マネジメントシステム物語60 監査部ヒアリング

14.06.16
マネジメントシステム物語とは
今日、佐田と佐々木は監査部のヒアリングだ。環境監査は環境管理部がしているが、正確に言えば監査部が行う業務監査の一部であり以前は監査部が行っていたものの、環境法規制が複雑であり環境管理の現場の業務を点検するのは素人には無理ということから、環境管理部ができた10年ほど前からは業務監査の環境に関する部分を環境管理部に委託、早い話が下請けしているのだ。
だから佐田たちが書いている環境監査報告書の宛先は監査部長であり、環境管理部の部長印は作成者の脇の検印というところに押される。
佐田はマネジメントシステムの継続的改善には環境監査の体制や方法も当然含まれると考えていたから、監査部の考えを聞こうとしたのだ。
監査部では環境管理部との窓口をしている浅香さん浅香さんが対応してくれた。浅香さんに肩書はなく職制表ではヒラの担当者であるが、監査部に来る前はどこかの副工場長だったと聞く。監査部では、部長以外はみなヒラであるが、部員の多くは元部長で、一部は浅香さんのように元副工場長もいるし、工場長や支社長を引退した人もいる。要するに会社の仕組みを知り尽くし、世の中の常識を身に付けた人たちでないとできない仕事ということだろう。
佐田
「現在、環境管理部ではいろいろと業務の改善を考えております。業務の改善といっても単なる省力化とか効率化ではなく、一層よい仕事、会社に貢献できることを考えております。我々が担当している環境監査は監査部から委託されて行っておりますが、これについて監査部では現状の問題とか改善点、あるいはもっと広い観点でどんな形がいいのかなどお聞かせ願えれば幸いです」
浅香さん
「まず現在の監査報告書は大変気に入っております。これは私だけでなく監査部長も同じです。
数年前までの環境監査報告書は『環境管理の仕組みができている』とか、『文書が制定されている』なんてことばかりでした。現在の報告書では『遵法を確認した』とか『法で定める○○届がされていない』あるいは『事故の恐れがあるので改善が必要である』など、我々が期待している遵法と事故のリスクが明記してあります。どうして以前はあんなものだったのか、そしてなぜあるとき大幅に変わったのか分りませんが、現行の報告書に不満はありません。もちろん文章の書き方だけでは困りますが、監査報告書が変わった時期と同時に、当社と関連会社における事故発生や行政からの是正指示などがはっきりと減少してきています。これはお宅の環境監査でしっかりと見てくれているからだと考えています。
そうそうもうひとつ、その変化と同時に監査報告書の提出が早くなりましたね。以前は監査を行ってから二月、三月してから送られてきましたが、最近は実施後10日以内にはいただいています」
佐田
「ありがとうございます。そう言っていただけると大変うれしいです」
浅香さん
「とはいえ、実は監査を受けた工場や関連会社からいろいろとご意見は頂いております。ただなんというか、それをそのままお宅の方に伝えてしまうこともどうかなと思っていたのです。まあこの機会ですからざっくばらんにそれについて議論したいと思います」
佐々木
「苦情ですか、どんなものなのでしょう?」
浅香さん
「私どもが行っている監査というのは、厳密に言って監査なのかどうかというところはありますが、悪いところを見つけて締め上げるだけというわけではありません。
例えば問題があった場合、それがどんな法や規則に反しているかを説明し理解してもらうことは当然ですが、監査の場でその対策方法についても説明し、具体的な是正策まで指導しているのが実態です。
また重大であっても悪意がないケアレスミスであれば、その処置をすることで報告書に記載しないということもあります。悪く言えばなあなあの馴れ合いかもしれませんが、世の中というものはそういうものでしょうね。これは私個人の考えではなく、監査部長の方針として行っております」

佐田と佐々木は黙って聞いている。
浅香さん
「環境管理部の環境監査報告書を拝見すると、是は是、非は非が明確です。それと監査においては是非の判断のみで指導をしていません。そんなわけで環境監査部は温情がない冷淡であるという意見が多いのです」
佐田
「うーん、手厳しいご意見ですね。さきほど浅香さんがおっしゃったように、監査において不適合を指摘するだけでなく是正策についても議論することが良いのかどうかということは、議論の余地があると思います。
私個人としては是正指導をその場ではしてはいけないと考えています」
浅香さん
「その場ではしてはいけないとは?」
佐田
「監査員も人間です。ですから判断を誤ることもありますし、是正についても監査した人が指導しては最善策が考えられるかどうかということも疑問です。
あの、誤解のないように申し上げておきますが、私どもでは監査で不適合があったとき指導をしないということではありません。監査の場では指導をしないということです」
浅香さん
「監査の場で指導をしないと?」
佐田
「私どもでは監査の運用において、監査では事実を調査して不適合と適合をはっきりとすること。そして見たままをありのままに報告することを至上命令としております。
万が一、不適合があった場合は、別途、監査を行った者以外が指導に当たることにしています。それによって監査と指導という性格の異なることを一人がするというコンフリクトを避けるとともに、判断と対策の客観性と公正性を担保しようとしているわけです。
浅香さんの方法ではそこが漏れている様に思います」
浅香さん
「しかし指導を後日行うということは、不適合はそのまま報告されてしまうということですね。監査の場において是正すれば報告書に書かないということとは大違いです」
佐田
「うーん、それはやはり一人の人がそのときに判断してしまうことは危険ではないでしょうか。
それともうひとつご理解いただきたいのですが、監査部の方はなにをしようと自分たちに権限があると考えていると思いますし実際にそうであるわけです。しかしながら私どもは、はっきり言えば監査部の下請けです。ですから権限はもちろんないし裁量範囲もない。仮に裁量範囲があったとしても間違った行動、というか監査部のご意向に沿わないことになることを心配しているとご理解いただきたいですね」
浅香さん
「なるほど、そういうことを聞くとなるほどと思います。しかし監査を受けた会社や工場では、その場で是正をすれば報告書に書かれないという方を希望するでしょうね。
ともかく監査部と環境管理部の監査はそのニュアンスというか雰囲気が大違いなんですよ。監査部の監査員は部長級を引退した人が担当し、監査のスタンスも初めから指導をしようと考えている。
他方、環境監査の監査員は佐田さんのおめがねにかなった人たちらしく、みな若くても専門的な知識は高いのだろう。しかしその監査は真剣勝負と言われている。監査部の行う業務監査は道場で師範が竹刀を使って指導をたれるようなものだが、環境監査は真剣を使った果し合いということです」
佐田
「監査とはそもそもそういうものでしょう。類似な話をしますと、当社ではだいぶ以前からQC診断というものをしていますし、また品質監査もしています。これらは似たように思うかもしれませんが、全く違います。QC診断とは、本社の品質保証部の人たちが工場を巡回して、品質管理や品質保証活動をみて改善指導をするものです。他方、品質監査とは品質に関わる業務において、法規制や当社規則あるいは業界の申しあわせ事項などに準拠しているか、遵守しているかを徹底して点検し、逸脱のないことを確認することです。ふたつの目的は完全に違います。決して二つ合わせて行うことはできません。
浅香さんのお話をお聞きすると、監査部の監査はQC診断のようで、我々がしているものが監査だという感じがしますね」
浅香さん
「なるほど、そういう見方もありますか。確かに我々がしているのは監査ではないと言われるとそうかもしれない。もっともそれは私も最初に言っている」
佐田
「弁解する気もありませんが、私たちはお宅の下請けです。下請けが注文書と異なることをしたら発注者、監査では依頼者が困るでしょう。私どもは注文書から逸脱しないようにしているということです」
浅香さん
「わかった、わかった。確かに我々はお宅が裁量というか監査の進め方、運用を自由にされても困る。とすると現状が一番なのかもしれないな」

浅香は黙って少し考えているようだった。はっとしたように口を開いた。
浅香さん
「こちらからの質問だが、今ISO認証についていろいろあってね、ちょっと相談というか・・」
佐田
「ISO認証の指導も私どもがしております。なにか具合の悪いことでもありますか?」
浅香さん
「具合が悪いかどうかはともかく・・・
私はISO規格とか認証制度というものには縁がないのだが、そういったものでは内部監査を要求しているそうですね。それで各工場や支社、関連会社でもISOのための内部監査、それも品質だ、環境だといろいろと行っていると聞いている」

佐田と佐々木は黙って聞いている。
浅香さん
「今までだって顧客から内部品質監査を要求されたことは多くあったらしい。だが多くの工場では『薬事法の内部品質監査』とか『○○様対応の内部品質監査』なんてことはせずに、従来からの内部品質監査を顧客からの品質監査に充てていたところがほとんどだ。だってそうだろう、法規制や官公庁、大手民間企業など内部品質監査を要求する顧客はたくさんある。顧客対応で内部品質監査をしていたひには何十回もする羽目になってしまう。
だけどISO14001対応の内部品質監査とかISO14001対応の内部環境監査というのは珍しくない。
実際にISOを担当している人は何の矛盾も感じていないようだけど、関連会社の幹部たちからは無駄を止めるように指導してほしいという声が私のところに来ている」
佐田
「確かにおっしゃるような状況は事実です。当社グループのISO9001認証もISO14001認証も私が指導してきましたから、その責任の半分くらいは私にあります」
佐々木
「だけど佐田さん、私たちがISO14001認証指導したときに、ISOのために内部監査をしろとは指導した記憶はないけどね」
佐田
「いや実は・・・・私も社内の内部監査はひとつしかない、だから品質も環境も分けることなく工場規則や遵法をしっかりしているかどうかを点検して、それをISO審査の時に内部監査の記録として見せなさいと言ってきました」
佐々木
「そうだろう、そうだろう」
佐田
「しかし、現実のISO審査では審査員から、そういった方法では規格を満たさないという理由で是正を求められることが多い。工場の担当者も毎年毎年、半分脅迫のようにそんなことを言われるのが嫌になって、それに応じて別個にISO9001のための内部品質監査を行い、ISO14001のために内部環境監査をするようになったところが多いんだ」
浅香さん
「ええと、当社の業務監査ではISO規格対応の内部監査の要件を満たさないのですか?」
佐々木
「ええと、佐田さん、それは論理的にはどうなるのだろう?」
佐田
「当社の業務監査でISO規格の要求事項は完璧に満たします。それは論理から説明できます。ISO規格とは手順とか基準を定めたものではありません。単なる要求事項つまり仕様です。企業においてISO規格を満たすためには、その要求事項を具体的な手順や基準に展開しなければなりません。つまり会社規則や様々な要領書に展開することになります。
業務監査とは法を守っているか会社のルールを守っているかの点検ですから、必然的にISO規格を満たしているかの確認になります」
佐々木
「でも監査というものは抜取だから常にISO規格に関連する要求事項を担保する規則を点検しているかどうかはなんとも言えないね」
佐田
「それは方法論のことになります。社内の業務監査でISO対応の内部監査の要件を満たさないということではなく、業務監査の方法を改善する必要があるということでしょう」
浅香さん
「なるほど、要するに業務監査でISO対応は満たすということに理解したい。では、佐田さんはそういうこと、つまり従来からの内部監査では不足だからとISO対応の内部監査をするのをみて、どのように対応してきたのでしょう?」
佐田
「いや、まことに申し訳ないことです。結局工場の担当者から、審査を円滑にするにはこうするしかないと言われると、それなら仕方ありませんねという姿勢できました」
浅香さん
「そういうことを止めろという強権発動はしないのでしょうか?」
佐田
「私の不徳の致すところとしか言いようがありません。浅香さんは内部監査の位置づけについてのおかしな考えで憤慨されているというのは分ります。私も全く同じです。しかし、言い訳になってしまうのですが、ISO審査で審査員がいちゃもんをつけるのはこれだけではありません。たくさんあるのです。環境側面については仕事の負荷がどんどん増えるような要求を語ります。それはまったく無価値な仕事で止めさせたい。しかしそれは手間ひまだけのことです。もっと大きな問題もあります。
私どもの環境活動というのは工場単位、関連会社単位でクローズするものではありません。当社の社長が当社グループとしての環境計画を社外に広報発表しています。グループに所属する企業、社員はその実現に努力する義務があります。活動テーマを変えたり目標値を変えたりすることはできないはずです。しかしながら、ISO審査で審査員がおかしな理屈で社長方針と異なることを指導して、テーマを変えたり目標値を変えたりしている工場や関連会社はたくさんあります。
プライオリティからすれば、それを正すのが最優先かと考えます。
私は工場や関連会社に対して命令権はありませんが、上司に対しては社長方針を徹底させ実行させる責任があります。まあそれで最低そこを徹底しようともがいているということですね」

これはまさしく私が置かれていた状況である。
極論すれば、ISO14001がなければ日本の環境活動は一層進展するだろうと思う。
世のISO14001審査員諸君、そうでないと言えるかね?
しかし、ISO14001規格の問題なのか、認証制度の問題なのか、単なる運用上の問題なのか、私には判断がつかない。

浅香さん
「なるほど、佐田さんの理屈では内部監査を余分に行うくらいはしょうがないということか?」
佐田
「理屈ではなく判断と言ってください。それから、しょうがないとは言いません。手が回らないということです」
佐々木
「確かになあ、佐田さんの立場ではそうだろう。とはいえ、工場の担当者の立場でも毎回審査員とチャンチャンバラバラすることを思うと、中身はともかく形だけでも審査員が言うとおりにしたほうが楽だということだろうねえ〜」
浅香さん
「うーん、お話をお聞きするとどうもISO認証というものは有効ではないどころか、マイナス要因となっているということでしょうか?」
佐田
「そう言わざるをえません。ただ、それがISO規格の問題なのか、認証制度の問題なのか、あるいは審査員と審査方法に起因することなのか、我々企業の者の問題なのかははっきりとは分かりません」
佐々木
「私には企業の責任だとは思えないがね」
浅香さん
「ものごとは白黒つけることばかりじゃないのだから、従来の内部監査とISOのための内部監査というふうに余分なことをしないよう、工夫はできないのかね?
つまり審査員が要求しても工場の担当者が説明できるような仕組みを考えて指導するとか」
佐田
「おっしゃる通りです。しかしながら認証機関というものがたくさんあります。そしてそれぞれが一家言ありまして、すべてを満足させる方法はありません。もちろん一つの事業所は一つの認証機関に依頼してるわけですが、結局その対応策は拠点ごとにユニークなものとなるでしょう。それもまた大変です。ですから先ほども言いましたが、環境計画の徹底とか、遵法の徹底など必要最低のことに限っているというのが実態です」
浅香さん
「遵法の徹底とは? まさか認証機関が法を守らなくても良いとは指導しないだろう?」
佐々木
「浅香さん、そこは私が答えましょう。確かに法に違反しろという指導はありません。しかしISO審査員が環境法規制を良く知っているわけではありません。むしろ生半可な知識で違法だと指摘したり、変な指導をすることは珍しくありません」
浅香は非常にびっくりした様子だった。
浅香さん
「本当かね? じゃあ環境管理部はそれをどんなふうに対処しているのだろう?」
佐田
「まず当社グループではISO審査が終わったら審査報告書をすべて環境管理部に提出してもらいます。またどの工場でも関連会社でも、誰だって法違反とかしているつもりはありませんから、審査員の判定に疑問があるときは、審査の最中でも審査後でも我々に相談してきます。それは良いことです。
我々はそういうことがあると行政に相談するなどして、審査員の判断ミスと認めた場合は、審査報告書の是正、まあ書き直しとかしてもらうように動いています」
浅香さん
「それは認証機関にクレームを付けるということですか?」
佐田
「認証機関とは立場からいえば納入業者なんでしょうけど、通常の商取引と違いISO認証ではお金をもらう方が立場が強いようで、そういう場合は我々がお願いするという状況ですね」
浅香さん
「状況はわからないけど、もし佐田さんや佐々木さんのおっしゃるようなことがあったなら、絶対に間違いを起こさないように頼みますよ」
佐田
「そのつもりです。万が一審査員が間違った指導をして、その結果工場や関連会社が違法状態になっても彼らは絶対に責任を取りませんから。極論ですが教唆きょうさ罪にも問えないでしょう」

通説によると、教唆罪とは教唆者、被教唆者共に犯罪であると認識していることが必要である。教唆した者が犯罪ではないと考えていた場合、罪にならないらしい。

浅香さん
「しかしおかしなことだね」
佐田
「おかしいとおっしゃいますと?」
浅香さん
「まず、私はISOについてはまったくの門外漢であるということを理解してほしいのだが、
世の中では、ISO14001を認証すると、遵法が良くなります、パフォーマンスが改善します。コスト削減ができますって宣伝しているよね。だからこそ当社グループはISO14001を認証することを決定して、君たちが推進してきたんだろう。それがISO認証したり維持することは、改善が進むどころか余計な手間ひまがかかるだけでなく、下手をすると法違反になってしまうとはいったいどうなっているんだ?」
佐田
「確かにおかしな話ですね。しかし現実はおかしなことばかりで、認証しても遵法も、パフォーマンスも良くなったとも思えず・・・」
佐々木
「正直言って当社グループはISO14001認証を止めても、特段何も悪化することはないでしょう。むしろ今までしていた余計なことがなくなって業務改善になるでしょう」
浅香さん
「じゃあ、そうしたらいいじゃないかね」
佐田
「そう簡単に行かないのは理由があります。
ひとつはやはり現時点商取引においてISO14001認証があったほうが評価されるということです。まあ認証の実態が知られていないからでしょう。
もうひとつは世間体でしょうか。横並び社会の日本では同業他社が認証しているときに、当社だけが我が道を行くことはできません。」
浅香さん
「年間の認証に関わる費用はどれくらいになるのだろう?」
佐田
「概算ですが、社内だけで年間4000万というところでしょうか。グループ全体ですとその倍になりますか」
浅香さん
「すごい金額だな、とはいえそれは審査費用だけだよね。社内の人件費、内部監査や審査による仕事への影響などを考えたらその数倍になるだろうなあ」
佐田
「実を言いまして先日のこと、役員会からISO認証についてご下問がありまして、調査報告しております」
浅香さん
「ほう、それでどういうことになったの?」
佐田
「まあ報告内容は先ほど申しましたように効果はないということです。それに対して役員会からのご指示は、ひとつISO認証は継続するが、過去からの当社の仕組みを尊重し、審査員いおもねて仕組みを変えないこと。もうひとつはISO規格とか認証と離れて、当社グループの環境管理レベルを向上させることを検討せよということです。
実を言いまして本日、浅香さんのところにお話を伺いに来たのも、その見直しのためのヒアリングなのです」
浅香さん
「そうか、現状が問題であると認識はされていて、いろいろ改善を検討しているわけだ。それじゃ私が余計なことを言って悪かった」
佐田
「いえ、私たちの監査についての監査部さんのお考えも知ることができましたし、ISO認証の問題についても皆さんがいろいろ感じていることが分りました。そういうご意見を拾い集めて今後に反映したいと思います」
浅香さん
「それとさ、今まで話をしていて思ったんだけど、環境管理体制の見直しといったね。それは改めてする、しなければならないというものでもないように思うんだがね・・
つまり昔からPDCAなんていうじゃないか。監査は名実ともにC、チェック工程だ。運用状況を見て、仕組みが適正か、運用が適正か、常にチェックして経営層に報告している。そして経営層から言われたり、我々が主体的に会社の規則を改定したり、運用を是正させたりしている。
例えば過去には監査部が環境監査をしていたが、手におえないと分ったから環境管理部に委託することにした。環境管理部でも仕組みとか文書の監査だけでは有効ではないと考えたから、遵法やリスクについて重点的に監査するように方法を変えたのだろう。そういうことは常に見直され継続的改善が図られていることじゃないか。
今まで革新的なことはなかったかもしれないが、今述べたように継続的な改善が行われてきて今があるわけだ。そしてさっきも言ったけど、以前に比べて監査結果は法に関わる問題もリスクについても非常に改善している。
改めて見直しをしようという発想ではなく、従来からしてきたことを今後も継続していくという認識でいいんじゃないだろうか。
ああ、もちろん今後とも改善は進めなくてはならない。例えば今後は定期的な監査部と環境管理部での意見交換を持つとかそういうことは必要だろうと思うよ。今日の短時間の話し合いでも大きな実りがあったと思う」


佐田と佐々木は環境管理部に戻ると打ち合わせ場でコーヒーを飲みながら話をする。
佐田
「監査部が我々にいろいろ注文があったなんて思いもしなかったなあ〜、勉強にはなったけど」
佐々木
「しかし浅香さんもいいことを言うね。改めて見直しをしようという発想ではなく、従来からしてきたことを今後も継続していくということでいいんだって」
佐田
「先日の情報システム部の都築さんも同じことを言っていましたね。
結局今まで通りのことを愚直に継続すればいいってことなんだろうか」
佐々木
「なんだか我々は青い鳥を追いかけていたようだな」
佐田
「そのようですね。私たちは一体何をしようとしていたんでしょう」
佐々木
「そう言っちゃおしまいだよ。青い鳥を追いかけていたと気がついたことは進歩だろう」

うそ800 本日のイチャモンに備えて
文中、佐田が語ること、つまりISO審査員が審査において、企業の仕事を増やしていたり、時には法に反する指導をしていたということについて、私の論にご異議がある審査員、あるいは認証制度関係者がいらっしゃることを予想する。
反論がおありかもしれませんが、それは現実でした。過去形で言うのは、私はもう2年ほど前に引退したのでここ最近の審査状況については存じ上げないからです。
なお、それ以前についてもそんなことはなかったとおっしゃるなら、どの認証機関の方でも過去の審査報告書を100件くらいめくってください。私の発言を裏付けるものが散見されるでしょう。
まさか、それでも気が付かないとか・・・



出すと困んだー様からお便りを頂きました(2014.06.16)
監査部ヒアリング〜教唆罪〜の件
ごぶさたしております。改名した、出すと困んだーです。
私は、誤った指摘はすべて偽計業務妨害罪であると思います。
どちらかの企業様、是非訴えてみてください。
もし裁判で、指摘が明らかに間違いであることが証明されたとして、
「誤った指摘だったことを認めます。でも他の審査員も このようなことは日常茶飯事ですよ。だから見逃してください。」
などと主張するなら、自ら制度の杜撰さを認めることになりますね。

「正しい指摘です。言いがかりです。」
と主張するなら、本人の資格の是非はもちろん、学校・認証機関・認定機関は何をチェックしているのだろうとなりますね。

すべての指摘を公にして、誤ったものを抽出し、法の裁きを受けるのが法治国家として求められるところだと考えます。
・・・というのはいささか大げさかもしれませんが、ISOごときの間違った指摘の為に、どれだけの世の組織が余計な仕事を増やされているのかということに対して、彼らからいまだに反省のはの字も出てこないのが不思議です。
世間知らず、企業活動知らず、要求事項知らず、マネジメント知らず、なのでしょう。

出すと困んだー様 お便りありがとうございます。
出世して改名されましたか!
ええと、組み合わせは4つあることになりますね、つまり
 (1)不適合を認め、己の非をみとめる
 (2)不適合を認め、己の非を認めない
 (3)不適合を認めず、己の手順などの非をみとめる
 (4)不適合を認めず、己の非を認めない
(1)については「間違った指摘でした、改めます」となるでしょうから先方の都合はともかく、企業としては別に問題はない。とはいえ、そんなことはありそうがないですね。
(2)は「間違った指摘でしたが、あの状況下においては妥当であると考えます」ということになり、それを否定するのも骨かなと思います。
指摘の根拠と証拠をあげているならば、そういうことになる可能性は大でしょう。組織側が十分な説明あるいは証拠の提示をしなかったと言われると水かけになりそうです。
もし根拠あるいは証拠が記載されていなければ、ISO17021不充足で審査側の負けとなります。
(3)は(2)に近いでしょうけど、「あの状況下においてこの結論となるのは当然である」という論理になるでしょう。まあ先方の証拠根拠が妥当かどうかということになりますが、私の経験からすれば審査員の逃げ切りの可能性は大です。
(4)は一番多くなると思います。こじつけ、拡大解釈、飛躍した論理などを活用(?)して、「正しい指摘です。言いがかりです」となるのではないですかね?
どう考えても、これは審査員の判定勝ちになりそうな予感が・・・


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