マネジメントシステム物語66 ISO14001改定

14.07.14
マネジメントシステム物語とは
書いている本日は2014年ですが、今回の時代設定は2004年秋です。「10年も前のことなんて何で書くんだよ?」なんておっしゃってはいけません。規格改定というのは、時代が変わってもバカバカしい騒ぎをしているだけで、まったく実のないことを繰り返しているだということを言いたいのです。
ISO9001の1994年改定を覚えていますか? え、まだ生まれていなかったですか。
1998年改定は? 気が付かなかったですか、私もですが
でも2000年改定は覚えていますよね? 品質保証の規格から品質経営の規格への変革だなんて大騒ぎしましたが、全くと言ってよいほど企業が変わることはありませんでした。
変わるはずもないか 
2008年改定は? 気にもしなかったですか。そうでしょうねえ〜
2015年改定はどうだろうといいますと、もう改定対応がめんどくさいから認証返上かと・・・
ISO14001の1回目の改定は2004年でしたが、規格改定情報というか規格の解釈が一般人に行きわたるのは、2005年春になってからのこと。ところで、我々下々はISO規格を読んでも理解できず、寺田さんのような伝道師が解説しなければならないと思われていたのはなぜだろうか? まさに宗教のようである。
ISO委員のこづかい稼ぎではないかという気もするが・・・

さて、物語のはじまりはじまり・・・
コーヒー ISO14001がいよいよ改定になるそうだ。佐田が毎朝メールをチェックしていると、このところ「規格改定解説」とか「2004年改定対応講習会」なんていう宣伝メールが増えてきた。仕事のメールは片付けたので、佐田は給茶機でコーヒーを注いで机に戻り、そういった宣伝メールを眺めることにした。
まあ、よくも規格改定をネタに金もうけを考えるものだと、佐田は感心するのが半分、呆れるのが半分で宣伝メールを斜め読みして順々にデリートボタンをクリックしていく。まあ、読まずに削除してもよいのだが、多少の息抜きにそんなことをしていた。
佐々木が隣の席から声をかけてきた。
佐々木
「佐田さん、一段落ついたのかね?」
佐田は佐々木の方を振り返る。出張がお仕事の二人にとっては、二人がそろって会社にいるなんて、週に1度あるかないかだ。
佐田
「ハハハ、ちょっと息抜きですよ。ISO14001規格が改定になるので、認証機関や研修機関それにコンサルが百鬼夜行というか銭儲けに一生懸命のようですね」
佐々木
「百鬼夜行か、まあ連中は銭の亡者だね。なんでも金儲けに結び付けてしまう。しかし、規格が変わるとそれに合わせて会社を変えなくてはならないって、どういう発想なのだろうねえ?」
ISO業界、つまり認証機関、審査員研修機関、コンサル、出版社などは規格改定があると売り上げが大きく伸びる。具体例にはISO関係の書籍は規格改定があるとその翌年に大きく伸びる。言い換えると規格改定がなければ青息吐息ということか?
ISO関係の書籍は規格改定の翌年に多く出るが、それ以外はさっぱりである。

ISO関連書籍発行数

佐田
「ISO9001が2000年に改定されましたね。あのときは品質保証規格から品質経営の規格に変わったなんて言われましたし、確かに規格の構成も中身も大改定でした。それで規格を理解するのに本を読んだり講演会に行ったりしたわけです。でもね、いくら規格が大改定になっても、会社の仕組みを変えなくてはならないって思う理由が私には分りません。
まして今回の2004年ISO14001は、以前は遵法を確実にするとか環境側面の見逃しを許さないなんて大口を叩いていたけど、最終的には誤解されないようにとか規格の言い回しを見直すとか、どんどんスケールダウンしてきて竜頭蛇尾というか・・」
佐々木
「確かにそのようだね。実は佐田さんが出張続きだったので話してなかったけど、先週の木曜日に私は規格改定説明会というのに行ってきたんだよ」
佐田
「えぇ!、良く説明会を聴講できましたね。聞くとどこも満員御礼だっていうじゃありませんか」
佐々木
「先々週かな、監査に行った先で対応してくれた方が、仕事の都合で説明会に行けなくなったという話をしてね、それじゃってお願いして代わりに聴講させてもらったんだ。その会社が認証を受けている認証機関がISO-TC委員というのかな、そういった人を講師に呼んで認証を受けている会社に対して無料説明会を開いたんだ」
佐田
「ほう!それはラッキーでしたね。どんな内容だったのでしょう。ためになりましたか?」
佐々木
「まあ、状況を知るという意味では参考になった。とはいえ規格改定の必要があるかと言えば、私は全然必要じゃないんじゃないかと思うね」
佐田
「そいじゃ、ここではなんですから、あちらでそのお話を聞かせてくれませんか」
二人は立ち上がり、佐田はコーヒーカップを持って、佐々木は講習会の資料らしきものを持って打ち合わせコーナーに向かった。佐々木は給茶機でコーヒーを注ぐ。
佐々木
「講師は寺田というお名前だったけど、知ってるかい?」
佐田
「頭が薄くなったオジイサンでしょう。日本ではISO14001の第一人者らしいですよ。私は面識ないですけど」
佐々木
「へえ、有名な人なんだ。そのおじいさんが講師だった。話が懇切丁寧で、穏やかな人だったなあ〜
とはいえ規格改定そのものは大きな変化はないようだ」
佐々木は資料をテーブルの上において広げた。
佐田は手に取ってながめた。
佐々木
「改定内容をみると笑ってしまうようなものばかりだよ。
ええと、4.1では『EMSの範囲を設定すること』だってさ」
佐田
「そりゃ、あたりまえのことのように思えます。そもそも認証組織の範囲と会社の範囲は別物ですし・・・というか、従来だって審査契約をするときには、物理的な範囲、組織の範囲、製品・サービスの範囲をビシッと決めていたはずですがね。そうじゃなくては審査費用の見積もりだってできないでしょうし、登録証にも認証範囲を書かなくてはならないわけですから」
佐々木
「4.2では『組織の活動・製品又はサービス』が『組織の活動・製品及びサービス』になった」
佐田
「はあ?、おお確かに英文でも96年版では『or』になっていたのが、改定案では『and』になっている。これは文字解釈からいえばそう表現すべきなのかもしれないけど、それなら元々が誤記だったのだろうか。
英語の『orとand』は日本語の『又と及び』と同じニュアンスなんでしょうかねえ? 論理学のand/orと同じなんですかね?」
佐々木
「4.3.1も環境側面の範囲について言い回しが変わっている。まあ、これは本当に誤解をなくすといった程度だな。元々の文意だってそうとれると思えるが・・・まあ、規格には書いてないなんて、ごねる人もいたんだろ」
佐田は資料をパラパラとながめる。
佐田
「佐々木さん、確かに今回の改定はいちゃもんが付かないように言い回しを直したという程度ですね。要求が厳しくなったとか、新たな要求が追加になったとは思えないですね」
佐々木
「そのようだ。ということは、当社はまったくなにもしないでも改定された規格に適合しているはずだよ」
佐田は資料をテーブルに置くとコーヒーをすすった。
佐田
「でもね佐々木さん、現実のISO審査となると規格の文言が変わったからマニュアルの文言も変えなさいとか、会社の規定の言い回しを変えろとか言うんでしょう。そんなことが予想されますね」
佐々木
「最低マニュアルの参照規格のところを、1996年版ではなく2004年版に直しなさいなんていうんだろうなあ〜、アハハハハ」
佐田
「まあ、マニュアルが認証機関への説明書であるなら、準拠規格のバージョンを記載するのは商取引上の義務かもしれません」
佐々木
「ちょっと待ってくれよ、企業が作る環境マニュアル、つまり環境マネジメントシステムの説明書が1996年版に対応していると書いてあっても、審査員が実際に審査した結果2004年版に適合していることを確認したならば問題ないわけだろう。規格の版を書かなければならないという理由はなさそうだ」
佐田
「いえ佐々木さん、環境マニュアルとはISO14001規格で要求しているものではなく、認証機関が審査を楽にするために組織に要求している文書です。ですからそこに何を書くかは認証機関の環境マニュアルに対する要求次第ということになります」
佐田は立ち上がりロッカーからパイプファイルを取り出してパラパラめくった。
佐田
「これはJ△○○社の審査登録ガイドというパンフレットですが・・・ここに『最新の規格に準拠した環境マニュアルを提出する』とあります。つまり規格の最新版を書いてないとだめなんでしょう」
佐々木
「それにしてもさ、認証の価値ってまったく軽いもんだね。値打ちもなければありがたみもない」
佐田
「確かに・・・認証を継続する意味はないかもしれませんね」
佐々木
「裸の王様って寓話があるけど、あれと全く同じだね。ISO認証は価値があるんだ、その価値を分らないのは愚か者だと言われると、誰だって自分がバカだと思いたくないから、価値があるように思ってしまう。とはいえ、その価値観が通用するのはそれを信じる人だけだってことだ」
佐田
「私は愚かな幼子ですからバカと言われても気にしません。だから価値が分りませんと言ってしまいます、アハハハハ」
佐々木
「佐田さん、私も6年くらい長きにわたりISO認証の指導をしてきたが、もう十分堪能したって感じだね。何と言うかなあ〜、やりがいがないんだよね。これをすれば会社に貢献するとか、利益が増えるとか、仕事が楽になるとか、そういったことがなくてさ、審査員に見せるために仕事をしているだけって気がするよ。
そんなこんなで、このところモチベーションがものすごく低下しちゃってさ、今回の規格改定でもう一度やりがいというか価値を見いだせるかと思ったんだがね、こんな稚拙なものを見ると、もうISO14001は終わったなという感じだ。まして認証とか審査のために会社の文書の文言を直すとか単語を変更するなんてことは体が拒否してしまうんだ」
佐田は佐々木の言うことが良く分った。
佐田
「佐々木さん、おっしゃることは分ります。私もISO9001から数えると、もう10年もこんな商売をしてきました。それでもISO9001のはしりの頃は認証することがビジネスの条件という時代もありました。でも今はそんなことありません。最近では、ISO認証に価値がありませんね。
もちろん他人がひと月かかるなら自分は20日でやるぞという意地はありましたが、その結果会社が良くなるのかといえば、経費削減ができたという程度でしょう。それも儲かるための経費ではなく、ISOのためのロスを減らすだけでしたしね・・」
佐々木
「前から言っているのでご存じと思うけど、私は今年いっぱいで嘱託を止めるつもりだ」
佐田
「そうですか、引退後楽しく暮らしてくださいとしか言いようがないですね」
佐々木
「それまであと数か月は一生懸命頑張るよ、とは言っても正直ファイトがわかないけど」
佐田
「佐々木さん、もし引退して退屈というならISOのコンサルなんていかがですか?」
佐々木
「佐田さん、冗談はよしてくれ。もうこんな因果なことは二度と関わりたくない。企業に無駄を増やし、社員から生きがいを奪い、遵法にもパフォーマンス改善にもまったく効果がない、ISO14001とはいったいなんだったんだろうねえ?」
佐田は応えなかった。
私の元同僚には退職後に、契約審査員になった方、コンサルになった方、簡易EMSの審査員になった方、県の環境団体で働いている方、環境NPOを立ち上げて幹部になった方など枚挙にいとまがない。環境にそれほど貢献したいのだろうか? どうもほかに能がなかったからではないかという気がしてならない。
佐田は佐々木と話をやめてから、いろいろと考える。
佐々木が会社を辞めるのは勝手だが、仕事が変わるわけではない。それを佐田が今後一人でしていくわけだ。もっともISO認証支援といっても、最近は新たに認証する関連会社はあまりない。ただ審査におけるトラブルは結構あり、佐田に相談や支援依頼が来ることは時々ある。来年から改定後の規格で審査を受けることになるので、また認証機関とのトラブルがでるだろう。トラブルとは早い話、審査員の規格の理解が不十分とか、拡大解釈によるものがほとんどである。遵法に関わるものは、佐田が監査しているわけで、まずほとんどない。もし佐田が見逃しているのが、ISO審査で見つけているようなら佐田の存在意義がない。いやそもそもISO認証で遵法を見てくれるなら、わざわざ社内で環境監査をする必要がない。
とりあえずISO14001の改定対応のマニュアルを作る必要があるな。といってもそれは来年開けでもよいだろう。マニュアルを作ってその説明会を素戔嗚グループにしなければならない。全国で4回くらい説明会をしなければならないだろうから佐々木と分担してと思って佐々木がいなくなることを思い出す。
佐々木がいなくなってもやって行けるだろうか? もちろん佐田自身も毎年力量向上をしなければならないわけで、去年よりも今年、今年より来年はレベルの高い仕事をより多くできるようにならねばならない。佐田は頭の中で年間の環境監査の工数をいろいろと考える。
そんなことを考えていて、はっと気がついた。自分の負荷がどうとか、従来の仕事をどう処理するかという発想がそもそもおかしい。まず必要なことをするという基本から考えないとならない。環境監査を適正にかつ効率的に行うにはどうするか、グループ企業の法規制に関する指導と相談対応をどうするかということを考えなければならないはずだ。そこには佐田個人がどうあるべきかということは従属変数になるはずだ。


年が明けてそうそうに佐々木は退職した。個人的に見れば部長になり子会社の社長も経験し、役職引退後は新分野でそれなりに活躍したのだから、佐々木の会社人生は成功であり幸せだったのだろう。同期入社の中で、佐々木と同レベルまで昇進した人は2割もいないだろう。当時は62歳で年金が満額もらえたから嘱託を3年勤めた佐々木は老後の心配はないはずだ。
佐田のグループは戦力が半分になってしまった。塩川課長が何も言わないので、佐田はそれなりに考えがあるのだろうと余計なことは言わずに日々の仕事を粛々とこなしていた。1月から年度末までは環境監査は農閑期であり、仕事に追われることはない。佐田はヒマを見てISO14001規格対応のマニュアルを作った。2月後半か3月初めに社内説明会をしようと考えていた。工場の期末は忙しいし、4月になれば前年度の行政報告などで繁忙になるだろう。

そんなことを考えていると、塩川課長が佐田を呼んだ。
佐田が塩川課長の席に行くと、あっちに行こうと佐田を部屋の外に連れ出す。
佐田は黙って付いて行く。
会議室のあるフロアに行くとその一つに入る。二人は座る。
塩川課長
「あのよ、部長級以上の人事異動は4月1日付けって知っているだろう。実際にはそのひと月前に発令になるんだ」
佐田は人事異動の話かと見当をつけた。
塩川課長
「熊田部長が来年役職定年になる。ちょっと早いのだが4月に部長解任になり業界団体に出向になる」
佐田
「はあ、そうですか。環境管理部としては方針がそう大きく変わることもないでしょうから、従来路線の継続と考えておいてよろしいのでしょう」
塩川課長
「まったくお前は驚かないというか何の反応もないんだな」
佐田
「人に仕事が付くわけでなく、必要な仕事は遂行するというだけでしょう。それに私が部長になるわけはなく、塩川課長が部長に昇任されるとも思えません」
塩川課長
「おれはそれほど人望がないか? まあ、管理部門の部長は工場長級で、ラインの部長とは一ランク違うからな。おれも役職定年までのあと3年、このままだろう。
ええと、新しい部長には今福岡工場の工場長をしている 大河内さんが来る。お土産つきだ」
大河内部長 大河内部長
佐田
「お土産とは・・・ああ、子飼いを連れてくるということですか?」
塩川課長
「子飼いというか出戻りだよ」
佐田
「出戻りといいますと、まさか竹山君が戻ってくるというのでは?」
塩川課長
「そのまさかだよ。大河内さんが言うには十分修行したから本社で勤まるだろうとのことだ。奴が転勤してから何年になるのかな?」
佐田
「ええっと、あれは六角さんと早苗さんを教育していたときですから・・・・4年と少しになりますか」
塩川課長
「男子三日会わずば括目して見るべし、4年経ったら別人になっていてもおかしくはない」
佐田
「そう期待しましょう。まあ、どちらにしても、こちらが特に気を使うこともないでしょう。自然体で・・」
塩川課長
「ということでだ、お前と竹山で今までの仕事を継続してもらう」
佐田
「わかりました」
塩川課長
「以前、当社の環境管理を改善するための方策を話し合ったことがあるな。あれについて何か進めているのか?」
佐田
「環境管理部のウェブサイトの見直しをしました。佐々木さんがそういうことが得意で助かりました。法規制情報提供、過去に問い合わせをいただいたQ&Aのアップ、社内外の環境不具合事例のアップなどをしています。その他に問い合わせ窓口のメール、ウェブサイトのフォームなどを設けました。それについては先月公文で素戔嗚グループの全事業所に発信しています」
塩川課長
「ああ、思い出した」
佐田
「それと来年度の社内や関連会社を集めた環境会議で環境法規制の動向や過去の環境事故違反などの説明を行うことにします」
塩川課長
「ISO14001規格が改定になったよな。あれに対してはどうするんだ?」
佐田
「規格改定対応の実施事項をまとめて説明会を開こうと考えています。今までまっとうな仕組みだったのを、規格改定対応なんて言っておかしなものにされると困りますから。対応のマニュアルは作成しました」
塩川課長
「工場の担当者を集めての説明会などはあまり回数が多いと批判もある。どんな計画なんだ?」
佐田
「まだ恒久的な方法を決めてないので会社規則に反映していませんが・・・まず全社環境会議が上期は5月、下期が11月にありますね。全社対象の説明会はその間を取って開催したいのです。実際には8月は夏休みで連休が多いですから2月と9月にしようと考えています。
位置づけとしては環境会議が部長級、説明会が課長級と想定しています」
塩川課長
「9月はともかく2月は期末で忙しくないのか?」
佐田
「環境管理部門はそうでもないですね。来期の計画は年末か正月明けには作っているでしょうし、行政報告は3月締めが多いです。当社の役員交代などの届も6月の株主総会以降ですし・・」
塩川課長
「わかった、わかった。人事異動の件、竹山が来たら仕事の指示は頼む。3月末に挨拶に来て、4月から出社の予定だ。そうそう、向こうで博多美人と結婚したそうだ。少しは落ち着いただろうと期待したい」
佐田
「了解しました」


佐田はISO14001の2004年版説明会の準備をしている。全社というか素戔嗚グループ全体を集めて説明会をするのは簡単ではない。もちろん講習会開催の公文を書いて決裁を得て発信するのは何分もかからない。だがその前に会場の手配がある。工場や関連会社は全国に所在しているので、常識的に考えれば北海道、東京、大阪、福岡といった都市で開催しなければならないだろう。しかし北海道には工場は少なく非製造業が多く、それらがあちこちに所在しているので物理的には近い札幌に行くよりも、東京に行った方が便利というところが多い。それで東京で2回開催することにして、北海道、東北、関東の工場に来てもらう。場所は本社の大会議室を予約する。実を言って本社の会議室なんて半年も前から予約していなければとれない。佐田は以前総務部が関わった環境問題の解決をお手伝いしたこともあり、そのときの総務の担当者が気をきかせて別の会議を押しのけてくれたので確保できたのだ。佐田はそれを聞いても、ネゴも実力と、罪悪感は持たなかった。
大阪は堂島にある支社の会議室、福岡は天神にある九州支社の会議室を借りた。それぞれ過去からの付き合いがあるから何とかなった。公式なルートでお願いしたのでは、なかなか場所は取れない。
昨年までなら佐々木と分担ですればよかったが、今回はなにからなにまで佐田一人である。説明会の資料やパワーポイントを作るのは簡単だが、資料のコピー手配とそれを開催場所まで送るのは結構手間がかかる。とはいえそんな雑用も力仕事も佐田は気にしなかった。

説明会を終えて佐田はホッと一息という感じである。とりあえずISO14001規格対応はおしまいだ。佐田はコーヒーを飲みながらこれからのことを考える。4月になれば前年度の各種行政報告のとりまとめ、各自治体への報告の内容と漏れなどのチェックがあるが、それらは佐田の仕事ではない。
4月以降の監査は竹山にも分担させよう。少しは成長しているだろうと思う。

うそ800 本日の思い
これを書いているのは2014年7月上旬である。ただいまISO14001の2015年改定の説明会だとか、ウェブで事前検討なんてのをたくさん見かける。私のように引退した者にも、コンサルや研修機関から規格改定講習会のご案内メールがザクザクと・・中には「一刻も早く規格改定に対応するために」なんて銘打っているのもある。バーゲンセールかと笑ってしまう。
規格改定があると、それに合わせて会社の仕組みを直さなくてはならないという発想が私には理解できない。ISO規格と会社の定款どっちが大事なんて聞くのは野暮だろうし、ISOマネジメントシステム規格なんてのがいくらなんでも今後50年も存在するとは思えない。そんないっときのうつろいゆくものと、ゴーイングコンサーンと比較するまでもない。
規格が改定になって、会社の仕組みが良くなったとか、会社のパフォーマンスが向上したなんて事例があったら教えてほしい。私は4半世紀もの長きにわたりISOと付き合ってきまして、その間にISO9001が4回改定(JIS改定を含む)、ISO14001が1回改定がありましたが、残念ながらそのような事例を寡聞にして知らない。
もっとも規格改定がなければ審査員もコンサルタントも上がったりだろうから、定期的な規格改定が必要なのは自動車のモデルチェンジと同じである。そしてモデルチェンジ時には規格改定に対応するための方法を教えてお金を儲けようとしたのだろう。今回も規格改定をネタに金もうけをしようとしている人が大勢いるので要注意である。
「あがったり」とは何が上がるのかと疑問に思い調べた。スゴロクの「あがり」のことで、ゲームの終了、商売が行きづまる、人生のおしまいを意味するとのこと

うそ800 本日の思い出
規格が改定になったとき、私はいつも新旧対照と対応を書いた資料を作り、工場の担当者を集めて説明会を行った。実際の審査で私は審査員を説得する自信はあったが、工場の担当者は口八丁の人ばかりではないから、ここを直せ、マニュアルの文言のここを変更しろという解説書を作ることはした。それがいかなる価値があったかと言えば、実際に審査でのトラブル(審査員の勘違い)を予防する効果はあっただろう。しかし遵法、パフォーマンス向上あるいは環境保護に貢献したかと言えば、書類を改定するための電気、パソコンの使用、無駄な紙の使用などなど環境に悪い影響を与えたことは間違いない。もっともそれ以前にISO審査が環境に貢献しているのかも定かではない。
まあ、規格改定のおかげで私が失業しなかったことは間違いない。



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