審査員物語53 後始末

15.10.22

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。但しここで書いていることは、私自身が過去に実際に見聞した現実の出来事を基にしております。

審査員物語とは

三木は山梨の某工場で審査をしていた。昼休み控室に戻ってメールを確認すると「至急」というタイトルのものが1件入っている。 コンビニ弁当ナガスネでは緊急を要するメールにはタイトルの頭に「至急」と入れることになっている。発信者を見ると審査部長の肥田取締役からだ。
三木は飯前にメールを読んで面倒なものだと飯がまずくなるから飯を食べてから読むことに決めている。気にはなったがとりあえず飯を食べる。今日は工場に入る前にコンビニで買ってきた500円の弁当である。
そうそうに弁当を食べてメールを開く。
三木様
茨城県のテナヅチ商事の審査でトラブルが発生した。三木さんにその対応をお願いしたい。
明日朝一番に出社願いたい。午前中打ち合わせ後に先方に伺って話を付けてほしい。
テナヅチは宇都宮の街中だから昼に出れば2時には着ける。審査を実施した島田さんと一緒に行ってほしい。

オイオイと三木は思った。確かに明日は審査の予定はないが、明後日は朝イチから大阪梅田で審査の予定だ。明日話が付くのが夕方として、18時過ぎに宇都宮を出るとして東京で乗れる新幹線は8時過ぎ。となると新大阪が10時半、ホテルは予約しているが、それはちょっと大変だよ。それよりもなによりも話がつくのかどうか・・・
三木は島田の事を思った。悪い人間ではないがかなり頑固のところがあるし規格解釈も古典的だ。いやいや、決めつけてはいけないなとその考えを否定した。
ともかく行けというなら行くしかない。明日は明日の、明後日は明後日の風が吹くだろう。
三木は了解といかなる問題なのか概要を知らせてほしい旨返信した。


審査を無事終えて帰りの電車で三木はメールを見る。
今はパソコンでなくスマホなので他の人に見られる恐れはだいぶ少ない。会社でもスマホでメールチェックや発信するのはOKとなっている。
三木様
肥田です。
先週末に島田さんがリーダーとして行った審査結果に本日苦情を受けました。
内容はいくつかあるのですが、大きなことは次の2点です。
 (1)環境目的の最終時期までが3年間ないので不適合とした。
 (2)有益な環境側面がないので不適合とした。
いずれについても審査の最終会議で先方は納得しなかったが審査リーダーの見解として不適合とした。それから3日後である本日苦情というか異議がありました。正式なものではなく、先方としては納得できないので再度説明を頂きたいという形です。
対応について内部で話し合ったのですが、いずれについても三木さんが詳しいという意見が多く、この対応は三木さんにお願いするのが一番と考えました。

面倒なことはみな俺に来るのかといささか自嘲的になった。それにと三木は思う。肥田の文章だけを見れば不適合にするのはお門違い間違いも甚だしいものだ。交渉といってもこちらが悪うございましたと言えばオシマイだろうと思う。
そんなことよりも三木にとっては明後日のことが心配だ。


翌朝である。始業するとすぐに肥田から声がかかって会議室に行く。集まったのは島田、三木、肥田取締役、そして潮田取締役だ。

肥田取締役
「お集まりいただきありがとうございます。早速ですが客先からの苦情についての対応を打ち合わせ、本日午後に向こうに説明に伺うことについて打ち合わせたい。
まずは島田さんからご説明願います」
島田さん
「いろいろとご迷惑をおかけしてすみません。
まず目的の期間ですが、当社の方針は従来から目的は3年以上、目標は1年だったと思います。この会社では5件の目的を設定していましたが、内3件は3年間あったのですが、ひとつは1年、ひとつは2年でありましたので、期間が短いという理由で不適合にしました。
もう1件については・・」

潮田取締役 肥田取締役 島田さん 三木
潮田取締役 肥田取締役 島田審査員 三木
潮田取締役
「ちょっと待って、ええと一つずつ片付けていきたいと思います。
環境目的が3年間必要というのは規格にはないですね」
肥田取締役
「文字に書いてはない。しかし普通は目標よりも長期と考えるのが普通だ。目標は1年だとして・・」
三木
「あのう、発言してよろしいですか?」
肥田取締役
「どうぞ」
三木
「目的も目標も、その時間的長さについての要求事項はありません。ですから環境目的が3年ないとか、目標が1年でないということが不適合になることはありません。この問題について3年ないということを不適合にしたのは単なる間違いであったという結論ではまずいのでしょうか?」
島田さん
「えええ、ちょっと待ってください。過去より環境目的が3年ないということを不適合にした事例はたくさんあります。私も今までに何度もそういう不適合を出してきました。それが不適合ではないと言われると・・」
肥田取締役
「私も判定委員会とか維持審査の場合は私個人が承認すればよいのだが、そういったときに環境目的が3年より短いという不適合をいくつも見てきたし、それを承認してきたよ」
三木
「うーん、はっきり言ってそういう事例において客先というか企業から異議を申し立てられたら困ったことになるでしょうね。少なくても不適合にする根拠がないように思います」
島田さん
「目的が3年より短くても適合だというのなら、今までのいろいろな研修会での指導はどうなるのですか?
責任転嫁するつもりはないですが、それじゃ審査員は困りますよ」
潮田取締役
「肥田さん、どうなの?」
肥田取締役
「三木さん、どうなんですか?」
三木
「うーん、目的が3年というのは10年以上前に当時の人たちが決めた見解だと理解しています。それは決して悪意があったわけではないと思いますが、何もわからない人たちに簡単に理解させるという目的だったのではないかと思いますが」
潮田取締役
「それは正しいのかというか、それを基に不適合だと言って問題ないのかどうかという質問なら」
三木
「はっきり言ってだめでしょうね。相手が納得すればそれまでですが、相手が納得しないならそれを押し通すことは我々の方に過失があったということになってしまうでしょう」
注:
改めて世の中で環境目的のスパンというか期間がどう理解されているのかとネットでググった。(2015.10.21時点)
イヤハヤ、9割以上が3年スパンであり、環境目的は3年後の目標と書いているところも多数あった。中には当社は3年でなく5年にしているからすごいでしょう!(ドヤ顔)というところもあった。ヤレヤレ
ちなみに目的が3年なんていうのはオカシイゾと書いているのは私だけであった。
ヤレヤレ
島田さん
「三木さん、今更そんなことを言われても困りますよ。私は社内研修で教えられたとおりに審査しているのですよ」
三木
「うーん、社内的にはどうあれ、対外的というか世の中の一般的な基準から3年ないとダメというのは我々に分はないでしょうね」
潮田取締役
「あの〜、三木さん、はっきり言ってくれませんか。ダメなのか、押し切っていいのかって二分するとどうなんですか?」
三木
「その前に、島田さん、そのテナヅチ商事の目的が5つあったということですが、どんな目標だったのですか」

島田が資料を広げた。みながそれをのぞき込む。

環境目的環境目標
2014年5月までに環境情報を社外広報する仕組みを構築する2012年度は現状の実施状況、対象情報を取りまとめる
2017年度までに社有車をすべてハイブリッドあるいは電気自動車に更新する2012年度は1台をハイブリッドにする
(現状 2台/11台)
2014年度までに物流の環境負荷を原単位で2011年度比で3%削減する
(当社は特定荷主には該当しない)
2012年度は環境負荷を前年比1%削減する
2014年度までに本社・支社から出る廃棄物を2011年度比で10%減とする。2012年度は前年比3%削減する
2013年度までに産業廃棄物業者を優良事業者に切り替える。2012年度は現状取引業者が優良認定を受けるかどうかの調査を行う。

注:このお話は2012年時点である。
島田さん
「ええと目的としてこのように5つ取り上げていましたが、そのうち2つ、つまり環境情報公開の仕組み構築と産廃を優良事業者に切り替えというものが1年と2年なのですよ」
潮田取締役
「両方とも2015年までにしてもらえばいいのか?」
三木
「あのう、環境目的というのは改善活動のテーマであって、その内容も期限も必然性があるはずです。ええと、まず環境情報の社外広報する仕組みですが、この会社は1年ちょっとでできると考えているわけです。それをわざわざ3年に期限を延ばすことに意味があるのかと考えればおかしいでしょう」
潮田取締役
「うーん、むしろ3年もかけるのかということを言いたくなるか・・・」
三木
「次に産廃業者を優良事業者に切り替えるですが、これも2年かけたらできると思うのが妥当でしょう」
肥田取締役
「そんなこと社外広報と同じく1年でできるんじゃないか?」
三木
「それとこれとは若干条件が異なります。優良事業者制度というのは平成22年にできたものですから、施行が平成23年つまり2011年で実際に認定されるのは2012年つまり今年あたりからでしょうから、いくら自分が頑張ってもすぐに終わるというものではありません。今年調査、2年後までに優良事業者に切り替え完了というのはきわめて立派な計画だと思います。
とはいえそれをわざわざ3年間かけることもありますまい」
潮田取締役
「なるほどなあ〜」
島田さん
「つまり三木さんはふたつの環境目的とも、期限が現状で問題ないというご意見ですか?」
三木
「個人的にはそう考えます。この五つの目的を見て、特段問題と考えることはありません。 まあ、正直言えばすべてシナリオがあって実現できるのがミエミエという気はしますが。ISOのために社内の計画を見繕ったということは明白ですね」
潮田取締役
「ええと、三木さんのご意見を一言で言えば、この会社の目的は妥当であり規格適合であるということになるのでしょうか?」
三木
「そう言ってよいと思います」
島田さん
「うーん、つまり私が完全に間違っていたということですか。しかし私としては個人的見解でそう判断したのではなく、以前の講習会で指示されている当社の見解を基にしているわけです。それが書いてある講習会の資料もあります。ですから単に当方が間違えていましたという見解では困ります。3年ないから不適合ということではなく、他に事情があって不適合であるが記述が不十分であったとか、不適合の理由を明確に書くと支障があるからこのように記述したという言い訳を考えてほしいですね」
肥田取締役
「まあ、過去の社内の講習会でそのように指示していたならばそれはそうだろうなあ〜」
潮田取締役
「ちょっと話はそれるけど、そのようなことを教えたり指示をしていたということ自体問題じゃないのか?」
三木
「ご存じでないかもしれませんが、そういう考え方には以前から私は反対していました。しかし当時の取締役たちはそういう考え方を変えませんでした。当時は私はいじめにあってましたよ、アハハハハ」
肥田取締役
「島田さん、三木さんの言うとおりだったの? どうなのよ?」
島田さん
「うーん、いじめというかどうかはなんですが、三木さんと当時の取締役たちとは規格解釈でギクシャクしていたのは実際にそうでしたね。私はバカ正直に教えられたとおりの考え方で審査をしていましたが・・」
三木
「ともかく善後策としてはですね、島田さんのおっしゃったことはまあ当然でしょう。会社の上長から言われた通りしていて問題が起きたなら、対外的にはなんとか言いつくろうしかないでしょう。
ただこれはテナヅチ商事だけでなく他の会社でも同じ問題が起きるかもしれません。そのときはどう対処するか、それも併せて考えておかなくてはなりません」
肥田取締役
「じゃあ、三木さん、そこんところをうまい理屈を考えてよ。とりあえずはテナヅチをうまく説得する方法だよ」

三木は肥田の都合の良い考えに呆れた。面倒なことが起きるとなんでも三木に丸投げだ。まあいつものことだと思いしばし沈黙し、心が治まってから口を開いた。
三木
「島田さん、審査報告書ではこの二つに出した不適合はどのような記述なんでしょう?」

島田は審査報告書を広げ、また4人はそれをのぞき込む。

NO./ISO14001要求事項/評価具体的事実証拠等
No.1
4.3.3
目的、目標及び実施計画
ISO14001規格要求事項

不適合  
環境目的は組織が達成を目指して設定するものですが、長期的視点のないものがあります。

具体的事例
 社外広報の仕組み構築
 産廃業者を優良事業者への切り替え
No.2
4.3.1
環境側面
ISO14001規格要求事項

不適合  
環境側面は、活動、製品及びサービスが対象となりますが、対象から漏れているものがあります。

具体的事例
環境側面にとりあげられたなかに有益な側面が見られない。

三木は、斜め上方を見つめてうまい理屈があるのかとしばし考えた。
幸いというか「3年間でない」とは明記していない。「長期的視点がない」とあるから多少は言い逃れする余地はありそうだ。さて、どう言い逃れするか・・・
三木
「幸い3年とは書いてありませんし、具体的事実が『長期的視点がない』とありますから何とか理屈はこねられるでしょう」
島田さん
「しかし審査の場では、長期的視点がないというのは目的の期限まで3年ないからですという説明を口頭でしています。そして今回の苦情も、『審査において目的は3年先以上でないとダメと言われたがそのような根拠はない』と書いてあるんだ」
三木
「まあ口頭ならどうにでもなるでしょう。本音はこうだったんだと言えば・・ちょっとお待ちください」

少しして三木が口を開いた。
三木
「ええとですね、これは目的について認識が違うということで説明したらどうでしょうか。社外広報ということは本来の目的ではないでしょう。外部コミュニケーションの向上というのがテーマと考えたらいいのではないでしょうか。社外広報はその下位目標といえるでしょう。ですから・・論点を社外広報の仕組みを作るというのは本来の目的から見ると下位の目標にすぎないと言えるでしょう。本来であれば社外コミュニケーションの仕組みを見直すとかそういったことが目的にくるはずであって、その下位目標が社外広報の仕組みを作ることである。ですから長期的、大局的視点を持って、目的を設定するべきだと言えるでしょう」
島田さん
「いや私はそんなたいそれた・・」
肥田取締役
「いいからいいから、ともかく三木さんのお話を聞きましょう」
三木
「産廃業者の切り替えも、本来であれば産廃委託先の遵法向上やリサイクル率向上が目的に来るのであって、その指標として優良事業者の選択というのがくるはずです。ここも長期的というよりもより広い視野で見て産廃委託先の向上をとりあげるべきといったらどうでしょう」
潮田取締役
「三木さんの論理ですと、他のテーマはどうなりますかね?
例えば社有車を低公害車に切り替えるというのも具体的すぎますから、三木流に言えば事業用車両による環境影響の低減を図るとかになるのではないですか?」
三木
「その通りです」
潮田取締役
「それじゃ困るでしょう」
三木
「しかしながらテーマの大きさは同じである必要はない。その組織にとって達成するまでの労力や期間によって決定されるというのはどうでしょうか。この場合、社外広報が2年程度で完了するならもっと長期的視点が必要と言えるでしょうけど、低公害車への切り替えが数年かかるならそれは目的としても妥当であると言っても良いと思います」
肥田取締役
「いやはや、三木さんは屁理屈の達人だね」
三木
「肥田取締役、あのですね、あなたが私に対応を考えろと言ったから私が当たり障りない理屈を考えているわけですよ。そんなひとごとのようなコメントをされるなら肥田取締役が審査部長として対応してほしいですね」
肥田取締役
「いやすまんすまん、三木さんのおっしゃる通りだ。失言を取り消させてもらう。
三木さんのご意見でどうですかね。島田さんと潮田さん、審査員としてみておかしくないですか?」
島田さん
「いや誠に申し訳ない。三木さんの説明で向こうが納得できなくて妥協することになっても、こちらが論理的というか規格解釈で完璧に間違えていたということではないと理解できるでしょう」
潮田取締役
「私も異議はない」
三木
「そいじゃ、そういうことにしましょう。
次の・・・有益な環境側面ですが、私は環境側面の定義から言って有益な側面なんていう考えそのものが間違っていると思います。イギリスでも他の国でも有益な側面なんて考えはないと聞きます。
ともかく、ここも『有益な側面がない』というわけじゃないのでなんとかなるでしょう」
潮田取締役
「いやいや、三木さん、『有益な側面が見られない』ですから、有益な側面がないということですよ」
三木
「そうじゃありません。表現はともあれ、島田さんが言いたかったことは、有益な側面がないことではなく側面の有益と思われるものがないから漏れはないですかと言っているわけじゃないですか」
潮田取締役
「ハテ、論理のすり替えのように聞こえるが」
三木
「規格では環境側面は多面的に見なければならないこと書いてある。ここで不適合としたのは、有益な側面というものがあるわけではないが、有益な環境影響を与える側面もあるわけで、『御社が取り上げている側面には有益な影響を把握しているようにはみられなかった』というのではいかがですかね」
島田さん
「三木さん、まず有益な環境側面というものはないのですかね?」
三木
「ありません。それははっきりしています」
島田さん
「そうですか、そいじゃこれも私の見解が間違いということになります。しかし当社の研修会ではやはり数年前から有益な環境側面について言及するようにという指導をしていますね」
肥田取締役
「私も審査報告書のチェックでは、有益な環境側面がないという不適合を多々見ているが」
三木
「うーん、是正処置というか根本的には当社の見解というか社内研修で教えていることにいくつか間違いがあるということになるでしょう。お断りしておきますが、その見解に私は関わっておりませんよ。
ともかく明日の対応ではなく、根本的な是正処置はまた別途対応が必要でしょう」
潮田取締役
「島田さん肥田さん、三木さんの見解で問題ないですか?」
島田さん
「向うから側面の有益なことが書かれてないとしたことについて、漏れがないと言われたらどうしますか?」
三木
「島田さんが見て具体的に漏れていたものを挙げることができますか? できるならその名称を言えば良いと思います」
島田さん
「有益な側面として見られないと書く前に先方と話をしたのは、従来産廃処理していたものを排水処理施設を導入して削減したので処理装置を有益として取り上げたらと言ったのですが、」
三木
「それは正しく言えば環境側面というよりも負荷低減という改善ということじゃないのかな」
島田さん
「世の中ではそういうものを有益な環境側面といっていますが」
三木
「それこそ有益な環境側面がないというか、有益な環境側面という考えが間違っているという証拠でしょうね」
肥田取締役
「三木さんは辛口だね」
三木
「肥田さん💢」
肥田取締役
「分った分った、失言を取り消します」
三木
「どう考えても排水処理施設は著しい環境側面そのものなのですが、それは取り上げられていなかったということですか? 島田さん」
島田さん
「いやそうではない。排水処理施設も著しい環境側面になっていたのだが、影響の中に有益であることが書いてないので有益であると明記すべきだと考えたのだが・・・」
三木
「うーん、そうであれば私の本音はこの指摘はお門違いというか単なるミスのように思えます。
しかしまあ、どうでしょう、排水処理施設の環境側面は有害有益ともに有しているが、有益な面が明記されていないのでそれを明記することによって更なる改善の手掛かりになると思われたというようなことでどうでしょうかねえ〜
そのくらい説明すれば向こうも妥協するのではないかと思いますが」
島田さん
「でもその場合では改善そのものも環境側面としていますよね。それは三木さんの解釈とはずれがありそうですね
もっとも有名なコンサルが、廃棄物の収集リサイクル処理とか顧客へのリサイクル情報の提供更にはリサイクルし易い製品、地域内の廃棄物削減、下水道普及率向上、学生への環境教育といったものを上げていますよ」

CF:http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/4898.pdf

三木
「アハハハハ、いやまさしく日本のISOが低レベルということですな、
いや失礼、そういう人がいるから私も審査員をやっていけるわけだ。
ともかく、そういうことで向こうさんに話をしましょう」
潮田取締役
「つまりなんですな、三木さんのお話からでは、そのような説明で報告書への異議を取り消せるということになりますか?」
三木
「いや不適合というのは規格要求事項を満たさないことを言います。しかしこの2件は規格要求事項を満たさないと言えるかどうか微妙でしょうね。まあ正直言ってですよ、この二点の位置づけは改善の機会程度じゃないでしょうか」
島田さん
「ああ、もちろん私が同行するわけですが、そういった、つまり三木さんからアドバイス頂いた方向で説明して折り合わなかったら観察というか改善の機会というかそういう扱いでいかがでしょうか?」
三木
「成り行き次第で不適合か適合かというのも交渉としては不誠実に思えます。ここはどうでしょう。当方で検討した結果、不適合ではなく適合ではあるが改善の機会とするということで妥協の余地はないというスタンスで持っていったらどうでしょうか。どちらにしても遵法上も汚染にも関わらないわけですから」
潮田取締役
「よし、じゃあそうしよう。そしてその場においての判断は三木さんに全権を任せたい。
肥田さん、異議ありませんね?」
肥田取締役
「ああ、三木さん、よろしく頼みますよ」
潮田取締役
「三木さん、副部長の肩書の古い名刺まだありますか? 向こうでは副部長を名乗ってください」
三木
「あのう、私は明日早朝から大阪で審査なのですよ。そのへんはご理解いただきたいですね」
肥田取締役
「ご理解というと」
三木
「こんな話はもう私に振らないでほしいということです。
恒久的な是正処置も私に回ってきそうな予感がしましてね」

うそ800 本日の疑問
私はこんなことの会社側の立場になったことは何度もというかたびたびあった。そのときは認証機関の審査員とかその上司とかが出てきて、ああだこうだとやりあったものだ。
先方も社内でいろいろと議論して対案を持ってきたのだろうか? 私が見るにろくなものはなかったが、
認証機関内部でのどんなことを検討したのかは一切知らない。

うそ800 本日の暴露話
実を言って、今日は更新日ということを忘れておりまして、この文章を1時間半で書いて30分でhtmにしました。ごまかす才は三木に負けないぞ!
いや実力と言いましょう。


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