「中国がひた隠す毛沢東の真実」  北海 閑人 goodbetterbest
出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
草思社 4-7942-1443-X2005/10/71800全1巻

私が子供の頃、現在中国と呼ばれている国は「中共」(チューキョー)と呼ばれ、なにかあやしげな国というイメージがあった。その国には人権もなく報道の自由もなく、鎖国状態で内部の状況を諸外国に公開しない、まさしく今の北朝鮮のイメージであった。
私が中学・高校の頃、共産主義に染まっていた先生は多くなく、左に傾いていた先生もそんなにいたわけではなく、むしろ反共の立場にいた方が多かったように思う。彼らの多くは中共のことをよく言わず、授業中に政治犯が馬や牛の代わりに農作業にこき使われている写真を見せたりした。そして共産主義になるとこんなふうになってしまうぞと我々に教えていた。
政治犯っていったいどんな犯罪なのだろうか? 
犯罪ではないような気がする。少なくとも刑法犯ではないようだ。
当時、私たちが中国と呼んでいたのは、まだ存命であった蒋介石が牛耳っていた台湾のことであり、そこは自由主義国家群に属する友邦であった。
ところが、私が会社に入ってまもなくの1972年にニクソンが中国を訪問してから、一夜にして中共のあやしげなイメージは清廉なイメージに変わり、中国は憧れの対象となった。
中共の軍隊は人民解放軍と呼ばれる。名前から想像するに人民を解放する軍隊なのだろうか?あるいは人民がなにものかを解放するために組織した軍隊なのだろうか?などとカン違いしてしまうではないですか、 
jinmingun.jpg 中国様一辺倒の人たちにとっては、人民解放軍は正義の軍隊であり、まっこと一般大衆のために存在する軍隊らしい。
反面、自由選挙で創られ運用されてきた我が自衛隊は、権力の犬で我々日本人を抑圧する暴力組織なのだそうだ。当然であるが、アメリカ軍はアメリカの一部の財閥によって動かされる暴力組織である。
いや、物の見かた考え方とは立場が変わるとマイナスがプラスとなる以上に異なるものらしい。
その後、中共(ニクソンが訪中してから中国と呼ばれるようになった)のイメージは共産主義者、朝日新聞などの思想キャンペーンによって、多くの反人権に関わる事件、諸外国との抗争を隠し続け、多くの日本人にとっていまだ憧れの国であり続けているようだ。
 中共は本当に清い国だったのか?
 中共は本当にすばらしい国なのであろうか?

この本は中国の内部にいる人が書いた、中華人民共和国の歴史である。
もちろん、この本が真実であるという保証はない。しかし、中国の内部にいる人が、自分の目で見た中国というものを書いているには違いない。
少なくとも掃いて捨てるほどある中国のプロパガンダ、あるいは日本の中国太鼓持ち新聞の報道よりは真実に近いと思う。

この本のページをめくるたびに血みどろの世界が広がる。それは正直あまり気分のいいものではない。
三国志をご存じだろうが、あれを読むと何人どころか数千、数万あるいはそれ以上の人々、兵士が死ぬことが書かれている。だが、三国志は千数百年も昔の話である。時間的距離により直接身の毛がよだつという感じを持たない。
関が原の戦いで双方何名の死者を出したかご存じでしょうか?
島原の乱で何名が殺されたかご存じでしょうか?
天命の大飢饉で何名が餓死したかご存じでしょうか?
文化大革命で何名の死者がでたかご存じでしょうか?
天安門事件で何名殺されたかご存じでしょうか?
中国の60年代の飢饉で何千万の人が餓死したかご存じでしょうか?
この本はまさに今現在の中国のことが書かれている。そしてそこでは今も三国志と変わらない殺戮が行われていると書かれている。
鉄砲で殺すと弾がもったいないという理由で、毛沢東に敵対する人物の首をなたで切りつけるのである。
とにかくすごい、敵だと思えば殺す。敵になるかもしれない人物を殺す。自分と同じ考えであってもいつか勢力を持つだろうと思われる人物なら殺す。
そこには同郷、縁戚、兄弟、恩師、過去の愛人、その他ありとあらゆる人間関係が無視され危険人物とみなせば殺しを続ける。
この本を読めば中国が諸外国との戦いで死んだ人よりも、中国共産党、人民解放軍がころした中国人の方がはるかに多いことが明白である。その数、4千万人とも5千万人とも言われる。
毛沢東は政治指導者ではなく、共産主義者ではなく、単なる独裁者ではなく、まさに皇帝なのである。
中共とはまさに毛沢東皇帝による中国支配であり、その本質は中華思想であり、覇権主義であり、軍事力による国内外への圧制であり、毛沢東こそまさに中国4千年の後継者であった。
中華人民共和国と国号をせずに、毛沢東王朝とか中華帝国と呼ぶべきしろものである。
そして今も権力者は変わったが、毛沢東王朝は継続しているのである。
この国が国連の常任理事国としてありつづけることは、国連がまさに茶番であるという証拠なのであろう。国連とは『人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。(国連憲章第1条)』ではないことのすばらしいエビデンスである。
三国志そのままである。
拷問もあれば、薬物による治療(?)もある、密告もある、文明が進んだだけ三国志より悪逆を行う手段が増えたか?
このように権力者が己の一存で殺戮を行う国は近代的国家ではない。それに匹敵するのは、禁酒法時代のマフィアの世界、仁義なき戦いのヤーサンの世界である。

この殺し合いから何かを想像しないだろうか?
そう! 連合赤軍をはじめとするサヨクの内ゲバである。
テロ、内ゲバというのは共産主義のDNAに刷り込まれているのだろうか?
注意せよ!共産主義には近寄るでない


しかし中国の指導者にとって、共産中国には悪いことやひどいことはなにひとつなく、共産党の50年以上にわたる指導は英明偉大で光栄に満ち正しいことであったとしか残っていない。
今現在、中国の学校では、朝鮮戦争とは米軍と韓国が北朝鮮に侵攻して始まったと教えられ、天安門事件を教えず、文化大革命も教えない。真実の歴史を知らない若者が育成され続けていると著者は語る。
そういう教育を受けた中国人が『日本は悪だ!多くの中国人を殺した』と信じ、日本に対して敵愾心を持つのは当然である。

中国人にとって先祖のお墓は今現在の子孫の活力の根源であるそうだ。政敵を滅ぼすには政敵の墓を暴くことが最善の策らしい。
『まさか?そんな馬鹿な』と思うかもしれない。しかし、中国人の心底にあるお墓についての認識を知らないと、靖国参拝の意義というもの、靖国を参拝するなというメッセージを理解できない。
yasu1.jpg 靖国参拝は日本が軍国主義になるとか、A級戦犯が祭られているということとは無関係なのだ。中国人の論理から考えると、靖国参拝をすること、靖国とそこに祭られている人々を慕うこと、尊敬することはすなわち日本人の活力、日本の勢力の伸張に貢献するものであり、日本人が靖国参拝を止めれば日本が衰えるという非常に深い意味を持つのである。

この本を読み終わるとぐったりと疲れてしまう。
結局、中国とは共産主義でもなければ修正主義でもない。もちろん資本主義でもなければ自由主義でもない。それは自らが中国4千年と誇る、かび臭く血なまぐさい、中国皇帝が治める、人権のじの字もない、一握りの人々に奉仕する奴隷に近いきわめて多数の臣民からなる国であるに過ぎない。
現在の中国を理解するには、共産主義思想を学ぶのではなく、三国志を読むことであるに違いない。

私たちが中国を理解することは困難ではない。それは不可能である。
同時に中国人が日本を理解することは困難ではなく、不可能である。
それは共通の歴史認識を持つことは不可能であるということである。

毛沢東がいなかったなら『毛沢東の真実』はなかったのだろうか?という疑問を持たれるかもしれない。
そうお思いになられた方、心配ありません。
そのときは、きっと『周恩来の真実』あるいは『林彪の真実』はたまた『劉少奇の真実』があったに違いありません。
だって中国4千年の歴史は極めて大きな慣性を持ち、それを変えることは不可能ですから・・・

『こういう歴史を中国の現政権はひた隠し、捏造しているばかりか、言論と学問への弾圧と迫害は今なお続いている。中国政府が日本に突きつけている「歴史の認識」の問題は、じつは自らが歴史を隠蔽、捏造していることを承知の上でしているのである。』(本書 306ページ)


まとめでございます。

歴史の捏造の本家本元は中国である。
中国の歴史には、
文化大革命も紅衛兵も大飢饉も血なまぐさい内紛もない。
あるのは悪逆日本の中国侵攻である。



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