夜眠っているときに、外国語とか専門についてのテープをBGMに流していると、無意識のうちにそれが記憶され身に付くとかいう学説です。本当に効果があるのかどうか私は知りません。
酔拳というのがありましたね、酒を飲まないと弱いカンフーが酒を飲むにつれて強くなるという映画でございました。映画を観ているぶんには面白いですが、近くにいたら単に酒癖が悪いというだけのような気がします。

酔拳が酒を飲むと強くなるなら、酔民学習とは酒を飲みながら勉強するのか?ということになりますが、まさしくそのとおりであります。
では本日のバカ話を・・・・・
私が会社に入った60年半ば、まず新入社員の初任給は2万円弱、いろいろ引かれると手取り1万4千円というところでした。疑ぐちゃいけません。年鑑を紐解けば当時の国民所得なんてすぐ分かります。
そんな賃金でしたから、酒なんて飲むお金がないのはあきらかです。以前も書きましたが高校出て就職してからも1年間学生服で通勤したくらいの時代です。
当時と今とつるしのスーツの値段が同じというのが不思議です。
その当時は上司が若い者を誘って、酒を飲ませて経験談を聞かせるというのが普通でした。私も先輩や上司にくっついて安いところで飲ませていただきました。
いえ、本当に感謝しているのです。
当時はカラオケなんてありません。流しが来るのは高級なところ、田舎の安酒屋になんて音楽もなにもありません。酒を飲みながら先輩や上司は彼らの経験談を語ってくれたのです。
酒を飲ませてもらう代わりに自慢話を聞くのは嫌だとおっしゃいますか?たしかに自慢話をする方もいました。うそ800の成功話をする方もいました。
でも先輩は一人じゃありません。ほどなく信頼のおける話のうまい人と、酒を飲みお話を伺うようになるのは当然の帰結です。
成功話あるいは失敗談を聞くということは悪いことではないのです。
人間は経験から学びます。しかし自分の経験は当然限られているわけです。年齢、地域、あるいは己が置かれた環境によって、体験できる範囲、学べる範囲は限定されています。
先輩の話を聞くことによって、それを追体験でき、自分が体験していないことを勉強することができるのです。これが最大の効果だと思います。
だいぶ前、ノミニケーションなんて言葉が流行ったときがあります。
職場の人同士が酒を飲むことによってコミュニケーションを図り、人間関係を改善し働きやすい職場環境を作ろうということのようでした。
私が思うにそんな低レベルなことではないのです。酒を飲もうと飲むまいと、自分が体験していないことを聞き、学ぶことによって、それと同じ状況におかれたらいかに対応すべきかというシミュレーションをしているのだと思うのです。
私がいかなるお話を聞いたかといいますと、
- 生産ラインで不良が多発した時、何を考え、何をしたのかというお話、
それから10年もして私が管理者になって類似の状況におかれたとき参考になりました。
- 仕事でけが人が出たとき、何を考え、なにをしたのかというお話
幸い、私が管理職をしていたときにそんなことはおきませんでした。
その代わり、自分が怪我をしたことがあります。
- 偏った思想の人の扱い
これまた幸いに私が管理者になった頃には急進的(狂信的?)な人たちはいませんでした。
その代わり、朝から酒を飲んでくる部下がいたことがあります。
- などなど・・・・
酒を飲みながら先達の話を聞くということは、昔の炉辺談義にあたるのでしょう。
炉辺談義とは囲炉裏(いろり)のそばで、年寄りが子どもたちにいろいろとお話をして教えること。
酒を飲ませていただいて、ありがたいお話を聞かせてもらえるなんてまったくすばらしいことです。
いまどき高名な人の講演会に行っても、まさか相手のお金で酒を飲みながらお話を聞くなんてこと、ありませんよね、
もちろん若いときは只で飲ませてもらい、そのうち割り勘となり、しまいにはこちらが出すようになりました。こちらがお金を払っても聞く価値があるというのは、セミナーと同じです。
今の私は若い方にお酒を飲ませて、自分の体験談を聞かせようなんて押し付けがましいことは考えておりません。まあ、ぜひ聞かせてくれと言うなら、品質や環境のISO審査員相手の武勇伝とか、県の囲碁大会で活躍したお話とか、アホな上長が行っても改善できなかった下請け会社で指導してあっというまに生産性を倍に上げた話とか、彼の前に敵なく彼の後ろに勝者なしと呼ばれたこととか、彼の後にはぺんぺん草も生えないと称されたこととかそりゃあ自慢話の在庫は豊富です。
『彼の前に敵なく彼の後ろに勝者なし』とは何という番組のフレーズだったかご存じの方いらっしゃいますか?
とはいえ、酒を飲まないとコミュニケーションが図れないのか?と言えば、そんなことはないというのが私の考えです。
以前、たまたま
ハム(アマチュア無線)をしている方と知り合いになって、酒を飲みながら話を聞かせてくださいとお願いしました。その方は『酒は飲めないんだ』と断ったので、『それならコーヒーを飲みながらお話をしましょう』とお願いし、その方の無線にまつわる経験談をお聞きしたことがあります。
同じものを食べたり飲んだりすることは親近感を増します。それによって相手の話をより受け入れやすくなるのだと思います。
現在の若者の多くは酒を飲んでまで上司や年長者の話を聞こうとはしません。
もちろん他人の自慢話を聞くよりもっと楽しいことがたくさんあることは間違いありません。
私は無理に酒を飲んで話をすることはないと思います。教育とか伝承とは勤務時間内にするべきだと思うのです。
しかし勤務時間内であっても若者は上司や年長者の経験談を聞きたくはないようですが・・・・
えー本日は酔民学習のお話でありました。
まとめとしまして、
人間は自分が体験できる範囲は限られている。
だが、他人の経験、思想を最大限活用することにより知識を増して自らの能力をアップすることができる。
酔民学習はそのひとつであるということでございます。
もちろん、このウェブサイトをご覧になることも私の失敗談を学ぶことであろうかと・・・
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