「予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。」
最近、憲法や法律を論じている同志の板で
「法律関連の課題でカキコするんなら、法哲学の基本書くらい読んでからにせい」なんていう書き込みがありました。
この論で行きますと、私のような法律に無縁な衆生は憲法を語っていはばちが当たるかもしれません。
とちょっと引いてしまったのですが、なことはありませんよね。
だって、憲法を知らずして憲法学者を僭称することが許されるのであれば、法哲学を知らずして素人談義することだって許されるでありましょう。
僭称(せんしょう)とは勝手に高い身分を自称すること
『自称憲法学者って誰ですか?』なんてふざけちゃいけません。
いけません、話がずれるどころか憲法60条までたどりついておりません。

中学校で「国会は衆議院と参議院から成り立っていて、衆議院のほうが優位にあります。」なんて習いましたよね?
衆議院優位というのは憲法ではこの第60条1項と次の2項、そして59条2項の「法律は衆議院で可決後、参議院で否決しても衆議院で再度2/3以上で可決すれば成立する」という3点です。
これだけで衆議院のほうが優位であると言えるのでしょうか?
これをもってして衆議院は参議院より優位であるとしてですよ、現実の衆議院議員と参議院議員の値打ちはそれ以上に違うようです。
衆議院は『ワシらが日本を動かしとんじゃい!』というパワフルなおじさんおばさんが大勢ですが、参議院になると、将来衆議院を狙う若手あるいは衆議院を引退したご老体ばかりという印象であります。
日本を動かすどころか、自らが赤いじゅうたんの上を漂っているアメーバのようですね。
私の疑問点をあげます。
- 衆議院は参議院より優先しているのでしょうか?
現実の政治において、衆議院は参議院より優先していることは事実でしょう。
過去に参議院から首相がでたためしはなく、実際の政局も衆議院を軸にして回っています。
でも、それは憲法上の定めによるものあるいは上記しましたほんの3箇所の違いによるものではなく、国民の、そしてまた国会議員の思い込みによるところが多いのではないでしょうか?
参議院議員が『ワシらが日本を動かしとんじゃい!』という信念をもって政治に当たればすぐにも両院の権威は同等になろうかと・・・・
現実に参議院が第二院であるのは、議員自らが第二階級と信じ込んでいるからではないのでしょうか?
- 衆議院が参議院より優先する根拠はなんでしょうか?
いろいろな本によると、衆議院は任期が短くかつ解散という民意を反映する仕組みがあるので、より最新の国民の意思を反映しているからと書いてあるのが多い。
その理屈は正しいでしょうか?
理屈をひねれば、
『参議院は選挙の際に国民がより長期間その任に任ずるために熟考して選出したのであるから衆議院より優先する』ともいえます。
あるいは、『より長期の任期であるということ自体、長期的視野に立ち国家の大局を決定する権限がある』とも言えそうです。
参議院が優位であってもおかしいことはありません。
もともとは現存していた貴族院より衆議院を優位にしたかったのではないでしょうか?
それにマッカーサー原案は一院制でした。それで話の行きがかりとして彼が考えていた衆議院を第一院としたかったのかもしれません。
おっと、過去のいきさつはISO的解釈ではご法度
ここではそれに言及するのはやめましょう。
論理で考えて、妥当性があるか否かだけが論点です。
- 二院制において権力に差をつける必要があるのでしょうか?
アメリカ憲法、大日本帝国憲法は両院の権限に差があります。
但し、それが理屈から必要なことなのか否かは、私浅学にしてわかりません。
これまた、よく言われることですが、両院が異なる決定をした場合収拾がつかないというたとえがあります。
それは本当でしょうか?
現実には、衆院で可決後、参院で否決して再度衆院で審議せずに会期満了で廃案!なんてのはたくさんあります。
アメリカ憲法でも一方が否決した場合云々という手順はありません。ということは自動的に廃案です。
かの国で日本より長く憲法が機能していたことを考慮すれば、そのたとえ話は偽であり、そんな深刻なことではなさそうです。
- いったい両院は何が違うのでしょうか?
同じ選挙人がほとんど同等の被選挙人をほとんど同じ選挙制度に基づいて選出する二院において、その機能が異なるわけがない?
ならば優先順位をつけるまでもなく、その審議プロセスも決議結果も同じになるのだろうか?
それについては以前、両院は何が違うのか?で書きましたので省略
少なくとも現在の日本では『熟考する』という価値は確かにあるようです。
とりあえずの結論として、、
歩き出すとき右足と左足、同時に前に出すわけにはいきません。
片足から進まなくちゃいけません。
同様にひとつの議案を両院同時に提出するわけにもいきません。
とりあえず衆議院に提出するというなら、それもよろしいでしょう。
衆議院が参議院に優先することの是非(よしあし)についてはまた改めて論じたいと思います。