マネジメントシステム物語55 青森岩手不法投棄

14.05.19
マネジメントシステム物語とは
*今回のお話は2003年頃と思ってください。
計算が合わないなんて言ってはいけません。

熊田部長から青森岩手不法投棄対策の指示を受けた翌日、塩川は佐田と佐々木を呼んだ。

塩川課長
「青森岩手の不法投棄問題は、時間が経つとともにドンドン問題が大きくなってきたなあ。聞いているだろうけど、日立物流とタカラなど数社が措置命令を受けたと報道されている」
佐田
「措置命令ですから、かかる金額がいくらになるかわかりませんねえ〜、罰金と違い恐ろしいことです」
措置命令とは、廃棄物処理法に基づき廃棄物の不適正な処分により環境の保全に支障が生じる場合、自治体の首長が廃棄物の除去や汚染防止の措置を命じることである。 廃棄物 措置命令は刑事罰ではなく行政命令であるが、これに従わないと刑事罰がある。
措置命令は不適切な廃棄物処理を行った廃棄物業者にだけでなく、廃棄物を排出した企業に対しても発令されること、きわめて巨額な金額になる場合があること、そして時効がないことなど廃棄物の排出者にとっては十分留意しなければならない。

佐々木
「しかし1万数千社が、例の業者に委託していたといいますから、措置命令を受けた4社はクジ運が悪かったとしかいいようがありませんね」
佐田
「まあそれも一理ありますが、ちゃんとしていれば措置命令を受けないわけです。そのようなことのないようにせねばなりませんね」
塩川課長
「おいおい、今回の4社は第一回目の措置命令と聞く。第二段、第三段と措置命令が出されることになるから我々は抽選に漏れたなんて考えてはいけないぞ。
当社グループでもそこに委託している事業所や関連会社は多数あるだろうし、その中には不備があって今後措置命令を受けるところがあるかもしれない。昨日、部長からその調査をするように指示があった」
佐田
「塩川課長、私も同席していましたのであれから考えました。まず当社の事業所といっても工場だけじゃありません。今回措置命令を受けた会社も非製造業でしたよね。工場以外、ええと支社、営業所など、それに工事もしていますから工事現場も含めれば、産業廃棄物を委託している拠点は100箇所どころか数百あるでしょう。その他に関連会社が100数十社あります・・、そして関連会社でも同様に事業拠点は複数あるわけで、工事もしているでしょうから・・・その合計たるや千拠点、あるいはそれ以上になるかもしれません」
塩川課長
「そうだろうなあ〜、それをどう調査するかということが我々の仕事だ」
佐々木
「うわー、それほどの数になりますか! どうすればいいのか見当もつきませんね」
佐田
「一拠点で年間に何枚くらいマニフェストを交付しているかになりますが、工場なら100ないし300件、販社やオフィスなら10ないし30件というところでしょうか。それの過去5年分ですから・・・
課長ね、いわゆるアンケート票を送って自己点検させても信頼性がないですから、担当者が現地といいますか、廃棄物を委託した拠点に行って実物を調べる必要があります。
全拠点に行くのはちょっと無理ですし、工事現場などは工事完了するとなくなります。ですから可能な限りそういったものをいくつかの拠点に集めてもらいましょう。そして点検場所を少なくしたいです。仮に点検場所を500と仮定しましょう。マニフェストの枚数に関わらず1場所一人一日として、500人日、部長のご用命では1か月でしたから、土日もありますから、25人必要となります」
塩川課長
「それほど兵隊がいるのか?」
佐田
「単なる兵隊じゃだめです。廃棄物の管理やマニフェスト、契約書について知っていることが必要です。チェックできない人が行ってもしょうがありません」
塩川課長
「佐田よ、お前アイデアがあるんだろう。出し惜しみしないで説明しろよ」
佐田
「まずここにいる佐々木さんと私の二人では手に負えないのは当然です。そこで当社の工場は30ありますから、各工場から廃棄物担当者1名出してもらうことにします。そうすれば16日間、実働20日で一巡します」
塩川課長
「おいおい、それは大ごとだな、協力してくれるものだろうか?」
佐田
「それは心配ないですよ。どの工場でも会社の一大事だからお手伝いしてくれなんて言えば喜んで来てくれますよ。まあ多少は、つまり出張旅費くらいは本社で持たなくちゃならないでしょうけど」
佐々木
「だけど工場の廃棄物担当者といっても、廃棄物の法規制を知っているかどうかわからないよ。担当者といってもそのレベルたるや玉石混交だろう」
佐田
「佐々木さんのおっしゃる通りです。ですからメンバーが決まったら、全員を本社に集めて二日くらい徹底的に教育します。それは今後の業務においても役に立つでしょう」
佐々木
「工場の点検はそれぞれの工場にさせるのかい?」
佐田
「私は性悪説ですからね、そんなことはさせません。別の工場の担当者に点検させます。そうすれば目を皿にして点検してくれるでしょう」
塩川課長
「関連会社にも派遣を要請するのか?」
佐田
「関連会社は人材が薄くマンパワーがないでしょうから、本社の調査に協力してくれるかどうかわかりません。今回は社内だけに依頼しましょう」
塩川課長
「費用はどうなる?」
佐田
「500人日ですから、旅費と宿泊代だけ持つとして1500万くらいにはなりますか」
塩川課長
「1500万だと! 大金だな」
佐田
「どっちみちタダじゃできません。措置命令を受けた会社では1000数百万かかったというじゃありませんか。ウチだって措置命令を受けたら一発でそれくらい飛びますよ
それに部長がおっしゃったように一回で決まりをつけなくちゃなりません。今回調査したものが不十分だとなって再度するようなことがあれば笑いものです。任せてください」
塩川課長
「資料を集める方法とか点検方法その他、細かい手順も決めるんだな?」
佐田
「もちろんです。当社グループへの調査依頼の公文、社内の工場への調査員派遣依頼の公文、・・・そうですねえ〜、明日の朝までにまとめますからその決裁をお願いします。
その他詳細手順についてとかはその次です。派遣してくれる調査員の氏名が今週末までに頂いたら、教育は来週実施、調査開始は再来週明けからとしましょう」
塩川課長
「お前にかかるとなんでも簡単に思えてくるよ」
佐田
「ひとつ大きな問題がありますが・・」
塩川はギョットした。
塩川課長
「なんだ?」
佐田
「ええと、環境管理部には課が三つあります。その職務分掌から考えると、事故対応や法関係は環境管理課です。私たちは環境管理課ではなく部長直轄でして、そもそもISO認証指導と出向者教育を担当している遊軍みたいなものです。
この仕事はまず環境管理課の廃棄物グループがどうするかを決めることが順序です。私が担当するのはお門違いですから、向こうがへそを曲げると困ります。まあ塩川課長は環境管理課長であるとともに我々の上長なのでどうでもいいとおっしゃるならそれまでですが」
塩川課長
「うーん、そう言われればそうだなあ。俺は部長から指示を受けたとき佐田に担当させることしか頭になかった。部長もそんなふうだったろう?」
佐田
「部長はISO14001認証の効果を調べるのを私に命じたのですよ。青森岩手問題はそうではありません」
塩川課長
「そう言われればそうだったか・・・わかった、わかった。この問題は緊急重大だから佐田グループに特命する。廃棄物のグループにはそういうことを説明しておく。そうだ彼らも調査に参加させよう。考えてみれば、もし問題があれば彼らの指導が悪いということだ」
佐田
「あつれきさえなければ安心です。じゃあ、後はお任せください」
塩川は廃棄物グループのことを忘れていたことを後悔した。最近の塩川は面倒な仕事は全部佐田に頼むようになってしまった。佐田に頼めば彼がなにごとでも主体的に片付けてくれるのでついつい頼ってしまう。


その夜のうちに佐田は調査依頼の公文と点検に行くまでにしておく事項、つまりマニフェストの収集とか契約書をそろえておくことなどの依頼文を作り、また調査員派遣依頼の公文を作った。そして翌朝には課長、部長の決裁を受けて発信した。 それから、佐田は佐々木と相談して、調査員の教育のテキストを作り、点検の手順を検討した。それらをまとめて資料を完成させるにはまる二日かかった。その他資料のコピー、会議室の確保、マニフェストの現物の購入など雑務は山のようにあったが、佐田と佐々木はやってのけた。
講義 翌週の火曜と水曜に各工場からの派遣者31名と廃棄物グループのふたりを会議室に集めて、点検の目的、手順を説明した。中には廃棄物の専門家といえる人もいたが、全くの初心者もいた。講義だけでなく、マニフェストを書かせたり、あらかじめエラーを作っておいたマニフェストや廃棄物処理委託契約書を点検させて、ミスを見つける練習もした。佐田と佐々木は飽きさせないように、また実際の点検能力が身に付くように工夫した。
最終日には試験をした。レベルとしては多少凸凹はあるがこれはやむを得ない。ない袖は振れない。

素戔嗚すさのおグループの拠点は北は北海道から南は沖縄まであるが、実際に青森岩手不法投棄に関わりそうなのは北海道から関西までだ。そこで、なるべく旅費がかからないように、移動が短いように分担を決めた。単に距離が短くすればよいわけでもない。山形工場から札幌支社に行くよりも、大阪工場から行った方が時間も短く旅費も安いのだ。そして移動をどのようにするかもある。派遣者と行先を組み合わせるのは、変数が何十もある連立方程式を解くようなものだ。佐々木と佐田は楽しみながら調査員の割り当てを決め、作業分担を指示した。
佐々木の意見を入れて最初の二か所は点検者は二人ペアで行くようにした。初めから一人で点検させては力量も心配だし、本人たちも不安だろうと考えた。

翌々週明けから点検が開始された。佐々木と佐田は交代で日帰り出来る東京圏内の関連会社とか事務所を点検し、一人は必ず本社にいて全国に派遣した点検者の監督と相談に乗ることにした。
実際に連日、点検者から「許可証に問題がある」「マニフェストが紛失している」「契約内容に不備がある」なんていう報告、相談が絶えなかった。
佐田はそれらの問題をパターン化してそれぞれ対応を指示した。どっちみち今さら問題をなくすわけにはいかない。ダメなものはダメなのだ。とはいえ善後策はとらねばならない。佐田は調査結果をまとめるとともに、問題のある事業所に対しては、とりあえずの対応、今後の対応などについて点検者を通じて指示した。

予定では20日で終わるわけであったが、やってみれば一場所一日では終わらないところもあるし、移動時間がかかって予定通りいかないところもあり、ひと月以上かかった。
佐田と佐々木は、問題点をまとめ、とりあえずの対策をまとめた。そして塩川課長へ報告する。
塩川課長
「全部で594拠点、問題のあったのが80拠点か・・・実を言ってさ、半年くらい前になるけど青森岩手の不法投棄が報道されたとき、各工場、各関連会社に自己点検をして報告させているんだよ。そのときは報告のすべてが『まったく問題なし』だった。あれは何を見ていたのかなあ〜」
佐田
「まあ、完璧なんて期待しちゃいけません。段々と改善していくということでよろしいのではないですか」
塩川課長
「うーん・・・過ぎたことはしょうがない。ともかく、今回の調査結果、1割以上の事業所で不具合があったわけだが、これはどう見ればよいのかなあ?」
佐田
「今まで廃棄物にそれほど注意を払っていなかった、オフィスとか工事現場は特にそうでしょう。それを考えれば悪くはない結果といえるでしょう」
塩川課長
「オイオイ、1割5分の事業所で法に関わる問題があったのに悪くないとは・・・」
佐田
「マニフェストの記入漏れや欠落あるいは契約書の不備はあるとしても、日立物流など報道された不具合に比べれば可愛いもんですよ。あそこは該当地の許可を受けていない収集運搬業者に委託していましたからね。
しかし自今以降どうするかということは重大な課題です。ここは課長から廃棄物担当にそれらの指導をするように指示していただきたいです。
ともかく報告書を見ていただき、部長とそのへんを決めていただけないでしょうか。私どもの仕事を今後どうするのかということも含めて考えていただきたいですね」
佐々木
「課長、今後の職務分担ですが、監査と法規制の指導というのを我々の担当として、廃棄物削減などを管理課の廃棄物グループ担当とするのがよいのではないでしょうか」
塩川課長
「うーん、ご意見は伺っておきましょう。そのへんはなかなか割り切れないんだよね」
佐田
「ともかくこの調査結果の問題を片付けるまでは我々は手を引けないでしょうねえ」
塩川課長
「佐田よ、お前が今後廃棄物全般を担当するというのもありだなあ〜」
佐田
「課長、それじゃなし崩しに拡大していくばかりです。なんでもかんでも我々がするというわけにはいかないでしょう」
塩川課長
「おまえをどう使うべきか俺にもわからないよ」

調査結果、問題ありと判定した約80拠点について佐田と佐々木は現地で対応策の検討会を行い、それぞれに行政との打ち合わせを含めて改善策の実施を行った。一か所1回の訪問では片が付かず、一段落したときには更に1月半が過ぎていた。


青森岩手の問題から解放された佐田と佐々木の次なる仕事は、ISO14001認証の効果についての検討である。コーヒーを飲みながら佐々木と佐田が方向を議論していると塩川課長が話に入ってきた。
塩川課長
「ISO認証効果を評価するというのはどういう方向でやるんだ?」
佐田
「何事も同じですよ。それが目的としていることを測る指標を設定し、その指標がどれくらい変化しているのか、そして投入費用と効果金額を比較するだけです」
塩川課長
「話を聞けば当たり前だけど、それは簡単にできるのだろうか?」
佐田
「ISO14001の意図は規格の序文にありますが、遵法と汚染の予防、簡単に言えば法違反をしないこと、事故を起こさないことでしょう。でしたら法違反の件数あるいはその対策費用と事故対策費用、それにISO14001認証のために投入した人件費や外部流出費用などを把握することから始めることになります」
塩川課長
「それはわかるけど、そんな数値が簡単に求まるものなんだろうか?」
佐田
「直接それを測るものがなければ代用特性を考えることになりますね。でもまあ、うまくいかないことを考えてもしょうがありませんよ。案外この課題は簡単かもしれません」
塩川課長
「そんなものかな? ともかく頼むぞ」
佐々木
「しかし佐田さんと仕事をすると思いがけない切り口を教えられますね。私が『ISO認証の効果を把握せよ』なんて指示されたら、途方に暮れてしまいますね」
佐田
「厳密に言えば私の説明は依頼者の要請にマッチしてはいないのです。つまりISO認証することによる効果というものと、今あげた費用というものはイコールじゃありません」
佐々木
「というと?」
佐田
「仮にどんな指標をとっても認証前と認証後の違いというのは、正確には認証による効果ではありません。ISO認証のためにいろいろ見直しをしたこともあるでしょう。それは純粋にISO認証のこともあるでしょうし、ISO認証を機会にと古い設備の更新や改善などもあるでしょうね。
とすると差があるとしてもそれはISO認証の効果ではなく、ISO認証しようとした効果あるいは元々しなければならないことを先送りしていたことかもしれません」
塩川課長
「確かにお前のいう通りだ。しかし難しいというか厳密なことを考えてもしょうがない。そのへんは割り切りだな」
佐田
「おっしゃるとおりですね。ともかく具体的な指標とか細かな方法は佐々木さんと議論して詰めたいと思います」
佐々木
「いやいや、今までの佐田さんの話を聞いただけで深く考えていることが分りました。とても私が意見を述べるようなことはありません」
塩川課長
「よし、方向がまとまったら説明してくれ、期待している」
佐田
「承知しました。」

うそ800 本日のプラン
えー、実はこれから当初考えていたマネジメントシステムについて考えていることを書こうと思っております。つまりマネジメントシステム物語はこれから始まりです。
れぇー、石を投げないで



外資社員様からお便りを頂きました(2014.05.29)
おばQさま
いつもありがとございます。
私自身は環境管理に直接かかわっていませんが、近隣の同様な事件で青森の田子のニンニクにも影響が出た「県境産廃不法投棄事件」が記憶に残っております。
資源リサイクルや、ゴミ処理関係は、様々な補助金も出ているので、インチキをすれば利益が多いのでしょうね。
悪知恵を働かせる業者もいるので、性善説では対応できない典型的な事例だったように思います。
いつもながら佐田氏は、兵隊元帥のようなお方で、ついに特命係として活躍。相棒をつけて上げたい気分です。
何よりも印象に残っているのは、まず社内の管理職章を明確にしている点です。
日本型組織は、よく言えばフレキシブル、はっきりいえば不明瞭で、仕事の領分を増やすことも責任を逃れる事も可能です。
この事例でも、その特徴がとてもよく出ており、リアルに感じます。
佐田氏は、責任は逃れようと考えず、会社の利益を考え、職分の在り方も踏まえているので、素晴らしい人材です。
このような、問題を上手く対処し現場を回してしまう兵隊元帥(今風では特命係、少し前なら金さん)がいれば問題を乗り切りますが、
裏返せば そのような人材がいなければ「組織として」上手く対応出来ないようにも思えます。
とは言え、そのような有能な人材がいた頃は良き時代で、現代のような非正規雇用の労働者が増えてきた中では兵隊元帥のような存在はまずます減ってゆくように思います。
丁度、軍隊で考えると、昭和18年以降は、学徒動員で甲幹、乙幹の下級将校、下士官が増えて、これが非正規雇用社員のようなものです。
無理やり戦場に送られた当事者もお気の毒ですが、組織としても難しい状況です。
何となく、それが現状の日本企業とも重なってみえるのが、杞憂ならば良いのですが。

外資社員様 毎度ありがとうございます。
私も佐田と同じように本業ではないいろいろなお仕事を押し付けられました。まあ、それも面白かったです。ただ佐田と違うのは仕事の半分は大成功でしたが、半分は成功とは言えませんでした。現実はそんなものでしょう。
ところで外資社員様が兵隊元帥とおっしゃいますが、確かに現場あがりの私は兵隊元帥みたいなものでしょうけど、それで思い当たることがあります。それはやはり士官学校を出て陸軍大学とかに行けばそれなりに見識が広くなり、作戦能力も指揮能力も鍛えられるということです。
兵卒あがりの士官は、小隊とか中隊規模のコンバットレベルの指揮能力は高くても、師団単位の作戦や指揮はできないのではないかと思います。私は現場でトラブルがあると喜んで飛んで行って現場の指揮をとったものです。そういうことには人後に落ちません。しかし企業グループレベルの環境ビジョンとか長期計画を考えるということは苦手というか無理というものです。韓信ではありませんが、兵に将たる人と、将に将たる人は違うのです。といって私は自分を卑下するつもりもありません。みんなが師団長になっては戦争はできません。小隊長も中隊長も必要なのですから。
ただ兵卒あがりの士官は限界があり、それを理解してそれなりに使うということが重要だと思います。私は将棋で敵陣に入ってもすべてを成金にせずに使うのがあるべき姿と思います。この物語でも佐田は職制の長にはなっていませんし、今後も管理職には就かないでしょう。もし彼のような人間、あるいは私が役職に就いたとき、その職位において能力を発揮できるかと考えると私はかなり懐疑的です。そういう意味で私は現実の世界で昇進せずに、私に見合った職位で自由に仕事させてもらったことは幸運であったと感謝しています。
もちろんパウエルのように士官学校を出なくても最高位まで上り詰め、そして能力をいかんなく発揮した人もいるでしょうけど、それは例外でしょう。


外資社員様からお便りを頂きました(2014.05.30)
おばQさま
(兵隊元帥には)企業グループレベルの環境ビジョンとか長期計画を考えるということは苦手というか無理というものです。
実際の所、私も企業グループの上の立場の経験がないので、株主の立場でしか言えません(笑)
その立場で言えば、多くの企業が、ファッションのように環境経営を語り、事業所内にビオトープを作ったりしました。
それを理念として貫いているならば立派なものですが、不景気になれば辞める程度ならば、誤った決断なのだと思います。
株主の立場で言えば、人の金と思って無駄に使うなと言いたいのですね。

理念の上で一貫していると思うのは、オーナー企業の方が多いように思います。
例えば、京都銘菓の聖護院八橋、この菓子は盲目の八橋検校に因んだ事もあり、江戸時代から盲目の人など身障者の雇用を積極的に行い、今に至っております。こういうのは企業理念だと思います。
外資社員

外資社員様、毎度ありがとうございます
現在は従業員が株主のために働くのだという認識、意識が薄くなってしまったのではないでしょうか?
昔の大店であればトップはオーナーであったわけで、仕事で失敗すれば倒産イコール個人破産であったわけです。それを目の当たりにしている従業員も社長は本気だと認識していたはずです。ものの本によると大きな商店では息子に継がせずに見込みのある番頭あるいは手代に娘と結婚させたとありました。
まあ大資本となると個人企業ではたちいかず、株式会社となった瞬間に責任はどこかに隠れてしまったのでしょう。
アメリカでは起業精神旺盛でビルゲイツやジョブスあるいは今でもグーグルとかフェイスブックなどがありますが、日本じゃライブドアかソフトバンクなんて怪しげなのしかないですね・・


マネジメントシステム物語の目次にもどる