グレタと立ち上がろう

21.05.17

お断り
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、推薦する本にこだわらず、推薦しない本についても駄文を書いている。そして書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことである。読んだ本はそのきっかけにすぎない。だからとりあげた本の内容について知りたいという方には不向きだ。
よってここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。
ぜひ私が感じたこと、私が考えたことについてコメントいただきたい。


この本は読もうと思って読んだわけではない。SDGsとはなんぞやと勉強しようと、図書館の蔵書検索で「SDGs」をキーワードに検索したら約500件がヒットした。 本 よく見もせずに上から10件に予約のラジオボタンにチェックをつけてリターンキーを押しただけである。
ネット予約では中を見ることができないのが欠点だ。図書館の書架をさ迷えば立ち読みできるし、必要なら壁際のソファで本一冊を丸ごと読んでもよい。
しかし新型コロナウイルス流行が始まった2020年春から書架立ち入りまでは禁止されていないが、長時間滞在の禁止と入場時間の監視、ソファの撤去などで今はネット予約で図書館に行くのは引き取りだけ、返却は最寄りの公民館とか市役所の支所という塩梅。

ちなみに私の住んでいる市図書館は貸出が10冊までとなっている。近隣市町村に住んでいる人も図書館を利用できるが、その場合は限度が5冊になる。なぜ貸出数が違う理由が想像つかない。お互い様なのだからそこの市民と同じで良さそうだ。

資料がそろいましたよというメールが来たので引き取りに行って、この本がぐれたお嬢さんが書いたのでは "ない" ことを知った。正直、やっちゃったあ〜と思った。
とはいえその場でいりませんというのも気が引けて借りてきた。


著者はグレタ・トゥーンベリとは無関係の香港在住のイタリア人の女性ジャーナリストである。「グレタと立ち上がろう」というのはグレタと無関係で著者の意思のようだ。
「グレタの行動や発言を知って自分もグレタになろう」というだけで胡散臭い。いや、少なくても私はその程度で誰かに心酔することはない。

グレタ・トゥーンベリはこの本の中を確認しているのだろうか? そして内容に同意しているのだろうか?
読む限り、本書内にはグレタ・トゥーンベリの推薦文もないし、内容を確認したという記述もない。
ぐれたお嬢さん
この本は私が書いた
のではありません。
末尾の謝辞には、編集者や査読者が複数名挙げられているが、グレタ・トゥーンベリの名はない。
表紙を初めグレタのトレードマークである黄色いレインコートを来た女の子のイラスト(全然似てないけど)がたくさんあるが、あれもどうなんだろう?
本書の著者がグレタ・トゥーンベリと無縁なら、本書に間違いがあったときの責任はどうなるのか心配する。実際にIPCCの報告書との齟齬をいくつか見つけた。

日本でも山本良一はIPCC報告書にない、21世紀末には海面上昇が7mになるとか書いていた。ああいったことはまずいよね (注1)
とはいえ山本先生は他人の名前を持ち出していないからまだ良い。この本の場合はタイトルにグレタ・トゥーンベリを担いでいるから。グレタ、困っちゃうわ〜♪

グレタ・トゥーンベリの発言や行動を事実のまま宣伝いや広報するならご本人に異議はないだろうが、そうでなければ問題だろう。
本書を基にグレタ・トゥーンベリを批判する人がいれば……私も批判しそうになった……それは問題ではないのか?

以上を前提に話を進める。


書名著者出版社ISBN初版価格
グレタと立ち上がろうヴァレンティナ・
ジャンネッラ
岩崎書店97842658604872020.02.281800円

注:紫色の文字はこの本からの引用である。

すべてはお金を稼ぐため たった128ページの本である。だが厚さ14ミリもある(ノギスで測った)。表紙や遊び紙を含めて68枚で14ミリということは紙の厚さが0.21ミリになる。普通のPPCが0.09ミリだから2倍以上、ページをめくるのに困るような厚さだ。
お値段1800円+税である。儲けは大きいね。環境はビジネスだ、環境は金になるを実感する。


以下、気になった記述についてコメントする。


うそ800 本日のまとめ

この本はグレタ・トゥーンベリでなく、この本の著者の主張と理解したほうが良い。
そしてかなりおかしところがあり懸念がいっぱい!
広告では「科学的データに基づき、グレタ・トゥーンベリの主張を理解する」とあるけど、本当でしょうか?

ぐれたお嬢さんも有名になるといろいろ大変だね。もしこの本を読んで行動して問題があったとき、ぐれたお嬢さんのせいだといわれても困るだろう。
老婆心ながら心配である。




注1
温暖化地獄、山本良一、ダイヤモンド社、2007

注2
注3
「グレタは二酸化炭素が見える」と母親が語ったのは比喩表現だという。私は全くドイツ語は分からないが次の表現だったらしい。
Sie sieht, wie die Treibhausgase aus unseren Schornsteinen stromen, mit dem Wind in den Himmel steigen und die Atmosphare in eine gigantische unsichtbare Mullhalde verwandeln.
Google訳
彼女は温室効果ガスが私たちの煙突から流れ出て、風と共に空に上昇し、大気を巨大で目に見えないゴミ捨て場に変えているのを見ます。

注4
注5
地球温暖化狂騒曲、渡辺 正、丸善出版、2018、p.97

注6
水道使用量は気温によって大きく違う。寒冷地は少なく、暑い地域は多くなる。
国内では北海道・東北が少なく260リットル、沖縄が一番多く340リットル程である。
地域別の水使用状況
世界的には緯度が高いほうが少なく低いほうが多くなる。
JWRC水道マップ
シンガポールはマレーシアから水を購入しており節水の指導がされているようだ。風呂でなくシャワーがほとんどらしい。
シンガポール水調査表

注7
注8



外資社員様からお便りを頂きました(2021.05.17)
おばQさま いつも笑えるネタを有難うございます。
判っていてのツッコミがいつもながら鋭いですね。
>550万キロメートル四方のアマゾンの森の半分が消える(p.37)
文章の前後が判らないのですが、森の半分が消えるのは一年、それとも過去10年くらいでしょう?
とりあえずこれを「550万平方キロメートル」と読めば、何とか判るようになります。
明らかな誤訳でしょうね。 たぶん翻訳家が駄目な可能性大

>地球の表面積は2万2千キロメートル四方=約510,100,000 km2
仰る通りなのです。本来はこの面積30%が陸地、更に陸地の70%くらいが森林なのです。
そして何時、何年で半減したかも重要、ちなみに2010年からは一時下げ止まり一時増加に転じて、2019年からまた減少。 結局、森林の増減も政権の方針次第ですが、そういう理由は、都合が悪いから言わないのでしょうか?

>この本は偉い学者に監修を受けているとあるけど、チェックは大丈夫だったのだろうか?
原文が大丈夫かも不明ですが、翻訳のチェックも必要ですね。
出版の「岩崎書店」は、子供向けの本が主力のようですが、だからこそ正しい翻訳は重要と思います。 子供や学生に嘘を教えてはいけません。

外資社員様 毎度ありがとうございます。
おっしゃるように誤訳と思います。でも哲学のような書いている人しかわからないお話と違い、土地の面積なんて常識でわかると思います。球の面積の公式など忘れましたが、北極から南極まで2万キロなの一方から見た面積は2万キロメートル四方、裏側を足して3万キロメートル四方というところです。 もちろん球体ですから概算も概算ですが、550万キロメートル四方とはそれこそ2桁違います。
 注:正確には2万2千キロメートル四方
まあ、責任は著者ではなく翻訳者でしょうけど、
ちょっと待ってください
というと、この本の責任は著者にはなくて翻訳者にあるということになりますね。ほかに挙げた問題も翻訳時のエラーなのでしょうか?
グレタ・トゥーンベリの母親が「娘は二酸化炭素が見える」と語ったのは翻訳(スウェーデン語→ドイツ語→英語)という翻訳の積み重ねによるものなのかと同じ問題です。
いずれにしても間違いはいけません。翻訳者もしくは出版社が正誤表を配るべきでしょうね。
昔、高校の先生が「本には誤字脱字間違いがあるのは必然だ。だから正誤表のない本など読むんじゃねえ」と語ったのを思い出しました。今時専門書を買っても正誤表のついているものなどありませんね。


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