環境管理組織法

17.04.17
ISO14001認証は日本の行政から信頼されていない。本当か? なんて言ってはいけない。分かりきってるじゃないか。しかもいつからかということもはっきりしている。
2007年3月15日に出された「公害防止に係る環境管理に関する報告書」というものがあり、その中でISO認証などよりも公害や違反を出さないようにしっかり管理せよ書いてある。
正確に言えば38ページもある報告書でISOに言及しているのは下記だけである。

上記報告書 p.13 事業者は、ISO14001 をはじめとした各種マネジメント手法の導入により整備された PDCA マネジメントシステムを用いて、事業者向けガイドラインの内容を勘案し具体的な公害防止に関する環境管理活動を実施することで、より実効あるものとすることができる。

この文章を、ISOは実戦には役に立たないと読む私はひねくれているだろうか?

そもそもISO14001なる規格を作り、環境管理のあるべき姿を指し示そうというのは、どういうことだったのだろうか?
いやISO14001は環境管理のあるべき姿を示したものなのだろうか?
ISO14001が目指した持続可能性とは、企業のあるべき環境管理と同じものなのか?
私にはわからないが、過去20年間の現実はISO14001がそのような偉大なものではないことを実証している。

ばい煙 日本は1960年代、公害列島などと揶揄されたほど、ばい煙、排水、騒音、地盤沈下など典型七公害によって市民生活が脅かされた時代があった。
もっとも公害が大変だ、困ったことだというのは60年代になってからのようだ。50年代、私が子供の頃、手塚治虫のマンガで、工場ができて煙突からモクモクと煙が出ているのを見て「町が発展して嬉しいな」なんて場面があったのを覚えている。戦争で工場が壊滅した状況から再び工場が建設されるのを見ると素直にうれしいと思えたのはわかる。それに当初はばい煙もかわいいものだったのだろう。

公害ってなによ? 「公害」とは「公益」の反対概念なんだそうだ。「公益」とは「社会全体の利益」である。となると「公害」とは「社会全体の不利益」ということになる。
しかし実際に「公害」と呼ばれているもののほとんどは、「社会全体の不利益」というよりも環境犯罪ではないかと思う。ここでいう犯罪とは罪刑法廷主義でいう犯罪、つまり法で規定に反する行為だけでなく、一般的概念としての犯罪である。だって騒音で近隣に迷惑をかけていれば法規制の有無に関わらず、原因者は明確でそれは不適切な行為と言えるだろう。私の考え方が一般的でないのだろうか?

政府も一般市民もそして企業も、公害列島を良しとはしなかった。そして1970年には公害国会と呼ばれたほどに環境規制の法律をどんどんと作った。それらの法規制は中国やタイのように形骸化することなく、しっかりと実施され日本の環境は良くなってきた。それはすばらしいことだ。

もちろん公害がなくなったわけではない。だが工場から発生するものは、社会的に許容できる範囲に維持できたと言えるだろう。 風力発電
それに時代と共に工場から排出される物質や騒音などの性質も変わっきた。最近では風力発電からの可聴帯域の騒音もあるし超低周波による人や家畜の不眠問題や、太陽光発電設備からの反射光害、反射熱波など新しい問題が起きている。クリーンとか地球にやさしいなんて言われる新エネルギーは、ちっとも環境にやさしくない💢
また人々の暮らしも変わり感覚も変わった。今では工場よりも商店や個人の問題に重点が移っている。大規模小売店やパチンコ屋などの騒音問題、マンションの夜間照明による光害も問題だ。かっては一般市民の騒音問題といえばピアノが多かったが、最近では公園や幼稚園周辺の子供の声が社会問題となってきている。通学路にある民家が通行する学生の声がうるさいとなると、これは公害よりもメンタル問題なのか? こうなると人間をなくすのが公害対策かもしれない。

実際に公害はいかほど発生しているのだろうか?

公害発生推移
引用元:「平成26年度公害苦情調査」 平成27年11月30日公害等調整委員会

注: 上の図を見て「お前は嘘ついてるじゃないか!大気汚染は21世紀になって増えているぞ!」とおっしゃる方はいらっしゃいますか?
お断りするまでもないと思いますが・・・平成9年からに急激に大気汚染が増加しているのは、そうです、ダイオキシンです。1999年に某テレビのニュースステーションが「ダイオキシンステキ」じゃなくて、「ダイオキシンは地上最強の猛毒」「廃棄物焼却場からのダイオキシンで所沢周辺では乳幼児の死亡がとんでもなく増えている」と放送してから日本中がダイオキシン狂奏曲が鳴り響きました。
私の住んでいた市では無償で家庭用焼却炉を配布して各家庭でごみを燃やして廃棄物を減らしていましたが、ダイオキシン騒ぎになって急きょ焼却炉を回収しました。それどころではありません、それまでは落ち葉を庭先で燃やして焼き芋したり、秘密の手紙を燃やすというのは普通でした。そんなことまで禁止されたのです。
あれから20年、ダイオキシンで亡くなった日本人はひとりもいません。
もちろんグラフからわかるように今でも大気汚染が年16,000件もあるわけですが、内14,000件が野焼きで工場ではありません。

公害関係法規制は親である公害対策基本法の下に公害対応や廃棄物管理について体系的に決めていった。
ところで公害を防止しようとしたとき、規制基準だけ決めて、これを守れという規制だけもあるだろうし、企業にこういう体制を作れ、こういう管理をしろ、こういう人を育成せよというシステマティックな方法もある。システマティックな方法とはズバリ管理体制であり英語で言うならマネジメントシステムである。それを定めた法律が「公害防止組織法」(正確には「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」)である。
公害防止組織法で枠を決め、該当する企業ごとにどのような管理をしなければならないかということを決めた。そしてもちろんその後も公害の変化、世の中の変化に合わせて法改正を続け今に至るのである。ところで企業と言っても多種多様だ。その法律が対象とするのは大きなところ、大きな機械設備のある所だけであって、小さな企業、負荷の軽い企業それに非製造業は対象外である。
なんてことは公害防止管理者試験を受験する人は、否が応でも丸暗記しないとならない基本のキである。私がここに書くまでもない。

ではそういう法規制で不足があるからISO14001を作ったのだろうか?
私が思うに、日本限定ではあるが、どうもそんな必要性はなかったように思う。
1994年頃、いや95年頃だったかもしれない。当時私はISO9001を2回ほど認証し、数社の認証を指導した最先端の人間だった。笑ってはいけない。今どきISOは任せなさいなんて言ったら笑われるだろうけど、25年前にISOは任せなさいと言える人は日本全国数えるほどしかいなかったに違いない。ともかくその頃これからISO14001というものが現れる、その講演会があるから聞いてこいと上長が言う。好奇心旺盛な私は喜んで東京まで来てISO14001の講演会を聴講した。
ISOTC委員というのだろうか、規格検討会に参加している人が講演した後、パネルデスカッションとなる。そのとき長年企業の公害防止をしている人もいた。討論ではその人がISOと言っても今まで公害防止をしてきたことの延長であり、しっかりやっていけばよいという趣旨の発言をした。するとISOTC委員なる人が、それは理解不足だ、そんな考えでは世界に通用しないとかかなりひどい言葉と口調で批判・非難したのを覚えている。なぜにそれほど悪しざまに言うのか疑問だった。 なんでかなー
ISO14001規格ができたのが1996年、我々は認証するために活動したわけだが、最初の頃は何もすることがないように思えた。法規制その他の要求事項の項番だけでなく、方針も文書も記録も是正も教育もすべて法規制を順守していれば間に合ってしまうだろう思った。
ところがそうではなかった。認証するためにしなければならないことはたくさんあった。我々はISO規格適合にするためでなく、認証機関の考えに適合するために、くだらない文書を作り、バカバカシイ教育をし、環境に悪い記録を大量生産しなければならなかった。これがISO14001認証活動の実態である。
もちろん法規制を守っていなかった会社は危険物の保管や有資格者の育成など欠陥があったかもしれない。いや法規制そのものの調査把握が不十分なところに気が付いて慌てたところもあったに違いない。
だがISO14001を満たすには、法規制を守っていれば必要十分だった。もしISO認証したおかげで遵法が確実になったというなら、それは論理が支離滅裂だよ。
おっと!そんなことをいうと継続的改善とか自主的活動だとか、反論する人がいるかもしれない。だが己の存在意義を主張するために、そういう発想をするのは止めた方が良い。日本の法律はしっかりできていて大多数の企業はそれを守っていたということを思い起こせばよい。それにあなたの存在意義などないのかもしれないし
沈思黙考すれば、俗に改善と言われているようなことをするより前に順法と汚染の予防に努めるのが当たり前だ。ISOもそう言ってますし

じゃあ公害防止関連法を守っていればそれでよいのかといえばどうだろうか?
前述したように公害そのものも時代とともに変わったし、かっては無害と思われていたフロンや二酸化炭素(!)にさえ有罪判決が出るご時世となった。
公害対策基本法は環境基本法に看板を変えたし、フロン規制や化学物質規制はどんどんと細かく厳しくなってきた。MSDSが法制化されたのはいつだったろうか?
今まで公害防止組織法とは無縁だった小規模工場、運輸、販売、さまざまなサービス業、教育機関、政府機関なども環境関連法規制に関わるようになってきた。だが公害防止組織法対象外であったというだけでやるべき法規制は作られたし、守らなければならなかったわけだ。
だから日本の法規制は時代に即して見直され、私の考えるところ法規制を守っていれば必要十分なことは従前とおりであった。

1997年からISO14001認証競争が始まった。当時から今に至るまで懸案となったのは環境側面の決め方である。認証機関によってはドンデモ理論を振り回したり、ちんぷんかんぷんの理屈を語る評論家や専門家も多かった。
しかしまっとうな人もいた。公害対策一筋だった人が雑誌に寄稿した中に「今まで管理してきたものが著しい環境側面なのだ」という論があった。私はそれを読んで全くその通りだと感じた。だが多勢に無勢でそういった正論は見当違い勘違いの環境側面決定方式の手法にはじかれてしまった。
注1:
興味のある方へ、その本は「電子技術」(1997年2月号)である。既にこの雑誌もなくなってしまったようだ。(2003年10月号で休刊)
注2:
今まで気が付いていなかった環境側面があるかもしれないなんて語る人は、実際には環境管理をしたことがないに違いない。
そんなアホは現実の仕事ができるはずがない。ましてや点数を付けて「著しい環境側面がわかった」と走り出すような人は環境管理に従事してはいけない。おっと、それ以外の仕事ができるということでもない。

だがあれから20年、環境管理向上どころか実際の環境管理にISO14001はなにも貢献しなかったようだ。いやしていなかったといえる。だからこそ経産省が『「公害防止に関する環境管理の在り方」に関する報告書』なるものを作成し、日本の企業に初心に戻って基本をしっかりやれと要求したのだと思う。
これが出たとき企業担当者は「確かにISOじゃねえよなあ、本来業務をしっかりやらねば」と感じたことは間違いない。少なくても私はそう考えた。だが認証機関も審査員も、そうはとらず、環境管理を良くするには我々(つまり認証機関や審査員)が頑張らねばならないと思ったに違いない。それこそが彼らのレゾンデートルなのだから

もちろん公害防止組織法だけで間に合うのかと言えば、不足しているところは多々ある。
前述のように工場の大きさや負荷によって篩(ふるい)から抜けてしまうところも多い。また工場の製造部門や施設管理部門だけでなく、設計・開発、営業、ロジステクス、オフィス管理その他サービス業に関わることが漏れている。それに対象範囲として、公共サービスや、分野としては教育などが非対象なことである。
そういった現状の公害防止組織法で漏れているところを含めなければならない。

この小論での私の提案は、日本においてもはやISO14001による環境管理向上ではなく、環境法規制の改正による環境管理向上を図るべきであるということだ。
具体的には、「公害防止組織法」を「環境管理組織法(仮称)」に改正し、その中で工場の公害防止に関わることだけでなく、事業分野すべてを包含してそれぞれのビジネスにおいて環境配慮を行うことを定めるべきだろうと考えている。
当然、従事者の資格も公害防止管理者だけでは対象分野をカバーできない。公害防止管理者がカバーしていない分野や業務には新しい資格を作ろう。
設計開発なら「環境管理者(開発)」、営業なら「環境管理者(営業)」、サービス業なら「環境管理者(役務)」といったふうにカテゴリーごとに資格を設けて有資格者に該当業務に従事させることにしたい。もちろん試験科目にはそれぞれの業務に関わる法規制や成すべきことをしっかりと覚えさせる意味がある。当然、公害防止統括者は環境管理統括者となり、公害防止主任管理者は環境管理主任管理者となる。
そして当然内部監査もさせるのだが、ここでは業務監査において環境業務の遂行状況を点検することと明記したい。ISOの内部監査のようなオママゴトをしても意味がないから。
そういった組織を構築することを法規制で定めれば、今までのISO14001のような箸にも棒にもかからない役に立たないものではなく、実質のある実戦的な体制ができるだろう。
日本が事業における環境管理全般のあるべき事項、実施すべき責務を決めた環境管理組織法を定めればISO14001は無用である。

それじゃグローバルな環境マネジメントシステムであるISO14001とかけ離れたものになってしまうというのは杞憂である。そのような組織体制が根ついているなら即ISO14001適合であり、認証機関は登録証を発行できるだろう。その実質は今までの認証よりも確実で間違いないものになるだろう。
ISO認証とは規格項番順に規定があるとか、ISO用語で仕事をしているとか、従業員がISO規格を知っていることではない。ISO規格要求事項を満たしていることなのだから。

ISO規格要求事項を満たすとはどういうことなのか? そんなこと分からなくては困るよ、
それは簡単だ、順法と汚染の予防、つまり事業に関わる法規制と事業の環境影響を把握し、それを踏まえて悪影響を抑え事故を起こさず法違反をしないで事業をしていくことだ。

おっと、規格の文言が抜けているとかISO教育をしていないとかしか言えないレベルの認証機関は存在を許さない。
あなたのことだよ!
かくて日本はISO14001を超えた環境国家となる。いや、元からそうだったと思うけど、

うそ800 本日の主張
一言で言えば、ISO14001は元々不要だったのだ。
日本は日本流の環境管理体制を作り遵法と汚染の予防に努めればよい。
グローバルスタンダードに合わせようなんて奴隷根性じゃなくて、我々がグローバルスタンダードだと言おう。

うそ800 本日の蛇足
お前は5年も前に同じことを語っているぞ!
そうおっしゃらないでくださいな、改めての自分に対する宣言、覚悟でございますよ。


T様からお便りを頂きました(2017.04.17)
おばQさま
いつもお世話になります。

「環境管理組織法」を読まさせて頂きました。
「一言で言えば、ISO14001は元々不要だったのだ」→見事な結論だと思います。
「今まで管理してきたものが著しい環境側面なのだ」→これが正論だと思います。
「ところがそうではなかった。認証するためにしなければならないことはたくさんあった。
我々はISO規格適合にするためでなく、認証機関の考えに適合するために、くだらない文書を作り、バカバカシイ教育をし、環境に悪い記録を大量生産しなければならなかった。」
→これに関連すると思いますが、以下のような判例がありましたので、参考までにお知らせします
(ご存じであれば恐縮です) ISOの書類作りを持ち帰り残業し、過労死した労働者が会社を訴えた事例です。

・・・・・・・・・・・・・・・・
「潤工社事件 甲府地裁 平成23年7月26日判決」 判決文より抜粋
平成10年5月末ころ,上記作業手順書等の見直し作業をさらに発展させて,ISO9001の基準に対応したものに整備し,これを同年6月末までに提出するよう本件会社から指示を受けた。
ISO9001認証取得のための作業は,品質マネジメント規格に合う物作りとしてのシステムを構築し,文書化するというものであり,具体的に文書化するものとして,基本理念,品質マニュアル,管理規定及び管理手順書等があった。また,全ての部署において,既存の作業手順などをISOの基準に対応するように見直しを行うことを求め,この見直しには,従来手書きで作成されていたものをデータ化し,写真の挿入,文書番号の整理等を行うことが含まれていた。
ISO対応業務の業務内容をみると,作業標準シート,作業標準書及び機械操作マニュアルは,その作成に当たって多くの細かい数値を入力したり,写真や図の作成・挿入をする作業を必要とし,Bは,期限までの短期間のうちに終えなければならないという精神的な負担が伴う状況の中で,上記の内容の作業標準シートを74通,作業標準書を1通及び機械操作マニュアルを3通,実際に平成10年6月末日の時点で殆ど完成させていたというのである。BはこのようなISO対応業務を,主に同月中に製造業務等の通常業務と並行して行っていたのであって,その負担は総じて十分に重いものであったというべきである。疾病発症前1か月間のBの業務は,休日が数日あったことや不規則勤務でなかったことを考慮しても,質的,量的な過重性を有するものであったというべきである。
Bの本件疾病発症前1か月間の時間外労働時間は100時間を超えているところ,専門検討会報告書の内容に照らし,本件疾病の発症とBの業務との間には強い関連性があると医学的に評価することができる。

T様 毎度ありがとうございます。
ISO認証制度は会社の効率を悪くし、余計な費用をかけさせたと思っておりましたが、働く人の命までとは思いもよりませんでした。
うーん、嘘は罪なんてことばもありましたが磯は罪でしょうか?
それてとも磯は罪を積むなのか、あるいは既に、磯は摘みかもしれません。
桃太郎侍とか暴れん坊将軍あるいは○○レンジャーたちに成敗してもらわねば

名古屋鶏様からお便りを頂きました(2017.04.17)
環境管理組織法
ただ、現在は「勉強」の出来る人間と、実務に長ける人間が、必ずしも一致しないという問題があると思います。そのため、名義だけの資格者が多い居るのでは?
この辺の問題を資格とどう絡めて運用面(試験問題)を改善するかでしょうね。

名古屋鶏さん 毎度ありがとうございます。
おっしゃる通り。
でもそれであっても現実のISO認証のバーチャル、形骸よりはベターかなと思います。なによりもトラブル、違反が起きたときは法違反ということで意味のある是正をかけることができるでしょう。

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