監視

22.06.13

赤ちゃん 笑い話で、奥さんが夫に「赤ちゃんを見ていてね」と頼んで少し離れていたら、赤ちゃんがぎゃんぎゃん泣いているのに夫は手を出さず「じっと見ていた」なんてのがある。
奥さんは「赤ちゃんの面倒を見てほしい」って頼んだのよ

警官 監視なんていうと、なんだか物々しい。皇族とかえらいさんが来るとき、交差点とか道路のあちこちに警官が立ち並んでいるさまが思い浮ぶ。
ISO規格には、監視して、監視する、監視すれば、監視しろ……とサ行変格活用のごとくたくさん出てくるようだが、数えてみると10個そこそこしかない。命令されるのが嫌だから多くあるように感じるのかもしれない。


国語辞典で「監視」を引くと「悪いことが起きないように番をして見張ること、またはそれをする人」なんてある。要するに吉兆がないかと見たり、子供が楽しんでいるのを見守ることではないようだ。

ISO規格の原語は「monitor」である。英英辞典を引くと

  1. to carefully watch and check a situation in order to see how it changes over a period of time
    一定期間、変化があるかどうか、注意深く見守ること
  2. to secretly listen to other people's telephone calls, foreign radio broadcasts etc
    電話や外国のラジオ放送などを盗聴する
    古い映画で、共産圏の人がひっそりと西側のラジオ放送を聞くシーンが思い浮かぶ。

英英辞典の2番目は危機感・圧迫感があるが、1番目は変化を継続してみることで、善悪とか危険という意味はない。お魚の焼け具合はどうかなとグリルをのぞくのも、子供が習っているピアノが上達したかを見る(聞く)こともmonitorである。
但し一度すれば良いのでなく、継続してあるいは定期的にすることの意だ。変化することのない文書は参照(access)はしても監視はしない。

注:「参照」というと「refer」かと思うが、原語が「access」である。「refer」は「言及する」とか「引用する」とかの意味で、「access」は「会う」「立ち入る」とか「利用する」という意味。
とすると「参照」と翻訳したのはちょっとずれていて、「利用する」のほうがよかったのではないかと思ったが、「利用」と翻訳している原語はavailableで「利用する」の原語は「use」である。このあたりのニュアンスの違いは判らない。

監視ならwatchと頭に浮かぶかもしれない。watchは観察するというか、monitorよりは弱いニュアンスらしい。watchも見張りなのだが、monitorはもっと緊張感をもって見張っている感じらしい


では本日は監視についてくだらない話を進める。
対象とする規格はISO9001を取り上げる。なぜ9001かというと、改定が一番多く、監視の要求にも変遷があったという理由だ。
改定がまだないとか1度だけではおもしろみがない。

ISO9001:1987年版
4.9.1(b)適切な工程及び製品特性の監視
4.9.2規定要求事項を満たすことを確保するために、連続的な監視が要求される

ISO9001:1994年版
1987年版に同じ

1987年版を読むと、監視とは対象物の性質が変化するので、一度だけ点検してもダメなものに対して行うと読める。前述したが、反対に購入品とか設計図書は一度点検すれば変化しないから経時的とか連続的に点検する必要がないとみられる。
日常生活で例えれば、入学試験の結果は一度聞けば後で変わることはまずないだろうが、受験勉強を一生懸命しているか否かは日々様子を見なければ分からない。前者は確認(confirm)すればよいだろうが、後者は継続あるいは定期的に監視(monitor)しなければならない。

注:ISO規格の過去版では確認(confirm)という語は普通に使われていたが、2015年版では使われていない。理由はわからない。


ISO9001:2000年版
7.5.1(e)製造工程は監視する
7.6実施すべき監視及び測定を明確にする
8.2.1顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受け止めているかについての情報を監視すること
8.2.3プロセスを適切な方法で監視する
8.2.4製品の特性を監視する

ISO9001:2008年版
2000年版と同じ

2000年版では、監視を製造だけでなく、業務全般に適用している。それは品質保証規格でなく品質マネジメントシステムの規格となったからそれくらいしないといけないと思ったのだろう。
いや思っただけでなく2000年版の序文冒頭に「もはや品質保証ではない、品質マネジメントシステムだ」と声高く宣言している。
それはすばらしいということではなく、ISO9001は品質保証には使えなくなったと白状したように思える。

ISO9001規格が劣化したのはこのときから……いやいや1994年版で第三者認証をメインにしたときから……いやいや、1987年の初版で第三者認証にも使えると記述したときからというのが当たりのようだ。つまり生まれも悪く育ちも悪い、かわいそうな話である。


2015年版
8.5.1(c)製品が合否判定基準を満たしていることを検証するために監視する
9.1.1(b)〜(d)監視の方法を決め実施し評価する
9.1.2顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がそのどのように受け止めているか監視する

2015年版は共通テキスト化もあってか、顧客に提供する製品・サービスの監視と、組織内部の業務の監視の項番を分けてないが、言っていることに変わりはない。


さて家庭の問題(or 事例)を基にISO規格を考えるのが目的である。
あまりあてにならない上記を参考に

  • 家庭で監視しなければならないものとはなんだろう?
  • 監視とはどうすればよいものだろう?
  • そもそも監視というのはいったいなんだ?
    そんなことを考えてみたい。

    家庭で監視をしなければならないことってあるだろうか?
    朝顔観察 たくさんあるよね、

    とはいえ小学校夏休みの朝顔観察では花が咲いても枯れてもそこでおしまいで、観察のみでそこから先のアクションがない。となると、朝顔観察はwatchであり、監視(monitor)ではなさそうだ。

    監視を監視だけで終わらせず、是正なり緊急事態の対応なりにつながることでなければ、そもそも監視する必要がない。


    まずお金の流れがある。
    会社に限らず家庭でも、なにごとでも予算がありその執行があり結果を見て是正につながる。PDCAである。悲しいことに我が家では収入は年金だけだ。

    年金の金額は決まっていて……とはいえ毎年若干の見直しが行われ2022年は減少した……それ以内で暮らさないと、遠くないいつの日か我が家は破産してしまう。
    つまり収入は一定だが、支出を監視しないとならない。
    ではどのように監視しているか。

    我が家は電気(ガスはない)、上下水道、電話など公共料金と、マンションの管理費などは銀行引き落としである。それらはほとんど固定費とみなせる。現金で支払うものは、日常の買い物、食料品やこまごました生活必需品に限られる。家族数も変わらず暮らしも変化がないから、それらも実質固定費である。

    変動費といえるものは突発的な医療費とか香典などの交際費くらいだ。
    あとは季節の衣料など予め計画しているものだけ。我が家では今あるものがボロまたは飽きが来なければ、同種のものを買わない主義だ。もちろん新しいものを買えば今までのものは捨てる。だから保有する衣料は増えも減りもしないはずだ。

    それで毎月働いていた時の月給日に日常生活に必要な一定金額を下して、日々使うだけだ。
    そして監視といっても、家内の財布に現金が残っていれば良いというだけ。食費がいつもより多くかかっているから今月一杯は切り詰めようという発想はあり得るが、叔母さんが亡くなって香典と旅費がかかったから切り詰めようという発想はない。

    羽左先立つものは金羽右

    羽左万事お金羽右

    死ぬのが早いか、破産が早いか

    そんなふうにあまり細かく考えない暮らしで困ることもなかったのだが、段々と問題が発覚してきた。
    月々の暮らしで年金だけでは足りなくなり預金を食いつぶすようになってきた。現在では、毎年30万から50万預金が減少している。
    家内は今の減少を続けても15年は大丈夫だという。15年後、私が88歳になれば旅行にも行かず、フィットネスクラブに行けるかも怪しい。そのときは今ほどお金を使わないだろうという。大丈夫だろうか?……まあ、先のことはわからない。
    とりあえずは月々の支出額と預金残高を監視中だ。


    家庭で監視しなければならないものは、お金だけではない。
    エコ生活をこよなく愛する人たちは、電気や水道やごみの量を気にしているだろう。
    我が家は環境保護 狂信 者ではないが、使用量が過去平均を大きくずれれば何かあるだろうと月ごとの使用量は見ている。

    マンションに越してきた初めの年、ある時から電気代が増えた。ちょうどそのとき電気の点検があり、来てくれた人が洗濯機の漏電を見つけてくれた。その洗濯機は7・8年使っていたと思う。
    危なかった。電気代より感電は怖い。
    点検がなかったら「電気代が増えたねえ〜」なんて言っていて、いつか誰かが感電したと思うとゾッとする。普通は気が付くものだろうか?

    それから10年ちょい、電気代金に大きな変化はない。いや家電を更新した時には若干の変化がある。
    前の賃貸マンションに住んでいたとき使っていたエアコンを持ってきたのだが、それまでに引越しを何度かしており、冷媒の配管が何度も曲げられてひびが入って危なかったので、どうせならと翌年エアコンを更新した。するとそのとき一挙に電気代が下がった。
    エアコンは省エネ競争が激しい。製造が数年違うと使用電気に相当差がある。

    電気代の季節変動 その他、更新で省エネ効果が大きいのは冷蔵庫だ。とはいえ使えるなら故障するまで使ったほうが良いというのが私の経験則だ。
    ここ数年 大物家電の変更はなく、年間使用電力量はほとんど変わらない。
    正直言って数年後に、エコキュート、エアコン、冷蔵庫、IH調理器など大物家電の更新が一挙にやってきそうで怖い。


    過去に節水2で書いたが、水道水使用量はもう減らしようがない。用途も変わらず、設備も変わらず、家族数も生活様式も変わらないとなれば、使用する水の量が変わるはずがない。
    現在は毎月の検針結果票の使用量を見て異常がなければおしまいだ。
    ときたま大姪などが我が家をベースキャンプにしてディズニーランドに遊びに来ると、水や電気の使用料が増えるが、コロナ流行以降は遊びに来てない。


    家の造作については監視というほどではないが注意して見ていると思う
    大げさなことでなく、普段のお掃除の際に、壁紙の剥がれ、ドアの小口の剥がれ、スイッチの動作がカチカチでなくグラグラとかしてないかなど、壊れてからとか大きく損傷してからよりも小さなときに気づけば簡単に治せることが多い。

    数年前、蛍光灯電球をLED照明に切り替えた。そのとき小型の蛍光灯と全く同じ寸法のLED照明器具が見つからず、似たようなものに交換したのだが、結果的にいろいろ支障が出た。同じW数でも寸法が若干違い、カバーが過熱したりいろいろあった。
    まあそういった不具合は一度経験すればおしまいで継続して監視するまでない。


    それから大きな監視項目は健康管理が多い。
    私の場合、血圧は毎朝晩に測って記録しているが、家内は自分が血圧を測る代わりに毎月医者にかかっている。そして血液検査も3月に1回しているそうだ。
    医者に行くのが面倒でないとか自分のチェックに自信がないならそれがベターだろう。

    歯医者 歯は家内も私もふた月に一度歯医者に行って診てもらっている。9割は歯石を取って終わりだが、2年に一度くらいは詰め物が合わなくなったから交換しようとか、歯の咬み合わせが変わってきたとか言われる。妥当と思えるものは対処しているが、手を打たなくても良さそうなことはスルーだ。

    体力
    体力は監視せずとも変化を自覚する、自覚せずにいられない。
    日々スイミングをしていると、年年歳歳どころか月々週々泳げなくなっているのがわかる。
    例えばクロールで連続で泳げる距離は毎年短くなっている。

    連続で泳いだ最長距離備考
    20120m5月からスイミングスクール受講開始
    2013100m
    20141600m
    20152000m
    20161600m
    肩を痛めて半年以上整形外科に通う
    20171500m
    20181500m
    20191800m
    20201300m
    コロナ流行でプールに行った回数190回と大幅減
    20211400m
    肉離れで整形外科に通う
    20221000m
    もう年だろう

    上の表を見ると、最初の2年くらいは泳げるようになり上達したということだろうが、2016年以降は連続で泳げる距離が減る一方に見える。つまり加齢によって単純減少しているのだ。

    ところでなぜ泳げなくなっているかというと、呼吸が苦しいとかいうことはないが、泳いでいて疲れてしまうのだ。特に今年2022年はめっきり疲れやすくなったと感じる。2022年の今、500m泳いだ時の疲れは5年前1500m泳いだ時の疲れと同じくらいじゃないかと思う。

    年齢ばかりでなく、コロナ流行のせいでジムやスタジオの運動をしていないことと、プールに行く回数が大幅に減って、体力そのものが大きく低下していることもあるかもしれない。

    人間歩くことが運動の基本、体力つくりの基本らしいが、この歩く速さも落ちるばかり。それと足が上がる高さが低くなっている。だから階段とか山道に行くと足が引っかかることが多い。そのうち平らなところを歩いても躓くようになるのだろう。


    このほか車とかバイクを持っている場合は、始業点検を始め種々の点検を行う義務がある。とはいえ今時はエンジンオイルの汚れ塗料を見るなんてことはしていないのかもしれない。
    バッテリー液を補充なんてしないんだろうね?
    幸いなことに、我が家には車もバイクもない。楽でいい。

    自転車 我が家にも自転車はあるが、これもどこにでもあるママチャリなので特段点検というほどのことはない。とはいえ、空気とブレーキの利きはマンションから出るときは必ず見ている。空気はタイヤを押せばわかる。エアが足りないときはマンションのエントランスの管理人に空気入れを借りて数回ポンプを押せばまにあう。

    ブレーキはマンションから公道への出口がほんの僅か下りになっているので、いつもそこでブレーキをかけて止まり具合を見る。これは家内も同じだ。
    とはいえ細かく見ていないから一度チェーンが伸びていて米つきにいったら、荷物が重くてチェーンに力がかかり、ギアからチェーンが外れた。その自転車を買って5年くらいになる。その程度の頻度なら、日常点検をするまでもないかなと思う。


    いろいろ彷徨ってきたが、まとめる。
    監視とは当たり前だが監視が必要なことについて行う。監視が不要であるならしないほうが楽だ。
    毎度のことだが、ISO規格に書いてあるから監視するという発想は愚である。
    問題発生を防ぐためといっても、発生する損失と監視の手間暇を天秤にかけて損失が大きいなら監視を行うというのが判断基準だろう。
    また監視結果に対応して対策がなければ監視する意味がない。修理ができないなら故障部品を用意しておき、故障の際には速やかな交換体制を作っておけば、監視することもない。

    我が家で支出を監視しても、必要なものは払わなければならない。お金が足りないよというなら、支出を監視してもしょうがない。その場合は収入を増やすとか、生活水準を下げなければならないという単純な話だ。

    ISOMS規格をみると、損益を考慮するという観点がない。ISOMS規格の守備範囲はそこまで広くないというなら、そうなのだろう。
    ならば審査で御大層なことは言わないほうが良い。

    家内

    ところで家内の顔のしわの数も監視しないといけないかも?
    そしてしわの本数とか深さが基準以上になればエステに行けと言うのが良い夫なのかも?
    エステでは足りないから美容整形だって!

    うそ800 本日の監視の話

    ところでISO認証機関の監視項目は何だろう?
    それは審査の質とか苦情なんだろうと愚考する。
    認証件数だって? そんなもの監視して何か役に立つのか?
    昔、JABの中川 梓という人が、認証件数は認証の信頼性の指標と語っていた。彼女はボケていたのだろう。
    どう考えても認証件数と信頼性とは何の関係もない。




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