私はこの世に生を受けてから60有余年、泳げなかった。だらか臆病な私は水に近寄らなかった。池や湖でみんながボートで遊んだ時も私は乗らなかった。海に行っても膝より深いところには行かなかった。娘が小学生のとき海に連れて行った。スイミングスクールで習っていた娘が私が立てない深さのところで泳いでいるのを見て心配で心配でならなかった。
都会に出てきてから定年近い同僚が、仕事が終わってから、フィットネスクラブで泳いでいると聞いて自分が泳げないのが悲しかった。職場の若い女性がダイビングしに南の海に行ってきまーすなんて長期休暇を取るのをみると、休むことではなく、泳げることがうらやましかった。
まあ、そんな人生を60年も続けてきたわけだ。
定年を過ぎ、嘱託も辞めて引退したとき、真っ先に泳げるようになろうと決心した。そのときのことを以前書いた。

初めはまったくのカナヅチである。浮くのを練習し、けのびを練習し、なんとか100ｍ泳げたのは2013年末であった。1年半もかかったわけだ。普通まったくの初心者が泳ぎを習って1年で1キロ泳げるようになると聞く。つまり・・私は平均よりも1年遅れていることになる。だから2014年中には1キロ泳げるようになりたいと願って一生懸命練習した。コーチは、長く泳ぐというのは泳ぎのうまい下手ではなく、慣れが必要だという。だからひたすら泳いだ。
私の経験からだが、安定して泳げる距離の倍が、がんばって泳げる限界のように思う。つまりいつでも100m泳げるなら、200mは頑張れば泳げるだろうし、300mは軽いなら600mはなんとか泳げると思う。
ともかく私は2014年10月21日やっとこのことで1キロを泳いだ。すると不思議なことに翌日から1キロを問題なく泳げる。なぜ今まで泳げなかったのか、なぜ突然泳げるようになったのか分らない。心理的なこともあるのだろうか、つまり俺は1キロ泳げるのだという余裕があれば1キロを泳ぐのは簡単なのだろうか？
ともかくそれ以降、日々泳ぐ長さを伸ばしていった。ひと月後は1.5キロ、二月後は1.8キロ泳いだ。当然であるが初心者である私は泳ぐのが遅い。だからあまり長い時間泳いでいると周りからじゃまだと文句を言われた。遅い人は時々泳ぐのを止めて早い人に譲らないといけないという。フィットネスクラブではそんなルールを決めてはいないが、もめるといやだから最近は1キロ泳いだら一旦止まって、また泳いでいる。ということで現状の最長記録は1850mである。ただ泳ぐだけなら疲れ果てるまで3キロ以上は泳げるんじゃないかと思う。

ところが最近、泳ぐだけでは面白くなくなってきた。いや以前は1キロ泳ぎたいという気持ちがあって頑張ってきたのだが、今はそんな目標がなくなってしまった。
おっと老人がスピードを目指す気はありません。ゆっくり長く泳ぎたいというカテゴリーですから。
もちろん海に行けばスキューバダイビングでも素潜りでもなんでもできるかもしれないが、先立つものがない！
そんなとき何かの雑誌でトライアスロンのことを読んだ。トライアスロンというと水泳が4キロ、自転車が180キロで更にマラソン42キロを走るものだと思っていたら、それは例外的な長距離のものであるという。オリンピックディスタンスというポピュラーなものは、水泳が1.5キロ、自転車が40キロ、ランが10キロだという。
それを聞いて、それなら私にでもできるのではないかという気がしてきた。いや、もちろん記録は度外視ですよ。単に泳げるか、走れるかというだけです。

その１
まったくのカナヅチだった私も1.5キロは楽々泳げるようになった（つもり）
もちろんプールで泳ぐのと海や湖で泳ぐのは違う。波もあるし風もある。それにプールでは底のラインに沿って泳いでいるけど、海では案内になるものがない。ときどき顔をあげて方角を確認しなければならない。オイオイ、立ち泳ぎもできないし、クロールから平泳ぎにうまく切り替えたりできるのか？
それは定かではない。

その２
自転車は毎週フィットネスクラブで動かない自転車を1時間こいでいる。回転数は遅い（70rpmくらい）が負荷はかなり重くしている。普通の道を走るくらいに負荷を軽くすればどうだろう？　とはいえ、40キロとなると走れるだろうか？

その３
長距離10キロ走ったのは高校時代だけだ。私の通っていた高校では、毎年全校生徒が10キロ走る行事があった。私は遅かったが歩かずに毎年完走はした。記憶はあいまいだが50分くらいだったと思う。でもあれから50年もたつ。今でも10キロ走れるもんだろうか？　まあ、無理だろうなあ〜
そんなことがいろいろ頭に浮かんだ。

なにごとも動くのが早いというか考えなしに動くというか、ともかくトライアスロンについて知ろうと思い、図書館に行ってトライアスロンとタイトルが付いている本を数冊借りてきた。その中でこれが一番面白かった。


中年になりかけの著者が一念発起、トライアスロンにチャレンジする物語である。もっとも中年になりかけといっても、私の年齢の半分だ。若者と言っても良い。ともかくその若者が試行錯誤をしてトライアスロンにチャレンジし完走し、それ以降自分の記録にチャレンジしていく物語である（もちろん実話ですよ）。
書かれているのは、単にトライアスロンのことだけでなく、健康維持とか暮らしをどう管理するかとかいろいろなことに及ぶ。

• トライアスロンをすることにより能力開発がされるという。単に泳ぐとか走る練習だけではないのだ。大会までの練習、宿舎の手配、自転車やウェアなどの輸送、そういうことをすることでマネジメント力がつくという。確かにゴルフコンペに参加するのとは違い、一大プロジェクトであることは間違いない。
  
• トライアスロンに参加するからと言って、仕事をないがしろにしたり家族を放棄したりすることはできない。この物語では家族も一緒に参加する、ゴールインは家族全員手をつないでという著者の考えは感動的だ。
  だから仕事と家族とトライアスロンの三つはゴールデントライアングルだという。私の信条である「家族、健康、教養」と同じだなと思った。実はこれは元々何かの本でユダヤのことわざとかで読んだ。
  
• 仕事と同じく仮説→実行→検証→仕組化（標準化）というスパイラルを回すのだという。
  まさに科学的管理だと思う。

私はこの本を読んで感動した。
じゃあ、考えなしに突っ走る私だからすぐにもトライアスロンにチャレンジするのかとなると、とてもそれはできない。
まずお金のことがある。ヨットや射撃に比べれば安いと言っても、ゴルフを始めるのに比べても初期投資が倍も三倍もかかる。私はゴルフもしないのだが・・
例えばフィットネスクラブで泳ぐのには、パンツとゴーグルとキャップがあればいい。それだけなら7000円くらいだろう。いや通販でも店頭でも、男なら3000円、女性でも5000円くらいでフィットネススイミングセットを売っている。しかしトライアスロンで泳ぐにはウェットスーツがいる。通販では安いものは2万くらいからあるが、いろいろ本を読むとレース用は仕立てがメインで10万以上するようだ。
自転車となると私にとってはもう天文学的金額となる。著者は40万とか50万のものが手頃と書いているが、私には全然お手頃じゃない。それだけあればエンジンなしの二輪車でなく、エンジン付きの中古四輪車が買えるじゃないか！
それだけでない。大会となると著者は沖縄、サイパン、その他大会の開かれるところに家族と共に出かけていく。もうこのあたりで金のない私は完全に脱落する。

しかし転んでもただでは起きない私である。すばらしいアイデアがひらめいた。
この本の中でもひとりトライアスロンとかインドアトライアスロンと書いているが、フィットネスクラブの中でだってトライアスロンはできるじゃないか！
スイミングは単にプールで1キロでも1.5キロでも泳いで時間を測ればいい。自転車は動かない自転車をこいで40キロを何分で走ったかを測ればいい。ランの場合はちょっと難しいがランニングマシンの速さを調整して10キロ走るのに何分かかったかを見る。もっと簡単にするなら、自宅からフィットネスクラブまで走って行っても良い。そうすれば道具も買わなくて良いし、一人でできる。大会に行く旅費も宿泊費もかからないじゃないか。

実を言ってちょっと試してみたのですよ、 スイミング1.5キロは現在34分くらい。これは今年中に29分くらいにしたい。 自転車20キロは50分ジャスト、但し現在の負荷は重くしているからそれを半分くらいにすればどうなるだろう？45分を切るのだろうか？　とすると40キロ90分だ。 ランニングだが、コーチが私の歳を考えると膝に悪いから、無理せずに代わりにウォーキングでどうかという。私も確かにそうだと思う。それじゃ10キロウォーキングで1時間25分というところかな？ そうすると都合200分、実際のオリンピックディスタンスで3時間を切ればまあまあらしいから、私の場合は歩きでそれを上回ることにチャレンジしよう。

よし2015年は一人インドアトライアスロンに挑戦しよう！
著者が語っている「トライアスロンは完走者全員が勝者」って
私はたったひろりのトライアスロン大会の優勝者になれる。

その他借りてきたトライアスロンの本はみな読んだが、他には「誰でもできるトライアスロン」（学研、2006/9/27、1200円）が面白かった。 いかに記録を伸ばすかとかプロ選手の書いたものは次元が違い過ぎるし、有名人の自慢話的な本はどうも・・・

　誤解のないように
「トライアスロンはじめました」というのは本の題名です。私が始めたわけではありません。



レイシオ様からお便りを頂きました（2015.01.08）

おばＱ様 あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 私も昨年、太りすぎ（20代から20kg増量）をきっかけに自転車買って始めました。（冬は休養中です） 手頃ではありませんが、中古で20万円ぐらいのロードバイクを買いました。 パンク修理やシフトワイヤーの交換等、自分でメンテナンスしなければならないのですが、これが思いのほか楽しいです。 息子（8歳）にも子供用のクロスバイクを買って一緒にサイクリングしているのですが、時速30km以上のスピードで漕いでいます。 今年は、息子と一緒に自転車レースに出るのが目標です。 おばＱ様におかれましても、「本当にトライアスロンに出場してみた」というご報告をお待ちしております！

レイシオ様　毎度ありがとうございます。 ええええ、中古で20万ですか！ まさか韓国のウォンなんてことはありませんよね・・・ それにしてもお子さんも時速30キロで走っているのでしょうか？　絶句！ どうも私の住む世界とは単位が違い、冗談抜きに、年金生活者とは遠い世界のようです。 まあスポーツや趣味は人それぞれです。私はお金は使ってませんが、時間は無制限に使っている趣味もあり人のことは言えません。

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