ISO第3世代 64.内部監査代行2

23.04.06

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但しISO規格の解釈と引用文献や法令名とその内容はすべて事実です。

ISO 3Gとは

山内はジキルの橋野からメールが来た日に上西と磯原と話し合いをして、その日のうちに橋野に会うこととこちらの希望日を返信した。

翌週、指定された日に橋野取締役ともう一人がやってきた。こちらから出席するのは、山内、上西、磯原と監査部の早川である。人数が多いかなという気もするが、面白そうだと山内が声をかけた。まあ、それだけ山内がジキルの売り込みに興味を持ったということだ。

橋野は蓬田よもぎだ蓬田と名乗る男を連れていた。
ロビーにある外来者との会議室に入り、双方挨拶と名刺交換をする。

山内 「それじゃ、早速御社の新しい内部監査サービスの説明をいただきましょう」

橋野 「実はさ、メールではいかにもジキルQAの事業のように書いてしまったが、そうではないんだよ。ご存じと思うが我々認証機関はISO17021というので規制されていて、コンサルティングなどの行為は禁止されているんだ。
  山内がうなずく
ということでいろいろ考えているわけだ。詳細は蓬田から説明してもらう」

蓬田 「それでは私から説明させていただきます。
橋野取締役からお話ありましたように、認証機関は審査して規格適合か不適合を判断するだけしかできません。審査前に良し悪しを見てやるとか指導をすることは禁止されています。
まあ20世紀には審査に来た審査員が、審査員個人とコンサル契約を結べば適合にするなんて語ることもあり、審査員がサイドビジネスをするのは普通のことでした。もちろんそういうのはすぐに禁止されました。

それでも予備審査などと言って、審査前に出来具合を見てやる認証機関も多かったです。もちろん認証機関の自主規制か、予備審査に来た審査員は実際の審査の審査員になることができないなんてルールはありました。しかしその後、予備審査そのものも禁止されました。
とはいえ、蛇の道は蛇、上有政策上に政策あれば下有対策下に対策ありなんてどこかの国で言いますが、我が国でも認証機関が異なる審査員同士が組んで、片方がコンサルした企業を別の認証機関の審査員が審査するという方法も流行りましたね。この場合は企業に認証機関を勧めてバックマージンが……おっと、まあいろいろありました。
ともかく21世紀になり10年も過ぎました今では、認証しようとする企業も減りまして、ISOコンサル業も斜陽です」

山内 「と言いながら本日のお話は、そういう分野へ進出することなのでしょう?」

橋野 「まあそこはいろいろだよ、どの認証機関も契約審査員を抱えている。理由は簡単だ。直接人件費は同じとしても、人件副費は大幅に違い、更に仕事がなければ払わなくて済む、要するに社員審査員の人件費を薄めるためだ」

蓬田 「しかしながら年ともに仕事の絶対量が減少していて、今の費用構造ではそういったことをしても限界があります。根本的解決には仕事を増やすしかありません。
契約審査員はほとんどがISOコンサルを兼業しています……あるいは主従が逆かもしれません。ISOコンサル業も同様で拡大も無理な状況ですから、付加価値を増やすしかありません」

山内 「筋書きが見えてきたよ」

蓬田 「契約審査員でも弊社専属ですと先ほどの論理では無理気味ですが、今はほとんどが複数の認証機関の契約審査員になっているのが実態です」

山内 「ということで認証のルールはクリアするコンサルの方法を考えたということは理解した。細かいことはいろいろあるのだろうが、このビジネスは制度的には問題ないということですね」

蓬田 プレゼンテーション 「そういうことです。
では次にメリットのご説明に入ります……」

蓬田は提供する内部監査代行は、それらをいかに改善できるかというメリットをパワーポイントで説明する。売り込みだから当然良い話しかない。

橋野 「まあ、こんなことを考えている。山内さん、いかがでしょうか?」

山内 「うーん、説明の事例と当社の状況はだいぶ違うので、メリットがあるのかどうか分からないなあ〜
ジキルさんが……というか、御社が主導しているこのビジネスは既に始めているのですか?」

蓬田 「トライアルとして5社に対して行っております」

山内 「その結果がパワーポイントでご説明あったメリットですか?」

早川 「弊社ではISO14001対応の内部監査はしておりません。ご存じかと思いますが、私どもでは監査部が行う業務監査で環境管理についても監査をしている。
ISO審査の際には監査部の業務監査の環境部分を、規格要求である内部監査として説明しております。当然ながら、業務監査のそれ以外、財務とかセクハラ関係はもちろん審査員にお見せしません」

蓬田 「ほう、監査部の業務監査で済ませている……それは先進的ですね」

早川 「先進的と言えるかどうか……規格では、わざわざISO14001のために内部監査をしろとはありませんので、従来からしている監査を充てはめただけです」

橋野 「御社がそういう方法であるとは存じておりました。
確かにISO14001の序文には、以前からしていることを適応させることも可能とありましたね(注1)もっとも2015年版ではなくなったかな? そうであっても、その趣旨が継続するのは当然でしょうね」

早川 「初っ端からお宅の内部監査代行を否定するようなことを申してもうしわけない。そういう意図ではありません。私どもとしては今監査部がしている監査より、どこが優れているかを知りたいです」

橋野 「ISO規格は悪いものではないと考えています。とはいえ規格に書いてあることだけを実行すれば必ず効果でるわけではないことも事実。そもそもマネジメントシステムが良ければ結果が良いという論理が真か偽かとなれば、真ではないように思います。その逆もまたしかりで、結果が良い会社はISO規格の要求事項を満たしていないかもしれない。
ここまではよろしいでしょうか?」

磯原 「2004年版の序文ではレビューと監査だけでも法規制と方針を満たすかもしれないが、将来的にも満たすかどうかは保証されないとありましたね。ということはISO14001の意図である『遵法と汚染の予防』を実現するには、マネジメントシステムが必須ではない。要するにISO14001は『遵法と汚染の予防』実現の必要条件でもなく十分条件でもないということです。
いえいえ、橋野様の意見を否定するのではなく肯定の証拠を述べただけです」

橋野 「磯原さんのおっしゃる通りです。山内さん、お宅にはすごい人がいますね。ISO規格を暗記しているのかな?
多くの組織だけでなく認証機関も、ISO規格を満たしていれば、継続的改善がなされると思っている。だがそれは正しくない。ISO規格は継続的改善をしろと書いてあるだけで、どうすれば継続的改善がなされるかは書いてありません。

序文にもあるが、規格が規定しているだけで必要なリソースが確保できないこともある。規格ではそれを『規格を満たしていても同じパフォーマンスでないこともある(注3)と書いている。本音を言えば、仕組みがありやる気があっても、技術や予算がなければできないことの言い訳でしょう。
ということで、正直言えば内部監査代行と称しているが、ISO認証のための内部監査ではなく、改善点を見つけましょうというサービスをしたい。真の内部監査、あるいはあるべき内部監査と言いたいところだが」

山内 「というと他の認証機関から認証を受けている組織の内部監査をするのではなく、認証審査の代わりに、環境改善のための診断をすることと理解してよいか?」

橋野 「そういう発想もあった。とはいえ、そうもいかないのだ。
我々の本業はISOMS規格の認証だ。真に遵法と汚染の予防を目指してISO14001と異なる審査をしたならば、本業を否定することになる。
仮にその方法が好評になれば、本業のISO14001認証の需要を食ってしまうことになる。というのは今現在、顧客要求から認証しているのではなく、会社を良くしようという目的が多いからね。カニバリズムだね」

人食い人種

注:カニバリズムとは共食いとか食人風習のこと。
ビジネスにおいては製品Aを売っているとき、新たに製品Bを出すとAの顧客がBに移るだけで、売り上げ全体が増えないことをいう。同じカテゴリーの商品を出した場合に起きやすい。

山内 「お話を聞くとニッチな需要を満たすだけなら少しでも売り上げが増えて良いが、規模が大きくなれば第三者認証を食ってしまうことか」

橋野 「そういう恐れがある。では他に解決策があるかとなると我々は分からない。紆余曲折はあったが、結局、他の認証機関から認証を受けている会社の内部監査を代行しようかなと……今ここだ。
実を言って山内一家が良いアイデアをもっていて、この閉塞を打開できないかと期待して来たのさ」

山内 「それはお門違いだよ。我々は会社を良くしたいと希求している。だがマネジメントシステムをどういじっても、効果はないという見解を共有している。
『顧客満足』でも『遵法と汚染の予防』でも、達成するには仕組みではなく、基本は技術の向上が要だ。それを運用するために効率的で有機的な仕組みはあったほうが良いが必須ではない。言い方変えれば、仕組みだけでは何もできない」

橋野 「そのことはISO9001の初版から2015年版まで序文に明記しているね。『この規格で規定する品質マネジメントシステム要求事項は、製品及びサービスに関する要求事項を補完するものである(注2)ってね。
規格適合だけでは顧客満足にも遵法と汚染の予防にも不十分なのだ」

山内 「それでは……ISO認証はメリットがないということだ。御社がISO第三者認証と縁を切って、コンサル業に専念したほうが社会貢献になるのではないの?」

橋野 「そういう選択もあるけれど、現実にはビジネスにならないと思うんだよね」

山内 「今当社の環境監査で問題というか改善が必要と考えているのは、遵法確認の力量と方法だ。我々が一番望んでいるのは、環境法規制について具体的な解釈をしてくれることだ。もし御社の内部監査代行が遵法をしっかり点検すること、そして弊社で法規制について不明なことにはっきりと回答してくれるなら頼もうかという気持ちでここに臨んでいる。
もちろん法規制の一般論ではダメだ。個別論で是非を答えてくれなければ」

橋野 「法律について、そういうコンサルは非常に難しい」

山内 「弁護士法のしばりか?」

橋野 「それもあるが、そればかりじゃない。弁護士なら法律をすべて知っているいるわけもなく、簡単に白黒判断できるわけはない。
解釈が微妙なのはほとんどが廃棄物関係だが、過去の判例を見ると似たようなものでも無罪もあるし有罪もある。
だからこの内部監査代行を弁護士が行っても、確信ある判断はできない。つまるところ法規制は見ないという判断しかないね」

山内 「それではありがたみがないよ」

磯原 「認証機関でなく、ISOコンサルが内部監査代行をしている例は多いですが、そういった代行では法規制は見ているものでしょうか?」

蓬田 「ほとんどというか皆が皆、規格要求を見ているだけじゃないですかね」

橋野 「内部監査代行をしているコンサルや審査員が、法律に明るいか怪しいものだ」

早川 「我々監査部だって同じですよ。遵法の監査など、本当の専門家にしかできませんね。輸出管理の監査で監査員が務まるとのは、我が社で一人か二人です。環境だって似たようなものでしょう」

磯原 「そもそもISO14001の要求する内部監査はそんな専門的なことでなく、規格要求事項だけでしょう。だからISO認証しているだけでは、遵法と汚染の予防が実現できないということでしょうけど」

橋野 「こんなこと言っちゃなんだが、監査って創造的な仕事じゃない。膨大な知識を基に適・不適を判断するだけだ。AIが進歩すれば機械的にできるはずだよなあ〜、もっともそうなると認証機関はおまんまの食い上げだな」

山内 「そんなことを言ったら、今知的と言われている仕事はみんなそうさ。管理者の8割は路頭に迷うよ」

上西 「あのう〜、私はここでは一番の素人でしょうけど、ISOの要求事項とは一体何ですか。単純にマネジメントシステムだけで満たしても意味がなさそうです。
しかしマネジメントシステムが機能しているかどうかを点検するなら、仕組みを見るのではなく、アウトプットを見て仕組みが機能しているかどうかを見ることになります。
自動制御で言えば、オープンループとクローズドループですね。
そもそも審査とはどちらなのですか?」

Aクローズド制御
インプットとアウトプットを比較してシステムを評価する
コーナー軸コーナー
矢印矢印
インプット 矢印 プロセス
仕組み
矢印 アウトプット
矢印
矢印
ISOMS規格
要求事項
@オープンループ制御
仕組みとISO要求事項との比較

蓬田 「これは本質的な疑義を呈されましたね」

蓬田は面白そうに笑う。

磯原 「項番順の審査でなく、プロセスアプローチをせよといったときから、システムと規格要求の比較でなくシステムの機能の評価となったはずです。つまり上西課長のいうクローズドのはずです」

山内 「しかし疑問がある。インプットに対するアウトプットが期待通りでないとき、システムが規格を満たしていないと言い切れるものだろうか?
図のプロセスは、入力に対して一意的なアウトプットを出すのか? 処理に係るすべての要因を規格要求が定めているようには思えない。つまり元々規格要求が不足している可能性もある。その可能性のほうが大きいのではないか」

橋野 「今更そんなことを言われても困るぞ。ISO14001は初めからそれについて言い訳している。序文には『この規格の適用は、組織の状況によって、各組織で異なりえる。二つの組織が、同様の活動を行っていながら(中略)到達点が異なる場合であっても、共にこの規格の要求事項に適合することがあり得る(注3)とある。これは言い回しが若干違うが1996年の初版からある」

蓬田 「それを言っちゃおしまいですけど」

磯原 「これは重大なことですね。真面目に考えると、そもそも規格要求を満たせば良いという根拠があるのでしょうか?」

橋野 「そりゃ……ないね、ISOMS規格はどのようにして作られるのかを考えると……ISOTC委員が集まってドラフトを作り、それを広く世界に公開し意見をもらって反映し(実際には意見を反映して修整したことがあるのだろうか)、賛同を得るという流れではあるが……そういう段階を踏めば真理というわけではない。
そもそもISOTC委員は研究者ではないし、ISO規格は査読を受けたわけでもない。
ISO規格は多数決で政治的に決定されるものであり、研究論文ではないのだ」


注:ここで「政治的」とは国会とか政治家に関する意味ではない。
辞書を引くと「政治的」には次の意味がある。
1.政治に関するさま。「―な問題」
2.現実に即して判断するさま。「―な解決」
3.駆け引きが行われるさま。「―な手腕がある」
近所の奥様方がゴミ当番を決めるのも、会社で休暇を取るのも、趣味のクラブで主導権を握るのも、すべて政治的な行為である。
なお、政治家が政治的の人とは限らない。国会討論を見ていると、新曲を宣伝する歌手もいるし、理屈より演技で勝負する女優もいるし、自虐ネタで人を笑わせるコメディアンもいるし、文字を書けない人もいる。

山内 「多数決で、ものごとの正否とか真偽が決まるわけはない。
妥協の産物とは調整事項、つまり利害関係者が多数いていろいろな意見があるとき、利害関係者の多くが満足する、あるいは不満が少ない落としどころを見つけたということだ。
ならば多くの人が納得したという意味しかない。そういう成り立ちから規格要求事項を満たせば、何かが得られるとは期待薄だ」

磯原 「別の見方ですが、規格は定期的な見直しがあるということ自体、真理ではないということです」

蓬田 「そりゃそうですよね、ISO14001は2004年、2015年と二度だけですが、ISO9001は1994年、2000年、2008年、2015年と何度も改定されています。となると2015年版だって最善ではなく、いっときのものにすぎません。
そういうものに適合していることの価値は何でしょうか?」

上西 「ISO規格といえば、私ならねじとか寸法公差が思い浮かぶ。その価値はなにかというと互換性、入手性、コスト削減、それによる品質の安定ですかね。
ボルトワッシャー
つまり規格品を売ろうとすれば支障なく市場に流通するし、規格品を買おうとすれば容易に手に入ることがメリットになる。

でもISO9001規格適合といっても、会社の仕組みの互換性に意味もないし、マネジメントシステムが同じでも品質レベルは違う。ましてやISO14001に至っては、認証の有無と違反や事故の相関があるという証拠もないとなると……」

磯原 「その通りと思います。それで私は理解できないことがあるのですよ。ISO9001が登場した時は、『マネジメントシステム』なんて言いませんでした。『品質保証の国際規格』と称したのです。
つまり商取引において品質保証を要求し・されるとき、取引相手によって内容が異なることは非常に面倒なことでした。だからこそ、品質保証要求事項を標準化してISO規格として制定することには、まっとうな理由がありました。

欧州共同体ができるとき、モノの移動を認めるにはISO認証を受けた工場で作られたものとした理由は納得できます。なぜなら先ほども出ましたが、規格の序文に『この規格で規定する品質マネジメントシステム要求事項は、製品及びサービスに関する要求事項を補完するものである(注2)とあることから分かります。

しかし商取引のためでなく品質を良くしようとか会社を良くしようとするには、先ほど山内さんがおっしゃった調整事項、政治的に作るのはダメなはずです。独善でよいのです。他人はどうでも良い、自分の会社に適した方法をとるという選択が最善のはず。そしてまた大航海時代の株式会社のように、航海一回こっきりの企業であるなら、『組織のパフォーマンスが将来も満たし続ける (注4)なんて考えることもない。
さて、そうなるとISOMS規格の存在意義って何ですかね?」


これを書いていて、思い出し笑いしてしまった。環境側面を上位何位までとか、何点以上を著しいものとするという発想はまさに政治的である。そんなアホなことをしていれば事故も違反も起きることを保証する。
でも企業は審査員にそういう説明していても、実際には事故や違反が起きないように論理的に決定しているはずだ。環境側面とは政治的に決めるものではなく、理論があって決めるものなのだ。
審査員の多くは理解できないだろう。だって環境側面についてまともなことを語った審査員には数人しか会ったことがない。


橋野 「いやあ〜、磯原先生の大演説に恐れ入ったよ。それは根源的な問題だ。いやそんなに深く考えることもない。1987年にISO9001が作られて、それが金儲けに使えると考えた人が第三者認証を始めてみたら大成功だった。
それじゃと二匹目のドジョウとISO14001で釣ってみたらこれまた大漁だった。では三匹目、四匹目となったが、もう魚も賢くなったから釣れなくなったということだろう」

蓬田 「つれない話ですな」

注:人の態度などを表す「つれない」は「釣れない」から来たのかと思って調べた。
そうではなく「連れない」なのだそうだ。声をかけても「つながりがなかった」という意味だそうだ。

橋野 「同じエサで10匹も釣ろうってのは安易すぎるよ(注5)

山内 「なんだか内部監査代行から大きく話が外れてしまい、改善案までたどり着かなかったな」

橋野 「いや、とても参考になりました。認証ビジネスとしては余計なことをせず、終息するまで市場規模に合わせて少しずつ撤退するというのが最適な戦略なのですかね、いや、こっちの話です」

山内 「あと15分で終業だ。みなさん、少し懇親会をしましょう。
磯原君、地下の居酒屋を予約してくれ」



うそ800  本日の意図

ISO14001の意図は「遵法と汚染の予防」であると自称しています。ついでに言えばISO9001の意図は「顧客満足」です。
私が20年間も疑問に思っていることは、規格が自称する意図は立派だが、規格を満たせばその意図が実現できるのかということです。それを証明あるいは説明したものを見たことがありません。証明できないなら仮説にすぎません。そしてそれは既に破綻しているように思えます。

人 もしISO規格が真理なら、規格改定があるはずがない。聖書でも経典でも真理であるから、1000年・2000年も経っても改定がないわけでしょう。
ISOMS規格は何度も改定されている。ならば1987年版は間違いだったのか、1994年版は間違いだったのか、2000年版は……数学的帰納法で言えば2015年版も間違いのはずだ。

となればISOMS規格は真でなく、それを満たすことは必須ではなく、それを参考に会社の仕組みを考える、すなわちstandardではなくguidelineあるいはguidanceではなかろうか? であれば第三者認証というものが成り立つはずがない。
それが私の結論です。


ちなみに: ISO14001は「要求事項(Requirements)」、ISO26000は「手引き(Guidance)」で、ISO14004は「指針(Guideline)」、その違いはなにか?
ガイダンスとは何事かについてのアドバイスや指導をいい、ガイドラインとは非公式な要件、推奨する寸法・方法などをいう。ガイダンスが体系化しある程度の指導力を持つとガイドライン……つまり、ものごとや人が並ぶ基準線となる。
ガイドラインが強制力を持つと逸脱を許さない基準(standard)になる。認証するにはstandardでなければならない。
あれ!?、ISO14004は基準(standard)でないのにJIS(Japanese Industrial Standards)に登録されているというのはなぜ? そんな難しいことは知りません。
実をいうとJIS規格にも「〜の手引き」なんてタイトルのものもあるんですよ。

いつも本音で語っていますが、ここまで露骨なのは初めてかなと……
ちょっと待て! 内部監査代行とどういう関係があるのかと問われるか?
単に話を持っていくための枕でございます。奈良にかかる枕詞まくらことばは「あおによし」、ISOにかかる枕詞は内部監査……字余りなんて言ってはいけません(笑)


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注1
ISO14001:1996 序文 最後の段落にある。
ISO14001:2004 序文 後ろから二番目の段落にある。

注2
ISO9001:2015 序文 0.1一般にある。
同文はISO9001:1987 0.序文にもある。

注3
ISO14001:2015 「序文0.3成功のための要因」第2段落にある。
ISO14001:1996「序文」第7段落にある。

注4
ISO14001:1996「序文」第2段落にある。
ISO14001:2004「序文」第2段落にある。

注5
2022年時点、認証が行われているISOMS規格は16種類あるようだ。
cf.ISO survey full data





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