「日本共産党研究」

22.06.06

お断り
このコーナーは「推薦する本」というタイトルであるが、推薦する本にこだわらず、推薦しない本についても駄文を書いている。そして書いているのは本のあらすじとか読書感想文ではなく、私がその本を読んだことによって、何を考えたかとか何をしたとかいうことである。読んだ本はそのきっかけにすぎない。だからとりあげた本の内容について知りたい方には不向きだ。
よってここで取り上げた本そのものについてのコメントはご遠慮する。
ぜひ私が感じたこと、私が考えたことについてコメントいただきたい。


図書館にいくつか本を予約しているのだが、予約している人の行列が長くなかなか私の番が来ない。新刊の場合、半年待ちとか10か月待ちなんてのも珍しくない。中には半年も過ぎると関心がなくなってしまうものもあり、予約を取り消すことも多い。

読むものがないので図書館の書架をさまよった。マンボウも解除された今はマスク着用は厳守だが、今まで立ち入り禁止だった書架をさまようことができるようになった。まだ書架からソファは撤去されていて、中で座って読むことができないのは残念だ。

政治とか政党という棚を歩いていて、この本を見つけた。なにせ活字に飢えているから深く考えずに借りてきた。タイトルが「研究」とあるのだからきっと知らないことがいろいろ書いてあるだろうと期待する。


書名著者出版社ISBN初版価格
日本共産党研究産経新聞政治部産経新聞出版97848191128332016.06.011300円

この本はSEALDsから始まる(p.18)。SEALDsがマスコミにもてはやされたのは2016年、6年前だ。今ではSEALDsなんて、忘れてしまった人も多いだろう。
今ネットでググると「SEALDsのいま」なんてコンテンツが多数ヒットする。それらを見ると、当時有名()だった方々の人生もいろいろである。

注:中身がないかっこ()と表記する意味は一般的に「笑い」であるが、笑いといっても、面白いという純粋な笑い、嘲笑、冷笑、それとは真逆で笑えない、とかいろいろなニュアンスがあり、結局「前後の意味から察してよ」ということである。

この本ではSEALDsと共産党を別個のものとしているが、その認識はどうなんだろう?
私はSEALDsとは共産党の一部門だと思っていた。当時ネットや週刊誌では、SEALDsは共産党の部隊であるという認識で語られていた。この本では、書物で断定するのを憚ったのかもしれないが、大いに違和感がある。

坂本龍一 2016年のデモの話は興味深かった。私もアンチSEALDsのデモに参加したことがあり、この本に書かれたSEALDsや革新系野党のデモとかち合ったこともある。とはいえ向こうは万の単位、こちらは数百。
坂本龍一、山口二郎、香山リカ、その他知らない人たち……お花畑のご尊顔を拝することができました()。


本のタイトルは「共産党研究」だが、中身は研究ではなく共産党の最近の動きとかデモなどの活動まとめたものだ。
あるいは共産党が今の時代ソフトに浸透していることへの警鐘だろうか?

浸透とは、軍事用語でいう浸透戦術のことで、散兵線の前進ではなく小規模な部隊が敵の強いところを避け、弱いところを攻撃して少しずつ前進していく戦術をいう。
要するに真正面から戦わず、弱いところ、弱いところと、相手方に侵入していく方法である。

しかし本を読むと私の知らないことはいっぱいある。
制服向上委員会というグループがあるらしい。私は音楽も映画も漫才も全く興味がなく、制服向上委員会なるものを、見たことも聞いたこともない。この本では、それがマッカカというか共産党系だという(p.83)。AKBにも共産党員がいるとかいたとか。

世の中に露出度が大きく、もてはやされるもの・人があれば、それを使って宣伝するのはビジネスだけでなく主義思想を宣伝するのも当然なのだろう。そして、その結果 共産党に投票する人もいるだろう。保守も負けるなとしか言いようがない。

その他、私の70年の人生で認識してきたことと、この本を読んで疑問に思うことはいろいろあった。
そんなことを挙げてみる。


共産党が使う「国民的大義」とはなんだろう?
大義とは辞書によると「人が踏み行うべき最高の道義、特に国家・君主に対して尽くすべき道」とある。まあ後段の君主はともかくとして、人としての最高の道義というのであれば、安保関連法を廃止するというのは大義ではないのは間違いない。というのはどこの国でも安保関連法イクイバレントは存在するからである。共産党が1990年以前にあがめていたソ連にもあった。だからソ連の安保関連法を否定しなければ自分の主張に矛盾があるぞ。

それに「私たちは許さない」なんていう言い回しはサヨクの常套手段だが、「私たち」とは誰のことだ? サヨクのいう「私たち」には「私」は含まれていないぞ!
共産党の言う「国民的大義」の「国民」にも私は入っているつもりはない。「国民的大義」と「国民の大義」は違うようだ。
要するに共産党とはレトリックが上手でダブルスタンダードが大好きだということはわかった。


私が子供のころ共産党の語ったことで😁笑わせてもらったことはいろいろある。
核爆弾
「資本主義国の核は悪い核だが、社会主義国の核は良い核」
初めて聞いたとき中学生だったが、笑った。いくらなんでもそんな子供だましのウソが通用するはずがない。
それともなにか? 資本主義の核兵器で発症したガンを、共産主義国の核兵器は治療できるという意味か?

まったく同じ論理だが、「資本主義国の戦争は悪い戦争で、社会主義国の戦争は良い戦争」というものもあった。ウクライナ侵攻はソ連だったら良かったが、ロシアが行うのは悪いことなのだろうか?
ソ連のベトナム戦争とも言われたアフガン侵攻は、良い戦争だったのか?
中国とソ連の社会主義国同士が戦ったのは、とても良い戦争だったのか?

うそ八百とかおためごかしを語るときは、矛盾を突っ込まれたときの反論をあらかじめ用意してないと笑いものになってしまう。


帝国主義とは何だろう?
「アメリカ帝国主義」というなら、ウクライナで明白になった「ロシア帝国主義」をどう解釈するのか? 南太平洋で暗躍する「中国帝国主義」を どう説明するのか?
ぜひ聞きたい。

共産党が語る「アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威になっている(共産党綱領 第三章(9))」が真実ならば、
「中国帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとってアメリカ以上の脅威になっている」が真実であり、「ロシア帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって既に顕在化した侵略を行っている」が真実だ。

注:自然災害とか品質保証では「脅威」とは「潜在している危険」のことであり、顕在化すれば脅威でなく明白な侵略である。

では日本はロシア帝国主義や中国帝国主義から国民を守らなければならない。だって日本がウクライナのように侵略されては困る。私は殺されたくない。
だが日本は単独では「ロシア帝国主義」や「中国帝国主義」と対峙する力はない。そのとき共産党はロシア帝国主義と中国帝国主義とアメリカ帝国主義のいずれを選択するのだろうか?
そのときでも共産党は「異常な国家的な従属主義を打破する」と語るのだろうか? それも立派なことである。頑張ってほしい。
現実には共産党は過去1世紀以上、特定の国の帝国主義を選びその配下になろうとしていたことは間違いない事実。少なくても私はそう見ている。
いやいや、日本共産党自身が帝国主義でないことをいかにして証明するのか?


共産党は昔からお花畑を語ってきた。
「日米軍事同盟と手を切り、真に独立した非核・非同盟・中立の日本をめざす(綱領 第四章 1)」
これがまったくの空想というか願望で実現性がないことは現実社会が教えてくれた。軍事同盟を結ばない中小国は軍事力を持つ大国に抹殺されてしまう。
チベットは中国に攻められ、民族浄化が進行中だ。ウクライナはNATOに入りたかったが、その前に蹂躙された。フィンランドとスウェーデンは攻め入られる前にNATOに入ろうと目指している。
トルコは両国のNATO参加に反対しているが、トルコもまた事情があるのは同じだ。そして他人の事情より自分の事情が優先するのも国際政治においては正義である。

「平和」が大好きな人たちは「中立」という言葉も大好きだ。
だが中立とは交戦している二つの国と仲良くすることではなく、二つの国と仲良くしないことだ。過去より中立を宣言した国に侵攻することは多々ある。侵略されたとき、他国の援助を借りずにそれを排除する力がなければ事実上中立を維持できない。
ということは非武装中立とは存在しない。どうしても非武装でありたいなら非武装軍事同盟とするか、どうしても中立でありたいなら武装中立しかない。
世の中「ボクは中立ですから関わらないで」と言って通用するほど甘くない。

共産党の本音は「日米軍事同盟と手を切り、中国の支配下にはいろう」ではないのか?
1990年以前ならソ連の支配下に入ろうだったが、残念ながらソ連は消滅し、ロシアの支配下に入ろうでは主義的に矛盾があるだろう。

冗談と言えないものもある。
「国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義的な企てにも反対する(綱領 第四章4)」
ちょっと待て、国連憲章の第53条敵国条項はどうするんだ
国連は日本の味方ではない。国連の敵は日本だ。国連とはそもそも第二次大戦の連合国が始まりなのだ。敵国条項撤廃しない状況で、国連憲章を持ち出すな。
まずは党綱領に国連憲章改定を盛り込んでほしい。そして敵国条項が撤廃されてから国連に基づく国際平和を語ってほしい。


ところで共産党の頭の中で考えた、あるいは自分たちの理想を語るだけでは世の中通用しないということが発生した。ロシアのウクライナ侵攻である。

2022年2月24日 ロシア軍はウクライナに大軍を派遣し侵略戦争を開始した。
あっというまに共産党の考えも180度というか360度回って、4月7日、志位和夫は自衛隊活用論を語っている。

360度回ったとは70年前のマッカサー憲法の審議にあたり、共産党は9条に反対を唱えた。そのときは保守政党が憲法9条を唱え、共産党が9条廃止を唱えた。歴史の皮肉、笑い話である。
共産党は将来共産主義政権となった日本が軍隊を持つことを、あるべき姿と考えていた。
その後、平和憲法と呼んだり、非武装中立や護憲を語るようになったのは180度 の変節である。

ウクライナがロシアに侵略され、一般市民が虐殺されるのを見て……たぶん非武装とか憲法9条を語れば日本国民の支持を大きく減らすと懸念して、自衛隊をもち上げたんだろうねえ〜、その結果共産党の主張は360度回って最初に戻ったわけだ。
そう考えると共産党が今自衛隊を合法化し武装中立を唱えてもおかしくもなんともないことになる。おっとまだ共産党は自衛隊を認知してはいないけど。

ウクライナ侵攻は日本国民にとって驚天動地であったが、共産党にとっても驚きだったのだろう。
とはいえ政党を名乗るなら、大震災ニモ負ケズ、敵国ノ侵略ニモ負ケズ、恐慌ニモ感染症ニモ負ケナイ丈夫ナ体質ヲ持ッテ、骨太の政治をしてほしい。


私も年ばかり重ねてきたから共産党が何を唱えていたかおおむね記憶にあるが、この本のように順々に並べてあると、なるほど共産党は常に迷走してきたのだと思える。
マスコミはそれを変幻自在と表現していたが、早い話が骨のないこんにゃくかクラゲのようなものだろう。


老人マーク 本日の願い

共産党支持者でない私が共産党に願うこともおかしいが、思っていることを述べる。
ひとつ、
共産党にはまずは日本の政党になってほしいと思う。共産党は日本の政党だと言うかもしれないが、それは事実と異なる。とはいえ元々はソ連の「共産主義インターナショナル(コミンテルン)」の日本支部だったなんて100年前のことを語るわけではない。

共産党というのは国の数ほどあるが、中国共産党は中国のために存在しているのは間違いない。かってのソ連の共産党もソ連のために存在していたのは間違いない。
その証拠に中国とソ連は国境紛争で軍事衝突もしたし、中国はベトナムに軍事侵攻したこともある。両国の共産党は自国の利益のために行動した。
しかし東欧諸国の共産党は祖国のためでなく、ソ連のために存在していたのは間違いない。そしてソ連より自国の利益を優先しようとすると、即ソ連が軍事力を行使して逸脱を許さなかった。ウクライナ侵攻など、ロシアがソ連のときの考えを変えてないだけのことだ。
保守であろうと革新であろうと、国益を追求しなければならない。日本共産党は日本の、日本人の利益の最大化を図らねばならない。それをしない・できないのは日本の政党ではない。どこかの外国の手先なのだろう。

ひとつ、
日本に存在する政党はどれも内部抗争がある。主義思想の違いもあるし、単純にお山の大将に誰がなるかで争う。自民党はもとより立憲民主党も党代表の選挙戦をする。社民党の場合は、争うだけの人数がいない。
中国の中南海は権力闘争が渦巻いている。人民大はほとんど100%の賛成だが、ときたま反対票が出る。三峡ダムのときはなんと反対と棄権が33%を占めた。形だけでなく実質はあるのだ。
唯一争わないのが日本共産党だ。それが外部からどう見えるか、内部で議論のない政党は独裁だ。人が集まれば異論があるのは当然だ。その異論を集約してことを成すのが政治である。独裁政党は政治ができないのだろう。
っ、独裁は北朝鮮もあるか…
黒電話
でも北朝鮮は
 共産主義でなく王制だろうな

ひとつ、
日本という国家が独立国として日本国民に信頼されるように、そして諸国から尊敬され信頼されるようであってほしい。そのためには最も基本となるのは国家安全保障である。尖閣、竹島、国後をどうするのか、いやそれらを取り戻し日本の地であることを確実にすることを誓う政党であってほしい。
女性週刊誌に「息子や恋人が戦場に行くことのないように」なんて語っているようでは頼りにできない。
ウクライナで家族を他国に逃がし己は戦場に向かう老人、恋人に別れを告げる若者、いや若い女性が銃をとる姿が報道されている。私は彼らを尊敬する。共産党は誰も戦場に行かず、みな殺されたほうがいいと考えているのかと問う。
おっと、話し合いが通じることは期待薄だ。ロシアは奴隷になるか、殺されるかの二択しか示していない。
「若者を戦場に送るな」なんてのどかなことを言っている場合じゃない。暮らしているところが戦場なのだ。どうするね?
憲法9条は、平和な時にしか役に立たない

ひとつ、
好き勝手に法律の名称を作らないでほしい。
共産党がいう戦争法なんて法律は日本にない。日本の法律は最近特に名称がどんどんと長くなっていて正直覚えられない。だから呼びやすいように略称があるが、この略称は好き勝手に名付けて良いのではない。ちゃんと略称が決められている(登録略称法令名)。
「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」のことなら「国際平和支援法」と略称が決まっている。「戦争法」と呼んでも、どの法律かわかりません。
自分勝手な略称を作ると、聞いたほうが混乱するので使わないでください。あるいはバベルの塔のごとく、混乱させるのが目的かな?


お願いばかり多くなった。お願いが多いということは現状は問題なのだ。

おっとこの本を読むべきかどうかであるが、私は読むまでもなかった。とはいえ読むと忘れかけていた昔のことをいろいろ思い出した。
共産党のことはあまり知らないという人が日本人の大多数だろう。そういう人はぜひ手に取りパラパラでも良いから一度眺めてみてほしい。きっと役に立つだろう。
正直言うと、最後の共産党綱領が一番読む価値があるが、読む人いないだろうなあ〜

民主党が2009年にマニフェストを公表した時、私の知り合いが読んでスバラシイと言って民主党に投票した。あれに騙されるようでは未熟である。
私も眼光紙背に徹して読んだ。私には絵空事にしか見えなかった。
だって「政権交代が最大の景気対策です」って、そんなものが政策かよ😩
まずは政権交代すると景気が良くなるわけを教えてよ
そして掲げたことは……ことごとく未達であった。
とにかく政党の意思を知りたいなら綱領とかマニフェストを読むのが一番だ。



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