「15歳からの地球温暖化」

22.08.22

お断り
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、推薦する本にこだわらず、推薦しない本についても駄文を書いている。そして書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことである。読んだ本はそのきっかけにすぎない。だからとりあげた本の内容について知りたい方には不向きだ。
よってここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。
ぜひ私が感じたこと、私が考えたことについてコメントいただきたい。


ご注意
今回は見出しだけ表示して、本文は折りたたんでありまして、読むために広げると原稿用紙50枚、読むと1時間くらいかかります。
お時間のあるときにお読みになるか、興味のある所だけお読みください。


最近、杉山大志に凝っている。この本はまだ読んでいなかった。というのは少し前にした市図書館の蔵書検索で引っかからなかった。別の方の地球温暖化の本を読んだら引用していたので、改めて市図書館の蔵書検索をしたら、ジュブナイルというカテゴリーにあった。児童向けの分類だったので、大人の本(怪しい意味ではない)のカテゴリーではヒットしなかったのだ。
ともかく市図書館にあったので、借りてきて読んだ。成人向けを年少者が見るのはいけないが、年少者向けを老人が読んでも悪いことはない。


書名著者出版社ISBN初版価格
15歳からの地球温暖化杉山 大志育鵬社97845940899482022.01.311540円

タイトルからの印象は、ゴア元副大統領の映画のように世間ずれしていない子供たちを洗脳しようという本のように受け取れる。とはいえ今まで杉山氏の本を10冊近く読んでいたことから、彼は絶対にそんな本を書くとは思えない。きっと肩透かしとか打っちゃりを決めてくれるだろう。そう思って読み始めた。

本の構成はマスコミや政府あるいは学校で教えられている地球温暖化による現象や悪影響などについて20の設問を上げて、それは本当かを読者に考えさせる形式である。
その質問もその解説も面白い。ということでここでは本の設問だけあげ、それについて私はどう考えたかを書く形式でいってみよう。

彼がこの本でどのように答えているかを書いては、本が売れなくなるし、そもそもそんなことは禁じ手だからそこは書かない。
興味があったら是非お読みください。たった80ページしかないから一通り読むなら1時間で読める。じっくり考えたら何日もかかりそうだけど。私の場合は出典を見たり、他の本を参照したりしたので三晩(10時間くらい)かかった。


「問」と「色のついた部分」は本書からの引用で、「私が考えたこと」以下の文責は私にあります。
グリーンの部分をクリックすると、「私の考えた回答」が表示されます。
表示を隠したいときは、もう一度グリーンの部分をクリックしてください。


問1 ホッキョクグマは絶滅するの?

BBCは2020年7月21日にホッキョクグマが2100年までに絶滅の恐れがあると報じた。

私が考えたこと

問2 北極海の氷は減っているの?

IPCCは2021年に「北極海の氷は過去30年間の間に減っていて、地球温暖化が主な要因である」と発表した。

私が考えたこと

問3 キリマンジャロの雪は消えてしまうの?

2009年にアメリカの科学アカデミーが「キリマンジャロ山頂の氷雪が急速に失われており、今後20年で完全に消滅する」と発表した。

私が考えたこと

問4 サンゴ礁の島国は沈んでしまうの?

2000年10月、グリーンピースは「地球温暖化は太平洋のサンゴ礁のほとんどを荒廃させる」「中でももっとも脆弱なのはツバルとキリバス」と予測した。

私が考えたこと

問5 そもそも海面はどれくらい上昇しているの?

1986年、アメリカ環境保護庁(日本の環境省にあたる)のタイミス氏は「フロリダ周辺の海面が2020年までに60cm上昇する」と予測を発表した。

私が考えたこと

問6 日本の砂浜の9割は消えてしまうの?

2021.01.09放送のNHKスペシャル「未来への分岐点「暴走する温暖化"脱炭素"への挑戦」では、「日本の砂浜の9割が海面上昇で消滅する」という予測を報じた。

私が考えたこと



20問のうち、まだ6問目だ。これ以上コメントすることもなさそうだけど、まあ、頑張ろう!




問7 地球の気温は何℃上がっているの?

2021.01.09放送のNHKスペシャル「2030未来への分岐点「暴走する温暖化"脱炭素"への挑戦」では、「ホットハウスアース」という仮説を紹介し、2030年までに世界のCO2排出を半減させないと、地球の気温上昇が1.5℃に達して、「地球温暖化の暴走が始まり、気温上昇は2100年に4℃をこえ、甚大な被害が出る」と訴えた。

なんだかこの文章はSVOCがあっていないのか、複文/重文のせいか、良く分からない。NHKは標準日本語を話すなんて自称していたが、まあ事実とは違うようだ。

私が考えたこと

問8 「温暖化の暴走」になると、どんなことが起こるの?

気温の上昇が臨界点を超えると、自然界のさまざまな現象が動き出し、温暖化が加速するという。まず臨界点が低いもの(1〜3℃)のスイッチが入り、それによってさらに気温が上がると、臨界点が高めの現象に連鎖していくという。 (国立環境研究所)


私が考えたこと

問9 日本の猛暑は地球温暖化のせい?

気象庁は2018年の夏の気象について、地球温暖化の影響があったという見解を示した。

私が考えたこと

問11 東京は暑くなって住めなくなるの?

気象庁の推計では、東京23区。多摩地区、神奈川県東部、千葉県西部などは、都市化の影響によってその周辺地域に比べて1月の平均気温が2℃以上高くなっている。(2019.08.05)

おいおい、問8では温暖化の暴走と言い、問9では地球温暖化の影響と言っておいて、問10では気圧配置とかジェット気流、問11では都市化なのかよ!

こんなの構わないで次行こう、次、


問13 15歳で環境活動家になったグレタさんは何を訴えたの?

グレタ・トゥーンベリ 2019年9月、国連の気候変動サミットで当時16歳だったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは、地球の平均気温を1.5℃以下におさえるという目標を達成するために、CO2排出量を今後10年間で50%削減しても不十分だと訴えた。(時事通信フォト)

私が考えたこと

問14 大気中のCO2濃度が増えたらどうなるの?

1978年カナダの新聞は「サイエンス誌」に掲載されたワシントン大学のスツーバー氏の論文を引用し、「大気中のCO2濃度は2020年までに2倍になる」とした。

1978年のCO2濃度は340ppmほど、そして2020年は410ppm程度であり、ほぼ2割増であった。2倍は2割の誤植だったのかもしれません。いや、英語では〇割という言葉も活字もなかったと思う。

考えるまでもない、大きく外すようじゃ、予想屋にはなれないな。


問15 台風は強大化して増えているの?

環境NGOのWWF(世界自然保護基金)は2015年8月24日「地球温暖化による世界各国や日本の社会への影響」として「あいつぐ強い台風の襲来や地域的な大雨、洪水などが多発している」と報告した。

私が考えたこと

問16 超強力台風が上陸するようになったの?

NHKは2019年9月9日に関東をおそった台風15号について、関東に接近・上陸した台風としては「過去最強クラス」であり、「地球温暖化が進んで海の温度も上昇すると台風はより強くなる」と報じた。

私が考えたこと

問17 ゲリラ豪雨や集中豪雨は増えているの?

2021年環境白書「地球温暖化の進行に伴い、今後、豪雨や猛暑のリスクが更に高まることが、予想される」

これは考えてもわからなかった。
だって私が調べても知ることができるのは過去の大雨の記録だけだ。リスクがさらに高まるかどうかは専門家以外わからない。
内挿は信頼できるが、外挿は信頼できないのだ。


問18 山火事は増えているの?

イギリスのBBCニュースは2020年9月5日、「気候変動がアメリカのカリフォルニア州の山火事の規模や被害を拡大していることが、最近の分析で明らかになった」と報じた。

私が考えたこと



パトラッシュ、僕はもう疲れたよ、よって以降の問はパス、

本書で杉山氏がどう解説しているかは……本を読んでください。
正直言って、歯に衣を着せず皮肉を交えズバズバ語っています。もちろん地球温暖化の専門家だからすべて迷いなく一刀両断。
こういう本を読んだ子供たちは、多面的にそして論理的に考えるようになるだろう。2010年にツバルが沈むから募金をしようと語った善意の人になることはないだろう。

注:法律で「善意の人」とは「事実を知らない人」をいいます。要するに騙された人のことで、自慢になりません。無知は罪なのです。


ところで地球温暖化で大変だあ〜とIPCCの報告書には書いてありますが、IPCCは研究しているわけではありません。世界中から気候変動に関する論文を集めて読んで、それらをまとめて報告書にしているのです。
まとめるってことは、IPCCが気に入ったものを抜き出すことなんでしょうかねえ〜

現実には、過去にもおかしな論文を信用しておかしな結論に至ったこととか、温暖化の論文だけ尊重して温暖化否定の論文を排除しているとかいろいろ噂があります。 ホッケーステック(注21)とかヒマラヤの氷河(注22)が消えてなくなるとか
まあ、IPCCは権威があるなんて信じることもありません。何事でも疑って……いや何事も裏をとって考えましょう。つじつまの合わないことは納得できませんからね。


自然現象は理屈が分からないとか、因果関係が分からないことが多い。だが人や国を動かそうお金を出させようとして、
ワカランワカラン
ワカラン
証拠がなければ捏造するとか想像で補ってごり押ししようとするのは最低だ……いや犯罪だ。
私に地球温暖化が真実か否かを判断できるはずがない。それは私が愚かということではなく、情報不足だからだ。

だけどシロクマが減っているか、海面上昇が進行しているかは、調べることができる。
そしてそれらが真実でない、嘘だと分かればそれ以外も疑うのは当然だ。
「嘘をついた罰は、それ以外のことも信用されなくなることだ」とは、ジェームズ・ミッチナーの「ハワイ」の主人公のセリフだ。
だからシロクマが減っていると騙る映画や本ならば、それが語る地球温暖化も疑うのは必然だ。


うそ800 本日の推薦

「15歳から……」と題しているが、油断召されるな。中身は巷にあふれている地球温暖化解説本などとは比べ物にならないほどレベルが高く真面目なものだ。本の表題から「15歳」を取り除き、本文が仮名で書いているところを漢字にすれば大人用の地球温暖化解説本として最高のものだろう。

その理由の一つを挙げるなら、本書で取り上げた地球温暖化の主張、そして著者が反論する根拠についての出典を明記している。「そういう研究があった」とか「…と言われている」という表現が一切ない。そういうことは他の温暖化解説本では見られない。怪しげな専門家が書いている地球温暖化解説本で引用文献欄があるものがいかほどあるか?
当然ですが、私も気になったことについては出典をたどって調べました。そういうのが面白いのですよ。

最後に驚いたこと、
なんとお値段が1540円もする。杉山氏もこの本が新書では不向きだと思ったのだろう。確かに白黒印刷では子供は読まないし、グラフなどは識別できない。それにこういう本はきれいなイラストや写真が欲しい。

ハンバーガー
でも15歳に1540円は大金だ。この本を買う代わりに、デートでハンバーガーセットを食べるかもしれない。杉山氏はそのリスクを考えなかったのだろうか?

書き終わってから驚いたのは、19,000字にもなっていた
本書の文字数が28,000文字くらいしかないのだから、その3分の2も書いてしまったことになる。




注1
注2
1憶8千万年前まで南極はゴンドワナ大陸の一部で、当時は南半球の中緯度にありました。ですから恐竜の生きていた時代には温暖でした。実際に南極から数種類の恐竜の化石が見つかっています。
氷漬けの恐竜が見つかるかもしれないという人もいます。
 参考:アンタークトペルタ

注3
今の時代、アフリカのケープタウン周りの航海などありえないと笑ってはいけない。2021年日本の貨物船(?)がスエズ運河で座礁して運河は通行止めになった。そのため多くの船がケープタウン周りを選んだ。それは単に距離が延びるだけでなく暴風や暗礁があり日数的にもリスクが高い。
1956年エジプト大統領となったナセルはスエズ運河の国有化を宣言する。当然利権を持つ英仏両国は、ドル箱 スエズ運河を奪還する計画立てる。老獪な英仏は直接エジプトに軍事行動するのではなく、代わりにイスラエルに援助してエジプト侵攻させて、それを英仏が仲介してスエズ運河を確保しようとする。まさに悪巧みだ。

イスラエルに攻撃され運河を守り切れないと読んだナセル大統領は、イスラエルが運河を抑える前に大量の艦船を沈めて航行不能にした。そこで英・仏・イスラエルが組んで、エジプトに侵攻した。しかし突如としてソ連とアメリカがタッグを組み、停戦と英・仏・イスラエルの撤退を要求した。結局、3カ国の軍隊は撤退しスエズ運河はエジプトのものとなった。これがスエズ危機あるいは第二次中東戦争と呼ばれる。

スエズ運河は戦争、そして船を沈没させて引き上げられるまでの2年ほど航行不能となり、インド洋と大西洋の航路は喜望峰周りとなり、コスト的に船舶の大型化が必要となった。その代わりスエズ運河が通れる4.7万トン以下という制約はいらない。これがタンカーモンスター化の始まりである。

注4
参考
「北極海航路」シップ・アンド・オーシャン財団、2000
・「グローバル・ロジスティクス・ネットワークー国境を越えて世界を流れる貨物」アジア物流研究会、成山堂書店、2019

注5
注6
「歴史を変えた気候大変動」ブライアン・フェイガン、河出書房、2001、第7章

注7
注8
注9
注10
関東大震災の跡と痕を訪ねて 三浦半島先端の隆起地形その1

注11
気仙沼市議会議員 今川悟ウェブサイト

注11.5
「地下水と地形の科学 水文学入門」、榧根 勇、講談社学術文庫、2013

注12
注13
注14
注15
気象庁 各種データ・資料による。

注16
グレタさんとドイツ鉄道がツイッターで応酬
2019.12.15グレタ・トゥーンベリがドイツ鉄道でスペインからスウェーデンに帰るとき、ドイツ鉄道の床に座った写真を載せて「満員電車で座れない」ツイッターに書いた。これに対してドイツ鉄道は彼女は1等車に乗っていたはずと苦情を言ったという。写真では彼女は床に座っているが、周りの席に座っている人がいないとかツィートされていた。要するにパフォーマンス(演技)らしい。

注17
注18
注19
注20
注21
注22
2012年には「ヒマラヤの氷河が2035年までになくなってしまう」と書いてあったが、今その記事はなくなり代わりに2050年までに氷河が完全に消滅するとある。オオカミ少年は不滅だな、
世界の山間部の氷河が、2050年までに“完全消失”する:衝撃の研究結果が意味すること(2021.04.30)




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