*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。但しここで書いていることは、私自身が過去に実際に見聞した現実の出来事を基にしております。
審査員物語とは![]() |
「全員そろったようですから始めましょうか?」
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「あれ? 前回いらした永井さんとおっしゃる方は?」
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「ああ、彼は・・・今日はチェックリストの検討会ですから呼びませんでした」
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「そいじゃ私もいなくていいじゃないですか」
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「いや、三木さんは今までのご様子からISOにお詳しいとお見受けしたので参加をお願いします」
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![]() 陽子は小声でぶつくさ言ったが誰も気にしなかった。 陽子はなしくずしにISO活動に取り込まれるのが嫌だなと思う。 ![]() | ||||||||||||||||||
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「それでは今猿さんから話をお願いします」
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「内部監査は段階を追ってしなければならない、そして段階によって調査事項が異なり当然チェックリストが変わっていかなくてはならない、そんなことを前回話したと思います。 既にいくつかの部門で内部監査を実施されたと聞きましたが、いずれもするほうもされるほうも不十分な状況であったようで、本日は初めて監査を行うチェックリストを考えました。初めにこのチェックリストについて説明し、二回目以降については後で説明します」 | |||||||||||||||||
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「今までの監査では講習会で配られたチェックリストを使いましたけど、あれではだめということですね」
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「残念ながらそうです。では始めます。 皆さんにお配りしたものを見ていただけますか」 | |||||||||||||||||
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「あれっ、これは大学の環境マニュアルじゃないか!」
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「増田先生がおっしゃったとおり、内部監査のチェックリストは環境マニュアルです」
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「今猿さん、これがチェックリストなの?」
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「よく見てほしいのですが、マニュアルをコピーしただけでなく、アンダーラインが引いてあるでしょう」
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「確かに・・・・しかしアンダーラインだらけでほとんど文章にアンダーラインが付いているわ」
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「この環境マニュアルというかチェックリストの使い方ですが、内部監査をする前にすることがあります。 環境マニュアルの文章にはほとんど主語がありますね、そうはいっても主語のない文章もある。本当なら主語のない文章はまずいのですが、前の文章に主語があるから次の文章では省略されているのがありますし、誰が読んでも主語がわかるのは書いてないのもある。まあそれはよいでしょう。ですがどうみても主語がないのは困る。 ともかく経営者の内部監査なら主語が経営者という文章でアンダーラインが引いてあることが聞き取り項目になります」 | |||||||||||||||||
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「それじゃこの環境マニュアルは内部監査をするたびにコピーしないとならないのですか?」
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「そうですね、経営者が主語でアンダーラインのところをマーカーで色を付ければそうすることになります。 あるいは該当箇所をほかの紙に書き写せば本来の意味のチェックリストになります」 | |||||||||||||||||
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「言い換えるとそれがチェックリストというものだということになるのか」
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「さようです。チェックリストは一般的というかどの部門でも使えるものじゃなくて、ユニーク、つまり部門特有で部門が違えば異なるものとご理解ください」
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「分かった。ものごとはそんなに簡単ではないということだ」
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「ところでこのマニュアルがチェックリストと言われてもどのように使うのか、わかりませんが」
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「おっしゃるとおり。監査の段階で質問を変えなくてはなりません。例えば・・・そうですね、環境側面の項番に『本学では、定めた適用範囲の中の活動、サービス、および形ある物品の提供について本学が管理できる環境側面及び本学が影響を及ぼすことができる環境側面を特定する』とありますね。なんだかISO規格そのまんまって感じですが、まあ、それはそれとして・・・ ええっと、初めて監査するときは『環境側面を特定しましたか?』でよいと思います。 二度目の時はその環境側面が大学の実態に合っているのか、漏れていないのかということを細かく調べないといけないでしょう。 三度目以降となれば、前回の監査以降、当初特定した環境側面で間違いなかったのか、漏れや余計なものがあって見直したのか、その判断とか方法は良かったのかということをみなければならないでしょう」 | |||||||||||||||||
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「講習会ではそんなこと習わなかったわ。そもそも内部監査の前にそんなに手間暇がかかる準備をしなくちゃならないなんて聞いてないわ」
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「確かに簡単な仕事じゃありませんね。講習会を受講されたとおっしゃいましたが、講習会では理屈を習い、その後度重なる経験を積まないと監査はできないでしょう」
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「内部監査の講習会は手順を教えたのだろうけど、その前提に会社とか大学の仕組みや、仕事の進め方などについて一般常識的なことを知らないといけないということか」
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「そりゃそうですよ。ISOというのは社会人というか企業などで働く人の常識があるという前提で作られていますからね」
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![]() 井沢と宇佐美は面白くない顔をした。 ![]() | ||||||||||||||||||
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「今猿さん、この環境マニュアルを元にして内部監査をするというのは分かりますが、マニュアルをチェックリストに使えるというのは、環境マニュアルがISO規格を満たしているということが前提条件ですよね」
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「そりゃもちろんですよ」
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![]() 陽子は以前夫と話した時に使ったISO規格、マニュアル、チェックリストの対比表を取り出した。そのひとつをテーブルの上に広げる。だいぶしわが付いている。 ![]()
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「なんですか、これは!」
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「ISO規格とこの大学の環境マニュアルそして以前井沢さんから頂いたチェックリストの同じ項目ごとに横に並べたものです。規格の要求がマニュアルに入っているか、マニュアルに書いてあることがチェックリストに入っているかを確認しました」
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「いやあ、すばらしい。さすがですね」
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「考えは陳腐でしょうけど、いろいろなことがわかりました」
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「どんなことが分かりました?」
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「環境マニュアルがISO規格を満たしていないということです」
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「えっえっ」
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「それはないだろう! ええっと、この環境マニュアルを作るには今猿さんも入ってたんでしょう?」
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「いえ、私は参加しておりませんよ。環境方針のサンプルがほしいとかマニュアルのひな型がほしいとか、三葉先生に依頼された都度、関係資料をお渡しはしましたが・・・」
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「それじゃこのマニュアルは?」
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「三葉先生ご自身でドラフトを作ったと聞きました。三葉先生が作成したらすぐに理事長がサインをされたと聞きました」
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「三葉先生は権威者と思われているから誰もチェックなんてしてないんじゃないかな」
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「ええっと、このマニュアルは既に認証機関に提出しましたか?」
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「いや、してません。認証機関はあのJ△○○です。既に審査の契約はしていて審査日程も決めてはいますが、マニュアル提出予定はまだ先です」
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「それは・・・良かった。」
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![]() 今猿はしばし沈黙した。 ![]() | ||||||||||||||||||
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「それじゃ進め方が後ろから逆に戻るようですが、まずは環境マニュアルの検証をしなくてはなりませんね」
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「これから初めに戻って環境マニュアルが規格を満たしているかどうかを確認するのですか? 既に内部監査をしようという時期なのですよ」
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「仕方ありません。三木さん、この大きな表は環境方針の項ですが、規格全部について作られたのでしょうか?」
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「作りました。ここにあります」
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![]() 陽子は自分が作った対照表を折りたたんで詰め込んだエコバックをテーブルの上にあげた ![]() | ||||||||||||||||||
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「比較した結果はどうでしたか?」
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「かなり漏れがありましたね。それと規格の理解が間違っているように思えたところもいくつかありました」
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「うーん、重症だなあ。しかしそれにしても三木さんはすごいですね」
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「今猿さん、問題があるということは分かりました。とにかく状況は分かりました。こういう状況ですと、どういう進め方をしていけばよいのでしょう」
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「なにごともセオリー通り、基本通りするしかありません。まずは環境マニュアルとISO規格の比較検討、次に不足分をどのように満たすかの検討、実際にどうするかは私たちだけでは決められませんから関係部門と話し合って具体的な対策を決めなくてはなりません。 その結果でマニュアルを修正するということになります。もちろんマニュアルに見直しの必要があると三葉先生に説明して修正の承認というか了解を取らなければならない。 それから変更したマニュアルについて各部門への説明と対応してもらうことの依頼、各部門が運用を開始してある程度時間がたってから内部監査ということになります」 | |||||||||||||||||
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「大変な手間になりそうですね。手間だけでなく時間がかかる。振出しに戻ってやり直しだ・・・ まずはマニュアルの修正が必要なことを三葉先生にご説明して了解を得なければならない。いやはや、参ったな。」 | |||||||||||||||||
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「スケジュールの見直しが必要と思いますが、どれくらい時間がかかるものでしょうか?」
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「そうですね。マニュアルと規格の比較検討は私一人でもできますし、かかる時間もせいぜい二日三日でしょう。でもそれをどうするかの検討や交渉はそんな問題がどれくらいあるかによりますが10日や半月はかかるでしょうね。 そしてそのあとに三葉先生にご説明と理事長のサインをいただくとなると・・・」 | |||||||||||||||||
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「今の状況について三葉先生には今日でも話はしておこう。でもさ、今まで今猿さんもタッチしてたんでしょう? 恨みますよ」
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「ご冗談を、私はお宅からコンサルを依頼されましたが、私はその活動に参加させていただいていたわけじゃなく、なにか不明なことがあった時だけお声がかかったというようなわけで、」
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「三葉先生もご自身がおっしゃるようにそれほどISOに詳しくないのかもしれないな・・おっと、今のは聞かなかったことにしてくれ」
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「今猿さん、とりあえず私が作ったもので説明しましょうか?」
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「いや、そこまでしていただかなくてももう大体わかりました。それと三木さんは対照表を作るのに糊とはさみで切り貼りしたから相当手間暇かかったでしょう。私はテキストデータがありますから、パソコン上で項目ごとの升目に流し込めばあっという間というのは大げさとしても、三木さんと同じものを数時間で作れます。そして過不足を調べましょう。三木さんが作ったこれほど大きくては扱いが大変ですから、A4サイズで何ページかにコンパクトにできると思います。 増田先生、そうですねえ、三日もしたら対照表に過不足の検討結果を記入してきますのでそこで改めて打ち合わせをしましょう」 | |||||||||||||||||
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「打ち合わせというと具体的になにを?」
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「第一段階としてはマニュアルの不十分なところを抽出しますから、それについてどのように対応するかを決めたいですね。まずはそこから再出発しなければ・・」
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「再出発ですか・・・まあ、しかたがありませんね。 となると次回はマニュアルの修正検討で終わりですね。それに続く対策はそれとして・・・ 内部監査のほうはどうしましょうか? マニュアルを直して、チェックリストを作ってとシリーズに進めていっては時間がかかりすぎでしょう。今までの状況から考えて内部監査員の教育ということを並行して行っておかないとと思いまして」 | |||||||||||||||||
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「おっしゃるとおりですね。私も井沢さんや三木さんがどのような内部監査員教育を受けたのか知りませんので、どうしたものかと考えていました」
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「私は認証機関の内部監査員研修を受けましたわ」
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「井沢君たちが内部監査員講習を受けたとは聞いていたが、先日の内供監査を見ているとまだ井沢君が内部監査をするのは難しいと思ったよ。チェックリストができたらもう大丈夫というわけでもないでしょう。内部監査の具体的手法を学ばなければならないようだ」
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![]() 井沢は面白くないような顔をしたが黙ってしまった。 ![]() | ||||||||||||||||||
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「三木さんは内部監査員教育というのをどれくらいうけたのですか?」
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「先々週ですか、永井さん成田さんと三人で井沢さんと宇佐美さんからチェックリストをそのまま読めばいいと言われた程度ですね」
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「えっえっ」
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「それは冗談でしょう。ちゃんと手順とかまとめかたとか教えたつもりですよ」
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「まあそうかもしれませんね。ただ内部監査の目的とか、監査で調査する意義は何かという根源的なことは教えてもらってないと思います」
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「しかしそれにしては三木さんはすごいですね。先ほどの対照表といい、そういった疑問を持ったことといい」
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「まあ興味があったからでしょう。それはともかく、私は今後どうなりますか? マニュアルの検討とかいいますと一介のパートには関係ないと思いますので」 | |||||||||||||||||
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「いやいや、三木さんは才能なのか過去に経験があるのか知りませんが、ISOに詳しいというか嗅覚が鋭いですね。マニュアルの検討にもぜひ参加してください。そいじゃ三日後に再度打ち合わせということで」
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その夜、夕食時に陽子は三木に話しかける。● ● ![]() | ||||||||||||||||||
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「そんなわけでマニュアルがISO規格を満たしていないことが問題だと気が付いたってわけよ。あきれちゃうわね」
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「記憶違いじゃなければ、先日おまえがマニュアルをチェックしたら、規格の『すること』はすべて網羅していると言ったじゃないか」
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「確かに、でも規格で『組織は○○をすること』と書いた後に実施することをいくつも羅列している書き方ってありますよね、そんなときは『すること』というフレーズはひとつですけど実際にはいくつものことを調査しなければなりません。今の大学のマニュアルでは『すること』はあるのですが、そのあとに続くすべてを網羅していないのです」
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「なるほど、ありがちだな。それで今どういう対応をしようとしているの?」
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「契約しているコンサルさんが私のしたのと同じ対照表を作って検証して足りないところを補うことになったわ」
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「そのコンサルもなんだな、陽子に言われてそんなことに気が付くようでは、全然役に立っていないじゃないか」
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「あなたも以前おっしゃったかと思いますが、大学の三葉教授って方は経済新聞社の偉い方だったそうですけど大学の教授に転身してきたのよね。その方がご自分でマニュアルを作り、認証機関と契約してどんどんと進めてきたんですって」
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「ほう」
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「ですから大学もそのコンサルも契約していたんですけど、そういった実作業には参加せずというか参加させてもらえず、要請があったときだけ資料の提供だけしていたそうなの」
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「ふーん、それじゃコンサルを雇うこともなかったろうに」
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「コンサルさんもそういう扱いだと売り上げにならないってこぼしてましたよ。 ところがその三葉先生が実はISO認証にあまり詳しくなくて、今になってあちこちからボロが見えてきたってことらしいの」 | |||||||||||||||||
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「アハハハハ、まあ、そりゃそうだろうなあ〜。ISOに詳しくないのに詳しいつもりの人が多いからね。特に大学の先生には」
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「しかし私はおとうさんを通してしかISOってのに関わりがありませんでしたけど、いろいろとお話を聞くとISO認証というのはお金儲けというかビッグビジネスなんですね」
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「ビッグビジネスというほどではないだろうけど、お金儲けには間違いないな。 正直言って俺だってISO認証制度がなかったら役職定年になったときどうなったのか、考えると恐ろしいよ」 | |||||||||||||||||
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「私の大学でも、今は認証するために大勢の人をかけて準備をしていますね。それだけでも大変な人件費がかかっていると思いますよ。いくらくらいになるものでしょうかねえ」
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「そうだなあ? 仮に3人がISOのために1年間専従すると、人権費それも福費まで含めれば3000万以上は行くだろう。それに内部監査などで人を拘束すればそれも・・・まあ1000万や2000万はいくだろう」
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「もちろん認証費用も掛かりますし」
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「審査費用も結構になる・・・陽子の勤めている大学なら職員だけで数百人、学生数千人で審査費用は500万あるいはもっとかな、 おっと、そのほかにコンサルを依頼しているから、それにも200万や300万はかかるだろうねえ」 | |||||||||||||||||
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「そういう費用から我が家の家計は支えられているのね、ありがたいことです」
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「ありがたいこと!? アハハハハ。まったくだ」
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「私も今日は学食で仕事をせずに内部監査の打ち合わせに顔を出していたのですが、賃金はちゃんともらえますよ。もちろん学食がそれを負担するのではなく、大学が学食に私の人件費を支払うのですが」
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「陽子の勤める学食は陽子のパートの賃金じゃなくてその2倍や3倍は請求するだろう。学食の店長も損はしない。お互い、持ちつ持たれつ、費用だけが増えていく」
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「ISO認証すると環境が良くなるなんて言ってましたけど、こんなことで環境が良くなるのかしらね?」
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「そう言われると俺も肩身が狭い。まあお祭りみたいなものかね、みんな参加して楽しんでいるんじゃないのか」
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「楽しむというのも意味深ですけど、中には心身消耗してくる人もでてくるでしょう」
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「確かに・・・おまえんとこもこれからトラブル発生とか順調にいかないと、そのなんとか准教授あたりはノイローゼとかウツになるんじゃないか。間違っても三葉先生は動じないだろうけど」
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「確かに、活動の中心にいると責任ばかり押し付けられて大変ですね。名目上の責任者は号令をかけるだけで楽ですけど」
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「陽子がよく言っている例の女の子も責任を感じて辛いんじゃないか。内部監査の研修を受けただろう、それで内部監査もできないのか、お前の責任だ!なんて状態じゃないのかい」
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「確かに、彼らなんてお金をもらっているわけじゃなくて学生だからってただ働きですからね。まあ環境関連で単位をもらえるとかその程度でしょう。おかしなことね」
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「陽子もあまりライバル意識を持たないで、彼女たちの辛さを分かって支えてやらないとならないよ」
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「そうですね、気を付けます」
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「あのさ、会社で新人が入ると会社の文化を教えるというのか洗脳するまでが大変だ。それと会社の指導者は歳がいっているから新人と価値観を共有していないことも多い」
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「あなたのおっしゃることは分かるわよ。ただ向こうは学生だし私はパートだし、身分というか立場も違うからコミュニケーションも難しいわね」
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「ISO活動のおかげでいろいろな人と付き合うことができたと思わなければやっていけないね」
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「確かに・・」
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