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「藤本さんの環境コンサルビジネス事業が来月付け、えっと2週間後に独立する」
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「そうですか、いつかはそうなるとは思っていましたが、やっとといいますか、とうとうといいますか・・」
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「藤本さんの事業が始まって、どれくらいになるのかな?」
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「来月でちょうど2年になります」
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「そうか、藤本さんも今まで大変だったろうなあ〜」
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「独立とおっしゃいましたが、どういう位置づけになるのでしょうか? やはり鷽機械商事の子会社で当社から見ると孫会社になるのでしょうか?」
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「関連会社部と鷽機械商事でいろいろ話があったらしいが、最終的に当社が51%と商事が49%出資ということになった。つまり子会社というわけだ。 当社としては伸びると思ったのだろう。反面、鷽機械商事としては残念だったろうな。やっと独り立ちして金のなる木になると思っていたら、親会社である当社に取られてしまったのだから」 ![]() |
「そうしますと新会社を所管する部門は環境保護部ということになるのでしょうか?」
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「そういうことだ。我々の天下り先が確保できたということでもあるし、監督責任を負うということでもある。つぶさないようにしていく責任は重大だ。そして仮にだが今後、事業継続が困難になったりしたら、ここで面倒を見ることになる」 ![]() 廣井は山田のそんな気持ちをみすかして・・ |
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「山田よ、お前はどうもネガティブでいかん。藤本さんのところがドンドン伸びていくと考えられんのか、いやお前が事業を伸ばしていかねばならんよ」
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「わかりました。広報発表はいつですか?」
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「まあおおげさに社外広報するようなこともないが、今月末だ。社名は『鷽環境ソリューション(株)』としたそうだ。ということで、今日昼頃、様子を見に行こう」
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いつものように廣井と山田は11時すぎに大手町を出て池袋に着き、藤本と一緒に昼飯を食う。狭い店だが、まだ昼休み前なので並ばずに食べられた。
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「苦節十年というけれど、二年でここまで来たのはみなさんのおかげですよ」
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「藤本さんは今年60歳か、当社の内規だと社長業が3年はできますね」
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「冗談じゃない、そんなに社長が務まるわけないよ。実をいってこの仕事は面白いのだが、社長はもうたくさんという気持ちだね。早いところ廣井さんか山田さんに社長を譲って一コンサルタントとして仕事したいよ」
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「まあまあ、そうおっしゃらず、事業を拡大してくださいよ」
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昼飯を食べてから歩いて数分の鷽機械商事に行く。12時過ぎていて、五反田と川端は昼を食べに出かけたようでいない。● 藤本は打ち合わせ場に二人を案内してペットボトルのお茶を3本持ってきた。 | |
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「女子社員がいないと色気がなくていけないなあ〜」
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「これから新会社はどうするのですか?」
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「まずいろいろあるのだが、鷽機械商事から庶務や経理を自前でしてほしいと言われている。今まではすべて商事が面倒を見てくれたのだけど、親会社に取り上げられてしまって心証悪くしているのは事実だ。それは我々のせいではないのだがね。 とはいえ独立したからには、基本的な機能を保有しなければならないのは当然だ。確かにおんぶに抱っこでは会社とは言えないからね」 |
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「じゃあ人を雇わなくてはならないのですか? 固定費が急増ですね?」
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「経理については鷽機械商事の担当に見てもらうことにして、というか実質的には今までと同じなのだけどその人件費を一部負担することで話を付けた。コピーや庶務についてはもうしょうがないから、派遣をひとり頼むことを考えている」
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「藤本さんの賃金の補てんも今年度でオシマイでしょう。それに川端も転籍させないとなりませんね」
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「おっしゃるとおり。幸い売上が予定通りに伸びており、その人件費は確保できそうだ」
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「場所はこのままここで事業をするのですか?」
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「いや引っ越す予定だ」
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「ほう、それではどのあたりに・・・」
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「神田あたりの雑居ビルを探しているんだ。とりあえず50平米あればなんとかなるだろう。あのあたりなら坪8千というところかな? アクセスも悪くない。ここより便利なんじゃないかな。アクセスが悪いとお客さんが来ないからね」
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「いまどき直接会うことが必要なんですか? 話があれば客先に行けば良いのでは?」
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「そうでもないんだよ。鷽グループの会社ならメールでも電話でも済むけど、そうでなければたいていはこのようなサービスをしている会社を複数訪問して比較検討するからね。 このビルは商事のもので雑居ビルじゃないからね、セキュリティが厳しくて、外部のお客様は入りにくい」 |
山田はそんなものかと思った。
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「神田あたりならウチからも近い。歩いて行けるんじゃないかな?」
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「距離的には近いかもしれませんが、我々のところからはどう行くのでしょうかねえ〜。JRで一駅乗るのか、地下鉄で大手町から一駅乗るのか、歩いた方が早いのか・・」
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「まだ場所は未定でして、ともかく引越し先を早いところ決めなくてはなりません」
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そんな話をしていると、食事を終えた五反田と川端が現れた。
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「これはご無沙汰しております。皆さんお元気そうで」
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「元気は元気でもカラ元気だよ。お宅こそ、独立おめでとう」
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「いつかは会社設立と思っていましたが、こんなに早くとは思ってませんでした」
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「おいおい、めでたくもあり、めでたくもなし。これからはおんぶに抱っこではないからね」
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「五反田さん、川端さん、最近の状況はどうですか? ここんところ顔を出していないので様子が分らないが」
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「ISOコンサル事業は頭打ちですね。2015年規格改定なんてのはありますが、どこも利口になってきて、今から対応を騒いでいるところはありません。そもそも説明会で規格に合わせるのではなく、組織のマネジメントシステムが規格を満たしていることを説明するとか語っているようですから」
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![]() 廣井 |
![]() 川端 |
![]() 藤本 |
五反田 |
山田 |
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「その代わりといってはなんですが、法規制の調べ方とか法律の読み方についての講習会は結構人気があります」
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「おいおい、わが社の最大顧客は環境保護部だよ。ウェブサイトの維持管理と環境保護部への監査員の派遣がわが社の売り上げの半分近くを占めているというのは創業時から変わっていないんだ。それを踏まえて話をしてほしいね」
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「今度、私のところも人事異動がいろいろありましてね・・」
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「そうだ横山さん ![]() |
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「まあ期限付きですけど、彼女のパワーはすごかったのでちょっと心配だ」
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「そうでしょうねえ、彼女が抜けてしまうと大変でしょう」
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「そうじゃなくて、横山を引き取った工場が、彼女にかき回されて大変だろうと心配しているのさ。
それと横山だけでなく、今度、山田が御社の窓口から代わる」
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「ほお、それは残念です。どちらにご栄転ですか?」
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「いや、どこにも行かないよ、広報を担当することになる」
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「なるほど、ではこれから私どものといめんは、どなたになるのでしょうか?」
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「藤本さんもご存知かと思いますが、九州工場の辻井課長 | |
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「ああ、覚えている。私がお宅で修行していたときに、九州工場のISO審査を見学に行ってお会いした。その後、なにかで二三度会った記憶がある。工場の課長から本社の課長か、彼も順風満帆だねえ」
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「まあ、そこんところは社内の人事処遇ということで・・・、 ということで藤本さんの今後の相談相手は辻井の方に頼みますよ。もっとも4月以降だけど」 |
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「わかりました。しかしなんですなあ〜、横山さんも山田さんも異動するとなると・・当方に監査関係の依頼が増えるというふうに考えてよろしいでしょうね」
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「お宅の売上は私どもの支出ですから、そこんとこはなんとも・・」
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「それはともかく、山田さんには大変お世話になりました。私をはじめ五反田も川端も山田さんの薫陶を受けて・・」
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「何をおっしゃいますか、みなさんが私とあったときには既に一人前だったじゃないですか」
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「おおそうだ、山田よ」
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「ハイ、なんでしょうか?」
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「今度うちに配属になった飯田 ![]() |
「飯田につきましては横山が異動前に3月かけて業務引き継ぎをしてますので・・」
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「いいから、いいから、藤本さん、今年入社で他の部門から環境保護部に回されてきた飯田という男がいるんですよ。そいつの教育を頼みますわ。監査事務局の業務は横山から習ったからいいとして、監査技能の直伝を五反田さんと川端さんにお願いしたいね」
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「なるほど、わが社の教育の実況見分というわけですか?」
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「それと法規制の検索システムのメンテはどうなっているのだろう。OSがバージョンアップしたときは、システムを見直すとなっていたが、あれはどうなっているんだ?」
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「専門家の話ですとOSについては、あと2年は現在のままで行こうということです。ですからその対応のシステム見直しを1年後に始めるとして、それまでは法改正のメンテだけで間に合うと思います」
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「先ほど言ったように山田はお宅担当からはずれるから、後任の辻井にわかるように、お宅の業務・・うちのだけでなくおたくの仕事全般と・・ウチから頼んでいるものの内容と更新のための時期と費用などの説明資料を作っておいてくれないか。辻井が着任したらお宅を訪問させるからそのとき説明してほしい」
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「わかりました。そのようにいたします」
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「話が前後するけど、当社では関連会社を所管する、つまり指導監督する部門が決まっていましてね、御社の場合は環境保護部になりますのでよろしくご理解ください」
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「承知しております。それに関しても窓口は辻井課長ということですね。 しかし、山田さんには大変お世話になりましたねえ〜」 |
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「山田もこれから新しい仕事でその力量が問われるわけだ。といってもそれは誰でも同じか、藤本さんも横山も」
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「チャレンジしない人生なんてつまらないでしょう。進歩がなければ、生き甲斐がありません」
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「そういや、昨日より今日、今日より明日の自分が、優れていると信じられないなら、今ここで死ぬなんて名言もありましたね」
(『コンシェルジュ』の藤原貴梨花のセリフ)
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「そんなこと言われたら、オレなんか毎日死ぬようなあんばいだなあ〜」
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「社長業なんて、毎日死んでますよ」
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