ケーススタディ 裏話 その2

13.10.16
ISOケーススタディシリーズとは

前回のバカ話に石を投げつけた人はいなかったので、今回はそのパート2ということで物語の舞台となった環境保護部の話

人員と担当について
まず鷽八百機械工業というのは1兆円企業だと書きました。通常そのくらい規模の会社になると、コーポレートの環境部門は少なくても10人、たいていは20人規模だと思います。そして環境部門には、製品関係、公害防止関係、環境監査、広報など4つくらいのグループ(あるいは課)があるでしょう。中には自然保護の部隊まで作って砂漠化防止とかマングローブ植林なんてしている余裕のある会社もあります。(これは皮肉です)
この物語の環境保護部は、二つの課しかなくそのメンバーも最大のときで7名くらいでした。こんな人数では足りないのは明白です。これについては本文の中でも、登場人物が多くなると煩雑になるからとおことわりしています。
おっと、ISO担当というのは必要ありません。もしISO事務局とかISO担当がいるのでは、その会社はまだまだ未熟というか無駄の多い会社です。
もっとも子会社などからISO問題を相談されたときの相談役はいるかもしれません。

自然保護ケーススタディのテーマとしてISO関係と遵法関係がほとんどでした。現実の環境部門でしたら、そこでの仕事は、広報や製品の化学物質対応とか環境性能などが過半を占めるでしょう。そういうことをテーマにしたお話もあったほうがよかったかもしれませんが、そうすると環境部門のお話しになってしまい、ISOやマネジメントシステムあるいは遵法とは離れてしまうので、本来の意図(なんてものがあるとしてですが)ではないとして書きませんでした。

以前T芝の環境部門の方に会ったことがありますが、その方は自然保護しか担当していないというので驚きました。環境管理という語は、1990年頃は公害防止と同義でした。その後、リオ宣言なんてのを受けて、事業活動や製品における環境負荷削減と広い意味になってきました。しかし自然保護とは方向が違うように思います。ましてお仕事が自然保護専門というのにはびっくりしました。もっとも自然保護なんて一企業でできるとは思いません。例えば中東の戦争を終結するくらいのことをするなら、私も自然保護だと認めますが、雑木林の手入れなんかでは自然保護と言ってほしくないです。
私の言う意味がわからないなら、ISOに関わっていないことは明白だ。
不審に思うならリオ宣言の第24原則を見よ

オフィスについて
環境保護部のレイアウトは下図に示す通りです。決していい加減ではないのです。一般的なオフィスの広さは一人当たり3坪から4坪と言われます。そうしますと、最大在籍人数が7人でしたから、20坪から30坪のスペースがなければなりません。

鷽八百社環境保護部

図のオフィスは60平米、だいたい18坪ですからちょっと狭いですね。始めの頃は部員が4名でしたのでこれで十分と思っていましたが・・
人事異動があるたびに、顔を書き直しましたので結構面倒でした。
しかし大手町のいいとこですと賃料は坪3万から4万するでしょうから、この広さでも月70万かそれ以上、年間1000万近く。そう考えるとオフィスの場所代は驚くばかり。
古いビルとか、品川とか神田とかに居を構えれば家賃は大幅に節約できますが、体面もあり・・・

私もそんなにたくさんの会社を訪問したわけではありませんが、だいたいはこんな広さでレイアウトですね。
どこでも、えらい人が窓を背にしてすわり、他のメンバーの一番偉いのが親分の近くに座り、あとは序列に従って並ぶというのが一般的のようです。もちろん役員クラスになれば一部屋持つのが普通で、秘書も一人はつくでしょう。冷蔵庫、電子レンジ、給茶機やコーヒーメーカーはパントリーにまとめて置いておくのが多いですね。給茶機のお茶やコーヒーはまずいのが普通で、数人でお金を出し合ってコーヒーメーカーを置いているところもありました。

女性はロッカールームで着替えるでしょうけど、男の場合は椅子の背に上着をかけておくだけです。いやあ、ちょっと悲しいなあ。サラリーマンのスーツなんて作業服ですよ。

昼飯について
会社によって文化や規則、そしてその運用が違うでしょうけど・・・
私は昼飯は出張以外はたいてい会社で食べてましたけど、月に1度か2度は昼前に会社を出て、電車で一駅二駅行って食べてました。昼に出たらまず行列が大変ですから。
いや、美味いものじゃなくてサンドイッチでも弁当でもいいんですよ。特になんだというわけじゃないですけど、気分転換になりますし、世の中の動きが分るような気がします。大きな銀行の前には電光掲示板があって株価や為替相場が映されてますが、それをどんな人が見ているのかとか、オフィスビル街を和服の女性が歩いているとなんだろうと考えるとか、そんなのが面白かったです。
そんなことをしていたので、劇中でも山田君や横山さんにになるべく外でお昼を食べてもらいました。サラリーマンよ大志を抱け・・ではなく、外食をせよ!
ところで、今後悔しているのは東京フォーラムの広場に毎日10台近くの軽トラが並んで昼飯のテイクアウトを売っていたのですが、これを食べたことがないことです。一度食べてみたかった。いつもすごい行列だったので並ぶのがおっくうだった。でも雨の日はどうするのでしょうか?

また劇中、岡田や横山が勤務中にケーキを食べたりお茶したりしていますが、私が勤めていた職場も実際にそんな感じでしたね。仕事をしっかりやっているならば、そんなことは許容されると私は思います。他方、指示された仕事を納期までにできない場合は懲戒でも当然と思います。
世の中には形だけは一生懸命仕事をしているふりをしていても、納期までに一定品質のアウトプットを出せない人が多いようですが・・
 

お出かけ
もちろんフレックスでしたが、勤務時間内に好きなとき外出するのも当たり前でした。先輩格の人でしたが、法改正などの審議は必ず聴講していました。それが法改正の理解を深めるのだと言ってましたが、どうでしょうか?
私はそんなものを聞いているなら、改正案をじっくり読んだほうが理解を深めると思います。
その代り私は講演会とかISO関係の説明会には良くいきました。東京にいるということはすごいことだなあと田舎者の私は感心しました。ISOの雑誌に記事を書いている人の話を直接聞けるなんて田舎者にとってはすごいことなのです。
情報の入手も都会は可能性が広がります。だって経産省の何年も前の報告書なんて、インターネットにも図書館にもみあたりません。でもそういうとき経産省図書館に行けば現物が読めるのです。田舎にいるととてもそんなことはできません。そうそう、国会図書館も使えるのです。都会のすばらしさというのはこういうことじゃないかと思います。
山田君は経産省図書館とか国会図書館にいく場面はありませんでしたが、まあそれほど難しい仕事がなかったからでしょう。

ネタに使えそうだと思いつつ使わなかったもの
それは認証機関の売り込みです。審査員研修機関や講習会のご案内はメールとか郵便でしょっちゅうありました。認証機関の売り込みはさすがに電子メールや郵便ではありませんでした。そういうことは直接のご訪問でしたね。多いとは言えませんが毎年数回はありました。
お見えになるのはJQ△やJIC○△のような大手ではありません。またみなJAB認定でした。つまり日本の大手認証機関は日本の取引関係ということを熟知していて、対象の会社の業界以外の業界系認証機関が行ってもダメってことを理解していたでしょうし、まさか東証一部上場企業にノンジャブが売り込みに行ってもダメってことも分っていたのでしょう。ですから売り込みにくるのはJAB認定の外資系認証機関ということになります。
事前にご連絡があってもなくても、環境部門の偉い人なんて会うわけがありません。いや軽く見ているとか相手にしないわけではありませんが、何しろ忙しい人たちですからそのような客に応対することなんてできません。だいたいが私のように引退間近なヒマ人に「おう、お前話を聞いておけ」ってなことになります。
相手が大勢なら応接室、一人ならロビーでお会いしてお話を聞くことになります。といっても認証機関を鞍替えするなんてことは私の一存でできるわけでもありません。えらいさんだって決定できません。なにしろここは日本ですから、いろいろな取引関係、出資関係、まあしがらみは大変です。
私も悪い人間じゃありませんから、名刺交換してすぐに当方の事情を説明して、御社がいかにすばらしくても鞍替えは難しく諸般の事情を検討しなければならない旨を説明します。
それでも先方はやっと会えたということですぐ帰るということはありません。売り込みの話だけでなく、いろいろと裏事情とか問題となっていることなどを話してくれました。
そんなことをチラッと書こうかなんて思ったこともありました。でもそれはしませんでした。一生懸命営業をされている方に失礼と思いましたんで。
え、そうすると審査員の揚げ足をとるのは失礼じゃないのかって?
一生懸命審査しているようには見えなかったものですから。

ここに書いたものに苦情が来たかといえば、ありませんね。
いつでしたか審査員の方から「私は絶対にそんな審査をしていません。私の勤める認証機関でもそんな間違った判断はしていません」なんてメールを頂いたことがありました。
残念ながらというか、その方の勤めている認証機関ではそのような間違えた審査をバンバンとしていました。それから考えると、審査員というものは自分の勤める認証機関がどの程度なのか分っていないのでしょうか? 同僚の規格の理解や審査の力量を把握していないのかもしれません。単に俺たちはしっかりやっているぞというホコリだけかも
ホコリと入力したのですが「誇り」と変換しませんでした。まあ「埃」でなくて良かったですね。

うそ800 本日の裏話
実は裏話というか楽屋オチを書いたものが長かったので、半分にちょん切って前回はその前半分なのでした。それで尻尾が残っていまして、もったいないからと・・

うそ800 本日の予告
佐田です
佐田です、よろしく
次回より、秋からの新シリーズ「マネジメントシステム物語」がスタートします。
主人公は佐田君です。不遇の境地から己の努力で周りから認められ、かっての上司を見返すという物語。
っ、ストーリーが見えちゃいましたか 笑
おっと半沢直樹を真似ているわけじゃありません。それに元々私はテレビを見ません。池井戸潤の原作は読みましたけど


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