異世界審査員191.これから その2

19.08.08

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。民明書房からの引用はありません。

異世界審査員物語とは

1939年4月

今までつながっていた世界から新しい世界に切り替わり、カンナが去って1年が過ぎた。
地球規模の大事件だったとはいえ、その変動を認識していた人は中野や伊丹たちを除いてこの世界には一人もいない。変動の原因となったインドネシアの大地震は新聞のトップを飾ったが、それを気にした人も少ない。
新しくつながった世界も伊丹が来た世界とあまり変わらない。文明の発達状況も同様である。
中野はブレインたちと検討して、特に必要な部品や材料の調達は工藤一族に委託して行っているが、日本の世界でしたような工場建設とか商社設立まではしていない。既に入手している技術と大して変わらないので、余計な危険を冒すことはないという判断である。
おっと、このとき既に伊丹も岩屋も中野のブレインから外れている。既に代変わりした。

伊丹はこの世界で年配者の趣味とされている盆栽と囲碁でもして、悠々自適に暮らそうと考えていた。だが中野はそれを許さず、伊丹に皇国大学の教授になれという。
盆栽 伊丹はあと1年で傘寿だから勘弁してと言ったが、有能な人は社会貢献の義務があると言われて逃げようがない。中野は伊丹より若いとはいえ70を過ぎてもまだ代替わりできないことから、伊丹への意趣返しなのだろう。

教授といっても義務は月に一度講演をするだけ。伊丹もそれならと了解した。しかし大学に行くと、伊丹にお会いしたい、相談したいという皇国大学だけでなく他の大学の教員、院生、学部生、それに官僚、企業の技術者などが引きも切らない。相談内容は技術上の問題、新しい研究のネタ、人生相談、講演の依頼、縁談のお願いなど多種多様である。正直、伊丹はそれほど自分が有名人であったとは思いもしなかった。新しい仕事はボケ防止になると話している。
もちろんすべての人の願いをかなえることはできないから、秘書に面会は毎日3人、講演はお題の決定とスケジュール調整、交通機関とホテルの手配をしてもらうことにした。

伊丹は代が変わったとして、養子の正雄の仕事にはまったく口を挟まない。正雄も有能であり誠実であるので、中野の顧問としてはそつないどころかドラスティックな仕事をして期待に応えている。千代は幸子が面倒を見ているだろう。
伊丹は日々新聞を読み、ラジオのニュースを聞いて思うところはあるが、今は市井の一人と割り切っている。いつまでも俺が俺がではどうしようもない。
そんなわけで優雅な日々を送っているが、ときどき外乱は入る。


1939年5月

郵便 思いもかけなかったことであるが、イギリスのケント公爵夫人、つまりさくらから郵便が来た。
二人でコーヒーを飲みながら、幸子に読んでもらう。
伊丹は最近とみに老眼が進んできた。こちらは日本ほどメガネの技術が進んでおらず、伊丹の目にあったメガネが作れない。

幸子
「ええと……挨拶は飛ばすわね……双子の娘さんをこちらに遊びに連れて来たいとあります。もう5歳ですって、下に1歳になったばかりの男の子がいるけど、まだ乳児だから置いてくるって」
伊丹
「そういえば一昨年、北極圏周りの東京・ロンドンの定期航路が開設されたと報道されたね(注1)あれなら一昼夜と少々で来るらしい。とはいえ高い金を出すお客さんがいるものかね?」
幸子
「なにを言ってるのあなた、技術輸出や工場進出で我が国の企業幹部や技術者の渡航が増えたこと、欧州からビジネスマンや留学生が多く来るようになって、いつも満席らしいわよ」
伊丹
「へえ〜、そうなのか。もう20年も前だけど、さくらにこの国の大学は外国の文化や技術を導入する人の養成機関だ、将来は研究する大学にならなければと話したことがあったよ」
幸子
「ほんとねえ〜、この国はものすごく変わった。もちろん良い方へよ。すべては私たちから始まったのよ」
伊丹
「いやいや、この国の国民みんなの努力だ」
幸子
「ええと、来月の初めに来るそう……梅雨時なのにご苦労なことね、それからさくらと子供二人、数日この家に泊まるそうよ」
伊丹
「オイオイ、国賓レベルだろう。そんなことできるのか?」


1939年6月

さくらがわずかな随行員とともに扶桑国に里帰りした。実に9年ぶりである。とはいえこの時代は海外旅行は大変だから、
さくら
さくら
遠くに嫁げば里帰りどころか再び故郷の地を踏めない人も珍しくない。
種々の式典や公式訪問などが片付いて、さくらたちが伊丹邸にやって来た。伊丹邸の回りは警備の警官が物々しい。
さくらの実家は中野の宮家であるが、さくらの気分的には伊丹家が実家である。女中たちは大喜び。可愛がっていた女の子が外国のお姫様になったのだ、うれしくないわけがない。

晩餐になると、いつの間にか皇帝陛下、父親である中野、いまだ背はまっすぐだがだいぶ小さくなった高橋閣下(既に現役は引退した)たちが集まってきた。伊丹はギョッとしたが、すべて幸子が手配したらしい。なんだかんだ言いながら、幸子もうれしそうだ。
随行員も一緒になって飲めや歌えの大騒ぎとなる。


サッチャー
サッチャー
一段落してホッとした数日後、さくらが伊丹夫婦に随行者の一人と話をしてほしいという。
伊丹も幸子も毎度のこととOKした。
サッチャーと名乗るイギリス紳士であった。それにさくらが同席し、伊丹夫婦が相手をする。

サッチャー
「欧州いや世界においてイギリス(注2)の地位は下がりつつあります」
幸子
「確かにイギリスの植民地がどんどんと独立しているし、アメリカの台頭も著しいですからね。やむを得ないことでもあるでしょう」
サッチャー
「欧州ヨーロッパではドイツがフランスを巻き込み、ベネルクス、イタリアに声をかけて欧州経済共同体というべきものの結成をもくろんでいます。具体的には関税同盟と宇宙と原子力の共同開発でしょうか。そうなると我が国の国際的な地位は更に低下すると考えられます」
伊丹
「ドイツはもう植民地はないし、フランスもインドシナは独立戦争中だし、アルジェリアの独立は時間の問題でしょう。それに国内では民族自決から分離独立の紛争もあり、欧州諸国も列強から滑り落ちないよう必死でしょう。利害や状況が似た国同士が組んで生き残る策を考えるしかない。
とはいえ、イギリスはまだ環境が良い方でしょう」
サッチャー
「大英帝国は日が沈まぬと言ったのも昔話、産業革命を再びとか技術革新とか掛け声は何度も上がりますがなかなか効果は表れません。
ということで多くの方から伊丹さんのお名前が上がりまして、打開策策定にご協力をお願いしたいと…」
伊丹
「おやおや、まもなく80の年寄りになにをおっしゃる」
さくら
「おじさま、真面目なお願いよ。ぜひとも我国に来て政府の顧問になってほしい。地位が問題なら、こちらと同じようにイギリスの大学の名誉教授とかになっていただいて……」
伊丹
「さくらもサッチャーさんも、考えれば分かるはずですよ。国力とは軍事力とかお金があることではなく、お金を生み出すことです。それは基本的に国民の勤勉さ、技術力、資源ということで決まるでしょう。もちろんすべてそろっている国は少ない。でも持っているもので、いかなる国家を作るかを考えるのが為政者というものです。
今のイギリスでは何が困っているのか、その困っていることをどうすれば打開できるのか考えれば良い。客観的に見て扶桑国の置かれた環境よりイギリスの方がはるかに条件が良く対策は容易と思います」
サッチャー
「例えばの話、どんな施策が考えられますか?」
伊丹
「基本は農業、工業をしっかりすることでしょうね。農業は農地を大事にし、食料自給率を確保する。工業は優秀な技術者と技能者を養成する、そして単純な貿易黒字でなく技術貿易の収支の黒字を維持する」
サッチャー
「しかし工業も従来の機械工業とかでなく原子力とか宇宙産業が現れてきましたし、また額に汗して従来の産業で稼ぐお金の何倍も、金融業が濡れ手に粟で儲ける現実もあります。従来の産業構造とか価値観で国家が生き残れるのかどうか」
伊丹
「時代が変わろうと基本は変わりません。それに半世紀も経てば、金融業など砂上の楼閣だったと思い知るでしょう。
ちょっと違いますが、アイスランドという国があります。第一次大戦と第二次大戦では地政学的に重要な位置にあることから、アメリカやイギリスからチヤホヤされました。それで働かなくても全国民が食べていけるような状態でした。でも戦争が終わればその地政学的優位は霧散しました。今はまさにアリとキリギリスのお話です。
国家は農業と工業が基本、その技術と技能を最先端に維持すること、それが第一です」
さくら
「おじさま、例えば航空機産業を伸ばせばいいとか、そういう形のアドバイスを頂けません?」
伊丹
「飛行機も自動車も、研究開発に力を注ぎそして一人前の技術者と技能者を育てることだ。技術の水準は常に上昇しているのだから他に遅れないように」
サッチャー
「私はイギリスの工業レベルは世界一だと思いますよ」
伊丹
「それならイギリスの国力は世界一だから心配はいらないね」
サッチャー
「技術力だけでは国力にはならないのだと思います。それについて私はちょっとしたアイデアがあるのですが、聞いていただけますか?」
伊丹
「もちろん」
サッチャー
「技術力以外に必要なのは管理技術です。品質保証というものをご存知と思いますが、その認証制度を作るのです。工場や企業の仕組みと運用が品質保証の水準を満たしているか否かを判定する制度を作ることにより産業全体のレベルアップが図れます。今までにないアイデアでしょう(注3)
伊丹
「それはジョークのつもりかね? それにしちゃ面白みがない。
大砲 品質保証を考えたのは私だ。第一次大戦のとき我国で時限信管の品質向上を考えたのが始まりだ。貴国にQuality Assuranceを伝えたのは、第二次大戦のときイギリスに支援に行ったときだ。ブラケット博士やダウディング大将にその重要性を説明したのだが……さくら、実行しなかったのか?」
さくら
「もちろんしましたとも。軍需産業における購買規格としてBS5750となりました。ただ民需ではまだ一般的ではありません。まして第三者認証制度はありません。サッチャーさんはそこを新しいアイデアと言っていると思います」
幸子
「我が国では関東大震災後の調達要件として民需の第三者認証制度を作りましたね。1923年だから、もう15年も前ね」
サッチャー
「すると私の言ったことなど貴国では既に実施済なのですか?」
伊丹
「そうだ。そして運用した結果、メリットもデメリットも分かり今はその制度がない」
サッチャー
「今のお話では品質保証の第三者認証制度は欠点があったように聞こえました。産業復興の切り札にはならないのですか? ではどうしたらイギリスがもう一度世界の工場と呼ばれるようになるでしょうか?」
伊丹
「ものごとを改善していくのには、固有技術と管理技術そして改善しようという意志が必要だ。一部だけするとか簡単にということはない。学問に王道なし、産業発展に王道なしだ。
貴国の大先達ジェームズ・ワットやジョージ・スチーブンソンを見習って、発明や開発に努めることだな」

成  果
矢印矢印矢印
固有技術管理技術士 気

サッチャー
「結局、伊丹さんは我が国再興の方法は分からないのですね」
伊丹
「君は私に質問したいのか? それとも自分のアイデアを自慢したいのか?
さくら、サッチャー氏との面談はおわりだ。今度来る時はバートを連れて来い。彼に一緒に飲みたいと言っていたと伝えてくれ」



1939年7月末

セミ

ジジジジ

ジジジ

厳しい日差しが続きセミが鳴き、学校は夏休みに入った。

伊丹家に珍しい人がやって来た。パラオで病院を営む島村一家である。双子姉妹はもう14歳で、その下の長男も10歳になる。
島村の話では結婚して16年経ち、今回初めて家族を本土に連れてきた。来年娘たちを東京の高等学校に入れたい、それで東京を見せに来た、ついでに島村夫妻は大いに遅いけど新婚旅行として本土をあちこち歩きたいという。ついては夫婦が新婚旅行している夏休み中は、伊丹家で預かって面倒を見て欲しいという。

突然で一方的なお願いであるが、伊丹家にとってはどってことないことだ。なにしろ部屋はあるし、子守りにしろ家事にしろ女中さんが10名もいるし、力仕事なら男手もある。
一晩泊って島村夫婦は3人の子供を置いて出かけてしまった。
エミ ユミ
エミユミ
しかしこの3人姉弟はとんでもない子供たちだった。以前、島村医師は奥さんが英才教育をしていると語っていたが、それは嘘ではなかった。

島村姉妹は弟はもちろん、正雄夫婦の7歳の娘と4歳の息子の面倒を見るし、掃除や洗濯その他家事全般をしてしまう。伊丹家にはほとんど毎日お客さんが訪ねてきて中には外国人もいるのだが、姉妹は相手に合わせて英語やドイツ語で挨拶もできるし、お茶も出すし、あげくにお話のお相手までする。高官が来たときにはちゃんと敬語も使う。
そして正雄夫婦の子供の夏休みの勉強を見てやり、勉強に飽きた頃には近くのプールに連れて行って水泳を教える。庭に蛇が出て女中たちが大騒ぎしたときも、姉妹は慌てずに捕まえて近くの藪に戻してやった。

植木屋 ある日のこと、植木屋が伊丹家で作業中に脚立が倒れた。姉妹はうめき声をあげている植木屋の折れた太腿骨の位置を調整して充て木をした。おっとり刀で駆けつけた医者が、その処置を見てあまりの手際の良さに感心していた。

島村一家の教育は、単なる勉学でない本物の英才教育だと伊丹も幸子も感心した。社会常識・礼儀作法、家事能力、判断と行動力、学問ではない道具としての外国語、まさに島村姉妹 恐るべし。


幸子はじっくりと姉妹を見ていて伊丹に彼らの今後の考えを話す。島村は語らなかったが、どうせこれから大学を出るまで伊丹夫婦に預けるつもりなのだろう。
その後、伊丹夫婦は島村姉妹とお茶を飲みながら話をする。

伊丹
「エミとユミは何を勉強したいのかな? 将来何になりたいの?
おじさんは島村先生の古い友達なんだ、君たちの希望は最大限、かなえてやりたいと思う」
エミ
「私は田舎育ちで父と母から聞いたことしか知りません。だからまず世間ではどんな暮らしをしているか、どんな仕事があるか、生活も風習もいろいろと違うでしょうから、そういうことを知りたいです。将来はそれから考えます」
ユミ
「私も同じです。母はいろいろ勉強を教えてくれましたけど、科学といっても物理とか化学とかいろいろあります。だからまずどんな学問があるか知ることから始めたい。私の知らない学問も仕事もいろいろあると思います。そういうのを知りたいです」
エミ
「おじさま、聞いてよ。父の病院で私たちが産まれる前から働いていた平井さんが、もう歳だからと辞めたの。平井さんは事務長って名乗ってたけど、手術の手伝いから調剤から何でもしてました。
父は平井さんのようにいろいろできる人はいないからって、彼のいなくなったところを埋めるのに薬剤師と看護婦さんと事務員を雇いました。3人もですよ。
私そのとき初めて知ったの、医師が自分で調剤するとき以外は、薬剤師しか調剤できないんですって(注4)驚いちゃいました、知らないことってたくさんあるのね、だから知らないことを勉強したい」
ユミ
「そうそう、薬剤師が調剤したら監査もしなくちゃならないの」

思わぬ言葉を聞いて伊丹は言葉を返した。

伊丹
「監査?」
ユミ
「処方箋の監査と薬剤の監査があるのよ。医師の処方箋が患者に適切か、そして処方箋通り調剤されたか確認するの。
でも、間違いを前提にして確認する必要があるのかって不思議に思うの」
伊丹
「間違いがあるのを前提にするのではなく、間違いがないのを確認するのだろうねえ〜」

伊丹は考える。品質監査とは間違いを前提にするのか? 間違いがないようするのか? あまり考えたことはなかったが、エミやユミならどう思うだろう?

お茶 ともかく伊丹夫婦は島村姉妹が優秀であること、それは勉学だけでなく全方位であり更に考える子たちだと理解した。二人を預かって高校、大学と通わせることは吝かどころか喜びになるだろう。とはいえ大学に行く頃は自分たち夫婦が元気でいられるとは思わない。さくらに頼んでイギリスに留学させた方が良いかもしれない。そんなことを語りあう。



1939年10月下旬

伊丹邸に工藤が訪ねてきた。伊丹が春から大学教授をしていると聞いたので、好奇心が湧いたのだ。もちろん工藤が暇なのが一番の理由だ。
工藤も引退した今は、電車で15分程度のところに住んでいても、なにかイベントがなければ会うこともなくなっている。

工藤
「伊丹さんが大学の先生をしていると聞きました。講演もされているとか」
伊丹
「アハハハ、教授といっても講義はしないんですよ。仕事はいろいろな方の悩み事相談です。私がアドバイスできるものもありますが、お門違いもあります。
講演は月1回、年寄りのたわ言を語っているだけです。
でもね、あるとき第三者認証制度なんて役に立たないって話したんですよ。もちろんいい加減なことじゃなく、過去にあった制度のこと、その欠点など具体的に語ったのですが……どうも第三者認証制度と聞くと、技術躍進とか産業発展の特効薬と思う人が多いようです」
工藤
「とおっしゃると、どのような……」
伊丹
「第三者認証制度は技術を向上させるとか会社を良くすると思うのですね」
工藤
「品質保証とは一定状況を保つことでしたよね。第三者認証制度とはその仕組みが水準にあると裏書きすること」
伊丹
「裏書が責任を負うなら第三者認証制度の信頼性は担保できたでしょう。責任を負わない裏書は裏書じゃありません」
工藤
「この話は伊丹さんと20年もしてきましたね、アハハハ」
伊丹
「結局なんであろうと実質がなきゃだめなんです。規格適合ですという証書を発行しても、その証書に意味がなければ第三者認証制度は無価値なのです」
工藤
「ともかく伊丹さんは日々楽しく暮らしているのは分かりました。
さて、私は明日何をしようかなあ〜」

これで異世界審査員はおしまいでございます。
異世界に第三者認証制度を作り審査員をしようとした伊丹洋司は、結局異世界でも第三者認証制度は役に立たないことを25年かけて確認したというお話でございます。
伊丹の墓碑には「彼は第三者認証の価値を知りたかった」とでも刻まれるのかもしれません(注5)
それだけのことなら、わざわざ長い長い物語を書くことなく、簡潔に一行で良かったと言われるかもしれない。でもそれを理解しない人が大勢いるようですからダメ押しにはなったかと……


うそ800 本日の不遜
「坂の上の雲」は約200万字、「竜馬が行く」は同130万字、「異世界審査員」は160万字、文字数では司馬遼太郎に負けないぞ、
もちろん内容も負けてないつもり(笑

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注1
ジェット旅客機は1957年から1958年頃にボーイング707やダグラスDC8が実用化された。イギリスのコメットは1952年だが種々問題があり就航はそれより遅れた。当時はソ連領土を飛べなかったのでジェット機北回りでも20時間くらいかかった。現在のジェット機は航続距離が長く途中給油がないので12時間半である。
このお話ではジェット旅客機が運行される前で、35時間くらいかかってもおかしくない。

注2
イギリス人が自国をイギリスと呼ぶわけはない。通常はユナイテッドキングダム(連合王国)と自称する。書くときはUKだ。

注3
マーガレット・サッチャー もちろんマーガレット・サッチャーへの皮肉だ。彼女はイギリス復興のためにBS5750に基づく第三者認証制度を考えた。いっとき認証は大流行したが、イギリスは復興しなかった。管理技術では国家を復興させるなどムリ、固有技術でなければならないのだ。
それでもUKASは某国の認定機関よりはるかに有名で価値があると思われているから、決して失敗ではなかっただろう。負けたのは認定機関にブランド価値がなかった国だ。どことは言わないが…

おっと、私は「鉄の女」マーガレット・サッチャーを尊敬している。彼女のような政治家は日本にはいない。
ただ香港返還だけはサッチャーのミスだ。中国が約束を破るのが見え見えなのを無視した彼女は、その死後 評価を大きく下げた。サッチャーが香港返還をせずにしっかりしていたら、中国は香港を飲みこもうしなかっただろうし、デモで殺された香港人もいなかったはずだ。
でもそれもイギリスの国力がなくなったからと言えば、それまでだ。

注4
現行の薬剤師法ができたのは昭和35年(1960)だが、それ以前はどうだったのだろう?
私の子供時代1960年頃、かかりつけの医院では看護婦どころか医者の家族が調剤することは珍しくなかった。
なお1970年以前は薬剤師の男女比は五分五分だった。その後女性の割合が増えてきて、21世紀は6割が女性である。

注5
うろ覚えだが、1960年頃のスパイ小説「あるスパイの墓碑銘」の墓碑銘は「彼は金が欲しかった」だったように記憶している。60を過ぎたら記憶力大幅減で定かではない。もう一度読み直そうとしたが、あまり古い本だからか図書館になかった。


外資社員様からお便りを頂きました(2019.08.15)
おばQさま
連載完了 おめでとうございます。
これだけの内容を、定期的に更新し、終了まで行くのは並大抵の事ではありません。
読んでいて大変参考になりました、御礼と完了のお祝い申し上げます。
一緒で恐縮ですが、18周年なのですね、まさに継続は力なり。
やはり大団円は良いですね、色々なIF小説がありますが、現代知識でチートなんて出来る訳もなくて、歴史を振り返れば第一次大戦後の不景気をどうやって乗り切るかが重要なのでしょうね。
それが出来たアメリカは躍進、英国は余力で何と乗り切ったがその後は没落。
ソ連は社会主義という名の独裁体制で、国民の不満など何のそので乗り切り。
ドイツも国家社会主義という体制で復讐を誓い、躍進したが結局敗北。
日本はお書きになったように、産業の発展により富の再配分が出来たら、軍部の躍進に提灯ふる人も減っただろうし、ドイツの中途半端な真似もやらなかったかもしれません。その可能性は十分にあったのだと思います。
とはいえ全ては歴史の彼方ですから、8月15日は黙祷をして、過去を学び、少しでも見らにつながればと祈っております。
これからもお元気でご活躍下さい。

外資社員様、毎度ありがとうございます。
大恐慌対策ですが、ドイツは賠償金を途中から払わなかったり、ソ連も内外に経済状況を嘘をついていたり、アメリカに至っては第二次世界大戦によって息を吹き返したとか、一癖も二癖もあるところばかりで、順調に行ったところはありません。
日本が復興しようとしても非常に大変だったのは理解します。もちろん実際の過去よりうまくやるべきだったとは思います。でもそれは難しかったでしょうね。
おっと、クーデター参加者の処罰などは法に則り厳正に行うべきはもちろんですが、それだけで経済が良くなるわけはありません。
せめて南洋の委任統治領から石油が取れたとか僥倖があれば違ったのでしょうけど、そうなればなったでアメリカとかイギリス・フランスからイチャモンが付いたでしょうし……
翻って、目の前の韓国の行動に対していかにあしらうかということが我々の試練でしょう。
北朝鮮の弾道ミサイルがアメリカのミサイル技術を韓国が北朝鮮に渡したものというニュースもありました。真偽は不明ですが韓国から北朝鮮へ瀬取りとか技術支援とかが現実にあり、その結果として輸出管理のホワイト国の見直しにつながったのでしょうから、嘘とも言い切れないようです。
ともかくこの現実に、自分ができることをしたいと考えています。

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