Hさんの思い出

13.07.31
Hさんは某認証機関の審査員である。いや審査員であった。Hさんの思い出といっても、別にお世話になったわけでもなく、付き合いがあったわけでもない。だから懐かしいわけでもない。
なぜ今になってHさんのことを思い出したかというと、たまたま、ちょっとしたことである審査員の登録状況を検索をしていて、そういえばHさんは今でも審査員をしているのだろうかと頭に浮んだのだ。彼の名前で検索したら、本日時点、登録者に載っていなかった。
昨年(2012)夏の時点ではHさんは主任審査員として登録されていたので、それ以降に登録を止めたのだろう。
彼はたぶん70近い、いや70を過ぎているかもしれないから、年齢からいって引退してもおかしくはない。いや、引退することが日本のためだろうなあと思った。
では、本日は私とHさんの思い出である。

HさんとはISO審査で三度あいまみえた。そのいきさつは以前書いたことがある。
「あいまみえる」とはお会いするの謙譲語であるが、普通は戦場で敵として会う場合に使う。つまりHさんと私は敵同士だったのである。
リンクをたどるのも面倒でしょうから、ここにその部分を再掲します。

古い話ではない、2年くらい前だろうか、私がやはり知り合いの別の会社からISO14001認証するから助けてくれと言われて、これまたホイホイといって指導していた。この会社は担当者がやる気がなくて、ボランティアコンサルの私も嫌気がさした。なんと指導した期間は1年近くにわたった。
やってきた審査員はHさんだった。審査は冒頭からかみ合わない。HさんはISO規格など全然理解しておらず、もう前世紀の遺物という感じである。いや前世紀どころか、ジュラ紀の恐竜だろう。
審査では驚くべき・・呆れるべきと言うべきか・・不適合がゴロゴロとたくさん出された。
まず冒頭に、環境方針に製品名が記載されていないから不適合だと言う。次に汚染の予防という言葉がないから不適合だと言う。更に枠組みという言葉がないから不適合だと言う。すべての人に周知すると記載されていないから不適合だと言う。
いやはや、「4.2環境方針」だけで、不適合を4件もいただいてしまった。正直言ってこれは私にとってもはじめての体験だった。4倍マンなら涙が出るほどうれしいが、バンカーで4つも叩いたら涙が出る。不適合が4つだと怒り狂う。
その後、私はその会社には断りなしに認証機関に怒鳴り込んだ。
H審査員の上司は私に怖れをなしたのだろうか? いきさつは知らないが、その後、指導していた会社から次の審査ではあの問題はでませんでしたという話があった。


私は過去20年間に複数の国籍の大勢の審査員に会いました。今までお会いした審査員は、都合100人以上になるでしょう。しかし良い審査員は片手で数えるくらいしかおらず、ダメ審査員は両手両足でも足りず、計算機が必要なほどですが、H審査員はその筆頭格の一人でした。
彼よりももっとトンデモ審査員というのもいましたが、そういうオーパーツ的、ウルトラクラスが大勢いるのが現実で、嘆かわしいことです。
おっと、話が発散するといけないので、今日はHさんに絞りましょう。

彼の問題はいくつもある。
  1. ひとつはISO規格を理解していないこと。
    だって寺田さんが本に書いているような基本的なことを知らないのですよ・・いったい審査員研修機関でどんな研修を受けたのかと問い詰めたい。
    しかし彼は・・・以下略
  2. ひとつは自分が正しいと信じていること。
    それは私だって自分が正しいと信じてますよ。でも相手が反論してきたら少なくても話は聞きます。ひょっとして私が間違っているかもしれない。後で恥をかくのはいやだから、相手の言い分を聞いて考えます。だがHさんは自分が間違っているかもしれないなんて思いもしなかったのだろう。
  3. 自分が話すだけで、人の話を聞かない。
    オーディター(審査員)って話を聞く人のことですよね? 彼はスピーカー(講演者)だった。
    コミュニケーションをとることができないといってもよい。天上天下唯我独尊

ISO審査員の具備すべき要件としてはいろいろあるが、Hさんの場合、規格についての知識もなく、広い心もなく、コミュニケーション能力もないとなれば、三拍子そろった、いや三拍子そろわないダメ審査員であることは間違いない。
こんな人が主任審査員だったということは、いったいCEARは何を見ているのだろう!
そして彼を雇っていた認証機関は、自社の審査の実態を把握していなかったことは間違いない。あるいは認証機関そのものが、どうしようもなかったという可能性も大きい。そういえば、別の認証機関の取締役が、Hさんの所属していた認証機関のことを、日本のISOの恥部と言ってたっけ。

なお、Hさんは認証審査員だけでなく、ISO関係の某機関でも仕事をしていた。それについて細かくは言えないが、認証審査員よりも重要で多方面への影響が大きな仕事であった。それを知って私は、こりゃ問題だなと思った。あんな人がそのようなお仕事をしているのでは、ISO認証のレベルがあがらないのは当たり前だと思った。
そして更に問題なのは、ご本人もまわりの人も、Hさんは力量があると勘違いしていたことだ。
結局、ISO認証制度はその認証側の構成員の質が低いから問題だったのだと私は断言する。

Hさんがダメ審査員だったということは間違いない事実であるが、彼の存在を許した制度はどこかに欠陥があったのだ。どこが悪かったのだろうか?
認証機関は審査員の力量をどのように評価し、処置していたのだろうか?
一般の企業なら社員の仕事ぶりをみて昇給や昇格に反映するだろう。仕事ぶりというとあいまいだが、営業なら売上、お客様からの苦情や褒め言葉を把握して、評価するだろう。購買なら調達のQCDの達成度を見るだろうし、現場なら仕事の腕が良いかどうか、同僚との人間関係はどうかなんて見て評価し昇進などを決めているだろう。
はたしてその認証機関は審査員を何をどのように評価してどう処置しているのだろうか?
審査でトラブルがあっても、一般のお客様は認証機関に「お宅は一体どんな教育をしているのか」とか「誰々さんはうちに派遣しないでください」なんては言わない。ただ黙って我慢しているのが多い。だけど便りのないのが良い便りというわけではなく、サイレントマジョリティは不満を持っているのが多いのだ。顧客満足を把握して対策しなさいなんて語っているのが認証機関なのだから、そのへんはいったいどうしているのだろうか?
少なくても、Hさんが存在したということは、その認証機関の顧客満足は最低であったということだろう。願わくはその認証機関が倒産することを・・・

それだけではない。審査員登録機関というものがある。品質ならJRCA、環境ならCEAR、外国の出先としてIRCAその他がある。そういったところは審査員の力量や苦情をどう把握しているのか?
私が知るかぎり、審査員の更新時に、住所、氏名、登録番号と更新前の期間にお客様から苦情があったかなかったかを書いた紙1枚を添付するだけであった。具体的にはA4サイズの紙に、ただ「なし」と二文字だけ記入して提出すればおしまいだ。
こんなことで良いのか?
参考1:異議申立て及び苦情報告書 ADF1206
参考2:ISO17021:2011
どうも審査員登録の際の評価方法はまったくなっていないとしか思えない。
その人が、今までの審査でどのような状況だったのか、審査員登録機関は把握し評価しなければならないのではないだろうか。
願わくは、その審査員登録機関が消滅することを・・・

サポーズ、あなたが部下を持っているなら、管理職の仕事として部下がお客様とトラブルを起こしていないかを把握するのが第一であろう。トラブルは小さいとき、いや潜在的なうちに把握し、取り除かねばならない。そんなことISO9001に書いてあるじゃないか。
設計開発なら多少は人づきあいが苦手であっても許せるが、その場合にはお客様あるいは外部の人との折衝の際には支援をすることを忘れない。

Hさんとのいきさつを振り返ると、今でもはらわたが煮えくり返ってくる。それはご本人だけが悪いのではなく、認証機関、審査員登録機関、認定機関、全部が腐っているとしか思えない。
じゃあISO第三者認証制度が先細りなのは当たり前だ。

うそ800 本日のまとめを一行で言えば
日本のISO認証制度がダメなのはダメ審査員がいたからだ。
いやダメ審査員の存在を許したからだろう。
二行になってしまった。

うそ800 本日の本音
もし今、Hさんが現れて私の前に手をついて謝ったら私は許すかといえば・・
許さないでしょうね。
彼の罪は私に対してだけでなく、多くの企業に対しても問題であったし、なによりも日本のISO認証制度に対して多大なる悪影響を及ぼしたということがある。だから私個人が許せばすむという問題ではない。
じゃあHさんが認証制度関係者に対して謝ったなら許せるのかとなれば、それは筋違いだろう。認証制度がHさんに対して、あなたのような人を主任審査員にしてしまって申し訳ないと謝るべきだろう。いや違った、認証制度として認証を受けている組織や一般社会に対して謝るべきなのだろうね。
ともかく認証制度自身、大変な失敗をしてしまったわけだ。覆水盆に返らずというが、彼ばかりではないが、彼のようなダメ審査員によって認証制度の評価は貶められて、それはもう甦ることはないのだから。
Hさん、あなたへの恨みは一生忘れません。

断るまでもなく、ここに書いたことはまったくの実話である。
Hさんのご芳名を知りたくば、メールください。


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