にとって、人事異動のうわさ話ほど楽しいものはないらしい。私はそういうことには全く関心はなかった。だって他人が偉くなっても私は一銭の得にもならないし、私が偉くなることはありえない、そして自分がリストラされる噂話が楽しいわけがない。
しかし世の中には仕事よりも人間関係が大事な人も多く、そういった人たちはご自分の昇進や異動だけでなく、他の方の異動を細かくチェックしてご栄転のご挨拶を欠かさなかった。
日本の企業では、個人の能力よりも人間関係が良好で顔が広いことが昇進の際に考慮されていることはまちがいない。
私はそういう面倒なことは嫌いなので・・・あ、それで出世しなかったのかもしれない。



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