ISO認証機関はサービス業である。嘘ではない。帝国データバンクで調べれば認証機関も認定機関も「その他サービス」となっている。もちろん経産省の業種分類表で決めてあるからだ。
ISO認証がサービス業といわれて気を悪くすることはない。サービス業とはホストやパチンコ屋だけでなく、弁護士事務所も政治団体も入る。
注:政党にも業種区分はあり、「その他サービス」である。
サービスとは無償で提供する作業や品物をいうのではなく、「形あるもの」ではなく役務つまり「形のない財」のこと、そしてサービス業とは役務を提供するお仕事である。
サービスはモノではないから農産物や工業製品と異なる特徴がある。
私は20年以上にわたりISO審査というサービスを受ける立場にいて、その品質が低いこと、ばらつきが大きいことを経験してきた。
サービスを受ける側の管理者・経営者はISO認証というサービスを重要視していないためか、サービスの品質の確認もせず、提供する側へのフィードバック、つまり苦情や転注ということをあまりしてこなかった。そして提供する側の管理者・経営者は便りがないのは良い便りと、提供するサービスの品質が低いことを認識していないと私は感じている。
お前の認識は間違っているといわれるかもしれない。日本で活動している認証機関は40社以上ある(以前はもっと多かった)がお前はそのいくつと取引があったのかと問われるかもしれない。
だが私の20年にわたる経験では、審査員の無知、無理解にほとほと困っていたのも事実である。そして仕事やネットで知り合った多くの企業のISO担当者から、審査員に困った、参った、審査のレベルが低い(サービスの品質が悪い)という声を数多く聞いてきた。それどころかISO認証が提供すべきサービスと、実際の審査員が提供しているサービスは違うのではないかという声も多い。
えっ、もう読む気が薄れましたか?
まあ我慢してください。もう少し行きましょう。
製造業なら物を作る人だけでなく検査する人もいるし、客に引き渡した以降も不具合あれば修理を受け付ける人、修理する人もいる。だから自社の提供する製品がいかほどのレベルにあるのか、客は満足具合や他社に比べてどうかという情報はいくつものルートから入る。だから物を作る人だけでなく、その品質情報は社内で共有される。嘘をついてもどこかからはバレるのである。
だがサービス業であるISO審査の品質は、サービスを生み出し提供する審査員に大きく依存している。更にその場にいない人はサービスの品質を知ることはなく、客が満足したのか不満なのか全くわからない。
審査に満足か否かのアンケートが始まったのは21世紀になってからのことであり、ほとんどの会社はISO審査を重要視していないから審査員が気分よく帰るように気配りしている。つまり「問題ない」とか「good」という回答している。どっちが金を払っているのかわからない。
お前が語っているのは嘘だとおっしゃいますか?
私の言葉では信用できませんか、ならば……ISO認証制度の元締め、JABの理事長がことあるごとに、企業が審査で虚偽の説明をしている、つまり審査の信頼性がどうしようもないって語っているじゃないですか。
だからJABの理事長の見解と私の見解は一致しています。
まさか企業が虚偽の説明をしても、審査員はそれに気が付かない、見つけないのが正常だとは言わないでしょう。飯塚理事長がおっしゃるように節穴審査員であるなら、目を見開かせなければなりません。
どんなビジネスでも品質は重要です。なぜならば資本主義社会においてはいかなるビジネスでも競争状態にあり、良い安い早いというQCDで他社より優位でなければ市場で生き残れない。
「あの美容院、言ったとおりに髪を切らないのよ!」「あの歯医者、腕が悪いのよ」「あの弁護士は裁判で負けてばかり……」まあそんな評判が立てば一挙に(以下略)
そういった評価や口コミはネットにもリアルでも満ち溢れています。また業種や製品によっては品質指標を公表あるいは第三者が比較して公表したりしている。
例えば携帯電話大手三社の実行速度とかアンテナが何本以下の地域なんて比較はウェブにある。あのメーカーの車はどこが故障が起きやすいとか、燃費がカタログデータと違うとかいう情報もいとたやすく見つけることができる。
多くの製品の品質情報も評判も実売価格もサービスの良し悪しも、ネットで一発だ。
では質問です。
ISO認証機関の評判、審査料金、審査でのトラブル情報、そういったものが公表されているか? ネットに挙げられているか? 問い合わせれば教えてくれるのか?
しかしながら私の知る限りISO認証においては、そういう情報が公開されていないし比較されていない。
お値段さえ公表されていない。審査費用を知りたくば、実際に見積もり依頼しなければ全くわからない。
審査料金を明示していないとは認証機関は高級寿司店並みなのでしょうか?
カワサキNinjaでもホンダ フィットでも、価格を知りたいならカタログを見てもよしGoogle検索でも一発だが、従業員80名のプレス屋のISO9001審査料金はいくらか? なんて調べることができない。知るためには認証機関に問い合わせなければならず、そうすればすぐさまうちにぜひと勧誘されることになる。
すぐに認証する予定はないが情報として知りたいとか、学生が研究のために知りたいとすればちょっと手がない。
おかしいとはおもいませか?
苦情発生率が、A認証機関は4.8%でB認証機関は5.7%というような情報を公開することは、認証制度の健全化、発展のためには必要なことではないのだろうか?
審査の前に派遣予定の審査員のご芳名と主要事項を記載したものが送られてきて、審査を受ける会社は諾否を回答する。だけど40年前にどこの大学を出たとか、20年前にとった博士号が、あるいは元東証一部上場会社で部長をしたことが、審査の品質に関係するとは思えない。当然、審査員諾否の判断に役立つ情報ではない。
そんなものより必要な情報は、ISO審査能力が大丈夫なのか、過去の審査でトラブルがあったかということではないか!
「甲審査員は誤審査率1.2%、苦情発生率10.5%でその内容は礼儀がなっていないとされたものである」とか「乙審査員は誤審査率7.2%で規格要求にないことで不適合として異議申し立てを受けたことが過去1年間に4回ある。苦情発生率3.2%で内容は時間にルーズであった」とか、そういう情報を事前に顧客に提供し、
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私の言うことがおかしいですか?
そんなネガティブな情報を出すなんてとんでもないとおっしゃいますか?
土地売買において土壌汚染があるとか近傍に火葬場の建設予定があるなら、告知義務があります(宅地建物取引業法35条)。賃貸の際、殺人や自殺があった部屋の告知については法的義務はないようですが、後で発覚すると民事で訴えることはできます(瑕疵担保責任)。一般的に事故物件は、最低おひとりに一定期間賃貸すれば告知義務が消えるようです。そりゃいつまでも事故物件扱いでは商売あがったりですからね。
その他、近隣に暴力団事務所があるとか異常者がお住まいも告知義務があるようです。
トラブルばかり起こしている審査員についても、そういう情報提供しないのは瑕疵担保責任違反となりませんか? ISO規格を誤理解している審査員も事故物件です。その場合は矯正しないと事故物件扱いは解消されないですね。
もっとも認証機関のえらいさんも規格不理解とか誤理解では矯正しようがないか?
品質を事前に確認するとか事後に評価するということが困難なのがサービスの特徴であるなら、品質向上はどうしたら良いのでしょう?
なんて悩むことはありません!
そういう問題は過去よりありました。破壊検査しなければわからない爆弾の品質向上、作業終了してからは検査で判定できない溶接などなど
そういうことへの対応策はわかっています。その手法を品質保証といいます。
おや!認証機関は専門でしたね?
品質保証とは品質要素とか品質特性への対策ではなく、管理方法を決めそれをしっかり行うこと。おっとISO認証機関には釈迦に説法、preaching to the choirでございました。
サービスの品質は提供する人に依存するというのが経営学の結論ですから、まずはサービスの提供者である審査員の力量確保が重要です。
では審査員になるには、いや審査員にするにはどういう修行を積むのでしょうか?
あなたは審査員ですか? それならご存じですね。
おっと、あなたは審査員じゃない、それで審査員になりたいと、どうすれば審査員になれるのか考えましょう……
猫でも杓子でも本当に誰でも、昨日までISOとは何かを知らなくても良いのです。ISO審査員になりたければ審査員研修機関に行って5日間研修を受けて修了試験に合格すれば審査員登録機関に登録できる。
そんなことを言うと、そんな甘いものじゃない、まず審査員になる資格が……とおっしゃるだろう。
では審査員になる資格とは何だろう?
審査員になる資格要件とは
非常に簡単というか誰でも満たせるとしか思えない。
おっと反論はCMの後で……じゃなくて次の項目を読んでからにお願いします。
審査員登録機関に登録されれば、あなたは審査員補です。
さて、ここからが問題です。
偉大なるLMJは「どの様に訓練しても20%の監査員に向かない人がいる」と語ったと言われる。監査の神様が語るなら、20人申請すればそのうち4人は、いずれかの段階で不合格にならなければならないはずだ。
注:20名というのは、審査員研修の最大の人数である。20世紀はどこも20名を確保していたが、最近は応募者が少なく4〜5名とかのこともあるらしい。
だけど審査員研修、修了試験、審査員登録、審査員更新のいずれにおいてもリジェクトされたという話を聞かない。まさか2割が落とされたなら、私の知り合いが50人も受けたのだから10人くらいは「チクショー、ダメだったぜ」と私に電話してきたはずだ。だがそんな人はいない。
長々述べてきましたが、力量不足の審査員が問題ではありません。力量不足の審査員が存在することが問題なのです。
不良を止めるのは品質マネジメントシステムだというなら、力量不足の審査員をなくすのはISO認証制度の審査員養成システムあるいは審査員評価システムの問題でしょう。
認証機関は、いや認証制度は審査員をどのように評価しているのか、審査員の質維持にどのような方策をとっているのか?
私は非常に関心がある。
私が見聞きしている審査の現実、審査の場のトラブルを考えると、失格した審査員がいないのはおかしいのではないのか?
周りから聞く審査のトラブルから推察すれば、少なくても毎年5%程度の審査員が資格更新ができなくてもおかしくない、いやそういう話を聞かないことがおかしい。
あなたもそう思うでしょう?
えっと、品質保証ってなんでしたっけ?
不良を起こさない仕組みを作り維持することでしたっけね……
認証制度は審査品質を維持向上させる仕組みをISO/IEC17021-1に基づき構築するのはもちろんだ。
しかしそれだけでなく、認証制度は認証しようとする企業や認証を参照する一般社会に対して、そのパフォーマンスを公表する義務があると考える。
審査のパフォーマンスとは、例えば次のようなことだ。