「韓国の大失策」 李桂天 goodbetter

出版社ISBN初版定価(入手時)巻数
河出書房978-4-309-24404-42007.01.301600全1巻

以前、私は「日本人に生まれてよかった」なんて駄文を書いた。はっきり言ってそれは私の独善であり主観にすぎず、日本人に生まれて残念だという人もいて当然だと思う。
誤解されているかもしれないが、私は絶対自分が正しいとか天上天下唯我独尊なんて思うほど自信過剰ではない。しかし自分が思うところを主張する権利を持つと確信している。当然であるが、私と違う意見を持つ人の発言権も認める。だからこそ意見が違えば議論する必要があるのだ。正しいか正しくないかは己が考えただけで立証されるはずがない。
では韓国の人は韓国に生まれてよかったと思っているのか? 中国に生まれた人は中国に生まれてよかったと思っているのか? 北朝鮮に生まれた人は北朝鮮に生まれてよかったと思っているのだろうか? なんてことを夢想した。
しかし、日本人が日本に生まれてよかったと思うか思わないかという判断レベルと、それらの国の人の判断するレベルは大きく異なることは間違いない。

極端なもののほうがわかりやすいだろうから、まず北朝鮮について考えてみよう。
kita.gif まずこの国では教育は金正日マンセー(万歳)という教育が徹底されており、かつ外国の状況を知ることは放送を聞くことさえ不可能に近い。外国に行く場合は亡命などしないように人質をとるという。
北朝鮮から黄長Y(ファンジャンヨブ)元書記が韓国に亡命したとき、妻は殺され、子供たちは強制収容所に送られた。
ひどい話だと思いませんか。北朝鮮にも韓国にも個人主義はない。中世の掟が生きているのである。
よど号事件のとき、犯人たちの家族が刑務所に送られるなんてことはない。それどころか犯人たちの子息が日本に帰国して、親たちが犯した国家的国際的犯罪の正当化の宣伝活動ができるとは・・・日本はなんという自由に溢れた民主主義国家なのであろうか。
美女軍団なんてもてはやされた北朝鮮の女性応援団は、北朝鮮に帰ったら韓国のことを言ってはならないと命令され、それに反して韓国で見たことを話した女性は強制収容所に送られたという。(本書より)
警察国家どころではない、まさに監獄国家である。
だから現時点、北朝鮮に生まれてよかったか否かという設問はありえない。
なぜなら、北朝鮮に生まれてよかったとも良くなかったとも思うことはありえない。だって自分の立場以外、他の国家というものを知らないのだから。
美味いものを食べたいと思うのは美味いものを食べたことがある人だけであり、食べたことのない人は食べたいと思わないのである。
中国人はどうなのだろうか?
中国も言論統制は北朝鮮に近い。マスメディアはもちろん国家管理下にあり、インターネットも検閲され言論の自由もない。しかし、日本を含めた外国企業が進出してきているし、非常に多くの人が外国に・・日本にも・・きており外国の情報は地域的あるいは階層による格差はあるがもうかなり人は知っている。だから中国に生まれてよかったか否かという設問はありえる。
但し、教育が偏っているから刷り込みされた価値観でしか判断できない。そしてもちろん公開のアンケートでは国家の方針に反する意見は表明できないだろう。

韓国はどうなのだろうか?
この国は専制独裁ではないが・・・また完全な民主主義国ではないという条件というか環境下にある。
言論の自由はある程度保証されているが、時の権力に都合のよいように動いてしまうという、日本やアメリカのように完全なものではない。かつ北朝鮮からの思想の浸透が激しく、マスコミ、教育界の左傾化は激しくなりつつある。
この本の著者が韓国を愛していることは十分に分かるが、しかし韓国の現状を憂いに憂いていることも痛いほど分かる。
彼はこの本の中で、同胞よ!韓国をつぶすな、国を滅ぼすな、国富を北朝鮮の金正日に貢ぐな!と叫んでいる。
韓国人が彼の叫びに耳を貸すのか? 金正日の策略に乗って韓国が北朝鮮に飲み込まれるのか? 分からない。しかし、韓国の自由はきわめて危険な状況にあることは間違いない。
日本人だから言うのではないが、韓国は「竹島は我が領土」などと叫んでいる場合ではないのである。
韓国人は韓国という国が亡くならないように身を固めなければならないのである。そうしないと朝鮮戦争以後、40年にわたって営々と努力して築き上げた国富と自由というきわめて尊いものをあっというまに金正日に取り上げられてしまうだろう。
womankomatta.gif 北朝鮮は可愛そうだ、北朝鮮は核開発をしたからすごい、北朝鮮の金日成は日本軍と戦ったから正当性がある・・などなどと韓国人が思うことは、韓国が北より富める国であり経済と言論の自由があるから言えるのであって、明日にでも北朝鮮の貧しさに身を落とすことに思い至らないからに過ぎない。
日本のサヨクとその支援者が従軍慰安婦はかわいそう、南京虐殺があったから中国に謝罪すべきだと思うのも、自分たちが韓国や中国より上にあるという思いあがりのうえにある発想だと私は考えている。それは事実であったか否かという軸とは違うが心のそこにある優越感なのである。

しかし、明日の日本が韓国なのか? 明日の韓国が日本なのか?
韓国と日本というのは本当に似たような状況にあるようだ。
教育界、法曹界の共産主義による汚染、そして彼らの活動による若者のサヨク化、人権に名を借りたいいかがかりといえる訴訟の乱発
共産主義によるマスコミの偏向報道、そしてそれが国家の道筋をどんどんと傾けていく恐ろしさ。

好む好まないに関わらず、韓国と日本はやはり兄弟国家なのだろう。どちらが兄でも弟でもよいが、共に危ない状況にあり、国民にとって悪い方向に進みつつあるのではないかという気がする。
この本のタイトルを「日本の大失策」と変えて、出場人物を筑紫、姜尚中、辻元、関口、古舘、土井、河野、金丸、野中などという各界のそうそうたるお名前に差し替えると、そのまま日本の現代を示すのである。
しかし、この著者が日本の外交姿勢をうらやむところを見ると、まだまだ日本は韓国に比べて大丈夫かなと思う。北朝鮮や中国への不正輸出で超有名企業の幹部が逮捕されたり、朝鮮総連であろうと脱税を犯せば逮捕され裁判にかけられる日本はまだまともなのだろう。
しかし、それも危ういかもしれない。いや多いに危ういのである。

またこの著者は北朝鮮が韓国を支配すれば、日本は即核武装するだろうという。韓国人もそう考えているということは、平和ボケでものを考えられない人以外はそう考えるのがまともだということなのだろう。
従軍慰安婦が存在したのか? 南京虐殺が本当にあったのか? それは諸説紛々であるが、まもなく朝鮮半島にそれ以上の悪夢が生じるであろうと思われる。
man1.gif 願わくは、その過が日本に及びませんように・・とお祈りするだけでは平和ボケと同じレベルである。
我々は、そうならないように準備しなければならない。それは自衛隊を強化するとか日米同盟を強化するということではない。日本人一人一人が国際情勢を理解して、サヨクの偏向報道に迷わされず、しっかりと自分の考えを持ち、自分の意思を選挙やマスメディアに対して発信することだと考える。
それが民主主義というものだ。
民主主義であっても、それができなかったのが現在の韓国である。

著者は言う(94ページ)
韓国人は次のいずれかを選択しなければならない。
第一の選択は北へ向かう列車を止めてソウルに戻ること・・・政治的闘争
第二の選択は列車から飛び降りること・・・亡命または移民
第三の選択はピョンヤンに向かう列車の運行に協力すること・・・左翼になりきる
第四の選択は何にも関心を持たず車内で花札をし酒を飲むこと・・・利己的放任主義

日本人も同じである。
日本人は次のいずれかを選択しなければならない。
第一の選択はペキンに向かう新幹線を止めて東京に戻ること・・・政治的闘争
第二の選択は新幹線から飛び降りること・・・・亡命または移民
第三の選択はペキンに向かう新幹線の運転に協力すること・・・左翼になりきる
第四の選択は何にも関心を持たず車窓から景色を眺めてお茶を飲む・・・平和ボケ

いずれにせよ、今までの生活が明日も続くことはない。
より良い未来に向かって力を尽くすのか、手をこまねいて座して死を待つのか・・・あなた次第である。
この本は日本人ではなく韓国人が、そして俗に右翼と呼ばれる立場でない方が書いている。ぜひ私を含めたネットウヨが大嫌いな方もご一読願いたい。
大変ためになる本だ。


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