マネジメントシステム物語74 業務の効率化

14.08.21
マネジメントシステム物語とは

佐田が竹山に環境管理業務の改善案を指示してひと月ほどになる。テーマが漠然としているから時間がかかるだろう。急ぐものでもないし、そもそも解があるかどうかも定かではない。そんなことを思ってフォローしていない。
そんなある朝、佐田がメールをチェックしていると竹山からメールが入っていた。竹山は昨日出張だったはずだ。電車や飛行機内でのパソコンの使用は禁止になっている。ルールを破って変なことをしていないだろうと気になって発信時刻をみると、午後5時前後だ。監査にいった会社で仕事を終えた後に発信したようだ。まあ、いいだろう。


今日の午後の予定はない。竹山が出てきたとき本人に口頭で回答すればよいが、行き違いもあるだろうとOKの旨を返信しておく。
その日の午後である。
竹山
「佐田さん、例の件、お時間よろしいでしょうか?」
給茶機
佐田
「いいとも、期待しているよ」
竹山
「ご期待に応えられるとは思えませんが」
二人は打ち合わせ場に行く。給茶機からコーヒーを注いでくる。たばこは吸わないが、コーヒーがなければ生きていけない佐田である。
佐田
「最近では私が出かけなくなって、竹山さんばかりに出張させているね」
竹山
「それは気にしていません。もう何年も前のこと、私が本社にいて谷川さんと一緒に環境監査を担当していた時は、自分たちはスケジュール立案ととりまとめだけで、実際の監査を工場の人に頼んでいたので我々が出張することはほとんどありませんでした。ああいった人任せの仕事ではいけませんね。あれでは現実が見えません。今になってよく分りました」
佐田
「まあ、昔のことだから」
竹山
「いえ、そのことと今日の報告は関係あるのです。現場で現物を見なくては、現実が分りません。監査はいつもしていますが、人の異動とか教育などはやはり今回歩いてわかったことはいろいろあります。
佐田さんのご依頼は、工場によって環境管理担当者の多い少ないがある。そしてここ10年環境部門の人員は増加の一途である。この業務の効率化を図りたいということでした。よろしいですね」
佐田
「その通りだ」
竹山
「まず調査結果ですが話せば長くなるので、要点だけ羅列しますと・・・
ひとつ、環境管理といってもその業務内容は工場によって大きく異なり、業務の標準化は困難というか、する意味がなさそうです。
ひとつ、従事者の年齢、経歴もバラエティに富んでいること。ただラインの第一線を退いた人を配置する傾向はどの会社でも見られます。特に病気持ちの方とか勤務態度に問題がある人が多いということは特記すべきことですね」
佐田
「わかる、わかる」
竹山
「そのほか、どこも環境という仕事そのものの重要性が低く見られていると感じました。なんと言いますかねえ〜、しなければならない仕事ではあるけど優秀な人を配置するまではないとみなされているようです」
佐田
「それも、わかる」
竹山
「変な話を聞きましたが、病気がちの人をおく部門として必要だというご意見もありました。だからあまり業務を高度化したり密度を濃くしたりもできないし、業務を改善して配置人数を減らしてしまうのも困るなんて意見も聞きました。それが冗談なのかどうか定かではありませんが」
佐田
「いや、実際にそういう考えもあるだろうなあ」
私が良く知っている会社での話である。
そこにはISO事務局なるものがあり、専任者が一人いた。ISO審査のたびに、くだらない不適合が出されるのが普通である。その会社も毎度どうでもいいような不適合が出されていて、出されれば是正処置をしなければならない。ところがその専任者は毎年審査の後に必ず具合が悪くなり休んでしまう。それも一日二日ではない。医者の診断書を出して長期に及ぶというのだ。
たまたま訪問した私がどうして休んでいるのと課長に聞くと、いつもの病気だよと動じる風もない。課長が言うには、その専任者は元開発部門にいてそれなりの仕事をしていたそうだ。しかしあるときなぜかおかしくなってしまい仕事ができなくなった。解雇するわけにもいかず、ISO事務局ならできるだろうと異動させたという。以降、周りから腫れ物に触るように扱われているそうだ。
ともかく休んでしまうと、くだらないといっても是正処置が進まない。毎年その課長がしょうがねえなあと是正処置を適当にまとめて処理しているとのこと。一件落着するとテレパシーなのか誰かから連絡がいくのか、その専任者は突然病気が回復して再び出社してくる。是正処置をどう処理したのかとか休んでいた間のことは口の端にものぼらないとのこと。
そのISO事務局担当者は口髭をたくわえ自信たっぷりの言葉と態度で、実体と外観の格差に驚く。笑うべきか、怒り狂うべきか? その課長のように無感動であるべきか?
私はそんな事例を腐るほど見聞きしてきた。
おお、あなたも心当たりがありますか!

竹山
「いろいろ考えると、環境管理の人事にまで足を踏み入れるのはどうもアブナイ感じですね」
佐田
「環境管理の人事に関しては、元々我々本社環境管理部は権限どころか意見を出すこともできないしね、あえてそれをする意味もないだろう。変な話だが大きな政府ならぬ大きな本社ではなく、本社は小さく工場や関連会社が力を付けるべきだろう」
竹山
「多くの管理者は工場によって環境管理といっても、その業務内容も違い配置されている人間も一様ではないので、単なる標準化とか合理化は望んでいません。できないと考えているというよりもしないほうが良いと考えているようです」
佐田
「じゃあ、我々は何もしないほうがいいのかい?」
竹山
「いや、そうではないです。環境管理部に対する要求といいますか期待はいろいろあります」
佐田
「聞きたいな」
竹山
「要求そのものは人によってこれまた多様なのですが、私なりにまとめるとこんな感じでしょうか。
環境管理業務というのはエネルギー管理、公害防止、廃棄物管理、製品の環境性能、化学物質管理、もっとあるでしょうけど、まあそんなものがあげられると思います。
一つは、そういった業務ごとの初心者向け、そしてその上のレベルのテキスト、そういったものを作成して提供してほしいという意見がありました。
また、二つめとして環境担当者の新人とか中堅、ベテランといったレベルごとの研修をしてほしいということ。
三つめとして相談窓口の整備というか気楽になんでも問い合わせができるように、こちらで仕組みを作ってほしいという意見があります」
佐田
「なるほど、ずいぶん調子がいい話だが、まあ工場から見れば本社はオーバーヘッドだから当然かもしれないな。ところでそんなもので良いのだろうか?」
竹山
「おっと、お断りしておきますが、先ほど述べたのはヒアリングした方々のご意見を、私なりにまとめたものです。私が提案するのはちょっと違います」
佐田
「なるほど、じゃあ、いよいよ竹山君の改善策を聞かせてもらえるわけだ」
竹山
「アハハハハ、そう期待されると困るんですが・・・
確かに現状は従事者のバラツキが大きいのです。しかし傾向としては高齢者が多い。もちろん長年働けば誰だって歳をとりますけど、よその職場の年配者が流れてきているわけです。それもまだ50歳くらいの方ならともかく、定年まで半年くらいの人を引き取っている例もあります。半年しかいない方を教育して一人前にするという発想はおきませんよね。その日その日、口頭で仕事を指示して作業をさせるということになるでしょう。
飲食店やコンビニなどで、一日だけとか数日だけのアルバイトでも即戦力として使っているという実態もありますが、そういったところは仕事が単純でかつ標準化されていることもあり、また来る人も若くアルバイトの経験があってレジ打ちとかもできて、仕事を覚えるのも早いという条件がそろっているわけです。片や定年まで会社に来て怪我をせずにいればいいという考えの人とは違います」
佐田
「確かにな・・・・そうなると日雇いと同じく、その場その場そのときそのときと指示して単純作業をさせるしかないということか」
竹山
「まあまあ佐田さんまだ状況説明の段階ですよ。
もちろんどこでも有資格者とか重要な業務には、それなりの人を充てています。ただそういう人は少数で、多くは素人に近くそして短期間の従事者が多いということです」
佐田
「でも環境管理の業務すべてが専門的な仕事ではないだろう。少しの教育訓練で遂行できる仕事も多いんじゃないか。例えば廃棄物処理とか・・・」
竹山
「まあ簡単だと言いきっては語弊がありますが、確かに排水処理装置の運転などに比べれば、廃棄物の分別やマニフェストの記載などは難しくはないでしょうね。いまどき焼却炉のあるところなんてないですし。実際、廃棄物については、多くのところでは数日の指導で仕事をさせていました」
佐田
「竹山君の考えは、環境教育といっても仕事に必要な業務教育のことだけど、そういったことの教育を我々がすべきだということなんだろうか?」
竹山
「佐田さんに先回りされると、どうも調子がくるってしまいます。ちょっと私に話させてくださいよ。
先ほどヒアリングした結果を簡単に申し上げましたが、それが真に必要なことではないと思います。本人が必要だと考えていることでも、傍から見ると真に必要でないこともありますし、彼らが気づいていないこともあると思います。
で私が考えたことですが、彼らが言うように教えるための仕組み資料を提供するのは過去からしているわけです。それは佐田さんの方が良くご存じというか、佐田さんが作り上げてきたのを知っています。
私はどのように環境管理をするか、従事者それも多様な人たちをどのように教育してどのように使うべきかという枠組みのモデルを示すことが我々の仕事ではないかと思うのです」
佐田
「なるほど、今までは教育のための資料や教育の環境を提供していたけど、どのように仕事をさせるかという管理者のための教育が不足していたということか」
竹山
「うーん、管理者のための教育ではなく、会社や工場に対して環境管理部門の人事とか管理体制のビジョンを示す必要があると思うのです」
佐田
「具体的にはどういうイメージなのだろう?」
竹山
「まず会社や工場は永続するという前提があります。仮に事業が期間限定なら、環境に限らずそこでのすべての業務はその期間だけ機能すればよいわけです。そうであれば後継者などを考えることはありません。プロジェクトなどはそうでしょう。でも普通の組織はゴーイングコンサーンとして永続するべきですから、そう考えたとき、そこにおける環境管理は長期的視点で行うべきです」
佐田
「イメージとしてはそうだろうけど、具体的にはどういうことかな?」
竹山
「もっと噛み砕きますと、日本で公害問題が騒がれたのは1960年代後半で、各種法規制が整ったのは1970年頃、当時の会社は法規制に合わせて公害防止にリソース、人物金を投入しました。そして当時20代半ばだった人たちは2009年現在定年前後となり、今まさに続々と退職していっています」
佐田
「確かに、ウチはどこの工場の環境部門でも60直前の人たちが引退するのに大慌てしているなあ」
竹山
「それは人の育成という長期的視野がなかったからです。法律では公害防止管理者は二人必要ですが、実務に仕事で必要なのは一人でしょう。だからどこも後任を計画的に育成していくなんてことは眼中にない。たとえ話をすれば、今から17・8年前、ちょうど公害国会から今までの半分の時期に後任者を入れて教育していれば今は40歳、働き盛りです。そして新たに三代目を採用するという・・」
佐田
「それは理想だろうけど、実際には二人置くほどの仕事量がないということもあるだろうし、会社がそうできる体力があるかということもある」
竹山
「まあ、一例というか一つの考え方ですよ。今、多くのところで未熟練の高齢者が多くて、一部の人に負荷がかかっている。引継ぎやいろいろな問題をみると、環境管理部門の持続可能性ということを考えないとならないということです」
佐田
「つまり我々が人事そのものには手を出さないが、人事について口を出すべきだということかい?」
竹山
「そうです。他の部門で使えない人を、環境部門に回すなんてことをさせてはいけないことでしょう。それから継続的な担当者の育成と・・」
佐田は竹山も若いなあと思う。会社は環境を中心に動いてはいない。事業に関わる要素は環境以外に様々なものがあり、それらすべてを満足させなければならないのだ。
佐田
「まあまあ、私たちがすべき範囲、できる範囲というものはあるだろう。身の程を知るというか・・
今までだって君だって私だって監査に行けば、環境担当者の負荷や年齢、資格などをみて、新人を投入すべきだとか、資格保有者を増やせと言っているじゃないか。そしてある程度は対応してもらっている。もちろんそれは我々のためじゃなくて、向こうのためなんだけどさ」
竹山
「まあ少し熱が入りすぎたかもしれませんが、環境管理の体制というか人員構成について環境管理部はひとつの指針というかあるべき姿を示して、工場や関連会社はそれを目指していくべきと指導しなければなりません」
佐田
「確かに環境管理に限定してみた場合の理想はそうかもしれない。しかし会社全体の人事を考えると、年齢によってできる仕事できない仕事もあるし、人間の老化ということも考慮しなければならない。一概に年寄りを保守部門に回すのはおかしいといってもね、部分最適を推進しても全体最適にはならないよ」
竹山
「どうも佐田さんのお話を聞いていると、なにもせずに現状を是とすべきと聞こえます。そういうスタンスでは環境管理業務の効率化推進なんて難しいと思います。病気の人、年配の人、他の部門でいらない人ばかりでは、環境管理部門の効率向上を図るのは難しいでしょう」
佐田
「でもさ、病気の人はいりません、優秀な人がほしいなんてのは、世の中で通用しないんじゃないか」
竹山
「じゃあ環境管理に限らず業務の効率化なんてできませんよ。営業だって開発だって優秀な人をとろうとするのは当然でしょう。環境管理だって同じですよ」
佐田
「まあ仕事の成果は従事者の能力によるのは間違いない。でもそれだけではないよね。だってマネジメントシステムという考え方そのものが、同じ人を使っても、方法を考えればより多くの成果を出せるという発想じゃないか。
言い方を変えると、老人が多くても、病人がいても、個人の能力が突出していなくても、そのメンバーを使ってより多くの成果を出す方法を考えられないか?
若い人と老人を比べるのではなく、同じメンバーでやり方を変えるというアプローチだってあるだろう」
竹山は面白くないような顔をしていた。


それから数日また竹山は監査に出張している。月の就業日は21日くらいだが、あいつは月に10日は出歩いているなと佐田も少し心配になる。夫婦仲は大丈夫だろうか?
もちろん佐田も塩川課長がいたときは同じくらい出張していた。妻は佐田がいないほうがいいと言っていたが、結婚30年の佐田と結婚数年の竹山では環境が違う。

月の半分出張なんて普通だとお考えの方がいるかもしれない。監査の場合、月の半分も出張していては十分な事前勉強や報告書のまとめができないだろう。だから出張しての現場監査は3分の一が限度ではないだろうか。
もしISO審査員が勤務日数の半分を現地審査しているというなら、審査を受ける企業は、審査員が不勉強であるとして審査を拒否してもおかしくない。準備とまとめに現地審査の倍以上の時間をかけなくてはまともな審査はできないだろう。できるという人は天才ではなくて単なる手抜きである。

メールをチェックしていると竹山からのメールがある。開けてみると環境管理について考えたので明日会社に出たときに話をしたいとある。佐田は了解したと返信する。
コーヒー 竹山は机上整理が一段落した午後に佐田に打ち合わせしたいと声をかけた。二人は打ち合わせ場に行く。
佐田は座る前に給茶機でコーヒーを注ぐ。竹山もそれに倣う。
竹山
「佐田さん、前回佐田さんから若い人と老人を比べるのではなく、同じメンバーで今以上の成果を出すことを考えろって言われましたよね」
佐田
「そうだったかな、忘れた」
竹山
「ハハハハ、佐田さんも塩川課長に似てきましたね。それとも単に古だぬきになったってことでしょうか」
佐田
「古だぬきか、うーん、なんていうのかなあ〜、ちょっと違うんだけど、
新入社員なら直接的にああせいこうせいって言うのがいいかもしれないが、一人前の人には具体的に指示するのではなく方向を示してあとは考えてもらうしかないんだ。でなければ管理者ではなく監督者になってしまうからね」
竹山
「なるほど、管理と監督の違いですか。実を言いまして、ここんところ先日佐田さんがおっしゃったことを考えていました。確かに環境管理に良い人、優秀な若い人を配置しろというのはダダコネってものですね」
佐田は竹山も現実を見ることができるようになったかと感心した。
竹山
「一昨日監査にいった会社は製造業で従業員が200人くらいでした。環境部門はたたき上げの年配の係長が中心人物で、40歳くらいの現場から来た人が一人、ウチから出向した人が一人の計三人でした。200人の会社で環境部門3人では多いように見えるかもしれませんが、排水、廃棄物、電気、関連施設の保守など全般ですからけっこう大変なようです」
佐田は黙って聞いている。
竹山
「実はその現場から来た方は腎臓が悪くて透析をしているのですよ。毎週3回病院に行かなくちゃならないんです。元々その方は現場で仕事をしていたのですが、透析が必要になり、それまでの仕事ができなくなってしまったのです。 車いす 人事と係長と本人で何度か話し合って今の職場に来たと言います。工場全体を考えるとそれが一番だろうという結論になったそうです。
出向者の方は元ウチの横浜の工場で公害防止、具体的には排水処理を担当していたそうです。ところが田舎に一人で住んでいた母親が認知症になり、ああ父上はとうに亡くなっているそうです。それにですよ、同郷出身の奥さんの母親も認知症になりかけなんだそうです。こちらも義父は既にお亡くなりになっているとのこと。
ともかくそんなわけで田舎に帰って双方の母親を看なくちゃならないってことになり、人事に頼んで自分たちの実家に近いその工場に出向させてもらったといいます。平日は奥さんが実母と義母の面倒を見たり介護施設に送り迎えしたりしているそうですが、休日はその方が担当していると言います。奥さんはそのとき息抜きと買い物などしているそうです」
佐田
「いやはや、聞くも涙、語るも涙だなあ〜」
竹山
「そうでしょ、そうでしょ。その係長はそんな二人が困らないように、いろいろ工夫して仕事しているんですよ。佐田さんがおっしゃった部分最適ではなく全体最適を考えなくちゃならないってことが良く分りました。透析している人を従来通り現場で仕事させることは肉体的にできません。母上が認知症になった方を出向受け入れしないと断れば、その方は会社を辞めるようになるかもしれません。現在の制度では、症状が重くないと受け入れてくれないんです。その方の母上はまだ程度が軽いので、施設に入れないそうなんです」
佐田
「世の中には大変な人もいるということは分かったが、それで竹山先生の新しい提案はどういったものでしょうか?」
竹山
「人の異動や扱いは我々の手に負えません。人事が全体最適を考えてくれるだろうということにしましょう。そして私の結論は、成果を上げるために良い人材を集めるのではなく、今ある人材で成果を上げることを考えるべきだということになりました。
そのためには環境管理部門における教育体制やテキストなどの整備と提供をすること、それは従来も話しましたけど。それに業務の問題や疑問に応える体制を作ることで支援になるし、結果として生産性を上げるだろうということですね。全然目新しくなくてすみません。はっきり言って従来の路線を強化する程度でしかありません」
佐田
「いやいや、そんなところじゃないのかね。ただ教育をするというだけでなく、意識づけというかISO的に言えば自覚ということを重要視してほしい。自覚って悪うございましたということではなく、この仕事は何のためにするのか、それはどんな意味があるのかということを理解させることだ。分別が悪いと廃棄物業者の工程で事故が起きる危険性があると知れば、しっかりと分別をするだろうからね」

ISO14001:2015年改定で「awareness」はISO9001に合わせて「自覚」から「認識」に変わるらしい。「自覚」も変だけど「認識」なら良いのだろうか? 私は単に存在をみとめるとかではなく、それに対して己がどうあるべきかを考えて行動することを求めているから「理解」が適当ではないかと思うが?
あるいは体得がよいだろうか?

竹山
「おっしゃることはよく分ります。まず、担当者に仕事の意味を知らしめること、仕事の方法・基準を良く理解させること、仕事に問題意識を持たせることですね」
佐田
「その前に仕事とは何かという意識づけをしてほしいなあ。環境業務に限らず、誠実に仕事をするのは職業人として当たり前だからね。勤労の義務なんて憲法にもあるけど、本当を言えば義務以前だよね。ここんところがしっかりしているならどんな仕事でもしっかりやるだろうし、そうでなければそうではない」
竹山
「今の人は・・・私もかもしれませんが、確かに始業時から終業時までいればいいと考えていますからね。でもどうしたらいいのでしょう?」
佐田
「私が社会人になった頃、1970年頃かな、当時は戦争から復員してきた人たちが現場の主力だった。そういった人たちは尋常小学校くらいしか出ていなかった。もちろん英語なんて習ったこともなかったし、それどころか三角関数だって科学だってかじっていなかったと思う。でも日本の高度成長を実現したのはそういった人たちだよね。
聞いた話だけど日本が戦争に負けて、進駐軍まあアメリカ軍が、日本に来たとき道端に座り込んでいる浮浪者がちぎれた新聞を読んでいるのを見て驚いたそうです。そんな人は文字を読めないと思っていたのでしょう。ともかくですね、文字が読め、向上心があるなら、学校などに行かずとも自ら努力して何者にでもなれるのです。小集団活動とは、一般従業員にも創意工夫できる場を提供し人々がそれに応えた、そして日本の産業が活性化したということでしょう」
竹山
「佐田さん、それがなにか?」
佐田
「いや、そのまんまさ。向上心を持たせるにはどうしたらいいかってこと。
環境に限らず仕事において、いや仕事に限らず生活全般において、知識を持つこと、疑問を持つこと、実行することそれが大事だと思う。それさえ持たせれば後は自動的に進むんじゃないだろうか。
過去にマネジメントシステムとは何かという課題があったが、そのとき従来からしていること、つまり当たり前のことを当たり前にすることがすべてだという結論だった。しかし情報提供や指導だけではなかなか良くならない。今現在は環境管理業務の不効率という問題が顕在化している。我々はグループ企業の環境管理を仕切っているわけではない。だけど統制はできるだろししなければならない。我々は直接的な権限はないけど、間接的であっても統制することによってこのグループ企業の環境管理の効率化、高度化を図らなくてはならない。それこそが我々のレゾンデートルだからね。
それをどういう形で進めるのか、それが課題だ。さっき竹山さんに直接的に何をしろと言う指示をするのではなく、どうしたらいいか考えろって言った方がいいって言ったよね。それと同じく関連会社や工場にこうしろというのではなく、改善を考えてほしいと言って話が通じるようにしなくちゃいかんと思うんだ」
竹山
「おっしゃることはわかりますが、どうしたらいいのでしょう?」
佐田
「私にもわからないよ。ただ何をするのかと教える前に、この仕事は重要なのだと理解させることが大事だろう。自分がしている仕事は価値があると認識することは、自分は人のために役立っていると思うことであり、誇りを持つことになる。
『真実の瞬間』ではないけれどレンガを積んでいるのは手間賃をもらうためなのか、教会を建てるためなのかということは大きな違いがある。だからこそ上司はそれを教えなければならない。管理者は教育者でなければならない」

顧客満足について書かれたベストセラーになった本「真実の瞬間」の中で、石を積んでいる職人のたとえ話があります。
  通行人「あなたは何をしてるんですか?」
  職人A「おれは今日の飯のために働いているのさ。」
  職人B「おれはいわれたとおり石を積んでいるんだ。」
  職人C「おれは教会を作っているんだ。」

竹山
「ISOのいう認識あるいは自覚とは違い、より上位の理念的な意味と受け取りました。
質問ですが?」
佐田
「なんだい?」
竹山
「佐田さんは結論が分っていて私に調べさせたのですか? つまり私にそれを認識させるために課題を出したという・・・」
佐田
「そんな嫌味というか無駄なことはしないよ。こんなふうかなという仮説は持っていても、ホンとのことはわからない。だから竹山さんに実態を調べてもらったわけだ。その結果、私の予想と一致していたということかな。
ところで、ええっと、こうあるべきだということが分ってもそれだけじゃどうしようもない。それに向かってどういうふうに進めていくべきか、具体的な計画を立ててほしいな。
麻雀ならあがってナンボ、仕事なら完遂して意味があるのだから。
それから管理指標を決めて定期的にその変化をみて、効果があるのかないのか、自分自身にフィードバックをかけるんだ」

うそ800 本日のご苦情について
環境部門は掃き溜めである論に関係者から大声の苦情、文句、非難の嵐があることを予測する。だけどすべての企業においてそうだとは言えないけれど、かなりのところにおいてそうであるのは間違いない。
特にISO事務局なるものにラインでバリバリ頑張っている人を持ってくるなんて会社は見たことがない。あったとすれば取引条件などで決められた時期までに認証しなければならないという状況だろう。そしてそういった場合、目的を果たすとその優秀な担当者はすぐに元に戻る。
長年ISO事務局を担当しているとおっしゃるお方は、ご自身のそれまでの働きを振り返って反省することが必要だ。「私はISO事務局として頑張っている」という方は、本当は頑張っていないのは間違いない。もし頑張っているなら、まっさきにISO事務局を廃止しているはずだ。
だから「私は優秀なISO事務局だ」と自称しているのは最低の・・・
実を言って、私には優秀なISO事務局を名乗る知り合いが多い。

うそ800 本日の繰り言
先々週のことだ。今回の文の冒頭3分の1くらいを書き始めたら、家内がやって来て言う。
「あんた、あさって墓参りに田舎に帰るからね」
否も応もない、家内が決めたことは絶対である。
私はすぐにお出かけの用意を始めた。ということで書き半端で放置して、続きを書き始めたのは4・5日経って帰宅してからであった。
構想は一応まとめても、下書きがあるわけではない。大筋は覚えていてもエピソードなど細かいことは忘れたのでまた考えた。一粒で二度おいしいのではなく、一つの物語を二回書いたような気がする。そんなわけだから筋書きがあっちに行ったりこっちに行ったりしっちゃかめっちゃかとなった。
っ、いつもそうだから気にするなって?
すみません



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