審査員物語 番外編50 木村物語(その4)

16.12.15

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。但しここで書いていることは、私自身が過去に実際に見聞した現実の出来事を基にしております。また引用文献や書籍名はすべて実在のものです。

審査員物語とは

私が二十代半ばの頃働いていた職場はみんな呑兵衛で、毎日仕事が終わると全員そろって酒屋に行き、もっきりを飲んで語っていた。酒屋であって酒場でないことにご注意いただきたい。バー、スナック、居酒屋は高いから、酒を売っているお店でもっきりを飲んだのである。もっきりとはコップに酒を注いでもらい、店頭で立飲みするのである。もちろん酒だけでは寂しいので、店に吊るしてあるスルメとか缶詰を買って割りばしをもらいみんなで食べた。恥ずかしいも何もない。1970年頃はみんな貧しく、忘年会とか歓迎会などイベントでないとちゃんとしたお店では飲めなかった。暮らしで豊かさを感じるようになったのは高度成長が一段落し、ニクソンショックもドルショックも一段落した1975年以降だろう。「家で刺身が食えるようになった」と先輩が言ったことがあるが、豊かになったといううれしさというか実感を理解できる人は今はいないだろう。
日本酒 毎日飲んで帰って来るのでは家庭争議を心配する人がいるかもしれないが、我が家は共稼ぎだったので、家内は飲んで少し遅く帰ってきた方が夕飯の準備をする時間があると言っていた。それにもちろん何杯も飲むわけでなく、せいぜい30分長くとも1時間もせずに解散した。
飲んで何を話すのかと言えば、仕事の話だ。今日のライン不良はどうであった。原因はなんだ、明日はどう手を打つのか。導入予定の新機種はこんな問題がありそうだ。問題になりそうな箇所だけ試作をやろう、そのときの検討項目は・・・そんなことを毎晩語っていた。酒を飲みながら会議をしていたというか、会議室で酒を飲んでいるようなものだ。みんな仕事が好きだったのだろう。そういう先輩に囲まれていたのは私の幸運である。当時はまだモータリゼーションの前だったので酒飲み運転など気にすることもなかった。
ということを思い出し、本日のお話は飲み屋を舞台にしたお話だけでつないでみようと思う。
うまくつながるのか、1話で納まるのか、心配だ。一番の心配は、どう考えても7000字では終わらない予感が・・・

1994年4月某日
ここは木村が出向した駿府照明(株)の健保会館である。
木村は駿府照明に出向して、品質管理課に配属になった。品質管理課といっても木村を含めてわずか4名である。元々木村は品質管理育ちだから配属先に不思議はない。品質管理課のメンバーと製造管理部の部長が木村の歓迎会をしてくれた。
木村の挨拶、受入側の自己紹介などが済んで飲み始める。木村は盃を持って一人一人回る。
伊藤小林君木村上野部長荒木課長
伊藤君小林君木村上野部長荒木課長

大野部長
「木村君も大変だな。いろいろと話は聞いているけど君も身の程を知るというか割り切り、あきらめも必要だぞ」
木村
「と言いますと?」
大野部長
「お前のそういうところ、つまり空気が読めないってところが欠点だな。お前が課長・部長と昇進していけるわけがない」
木村
「はあ?」
大野部長
「新入社員が全員課長になり部長になると思うか。職階が上になればピラミッドは細くなる。だから上に行く人間は年と共に選別されていく。あふれた者は昇進できないし、余った者はそこにいるわけにはいかずどこかに行くしかない。
大学を出ても業歴入社では、際立った功績がなくちゃ課長にはなれんさ。お前も40過ぎただろう、子会社に出向していずれ課長になれば御の字だよ」
木村
「ええそうなんですか」
荒木課長
「課長になればいいじゃないですか。私はプロパーですからこの年になってやっと課長ですよ。そしてまもなく定年で、後は木村課長ですな」
大野部長
お酒 「出世は実力じゃない。旧帝大の人間が上に行くことになっている。大きな会社になると国家公務員の世界と同じだ。人事は何年入社とか何年マスターとかいう呼び方をし、それで序列を決める。いい大学を出て大過なく過ごしたものがトップにいく。マスターならいうことなし。
お前のように業歴入社は公務員で言えばノンキャリだよ。途中まではお飾り的に並んでいるが最後まで行けないのは決まりきっている」
木村
「そうなんですか」
大野部長
「そうなんだよ。それはしかたがないと割り切るしかない。お前は順調に昇進できなかったことを悔やむとか恨むとかしてもしょうがない。今与えられた職務において最善を尽くすしかない。そして本体に戻るなんて考えずにここで骨をうずめるしかない」

木村はムッとなった。今まで他より遅れてきたけれど、これから挽回してやると思ったのに。それにISO認証では頑張ったつもりなんだが。
木村は何も言わずに、若手の席に移った。
木村
「小林さんでしたね。よろしくお願いします」
小林
「木村さん、部長との話を聞いてましたが、ここでは気楽にやってくださいよ。小さな工場ですからここでは足の引っ張り合いなんてありません。それよりも今の仕事を楽しみましょう。もちろん楽しむって仕事を一層効率的にとか品質を向上することですよ。
品質管理ってここじゃただ飯食いと思われています。ですがいろいろなデータから情報をくみ取りそれをフィードバックするわけです。品質向上とか効率アップができるとヤッタとなりますし、現場からも尊敬の目で見られますよ。それが品管の生きがいですよ」
木村
「おっしゃるとおりですね」
小林
「私が製品関係、伊藤君が部品関係を担当しています。課長と話して木村さんには顧客というか市場対応をしてもらうことになっています」
木村
「実は私は今まで不具合の原因究明とかライン品質改善とかはあまりしてこなかったのです。もっぱら生産ラインのデータとか顧客からの苦情などを情報処理して、各部門へフィードバックすることをしていました」
小林
「そのように伺っております。まだウチの製品についても詳しくないと思いますので大局的な観点で品質を見てもらおうと思いました。大丈夫、すぐに慣れますよ」
木村
「製品についての技術的なこととか品質状況については今後勉強していきます」
伊藤
「ボクは木村さんに会えるのを楽しみにしていました」
木村
「へえ!私の名がこちらの方に知られているとは・・・きっと悪いうわさでしょうね。そんな悪いことはしていないんだが」
伊藤
「悪いことじゃないですよ。ISOですよ」
木村
「ISO? はてなんでしょう」
伊藤
「ボクは工業高校を出てここに入ったんですけどね、同級生が静岡工場いるんですよ。向こうは親会社、こちらは子会社ですけど、ボクの頭が悪かったわけじゃありません。ボクんちはミカンを作っている兼業農家なんです。それで地元に残らなくちゃならなかったんです。この会社は福利厚生も良いですから地元では第一候補なんです」
木村
「すみません」
伊藤
「何がすまないんですか」
木村
「いやさ、ここに出向してきたことを都落ちしたように言ってさ、申し訳ない」
伊藤
「気にしませんよ。ボクだってしがらみがなければ東京に行きたかったし、せめて静岡に出ようと思いましたから。みんな思い通りにはいかないもんです」
小林
「そいでさ、伊藤君、ISOってなんだい? 俺も知りたい」
大野部長
「俺も知りたいね」
伊藤
「その同期が言ってたんです。静岡工場がISO9001認証したのは木村さんのおかげだって言ってました。彼も高卒だから会社を底辺から見上げているんですよね。一番汗を流して恥をかいたのは誰かって考えると、木村さんだって言ってました」
木村
「上の方はそうは考えてないようですよ。ISO認証の手柄はすべて指導した本社の人にあるようです」
大野部長
「上の人に良く思われるか、下の人に良く思われるかってのは重大な問題だな。だけど自分の良心に従って行動するしかない。どうせ死ぬときに自分の人生の評価するのは自分だ」
荒木課長
「部長は上よりも下を重視したから今田舎の工場にいるわけですよ。逆の価値観だったら今頃本社の部長だったでしょうに」
大野部長
「ということは俺も木村と同じってことだ、アハハハハ」
荒木課長
「一将功成りて万骨枯る、名をあげた将軍はいいですが散った一万は恨み骨髄ですよ、アハハハハ
そんなら一将功成らず兵と共にある現状の方が精神衛生上いいじゃないですか」
小林
「そいじゃ木村さんはISOについては詳しいのですか?」
木村
「詳しいなんておこがましいですが、一応ひととおりはしてきたつもりです」
荒木課長
「ウチは輸出はしてません。しかし先日の商工会議所の講演を聞きましたが、今後はどんな会社でもISO認証が当たり前になるとか言ってましたね。いずれウチもISO認証しなければならないとなると思っている。そのときはぜひとも木村君に頑張ってほしい」


1994年12月某日
木村と伊藤課長が居酒屋で飲んでいる。

荒木課長
「もう年の暮れだね。今年は木村君が来てくれてすごい1年だったよ。木村君が過去の品質情報を分析して体質的な問題を提起してくれたおかげで現場の考えが大きく変わった」
木村
「そう言っていただけると嬉しいです。傍から見るとパソコンを叩いているだけのようでしたので、お役に立ててうれしいです」
荒木課長
「我々も日々一生懸命働いているつもりだけど、日々のトラブルから一歩離れてビッグデータをながめるってことは重要だな。次年度、木村君に期待したいのは再発防止のための仕組みつくりだ」
木村
「私もそう考えてました」
荒木課長
ウイスキー 「そいでさ、ウチははっきり言って中小企業だ。文書も不十分。会社のルールも経理とか総務は法的な縛りがあるからある程度さまになっているが、製造関係のルールというのは文書と言えるかどうか怪しい。数代前の部長が書いた指示書がそのまま残っていたり、口伝えのままなんとなくってのがほとんどだ。
製造環境の温湿度管理なんてのも紙に書いて壁に貼ってはあるものの、それがいったいどういう位置づけなのか、誰の命令なのかはわからない」
木村
「私もそう思います。はっきりしたルールがない以前に、ルールを決めるかルールそのものがあいまいですね」
荒木課長
「あのさ、ISOなんてのは会社のルールというのを文書にするんだろう。ウチでしっかりしたルールを整備するためにはISO認証するのが手っ取り早いんだろうと思うんだ」
木村
「そうですねえ〜、ISO認証のためには紙に書いたルールが必要です。ただそのためにISOってのはやりすぎというか」
荒木課長
「そこは作戦的な意味もあるね。ISOに取り組まなければ文書化された仕組みを作れないというか」
木村
「おっしゃる意味は分かります。ISO認証は商売のためだけでなく、会社の改革にも役立つということになりますか。ただ会社の改革のためにISO認証をするのは費用対効果からいってどうなのかというのが疑問です」
荒木課長
「ウチも数年のうちにISO認証することになるだろう。そのときは会社の仕組みを見直すという観点で行きたいと思う。木村君にその任に当たってほしいと思うんだ」
木村
「わかりました。とはいえ私はISO認証はできると思いますが、会社を良くするためという観点では力不足だと思います」
荒木課長
「何を言うんだ。頼むよ。俺は認証が目的じゃなくて会社を良くする仕組みつくりをしたいんだ」


1995年1月某日
木村は居酒屋で一人飲んでいる。最近は仕事も暮らしも慣れてきたこともあり、ひんぱんに静岡の自宅に帰るのも面倒で、最近では年末から正月にかけて帰宅しただけでここ数か月帰っていない。そんなわけでこのところ無聊を慰めるのに外で飲むのが増えた。ついでに夕食を作る面倒を避けたいという気持ちもある。とはいえあまり外食が多いと予算オーバーになる。単身赴任というのはけっこう家事がめんどうなものだ。
ビール 木村は飲みながら、いろいろと考える。出向して9か月が経った。部長の話だといずれ転籍して、そのまま定年までいることになりそうだ。そうなるとあと15年、そんなに単身赴任しているわけにはいかない。子供たちが高校を出るのにあと5年、大学は自宅から通えるところではないだろう。そしたら妻にこちらに来てもらいたい。となると家はどうする? 今の持ち家を売るのか貸すのか、こちらに買うのか借りるのか。
でも静岡市とは違いこちらは田舎だ。妻がホイホイとこちらに来てくれるだろうか? 見込みは薄い。へたをすると離婚騒ぎになってしまいそうだ。もう少し都市部とか交通の便の良いところだったらなあと思いつつジョッキを空ける。これで三杯目かと木村は少し朦朧になった頭で考える。

伊藤
「木村さんじゃないですか」

突然の声に木村は振り向くと、伊藤が立っていた。

伊藤
「カラオケに行ってたんですが、帰り道少し飲みたくなりましてね」
木村
「そりゃうれしいねえ、一人じゃ酒がうまくない」

伊藤は木村の向かい側に座る。

伊藤
「木村さんが来てから品質管理課の評判が上向きですよ」
木村
「オイオイ冗談はよしてくれよ」
伊藤
「冗談じゃありません、本当です。
ただ木村さんを見ていると、ウチに来たのは不満のようですね」
木村
「えっ、そんなことないよ」
伊藤
「いや脇にいればわかりますよ。親会社から出向してきた人は一刻も早く親会社に戻りたいようです」
木村
「いやオレはもうだめだよ、あっちで無用だからこちらに出向してきたんだし」
伊藤
「最近ISO認証する企業が増えているでしょう。この市でもISO9001認証工場なんて看板を上げたところが出てきました」
木村
「そうか」
伊藤
「木村さん、ISOの専門家ならISOコンサルとか審査員になるとかっていう道があるんじゃないですか」
木村
「オレは専門家なんかじゃないよ。たまたまISO認証した経験があるだけさ」
伊藤
「誰も経験のない素人ばかりなんですから木村さんは専門家ですよ。審査員になれば賃金もいいんじゃないですか」
木村
「審査員になるって簡単じゃないだろう?」
伊藤
「友達が勤めている会社が今審査を受けようとしているんですけど・・・ときどき審査員が指導に来るそうです。そのたびに接待するのです。何度も来るので対応するほうも疲れてしまい、毎回交代で出るそうで、一度友達が審査員との宴席に参加したのですが、そのときどうすれば審査員になれるのか聞いたそうです」
木村
「うんうん、どうすれば審査員になれるんだろう?」
伊藤
「審査員になる講習会があるそうです。それが英語だそうで・・」
木村
「うへー、英語だって! じゃあダメだよ、オレは英語がからっきしだから」
伊藤
「いえいえ、初めの頃はイギリスまで講習を受けに行かなくてはならなかったそうです。その後日本でも英語で研修をするようになり、今年からは日本語でも審査員研修が始まったとか」
木村
「へえ、そいじゃオレでもなれるのかな」
伊藤
「ただ主任審査員になると審査報告書を書いてイギリスに送るそうで、英語の読み書きできないとダメだって言ってました」
木村
「なるほど、伊藤君、ありがとう。今までそんなことを考えたことがなかったからとても参考になったよ。オレも審査員になる方法を調べてみる」


1995年3月某日
今日、木村は小林に誘われて居酒屋にいる。話せば長いことながら事情があるのだ。
小林は計測器管理室の管理者をしている。計測器管理室といっても標準器類を備えて自ら校正しているわけではない。ほとんどを外注、つまり校正業者に頼んでいる。とはいえ計測器類を業者に送って校正を頼んでいては手間もかかるし運賃もかかる。ということで定期的に業者に来てもらっている。
焼酎 1回来ると数日滞在し最終日に慰労のために宴席を設けるのも恒例だ。業者が3名来ているのでこちらも小林一人というわけにもいかず今回は木村に同席を頼んだのだ。

すでに何度も来ている人たちなので、挨拶も慰労の言葉もなく、乾杯を唱和して後は飲むだけだ。酒の肴は計測器管理の効率化とか費用低減のアイデアなどの話だ。長い付き合いだからお互い隠すことなく情報交換する。
計測器の話が一段落して校正業者のリーダーが話題を変えた。

校正業者
「実は今年からウチの事業として審査員派遣を始めようと考えているんです」
小林
「審査員派遣? なんですか、それ」
校正業者
「ISO審査をご存知でしょう。そのおかげでウチの計測器校正業は大はやりですよ。今まではいい加減な校正だったところが多いですが、計測器の校正も管理も厳しく要求されますので、商売繁盛です。アハハハ」
木村
「それが審査員とどうつながるの?」
校正業者
「我々も初めはISOでは計測器管理にどういう管理が要求されるのかわからず、いくつかの認証機関にお話を聞きに行きました。そのとき計測器管理だけでなくISO審査周辺のお話を聞かせていただいたんですが、」

そこで話を切って焼酎をグビりと飲む。
そしてしばしの沈黙・・・

小林
「話を止めないでくださいよ、興味を持って聞いてんだから」
校正業者
「ちょっと話していいものかどうか迷いましてね」
小林
「他言はしませんよ」
校正業者
「そのときまあいろいろとお聞きしましたんですが、これから審査を受けようとする企業が急増するだろうと言ってました。そうするとまず審査員不足が問題になるだろうという。それから審査員の賃金が高すぎる、人件費管理というか人件費低減が必須ということでした」
小林
「審査員の賃金てどれくらいなの?」
校正業者
「驚くことに時給8千とかそれ以上とか」
小林 木村「えっ」
校正業者
「そりゃ需要と供給ですからね。供給が少なく需要が多ければ上がります。もちろん認証機関もそれを是認しているわけじゃありません。営利企業ですからいろいろ考えます。
それでウチが訪問していたときに認証機関から審査員の派遣をしないかという話が出されたんです」
小林
「お宅で審査員の有資格者を育成し審査に派遣するというわけか」
校正業者
「そうです。もちろん認証機関の社員の人件費よりは安くなるでしょう。それにウチの費用もかかりますからウチの審査員に払うのは8千どころか半分くらいになるでしょうけど」
小林
「それにしても時給4千円か」
校正業者
「審査員講習は今では日本語でするようになったそうです。とりあえず数人有資格者を育成してウチの事業のひとつに育てようと考えています」
木村
「でもさ、お宅がせっかく審査員を育成しても、その人たちが認証機関に転職してしまう恐れもあるでしょう」
校正業者
「どうでしょうねえ〜、元々認証機関の人件費削減ですから社員として採用することはなさそうですね。ただウチとの企業対企業の契約ではなく、認証機関が個人と直接契約してしまうとウチで育成したのが無駄になってしまいます」
木村
「その可能性はあるのですか?」
校正業者
「今のところは個人とは契約しないといってました。もちろんウチに話をしてきた認証機関ではですが。他の認証機関が個人契約するようになると・・
まあでもウチがピンハネするということは、実はピンハネ分で福利厚生というか年金とか保険を負担しているわけで、ウチに所属して派遣されるのと個人で契約してもそんな差はないと思いますよ」
木村
「今のお話に非常に興味を持ちました。今後進展があれば教えていただけませんか」
校正業者
「いいですよ、次回来た時にでも。ただ木村さん、あなたが審査員になりたいって思うなら止めた方がいいですよ。考えてごらんなさい。お宅で校正するよりもウチが安いから出しているわけでしょう。標準器の費用はおいといて、当然ウチのほうが人件費が安い。同じく認証機関の社員より人件費を安くするためだから、派遣審査員の手当は安くなる。木村さんが今のお仕事をしているよりも、派遣審査員になったとき高い賃金がもらえるはずがありません」
余計なことですが・・・ 次のようなイチャモンを予想する。
計測器校正の人件費は社内よりも業者が安い。審査員人件費も認証機関社員より派遣の方が安い。だけど木村の賃金よりも派遣審査員の賃金が高いということはあり得る・・・というツッコミがあるかもしれない。
確かにそうではある。しかし当時(1994〜1996頃)いろいろ聞きあたったところでは、東証一部勤務の技術者よりは、計測器校正業者から派遣している審査員の手間賃は高くなかったようだ。
木村
「なるほどなあ〜」
小林
「木村さん、品質のビッグデータを見て正鵠を得たのと同じく、細かいこと見ているより全体の収支を考えると答えがわかるってことですかね」

木村には小林の言葉が皮肉に聞こえた。

昔話であるが・・・ 当時、審査員派遣をしていた計測器校正業者はけっこうあった。私は審査員になる気はなかったが、計測器管理を担当していたので、そういうルートから審査事情についていろいろ聞いた。
複数の認証機関に審査員を派遣しているところが多かったので、認証機関による考え方の違いとか審査の進め方の違いなど役立つ情報が得られた。なにしろその頃はインターネットもなくISOの専門誌もなく情報入手が困難であったので、どのような情報でもありがたかった。

うそ800 本日の懸念はどうなったのか
冒頭に7000字では終わらないと懸念した通りになりました。とりえあず一旦ここで止めてあふれた分は次回に・・・
次回もお酒を飲みながらにしないといけませんね


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