成果物

15.08.20
先日書いたものを読んでいて、書き足りないと感じたので続きを書く。

世の中にはまったくの趣味とかボランティアを除けばビジネスである。ビジネスというものは、なんらかのものとお金を交換することとも言える。いやお金が発祥したのは最近だ。だから基本はお金でなく客観的(あるいは主観的)に価値があるものの交換だ。そのなんらかの価値のあるものには、有形の製品(商品)と無形の役務(サービス)の二つがある。

製品掘り出し物です
人
ワシントン条約対応
の登録証つきです
矢印虎の皮 虎の皮の敷物
欲しいの

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お金矢印
役務お任せください

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矢印講演 講演を頼みます

人
御駄賃矢印

製品とは形のあるものである。二次元あるいは三次元のキャラクターとか完成したソフトウェアなどは物体ではないが、通常は製品として扱われる。疑義を持たれた方は商標登録の区分をご参考願いたい。
他方、役務(サービス)には宣伝、不動産取引仲介、通信、輸送、教育、スポーツ興行、演奏、ソフト開発、床屋、弁護士、飲食・医療・宿泊・冠婚葬祭、犬のお散歩代行から殺し屋などがある。我が愛しきISO審査ももちろん形がないから役務の提供になる。
役務の提供の場合、目に見えるもの、つまりお葬式、床屋、あるいは飲食なら、その役務が提供されたか否かはビジブルであり、受け取った、受け取らないという議論は起きない。弁護士や殺し屋においても結果が見えるから疑義は起きないだろう。もちろん裁判で負けたから弁護士費用がどうのこうの、家庭教師を頼んだけど成績が上がらないという苦情はあるかもしれないが、
役務の提供をはっきりさせるときは目に見える形として文書にする。成果物と言ってもいい。
成果物とは、通常はシステム開発などで工程完了時に提出するプログラムとか設計書のことである。当然期待されたもの、依頼されたものに対応する文書である。

ここから本題に入る。ISO審査の成果物とは何だろうか?
成果物は期待されたものに対応するものだから、依頼者がISO認証に期待する目的とか効果次第ということになる。
ISO認証の目的が純粋に認証することというのは、例えば取引先から取引条件としてISO認証を求められた場合で、それに応えるということだ。その場合は、認証機関の登録リストに載せてもらうことがすべてと言っていい。そのときわざわざ形としての成果物などを求めるはずもなく、審査登録証もいらない。
今の人は知らないかもしれないが、昔々1990年代初頭のISO認証とは、イギリスの経産省にあたるDTIの認証リストに会社名と認証範囲を登録してもらうのが最終目的だった。まだJABのない頃である。当時は電話帳のような分厚いリストがあって、そこに自分の会社が収録されてうれしかった思い出がある。欧州の顧客はISO認証必須だったから、そんな取引先からISO認証していますかと問い合わせが来ると、そのリストの登録番号を連絡したものだ。
今は問い合わせがあれば審査登録証のコピーを出すのが普通のようだけど、JABなり認証機関のウェブサイトを連絡して、そこに掲載されていますと言えばよいのだ。健康保険証でも免許証でもコピーしたり改ざんしたりする人がたくさんいるご時世、組織の自己申告とか登録証のコピーをもらうよりも、認証機関の登録台帳を確認してくださいと言った方が信頼性は高いのではないか? 
私も審査登録証の改ざんそのものはみたことはないが、登録証の1ページ目のみ提出して、2ページ以降の登録範囲をごまかした例を見たことがある。
認証制度発祥のときから、認証機関のウェブサイトや定期発行リストに掲載されているのだから、審査登録証などが要らないのは明白だ。
おっとDTIやJABは認定機関だ。認証機関より認定機関のほうが、より信頼性が高いだろう。ISO認証といっても認定付と認定なしがあるわけだし。

しかしと疑問が生じる。今はリストを本にして出している認証機関は知るかぎりない。JABも発行していない。それどころか認証機関に至っては社名をインプットしないと認証しているかいないかがわからない。どんな会社を認証しているのだろうという調べ方はできない状況になっている。これはたの認証機関による鞍替えを防ぐためとは想像するけれど、認証の本来の目的とは大幅にずれているようだ。
疑問なのだが・・・・認証機関で登録企業をリストアップしているところはないようだが、JABはリストを審査した認証機関などのデータ込みで公開している。認証機関が公開していなくても登録企業の情報がダダ漏れだろう。このへんの事情はどうなっているのだろう?

ISO認証が経営に寄与するとか、会社を良くするということになると、認証することそのものが目的ではなくなる。となるとその目的が達成されたかはなんで判定されるのだろうか?
経営に寄与するとなると、どんな切り口で評価されるのだろう?
経営指標といってもたくさんある。
総資本経常利益率、売上高経常利益率、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上原価率、販売費一般管理費率、総資本回転率、流動資産回転率、固定資産回転率、棚卸資産回転率、労働生産性、資本生産性、労働分配率、自己資本比率、負債比率、流動比率、当座比率、限界利益率、変動費率、その他一杯ある。
ISO認証の成果としてどの指標でどれくらい良くなるのか、before/afterをどのように表示しているのだろうか。それをぜひとも知りたい。もちろんその因果関係もぜひ知りたい。たまたまではしょうがない。原因を追究して対策するのよと、ISO規格はくどいほど書いているから、その実践例として期待したいところだ。
会社を良くするとなると、士気ならば入場率、欠勤率、度数率、強度率などで示すのも良いかもしれない(棒)。
あるいは特許の申請件数とか、開発期間の短縮とか、納期達成率などで表せるのかもしれない(たぶん)。
2015年版では継続的改善を要求しているわけで、となると上記種々指標を微分したものとなるのだろうか(想像)。

ところで審査の成果物は審査報告書であることは間違いないような気もする。じゃあ審査報告書にはどんなことが書いてあるのか?
こんなウェブサイトをご覧になっている方は審査報告書の10個や20個はお読みになっているはずだ。担当者の方は、毎年否が応でも読んでいるだろう。過去、審査報告書を読んでためになったとか、感動したという方はいらっしゃるものだろうか?
大体が「組織のマネジメントシステムは規格要求事項に適合し有効に実施していると判断し、認証の維持を推薦します」とか「今回の定期審査結果は適切と判断されたので、登録の継続を推薦します」なんてものだ。
おっと
改めて気が付くほどのことではないが、審査報告書(所見報告書)とは、誰が誰に出すのか!
審査の依頼者は組織である(ISO17021)であるが、審査員にとっての依頼者は企業ではなく、認証機関の経営者である。だから審査報告書の宛先は認証機関の経営者である。指揮命令系統から考えれば、そりゃ依頼者に報告するのは理屈だ。その証拠に、審査報告書には審査員が認証機関の責任者に出す形式になっている。その内容について、組織の代表者が同意のサインをする。つまり裏書だ。
審査の関係図
上図を見れば、組織は認証機関からなんら成果物はもらっていないのだ。組織が入手している審査報告書は実は正本ではなく写である。写をなぜ組織が入手するのかと言えば、組織の代表者が署名した報告内容について証拠としてもらっているに過ぎない。

なんのことはない、審査報告書とは組織への報告じゃなく、認証機関の経営者(あるいは上司)への審査員の出張報告にすぎない。
審査報告書は成果物であることは間違いないが、それは顧客組織(企業)に提出する成果物ではなく、認証機関の経営層に提出する成果物なのである。

誤解のある方がいるかもしれないので申し上げておくが、審査結果認証するか否かを判断するのは認証機関の経営層(判定委員会や判定者)であって、審査員ではない。審査員はあくまでもauditor(聴取者)である。
だとすると審査報告書の内容が組織にとって、経営に寄与するとか、会社を良くするということが万に一つくらいの可能性はあるかもしれないが、審査報告書の目的はそのためのものではまったくない。

ちなみに私は現役時代、組織に対して審査報告書の写でなく、組織に対する審査報告書の提出を求めたことがある。そこに記載する要件をいくつか条件を付けて要請したのだが、認証機関はそれが審査契約外だという理由ではなく、そのような文書を作成することが能力的にできないという理由で断ってきた。
その時の話では経営に寄与する改善提案などは口頭で話すことを聞いてほしいとのことであった。
ヤレヤレ
ではこれらのことからどんなことが演繹されるのだろうか?
簡単だ。
認証が企業をよくするという考えはまったくの間違いということだ。
つまり企業はなんら成果物を受領していない。審査員から受ける情報として、審査中の口頭だけであり、それは一切記録に残らず、つまり審査員は責任を負わないというしろものである。
審査員が責任を持たないものによって企業にメリットがあったとき、それが認証の効果だなどとたわけたことは言わないだろう。もしそうであるなら、審査員のコメントで問題があった場合、責任を負うのは当然である。
経営に寄与するというなら、どんな指標でいかほどか、それはどのような理屈なのかを明白にしてもらわないと、ISO規格が泣くぞ。

うそ800 本日のまとめ
本日は成果物という切り口からISO認証の効果を考えてみたが、どう考えても認証の効果とやらは思いつかない。
つまるところ認証の意味とは、取引で認証を要求されたときその条件を満たすというだけのようだ。
おっと、取引で認証を要求されないとき、認証機関のリストに掲載されてもありがたみは少しもない。


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