審査員物語10 内部監査とは

14.12.11
審査員物語とは

環境側面の講習を受けた翌週、三木はまた亜家周防あいえすおう株式会社に来ている。今日は内部監査を片付けてしまいたいと聞いていた。内部監査を片付けるというのもおかしい言い方だが、二つの部門でまだ内部監査報告書ができるまでになっていないので、それらの部門の監査を行い報告書が書けるようにしておきたいという。三木は監査を見学するために朝からやって来ている。そして今、総務部の監査を見学している。
監査員は黒木氏 で、監査を受けているのは総務部長と総務課長である。

黒木総務部長総務課長三木
黒木君総務部長総務課長三木

黒木
「ええと、環境監査をさせていただきます。前回は文書や記録がそろっておらず、監査報告書を完成させることができませんでした。今回は審査の時に見せられる報告書が作成できることを期待します」
総務部長
「そりゃすまなかったな、今日は黒木君の期待に応えられるといいのだが・・」
黒木
「私がいろいろ質問しますから、それに対応する文書あるいは記録を見せていただければ幸いです。ああ、文書とは単に紙に書いたものではなく、正式に発行された規則やルールのことです」
総務部長
「前回、黒木君に言われたものについてはちゃんと作成したつもりだよ」
黒木
「そいじゃいきますね。
環境方針は総務部の人たちに周知していますか?」
総務部長
「ええと、課長、黒木君から配られた環境方針のカードは全員に配っているよな?」
総務課長
「ハイ、配布された翌日には配りました」
黒木
「お宅には社員やパートの方だけでなく、社内外注の人たちがいると思います。給食の人やガードマンですが・・・そういった人たちにはどうでしょうか?」
総務課長
「ハイ、社員でなくても構内で働いている人全員に環境方針カードを配布しています」
黒木
「今日は時間がありませんから確認しませんが、審査の日は抜取で何人かに方針を知っているかと聞くと思います。必ず方針カードを携帯して、審査員から質問されたらカードを見せるよう指導しておいてください」
課長は何やらメモをする。
三木も方針カードの携帯が必要とメモする。しかしと三木の頭に疑問が浮かんだ。環境方針の周知と環境方針カードの携帯は同じではない。持っていなくても方針を知っていれば良いのではないだろうか? いや、カードを持っていても方針を理解していなければダメなんじゃなかろうか?
黒木
「配布は大丈夫と・・・ええと、次はもし外部の人が環境方針が欲しいと言ってきたときはどのように対応しますか?」
総務部長
「課長よ、前回の監査のときに黒木君からその仕組みを作れと言われていたな・・・」
総務課長
「ハイ、それはまず総務課の受付に環境方針カードを置きまして、そのような問い合わせがあったときはそれを差し上げることを決めました。ええとそれを決めた文書ですね、『環境方針カード取扱要領』と名前を付けたなあ〜ああ、これです」
総務課長は机の上のファイルをめくってそれを黒木に示した。
黒木はそれをながめて決裁日付と決裁者のサインをチェックする。
黒木
「ああ、わかりました。OKです。じゃあ環境方針はOKと・・・
それじゃ、次は環境側面にいきます。総務部が著しい環境側面に決定したものにはどんなものがありますか?」

総務課長
ごみ袋
「工場から出る廃棄物は工場管理部の方で担当していますが、事務所から出る一般廃棄物は総務部の担当になります。それで一般廃棄物が著しい環境側面になります。それからオフィスで使うPPCと電気が著しい環境側面になりました」
三木はあれっと思う。そもそも総務部の著しい環境側面を決めたのは工場管理部、具体的に言えば黒木だ。その黒木が総務部に来て「総務部が著しい環境側面に決定したものにはどんなものがありますか?」と質問するのはおかしくないか? 「総務部の著しい環境側面にはどんなものがありますか?」と聞いたつもりなのだろか? それとも単にISO審査の練習のつもりなのだろうか?
黒木
「それは総務部の人たちに周知されていますか?」
総務課長
「朝礼で伝えています。総務部の著しい環境側面は紙と電気とゴミだということ、それを使うときの注意事項を決めているのでそれに従って仕事をすること、今年はその使用量を削減する活動をしていること、そんなことですね」
黒木
「それじゃ運用の手順を決めた文書を見せてください」
総務課長
「まずは電気ですね。我々が関係するのはエアコンと照明、それに事務用機器なので・・・『事務所電気使用手順書』というものを作成しました」
総務課長はファイルをめくってそれらしいものを見つけるとパッと広げて黒木の方に向けて差し出した。
黒木はしげしげとながめる
黒木
「ええと・・・内容はよろしいようですが、文書には日付の入った発行印を押すことを決めていますが、これには発行印がありませんね。
ちょっと待ってください。先ほどの『環境方針カード取扱要領』はどうだったんだろう?」
黒木はファイルをパラパラとめくって調べる。
黒木
「ああ、これにもハンコがない」
総務課長
「それはあれだろう、正規に発行するものについてだよな。これは今回の監査で黒木君に見せるためにコピーしたものだからハンコを押していないんだ」
黒木
対訳本 「いけません。そうすると今拝見しているのは正規の文書ではないことになり・・・ええと・・・
(黒木は携えてきたISO規格の対訳本をめくる)
ええと、4.4.5文書管理の関連文書の最新版が利用できることに反します。困ったなあ〜、今回は問題が起きないでほしかったのですよ。また不適合通知を発行しなければならなくなってしまいました」
総務課長
「そうすると、どうなるのかい?」
総務部長
「黒木君、こうしようや。我々が悪かったが、ホンチャンでは間違いなく対策しておくから、これはなかったことにしてさ、監査を続けてくれよ」
黒木は三木を振り向いて、しょうがないなあという顔で
黒木
「分りました。じゃあ是正は必ずしておいてくださいよ。本当のISO審査のときにこんなことをされると大変なことになります」
総務課長
「どうすればいいんだい?」
黒木
「総務部の正式に発行されたハンコのある文書を見せて説明してくれればいいんです」
総務部長
「わかった、わかった。総務課長、ISO審査のときは気を付けてくれよ」
総務課長
「わかりました」
黒木
「ええと文書は作ってあると・・・じゃあ、次に紙の使用について決めたものがありますか?」
総務課長
「手順書についてはこれも発行印がないけど、それは勘弁してもらうとして・・・これだね」
黒木
「決裁日やサインはありますか? ああ、大丈夫ですね。
では一般ごみの手順書はありますか?」
課長がファイルを手に取り何ページかめくって黒木に示す。
黒木
「ああ、わかりました。著しい環境側面に関する手順書はすべてできていると・・・
では次にお宅の部門で環境に関わる法規制はどのようなものがありますか?」
総務部長
「基本的に当社の場合、特定施設に該当する設備の届出は黒木君のところで作ってくる。それを総務部が受け取って社長のハンコをいただいて課長が行政に持っていくということになる。だから我々だけが関わる法律というのはちょっとないな」
黒木
「でも冷蔵庫や洗濯機も使っていますから、家電リサイクル法も関係するでしょう」
総務部長
「確かに事務所には冷蔵庫もあるし、タオルなどを洗濯するのに洗濯機もある。だけどそれらを処分するのは工場管理部なのだから特に我々が関係するとは思ってないけどね」
黒木
「困ったなあ、実を言って工場管理部ではその手順書は総務担当と考えていたんですよ」
総務部長
「今言ったように、捨てるときは我々じゃなくて工場管理部に持っていくだけだ。後の処理はお宅だよ」
黒木
「そうか、じゃあ廃棄の手順は私のところで作らないとならないということか・・
そうなると一般ごみの処分も工場管理部ですか?」
総務課長
「我々は事務所から出るごみは工場管理部が決めた分別ルールで分けて、工場管理部に持っていくことということしか決めてない。それはさっき見せた一般ごみの手順書にそう決めている」
黒木
「うわー、そうだったんですか。手順書を作ったというから、全部決めているのかと思いました。じゃあ一般ごみの手順書も作らないとならないと・・・」
黒木の質問はその後、環境マネジメントプログラム、体制及び責任、訓練、自覚及び能力、コミュニケーションなどなどISO規格順序通りに次々に進む。経営層による見直しまで行ってようやく一段落した。
黒木
「総務部の状況は前回よりは相当良くなったと思います。でもいろいろ問題もありました。まず監査側に示す文書は正規に発行されたものを使ってください」
総務部長
「わかった、わかった。それはちゃんとするよ」
黒木
「ものごとは簡単です。マニュアルに載っている文書と記録がちゃんとあること、マニュアルに書いてあることを従業員がちゃんとしていること、それだけです」
総務課長
「それだけと言われてもけっこうな仕事だ」
総務部長
「まあ、しょうがないよ。黒木君、ご苦労だった。言われたことは期限までに完了させておく。そいじゃ、一般ごみなどの手順書は工場管理部のほうでやってくれよ」
黒木と三木は例の部屋に戻ってきた。
黒木は疲れたようにドサッと椅子に座った。
三木
「だいぶお疲れのようだね」
黒木
「なかなか大変です。仕事がいくらでもあるんですよ」
三木
「ちょっと質問してよろしいかな?」
黒木
「どうぞ、どうぞ」
三木
「監査の質問を聞いていたが、ISO規格に書いてあることをそのまま聞いているように見えたが・・
普通、会社の業務監査というと、法律や会社の規則を守っているかどうかを確認するわけで、そこで調べることはISO規格などよりも多岐に渡る。今日の監査を拝見していたが、質問がISO規格に書いてあることだけだったものだから、それでいいのかという気がしたのだよ」
黒木
「実を言いまして私も講習会で習っただけなんです。ISO審査の手順ですが、まずこちらが認証機関に提出した環境マニュアルがISO規格を満たしているかどうかをチェックします。そして合格したら審査にやってくるわけです。審査ではマニュアルに書いてあることがちゃんと実施しているかどうかを調べます。
つまりISO規格にあることをしていれば問題はないわけです」
三木
「なるほど、一般の業務監査ではなく、ISO規格に合っているかいないかをチェックするのが目的ということか」
黒木
「とはいえ、ISO規格を満足させるだけでも大変ですよ。今日の総務の監査をご覧になってお分かりでしょう」
三木は黒木の言うように大変だとは思えなかった。どの会社だって仕事は多岐に渡るし、それぞれの分野では外部の者には分らないほど深い知識、経験が必要だ。それをISO規格に書いてあることだけを、あるか、ないかの質問をするだけなら簡単すぎると思う。
そもそもISOの内部監査と聞いていたが、通常の業務監査に比べたら通り一遍、上っ面だけを聞いただけじゃないか・・・いや、それとも黒木の監査技能が低いだけなのだろうか? 本当はもっと奥行きのあるものなのだろうか?

黒木がパソコンで今日の監査報告書を書き始めたのを見て、三木は今日の監査を見ての疑問をノートにまとめた。
三木が不思議に思うことはきりも限りもない。
ISOの疑問や問題点をつけているノートも、いつしかVOL.3になっていた。


翌週である。三木はまたナガスネ環境認証機構に内部監査の研修を受けにやって来た。もう新橋駅からナガスネまでは通いなれた道となった。

コーヒー 講習会場に入ると、例によって机の上に名前を書いたカードが置いてあり、三木は自分の名前のところにカバンを置いて窓際でコーヒーを注いで飲む。
窓から外堀通りをながめる。国会議事堂も首相官邸もそう遠くない。右翼団体なのか、サヨク団体なのか、街宣車が大音量で何かを叫びながらナガスネの前を通り過ぎていく。通り過ぎた後で日の丸がなかったからサヨク団体だったと気がついた。
注)
これは単に書いただけではない。某認証機関の前はしょっちゅうサヨク団体、右翼団体が大ボリュームで通り過ぎ、あまりのうるささに講習会はたびたび中断されたものだ。
コーヒーを飲みながら考える。ナガスネが教えているのが正しいのか間違いなのか三木は分らないが、ナガスネが無料で出しているコーヒーが美味いことは間違いない。三木が会社の給茶機から飲むコーヒーとは別格だ。みんなロビーに行ってコーヒーを飲むのが分る。三木は二杯目を注ぐ。
男1
「あのう、先々週の講習会でご一緒しましたよね?」
三木は声を掛けられてギョットして振り向いた。確かに見覚えのある人だ。
三木
「ハイ、そういえば環境側面の講習会でご一緒しましたね」
男1
「いやあ、あなたのお顔を見て地獄で仏って感じです。これからもご一緒するかもしれませんのでよろしくお願いします」
三木
「いやいや、こちらこそよろしくお願いします。どうですか、環境側面は問題なく決まりましたか?」
男1
「いやあ〜、正直言って自分たちが著しい環境側面にしたいものの点数を高くするテクニックはわかりました。確かに係数や算式を考えることは面倒ですが、一応学校で算数くらい習いましたからね、一日二日かければ期待通りになるようになりました。
でもね、」
三木
「でも? まだなにか問題がありますか?」
男1
「そんな方法で著しい環境側面を決めるなら、初めからこれとこれが著しい環境側面だといった方が簡単じゃないかと思いました」
三木
「なるほど、確かに・・・私も自分の勤め先ではありませんが、現在認証活動中の会社を見学しまして同じことを感じました。環境の知識よりもエクセルの知識が役に立つようです」
男1
「アハハハ、まったくです。一体全体ISO14001の言っていることは何なのでしょうかねえ?」
三木
「正直言いまして私にもわかりません。分ろうとしてここに来ているわけですが・・・」
男1
「おやおや、また須々木大先生の登場ですよ」
その人はそう言って自分の席に戻った。以前と違い、講習の開始時間になったら着席して待っている人は少ない。三木もコーヒーを注ぎ足してコーヒーカップを持って自分の席に戻った。最近は三木もこの教室に慣れてきて図々しくなってきた。図々しいと言ってはいけない、要領が分ってきたというべきだろう。
須々木取締役
「本日は内部監査の一日コースです。参加者の要件として、EMS一般とISO14001規格を理解しているということを前提としています。それで本日は規格解説は致しません。本日のプログラムはこのようになります。」
時刻テーマ備考
9:30〜10:00環境監査とは 
10:00〜10:30環境監査の規格 
10:30〜11:30環境監査の手順 
11:30〜12:00チェックリスト作成演習 
12:00〜12:45昼休み昼食
12:45〜13:30チェックリスト作成演習 
13:30〜14:15適合性判定クイズ 
14:15〜15:45監査ロールプレイグループごとに実施
15:45〜16:30ロールプレイ結果発表・講評 
16:30〜17:45理解度テスト終わり次第退席可

「環境監査とは」というのはISO規格に書いてあることを読んで簡単に説明しただけだ。三木の会社では毎年業務監査が行われていたので、わざわざISOの内部監査をするということが理解できなかった。しかし他の人たちは疑問を持たないようなので余計な質問はしなかった。
「環境監査の規格」というのはISO19011の説明が95%、ガイド66についてはそういうものが存在するということだけであった。
注)
注)当時はまだISO17021はなく、ISO19011が第三者審査にも適用されていた。ちなみにISO17021制定は2006年である。

「チェックリストの作成」である。
須々木講師の話は、単純にISO規格の「shall」のある文章をすべて疑問文にすればよいというものであった。これは簡単だと三木は思ったものの、こんなことで良いのだろうか?

お昼である。例によって豪華な仕出し弁当が配られた。今回は三木が音頭を取って、机を並べ替えて食べましょうと言い出した。他の参加者も異議なく、10数人の参加者がお互いの顔が見えるように机をマス目に並べて食べ始まる。
食べながら午前中習ったことなどについて話が始まる。
男1
「私は前回、環境側面の講習会に参加しました。いったい環境側面評価とは、側面を評価するのが目的なのか、自分が考えている点数にするのが目的なのかわけがわかりませんでした。あれに比べると内部監査は分りやすいですね。分りやすいというか素直というか・・」
男2
「とはいえ、内部監査というのがどうもすっきりと頭に入りません。同僚のところに行って、規則を守っているか、文書があるかと聞くのはおかしくありませんか?」
女1
「私もそう思いますねえ〜、だいたい仕事の仕方が変ならば普段気が付くと思いますし、気がついた時点で注意するなり、上長に報告しませんか?」
男2
「そうそう、よく使い込みとか報道されますけど、仕事を別の人がチェックしないというのは会社の仕組みがおかしいか、独裁者がいるわけですよね」
女1
「それと多くの会社では業務監査というのをすると思いますが、ISOの内部監査と業務監査との関係はどういうことになるのでしょうか? 私はどうも分りません」
三木
「いやあ、私もそれが疑問なのですよ。業務監査の他にISOの内部監査をするのか、あるいは業務監査にISOの内部監査は含まれるのか、どうもわかりません」
男1
「みなさんのところではISO9001認証はされていませんか? 当社では何年か前にISO9000をしましたので、そういう疑問は持ちませんでした。
業務監査というのは程度というかレベルの高い経営や管理のことについての聞取り調査かなと思います。ISOの品質監査や環境監査というのは、もっと現場よりの文書の管理とか記録を付けているかとか、教育しているかとか、そういうことだと思います」
三木はなるほどと思う。確かに亜家周防社で黒木がしていた内部監査は、三木が見ていた業務監査とは違い、単に文書記録の有無のチェックだ。この程度のことに、監査という名前を使うべきではないのかもしれないと思う。
女1
「なるほど、ISOの内部監査は現場レベルの文書記録のチェックと思えばいいわけですか」
男1
「現場レベルというと階層が低いということでしょうけど、そうではなく現物を手に取ってみるという意味で具体的にするということかと思います」
男2
「なるほど」
三木は新たな疑問がわいてくる。そのような文書があるとかないとか、発行印があるかというようなことは、わざわざ監査をするまでなく、日々上長が見ていれば気が付くだろうし是正ができるのではないのだろうか?
女1
「でもね、さっきの須々木講師の説明ではなかったけれど、ISO規格では内部監査の目的は経営層に報告することですよね、
文書に発行印がありませんでしたとか、記録が埋まっていませんでしたということを社長や重役に報告して、どんな意味があるのでしょうか?」
三木はなるほどと思う。どんなものを監査と呼ぼうとそれは定義次第で目くじらを立てることはない。でも経営層に報告するというのは監査の存在意義、レゾンデートルそのもののように思う。
男1
「まあ、まだ初歩の講座だし始まったばかりだからね、段々と分っていくんでしょう」
男2
「しかしチェックリスト作成っていうのは簡単だね。環境側面に比べたら単純作業そのものだ」
女1
「そうですね、ISO規格のshallのあるところを抜き書きして、『しなければならない』を『していますか』に直せばおしまいですわ」
男2
「実は当社ではコンサルの指導を受けていて既に内部監査を何度かしているのですよ。コンサルがたいそう重要だというか秘密めかして持ってきたチェックリストが規格の『しなければならない』を『していますか』にしただけだったので、拍子抜けしてしまいました」
男1
「いやウチにもコンサルがチェックリストを持ってきましたが、まったく同様でした」
三木
「つまりこのようなチェックリストは共通というか、どこも同じということでしょうか?」
男2
「そうとまでは言えませんが・・・・コンサルがもってきたチェックリストと今日ナガスネが示したひな型、そして我々が作っているものがまったく同じだということは言えますね」
三木
「なるほど、というと今我々にチェックリストを作らせているというのは、どういう意味があるのでしょうか?」
女1
「わざわざ作るまでないということでしょうか。まあ、そうであっても作れるようになるという意味があるんでしょうねえ〜」
男2
「内部監査でもISO審査でも、同じことを聞いて、聞かれた方は同じことを答える、まるで脚本があるお芝居のようですね」
男1
「まあ、そういっちゃ環境側面も結論ありきのお芝居だよね」
女1
「まったくですわ」
三木は第三者認証というか審査全部が歌舞伎のようなお芝居か演技のような気がしてきた。

チェックリスト作成の次は「適合性判定クイズ」というもので講師がパワーポイントでいくつかの事例を映して、受講者が「適合」か「不適合」かと、その理由を述べていくのである。


三木は質問しようかと思ったが、ナガスネに出向してからのことを思って質問はしなかった。
だが、受講者の一人が手をあげた。
男2
「すみません、ISO14004は要求事項ではないと思います」
須々木取締役
「確かに審査はISO14001で行われます。しかしISO14004はISO14001の解説書的位置づけですからこれも理解しておかなければなりません。私は過去何度も審査をしていますが、このような判断で苦情を言われたことはありません」
注)
この発言は某認証機関の某取締役技術部長の発言そのままである。
質問者は黙ってしまった。

その後3人ずつ6チームに分かれて、質疑応答のロールプレイを行った。
初めて監査の練習をする三木のような者もいたが、することは簡単だ。質問側が、規格の『しなければならない』を『していますか』に書き直したチェックリストを一つ読み上げると、回答者は講師が用意している各種資料から該当するものを探して『ハイ、これです』と言えばいいのだ。
内部監査風景
ともかく三木には面白い体験だった。ロールプレイをしながら、数日前に亜家周防あいえすおう株式会社で見た黒木の内部監査をレベルが低いとは言えないなと思う。

修了試験を終えて三木は新橋駅まで歩く。もうだいぶ日が長くなった。
三木の頭の中は疑問で一杯だ。こんなことを学んでも環境が良くなるとは思えない。いや、環境が良くなるどころか会社が儲かるとも思えない。むしろ無駄、無用なことではないかという気が強い。
まあ、これも渡世の義理、何も考えずに暗記するしかないのだろう。そう思って諦めた。
とりあえず今日は辻堂の我が家に7時前に帰れることがうれしかった。

うそ800 本日の謎
ここに書いたのは、私や同僚の各種研修での実体験を基にしています。もっとも最近の事例は2012年頃ですから現時点は相当改善されているのかもしれません。改善されているとは思えませんが



名古屋鶏様からお便りを頂きました(2014.12.11)
もっとも最近の事例は2012年頃ですから

2012年時点で、まだこんなお遊びを教えていたのですか・・・そりゃ、この世界が良くならないハズですね。

名古屋鶏さん 毎度ありがとうございます。
マジレスです
思うに認証機関というのは内部統制がとれていないのだと思います。
だから元々あの認証機関はおかしいとか癖があるというのは、認証機関としての方針ではなく、審査員の暴走というか好き勝手な行動の結果ではないかと考えています。
ですから、いまだに10年前の考えで審査しているのも認証機関の方針ではなく、全然勉強していない審査員が昔の考えのまま審査しているからではないかと思います。
となると審査員登録機関の問題なのか?
いやいや、やっぱり自社の審査を把握していない認証機関が最悪ですよね
だからそういったことを糾弾するものの存在意義もあると思います。
迷惑な方もいらっしゃるでしょうけど

審査員物語の目次にもどる