アイソス2022年11月号

22.11.14

私とアイソス誌の付き合いは長い。馴れ初めはISO9001の1994年版改定のときだから、1993年だと思う。もう30年も昔になる。
勤め先は既にISO9001とISO9002をひとつずつ認証していた。ひとつの工場でISO9000sの認証を複数受けるというと不思議に思うかもしれないが、当時は製品対応で認証を受けることが当たり前というか、客から要求された製品だけ認証を受けた。それもISO9002とかISO9001とか指定された認証規格で受けるのが当たり前だった。そりゃ必要以上お金をかけるはずはない。もっともISO9003の認証を要求されたという話は聞いたことがない。
当時は会社を良くするためにISO認証をするなんて発想はなかった。「買い手からISO認証を要求されたから認証する」という至極当たり前の理由だった。


初回審査はイギリスから審査員が来たが、二度目から日本人の審査員が来た。その方がISO9001の改定業が現在進行していて、まもなく改定されると言う。今のようにネット時代ではないし、ISO規格の動向がニュースになることもない時代だ。ISO規格が改定されるとは初耳だった。

これはいかんと情報集めに走った。まず日本規格協会に問い合わせたが、まだ決まっていないというだけだ。後から考えると、日本規格協会が言うようにじっくり構えていても良かったのだが、当時はそんな余裕はなかった。
当時は今のようにインターネットもなく、本屋に行ってもISO関係の本も雑誌もなく、市内の工場の集まりでもISO認証しているのは自分のとこだけという状況だ。
困りに困って、都会で働いている高校の同級生に何年かぶりに電話して、そいつに改定の情報を知らないかと聞いたりした。

そんなことをしていて、システム規格社という会社が、94年版ドラフトを本にして売っているということを聞いた。藁にもすがる思いでそこに電話して、それを送ってもらった。本というより簡易製本した冊子だった記憶がある。それが私とシステム規格社との出会いである。
結局、そのときのドラフトは、最終版とはかなり違っていて役には立たなかった。ともあれそんなことがあった。


その後、システム規格社がISO認証の月刊誌をだすと噂を聞いた。とにかくISOマネジメントシステム規格の情報が欲しくて、発行されると購読することにした。最初の数号はタイトルがアイソスではなかったように記憶している。
ともかくそれ以来、私はずっとアイソス誌を購読していた。

isos0901.jpg それから時が経ち2002年に都会に出てきた。すると勤め先がアイソス誌を購読していた。だが同僚の誰もアイソス誌を読まない。義理で購読しているらしい。
既にISO14001認証は一巡して、職場ではISO認証は終わったものと見ていたようだ。ISO認証より公害防止や廃棄物やエネルギー管理が大事だという雰囲気だった。

ともかく職場にアイソス誌があるのはありがたいと、自分で買うのを止めて、職場のものを毎月まっさきに読んだ。職場で購読している雑誌は1年経って同じ月が発行されると、1年前のものを捨てるルールだったので、1年過ぎて捨てるものはすべて頂いて自宅に持って帰った。

当時、環境雑誌は百花繚乱でいく種類も購読していて毎月全部読んだが、アイソス誌はISO規格についての情報が山盛りで、大変参考になった。
今ではあのたくさんあった環境雑誌は一つもない。唯一名残があるのは日経BPの「日経エコロジー」が「日経ESG」と名を変えて残っているだけだ。だんだんと環境というくくりでなく、ESGからSDGsと範囲が拡大してきている。それが良いのか悪いのか?
環境の最大の課題である公害防止と遵法から、どんどんと離れていくようにしか思えない。まあその走りはISO認証だったけどね、


退職した時もう仕事の資料はいらないだろう、ISO関係の本を片付けようと決心した。
初版からのアイソス誌(百数十冊あったと思う)が本棚とかに積み重なっていた。暇に飽かせてそれを斜め読みして、私や友人の投稿、あるいは面白い記事が載っているのを除いて全部捨てた。今本棚に残っているのは40冊くらいだろう。

2012年に退職した直後はなんやかやと東京に出かけることが多く、行けば八重洲ブックセンターに寄ってアイソス誌を立ち読みして、おもしろそうな記事があると買っていた。
アイソス 2020年にコロナ流行してから丸2年半、東京に行ったのは5回くらいしかない。それからはメルマガ「アイソス番外編」を見て、面白そうと思ったときは通販で買っていた。
この2022年11月号は通算300号となり「ISOマネジメントシステムクロニクル」特集というので買った。

配達されたのが10月10日、もうひと月前だ。まず配達されて手に取って、薄くなったものだと感じた。本棚にある古いものを引っ張り出してみると、2009年も2017年も128ページあったが、2022年号は96ページである。25%減だ。末尾の広告のページ10数ページがなくなった他、本文もだいぶ減っている。

いまどき認証機関も審査員研修機関も広告なんて出さないようだ。それに審査員研修機関がものすごく減っている。そして開催する審査員研修の回数も激減している。審査員になりたい人が減っているということか?
審査員登録機関もCEARがなくなった。以前、IRCAはときどき広告を出していたが、最近は見ていない。需要が減れば供給も減り、広告も減る。市場原理はなにごとにも真理である。

いやいや本の価値はページ数ではない。平野敏右という方が書いた「環境原論」はB6サイズ(縦18センチ)で110ページしかないが、最高の環境論だと私は思っている。
だけどアイソス誌は広告や写真も多いから、それほど情報密度は高くない。128ページで1,980円だから、1ページ15円の価値があるかどうかである。

さてページ数は96ページであるが、クロニクルと題した記事は20〜35ページの16ページである。文字数が少ないし、とにかく情報が少ない。いろいろなことを、ひとつ100文字くらいで記述して、ごちゃごちゃと並べたという印象しかない。
書いた人はそれぞれ自分が関わったことにいろいろエピソードを書いているが、関わらなかった人にとってはどうでもいいことである。エピソードよりメインテーマを語ってほしい。
そして書いている人の9割以上は規格を作った人と認証制度の人である。だから書かれているクロニクル(年代記)は、いかにして規格は作ったかであり、いかにして我々は審査したかという観点からしかない。

審査を受けた人、企業でマネジメントシステムに関わった人の声はほとんどない。
審査を受ける立場で四半世紀を過ごした私に言わせれば、「ISOマネジメントシステムクロニクル」ではなく、「ISO認証制度側のクロニクル」じゃないかと思う。
それは半分しか書いていないということだけでなく、視点が認証制度側からしか見ていないからだ。当然、重要か否かも認証サイドの考えで取捨しているのだろう。

審査を受ける立場で第三者認証制度の思い出というか記憶にあるのは何かといえば明確であり単純だ。

これに異議を唱える人はいるかもしれないが、否定できる人はいないことに確信がある。だって事実だから


ここからが本題である。

正直言ってクロニクル(年代記とか編年史という意味)などと名乗れるようなものではない。クロニクルというなら過去20数年のISO認証の歴史で重大なことは書いてあるかといえば、そんなことはまったくない。包括的どころか、大事なことをお忘れですか?ということがたくさんある。

そんなわけで11月号を一読してひと月、テレビの脇に放っていたのだが、さて、捨てようか保存しようかと考えてしまった。大したものじゃないから捨てるかと思うと1980円も払ったのだからと二の足を踏む気持ちもある。
いろいろ考えて、せっかくだから私のウェブサイト「うそ800」に一文書いてから捨てることにした。


気になること、異議あることは多々あるが、主なものを記す。

p.33 JISCが「負のスパイラル」を指摘
経済産業省が制度関係者に改善アクションを求める

2003年に工業標準調査会 「適合性評価部会管理システム規格適合性評価専門委員会報告書」に下図があり、審査費用低下により形式的審査になり負のスパイラルが起きていると記述していたのは事実である。

負のスパイラルの図
負のスパイラルの図

ところで大きな疑問がある。「適合性評価部会管理システム規格適合性評価専門委員会報告書」では立派な上図をかいて、いかに第三者認証が棄損されているかを説明している。まあ、その5割は事実だろう。
そして5割は書いてないんじゃないかな?
例えば審査に来た審査員が強請とかタカリをしていたことは一言も書いていない。
知らなかったということはないだろう。だって読売新聞や朝日新聞が、ISO審査員が審査に来てお酒やお土産を求めたなど、審査員の悪行を報道したのは2002年からだ。上記の適合性評価専門委員会報告書は2003年だったよね?
報告書がそんなことを無視しているのはいかがなものか?
よほど審査側の問題はなかったことにしたかったのか?


とりあえず審査員の悪行は置いといて、お聞きしたい。
認証制度側、つまり認定機関や認証機関、審査員登録機関、審査員研修機関は「適合性評価部会管理システム規格適合性評価専門委員会報告書」を受けて、何をしたのでしょうか?
実は何も動きがなかった。
経産省から冷や水をかけられるまでは……

経産省はISO認証制度側がなにもしないことにしびれを切らしたのではないか?
2007年に「公害防止に係る環境管理に関する報告書」というものを出している。早い話、ISOなんかにうつつを抜かしていないで、しっかりと公害防止策を進めよということが書いてある。
更に、2008年 経産省は「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」を出した。

それで第三者認証制度としてやっと動いたようだ。というか圧力をかけられたに違いない。
そして作ったものが下記だ。

中身を見ればアクションプランというのも恥ずかしい、思いついたことを並べただけで、方法も目標もまったく具体的でない空虚な作文である。

空虚な作文と言われて怒ってほしい。
だが、このようなアクションプラン/計画書をISO審査で見せられたら、適合にする審査員はいないだろう。いたら審査員失格である。
だって目標が不明瞭である。なにをどうすれば達成なのか、全然わかりません。
誰が、何を、いつまでに、どうするのか、何も書いてありません。
こんなものアクションプランじゃねえ

ISO規格を読めば、「目標」の必要条件、「目標達成の計画」の必要条件がしっかり書いてある。

ISO14001:2015
6.2.1 環境目標
環境目標は、次の事項を満たさなければならない。
 a)環境方針と整合している。
 b)(実行可能な場合)測定可能である。
 c)監視する。
 d)伝達する。
 e)必要に応じて、更新する。

6.2.2 環境目標を達成するための取組みの計画策定
組織は、環境目標をどのように達成するかについて計画するとき、次の事項を決定しなければならない。
 a)実施事項
 b)必要な資源
 c)責任者
 d)達成期限
 e)結果の評価方法

まさかこれはISO14001にだけ適用され、審査とか認証機関には無縁だと思っているわけではないだろう。
これは仕事だけでなく、世の中のすべて人生のすべてに適用されるのだ。小学生が夏休みの宿題をするにも、スイミングスクールで平泳ぎができるようになるにも、彼女をゲットするにも、お葬式をするにも、必須の要件であり技術なのである。


ではこれは達成されたのかといえば、アクションプラン実施後の成果の広報はない。
節穴
節穴審査員のおめめ
その代わりというか認証制度の幹部は、被認証組織が虚偽の説明をしたとか、節穴審査員がいるとか、根も葉もないことを盛んに語っていた。言い繕うのに必死に見えた。

嘘だとお思いの方がいるかもしれない、いや信頼性の問題など忘れた人も多いだろう。私がいつまでも問題だと語るのを恨めしく思っている人もいるかもしれない。
だが、私は忘れない。

「JABマネジメントシンポジウム」というのがある。2012年までは、「JAB/ISO9001公開討論会」と「環境ISO大会」として別々に開催されていたが、2013年(2012年度)から合同して行われるようになった。
まあ認証件数が減れば認証機関の売り上げも減る、認定機関への上納金も減るから、お祭りにお金をかけられないという事情もあるだろう。
それはどうでも良いが、そのイベントで信頼性にかかわるテーマは2007年から2011年に取り上げられた。

開催年度JAB/ISO9001公開討論会JAB環境ISO大会
2007ISO9001認証を考える
・信頼されるISO 9001認証制度
・サプライチェーンにおけるISO 9001認証の活用
・組織にとってのISO 9001認証の価値
持続可能な社会の実現に向けて環境
・パフォーマンス向上のための環境コミュニティの役割
・EMSの普及促進のために
・マネジメントシステムの統合に向けて
2008審査を変える〜QMS認証の価値向上〜
・QMSの有効性をみる〜ISO 9001逐条審査からの脱却〜
・社会・組織の期待に応える審査〜現行制度の枠内でどこまで可能か〜
・組織からみた価値ある審査〜審査の活用と期待〜
環境ISOの有効活用と活動の見える化に向けて ・企業における改善事例の紹介
2009ISO9001認証の社会的意義と責任
・求められるQMS能力〜QMS運営能力を有していると判断するための審査〜
・認証付与の判断基準〜認証機関によるISO 9001適合の判定〜
・組織によるISO 9001適合の実証〜組織自らによる能力の実証とそのメリット〜
環境ISOの有効活用と活動の見える化-事例研究-
・企業における改善事例の紹介
2010QMS能力実証型審査〜真の有効性審査を求めて
・QMS能力実証型審査の基本的考え方と計画
・QMS 能力実証型審査の方法と実施
・組織の視点でのQMS 能力実証型審査の価値の追究
情報開示-環境ISOの信頼性向上のために
・環境ISOの情報開示の意義と課題 「組織の目線から」
・環境ISOの情報開示の意義と課題 「認証機関の目線から」

上表を見れば一目瞭然である。
当時はISO認証の信頼性向上が至上命題であり、深刻だったのだ。
2011年に東日本大震災が起き、一転してISOMS規格をいかに復興に役立てるかというテーマに変わった。
それが悪いとは言わないが、それっきり信頼性問題は忘れ去られた。「JABマネジメントシンポジウム」で信頼性問題が取り上げられることはなかった。

まあ、アクションプランの成果がどうあれ、このクロニクルでそういったことを少しも取り上げていないことは問題だろう。影の部分を取り上げないのは、臭いものには蓋でしょうか?


信頼性とは何かを説明しなかったこと
ISO認証企業に不祥事があったことは事実である。それは今2022年でも、大騒ぎとなった2000年代と変わっていない。
認定機関や認証機関のウェブサイトを尋ねれば、「○○会社はXXXXが見つかったので、認証停止にしました」なんて表記はいくつも掲示してある。

私はそれをおかしいとは思わない。ルールからの逸脱があるのはあってしかるべきであろう。そしてそれが検出もされ是正されているなら正常状態だろうと思っている。

不祥事があってしかるべきなんていうと、お前は馬鹿かといわれそうだ。馬鹿なのは確かだが、不祥事があるのはおかしいという論理はない。
環境先進企業といわれるIBM社は1990年から環境報告書を出している。そしてその中で環境事故、違反、払った罰金などをしっかりと記載していた。
それを見た人たちはそれを批判したか
いや、素晴らしい企業だといったのだ
そして2022年の今もIBMは不祥事を記載しているが、未だにゼロになっていない。
それは悪いことだろうか
神ならぬ身のなすことに完璧はない。想定外もある。だけど隠すことは悪だろう。隠さず賽の河原の石積みであろうと前向きに努力すればそれでいいのではないか?
少なくても臭いものに蓋をしようというどこかの人たちとは違うのである。

そもそもISO認証は、すべての要求事項を満たしているという裏書であるが、100%であることを保証しない前提である。
そんなこと私が言い出したことではなく、ISO17021-1:2015の4.4.2に「いかなる審査も、組織のマネジメントシステムからのサンプリングに基づいているため、要求事項に100%適合していることを保証するものではない」と明記してある。ISO17021ができる前はガイド62と66にあったと思う。おっと、釈迦に説法であった。

ご理解いただければ幸いです。 だから認証機関や認定機関は、まず「ISO認証は製品品質や環境遵法を保証するものではない」といい、次に「更に審査は抜き取りであり100%適合を保証するものではない」と行政やマスコミ、消費者団体に説明し説得しなければならなかったのだ。
もちろんそんなことはしなかった。認証機関は己の責任を全うしないで責任逃れした。そして罪はすべて被認証組織にあると逃げたのだ。
金だけとって逃げるとは卑怯なり
ヤクザがみかじめ料を取っていながら、もめ事が起きたとき逃げたら信用をなくすぞ。


ISO認証の は信頼性疑惑だけかと言えば、そんなことはない。
20世紀のISO審査は暴力とタカリなどが知れ渡っていた。肉体的にケガをしたという話は聞かないが、審査で書類を出すのが遅かったり、応答が勘違いだったりすると、怒った審査員がガラスの重い灰皿を投げつけたり、机や椅子を蹴とばすなんてことを私は何度も体験した。暴言、罵倒などは言うまでもない。

タカリはお土産もあるし、社外秘の文書のコピーが欲しいとか言われた。それも数ページなんていうもんじゃない。パイプファイル2冊を丸ごとコピーしてくれという要求もあった。
その他、接待とかオ〇ナとか、とんでもないことばかり。そういうことは一般企業の取引でも、皆無ということはないでしょう。でもお金を払うほうが接待されるのが原理原則でしょうね。お金を払うほうが接待するって、自然の摂理に反するのではなかろうか?

マスコミで報道され叩かれてからは、そういうことは皆無になったかといえばそうでもない。お土産が欲しいというお言葉はなくなったが、「土産物を買いたいのでどこそこまで車を出してくれ」というのは何度か聞いた。そういうのはタカリではないと認識しているようだ。

私が嘘を言っているって?
おかしいなあ〜、某認証機関の営業マンが審査員の狼藉には参ったとこぼしていたよ。


規格の理解の問題
いやいやISO認証の闇は、そればかりではない。それより重大で深刻なのは審査の基準の問題だろう。
それには審査員独自のユニーク解釈もあるし、認証機関のユニークな統一見解もあった。

そういう審査の闇・黒歴史・恥部を、マネジメントシステムクロニクルは一つも取り上げていない。
どうしてなんだろうね 危険物貯蔵所



審査員は絶対に間違いを認めなかったね。
審査員が「危険物貯蔵所が消防法に反している」と不適合を出した。
危険物貯蔵所とは工事前に消防署の許可を受けて、工事完了後に消防署の検査を受ける、改造するときも消防署の許可が必要だ。もちろん許可を受けなければ建設も改造もできない。
消防署に行って適法だという見解を文書で出してもらっても審査員に見せたがダメで、消防署は合法なのだから、現状を変える改造の許可は出さないという。やむなく内緒で危険物貯蔵所の改造をしたことがある。
いや記憶違いで工事をしなかったかもしれない(笑)。もし消防署の許可を受けずに工事をしたら逮捕されること必至だ(消防法17条のナンチャラだったと思う)。
工事をせずに工事をしたと言うのは間違いなく虚偽の説明だ 😅
犯罪者になるべきか、嘘つきになるべきか……待てよ、なぜ悩まなくちゃならないんだ?
今なら嬉々として異議申し立てをしただろうが、当時の私は初心うぶで異議申し立てなど思いもよらなかった。
そんなことはマネジメントシステムクロニクルには書いてない。


ISO是正の輪廻
でも審査員によって考えが違うのも面白い……本当は面白くないということだよ
ISO是正の輪廻
ISO是正の輪廻
甲審査員が審査で「AではダメだからBにしなさい」という。
そういう指導をすること自体ISO17021-1に違反、以前ならガイド62/66に反するような気がするがどうだろう?(棒)

ともかく直さないと認証が維持できないのだから、こちらとしては改定するしかない。
次回、乙審査員が来て「BではダメだからCにしなさい」という。改定しないと是正と認めないのだから仕方ない。文書を直すくらいならやりましょう。
さらにその次、丙審査員が来て「Cなんてとんでもない、Aにしなさい」という。言われた通りにしたら振出しに戻っていた。
ISO是正の輪廻 これをこれ「ISO是正の輪廻」という。
中には審査員3人で足りず、4人目の丁審査員で1回転したこともある。

この真実のお話には、おかしいことがいくつもある。

まあいくら語っても聞く耳なければ馬の耳に念仏。

冗談とかホラ話ではない。私はそのものズバリの経験を二度した。嘘は言わない。
これもマネジメントシステムクロニクルには書いてない。


「ISOマネジメントシステムクロニクル」でもっと気になることがある。
それはどんどんと認証件数が減っているという現実を踏まえた論がまったくない!

認証件数は激減している。

ISO認証件数推移(JAB認定)
認証件数推移

ISO9001はピーク時の53%、ISO14001は62%と大躍進ではなく激凋落である。このまま減少すれば2030年までは持たないだろう。

QMSやEMSが減っても他のMSが伸びているって?
JAB認定の全件数37,626件の95%はQMS(61%)とEMS(34%)だ(2022.11.07時点)
ちなみに2年前のJAB認定の認証件数では、QMSとEMSで96.6%を占めていた(2020.09.14時点)2年間でQMS/EMS以外のMS規格の認証は1.6%増加したことになる。それは成長著しいとは言えないだろう。
仮に今後も年0.8%増加として、QMSの代わりになるには……75年かかりそうだ。

JAB認定だけでなくノンジャブなどを含めた認証件数は違う…とおっしゃるか?
下図はISO survey 2021のデータから私が作ったグラフである。

全世界と日本の認証件数推移
注:全世界は縦軸左メモリ、日本は縦軸右メモリ

上のグラフを見れば2020年以降、我が国の認証件数は増加しているが、ピークであった2006年のQMS、2009年のEMSからは相当減少していることがお分かりいただけるだろう。
トランプ元大統領のように「負けたら不正があったはず」なんて、駄々をこねてはいけない。

だがISOマネジメントシステムクロニクルでは、認証件数減少をどうしようとか、計画の提案など皆無である。
まあ、10年後のアイソス誌に期待しよう。


まとめよう、
お前は批判しか言わない……そう言わないでほしい。
もしISOマネジメントシステム認証制度の運用が、このクロニクルのように、素晴らしい規格であり、関係者が皆最善を尽くし、運用におかしなことがなければ、認証件数は増える一方とは言わないが、現実のようにもう衰退期に入るはずがない。
そういえば今本場ISOの偉い人になった中川梓氏がJABにいたとき、講演で「ISOの信頼性は認証件数であらわされる」と語った(2010CEAR講演会)。その理屈は間違っていることは間違いないが、彼女の語るのが本当なら今ISO認証の信頼性は大きく下がっているということになる。

ISO認証が減ったのは、被認証組織が虚偽の説明をしたからなのだろうか
節穴審査員がいるせいだろうか
そうではないと思う。
ISO認証の信頼性が低いといわれても、まともなアクションプランを立てず、真面目に改善活動をせず、極楽とんぼのごとく現実を見ずに無為無策で日々を過ごしている認〇機関や認〇機関があるからだろう。
ISOMS規格の要求事項である、現状把握、具体的で実現可能な計画策定、確実な実行そして進捗の監視とフィードバック、システムが機能しているかどうかのレビュー、そういうことをしないからに過ぎない。
信頼性……これこそISOMS認証のレゾンデートルではないのか


うそ800 本日の失敗

紙の本でなく電子データのほうを買えばよかった。そうすれば嵩にならず、残すべきか捨てるべきか悩むこともなかった。





外資社員様からお便りを頂きました(2022.11.17)
おばQさま
いつも興味深いお話を有難うございます。 おばQさまの記事こそクロニコル、いえ過去の知恵の蓄積な気がします。
アクションプラン、私もこれが部下から出てきたら突っ返しますね。
例として「MS信頼性ガイドラインに対するアクションプラン-Part2-2010/12/28」
冒頭にある「企業の不祥事発生を知ったらISO認証と関係なくても慎重に検討し公表」って、ここだけでもツッコミどころ満載。
「不祥事」の定義も範囲も不明、セクハラとか社員が業務と無関係の事件で被疑者になろうが含まれるのか?
文章のままだと社名報道されたら全てとも読めるが、それだけの情報をそもそもチェックできるのだろうか?
だって「ISO認証と関係なくても」って事は公表された全てなのでしょうね。
何でそんな事するのか疑問ですが、その後の動きを見ると「不祥事報道された会社」の認証取り消しが行われているから「ISO認証しているのに不祥事がおきた」と言われたくないのでしょうか。
でもその会社を認定してしまった事実は変わらないのだから、あとから起きた事から遡って認証取り消しが不当かなんて考えないのでしょうか?

それとも認証取り消しの理由を見つける事が「慎重に検討し公表」って世間への言い訳みたいな事でしょうか。
話を少し転じますが、ISO17025は試験機関の能力への要求事項。そこで重要なのは「不確かさ」を明確にする事、つまり測定や評価には限界があるから「限界を明確にせよ」という考え。
これは品質管理では当然で、あらかじめ公差や誤差を定めて、その範囲でしか保証出来ないという当然の管理方法。だから評価範囲外にある事項は責任を負えないと断言するはず。
つまりISO認証の範囲外は不祥事が起きても試験していないから範囲外という当たり前の考え。これは被試験機関の虚偽や虚偽記録も範囲外だから免責。そうでないと提出資料の正当性に認証機関が責任を負う事になります。

でも上記のアクションプランを比較すると「事後に認証取り消し」って事は、自分の行った認証の不確かさが定義出来ないとも読めてしまいます。または「不確かさ」は許されないから不良が出れば遡って基準を変えて、合格(認証)したものを「不良でした」と認定取り消し。
試験機関が改善出来る事は「不確かさ」の範囲を狭めて、評価結果のトレーサビリティを向上する事でしょう。それは虚偽申告があれば、どこで行われたかの解明にもつながるはず。

そもそもISO認証と言いながら認証機関に求められる17000シリーズとの齟齬が見えるのは問題にならなかったのでしょうかね。

そういう意味では、ご紹介の記事はおかしな事が行われていたという記録にはなりそうです。

外資社員様 いつもお世話になっております。
この問題が騒がれたときに、某認証機関の取締役に、不祥事と形容詞なしだからセクハラも脱税も該当するのかと聞いたことがあります。答えは「その通り」でした。
するとISO認証とは品行方正の証明なのでしょうか?
あまりにも馬鹿らしく考えるのを放棄しました。ISO規格って会社が品行方正とかではなく、元々はお客に渡す製品やサービスの品質保証だったはずです。いつのまにか会社を保証……品質保証ではなく日本語の保証をするように成長したとは、規格を作った人たちは呆れたでしょう。
そして消費者団体がISO規格とは会社の品質を保証するのだと誤解するわけで、もうしっちゃかめっちゃかですわ(笑)
ISOMS規格とは何か、原点に帰って考え直さないとなりません。とはいうものの、もうこれだけ乱れ切ってしまった今、修整するよりもスパッと切り捨てたほうが良さそうな気がします。
そもそも認証機関も審査員も品質保証とは何かを理解しているのでしょうか?


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