第63条 (2003.06.23)
「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。
又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」



この条文を読んで何か疑問を感じませんでしょうか?
と言いますのは、おばQ obq.gif多いに疑問を感じておるからです。


『両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず』とはいかなる意味でございましょう?
一人の人が両議院の議員となることはできません。(憲法48条)
内閣総理大臣は国会議員でなければならないが、その他の国務大臣の半数以下は議員でなくてもよろしい。(68条1項)
この文はそういった国会議員でない大臣、現在の竹中さんのような方のために存在するのでしょうか?
でも、そうであるなら必ず国会議員でなければならない「内閣総理大臣」を並べて書くのはおかしいですよね。正しい日本語とするなら総理大臣を省き「国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず」と記述するべきではないでしょうか?
おっと、そうすると総理大臣が抜けてしまいますんで「内閣総理大臣、及び両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらずその他の国務大臣は、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。」とすればよいのでしょうか?
 総理大臣は抜けてませんが間の抜けた文章になってしましました。


おらあ、わけ分かんねえ! なんて力むことはありません。 

これは 単なる誤訳 なのです。

誤訳・・・つまりマッカーサー憲法原案を日本語にする時に間違えたってことです。
 英語原文
The Prime Minister and other Ministers of State may, at any time, appear in either House for the purpose of speaking on bills, regardless of whether they are members of the House or not.
最後のHouseが単数で定冠詞が付いていることにご注目ください。
英語原文では両議院を意味するところはすべて複数形となっています。

直訳すれば・・・・いえ、意訳したって同じですけど 
「内閣総理大臣その他の国務大臣は、その議院の議員であるか否かにかかわらず、何時でも議案について発言するためどちらの議院にも出席することができる。」ではありませんか!

現行の「両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず」ということは、
「国会議員であるか否かに関わらず」であって、意味が大幅に違いますよ!

要するに原文の意味するところは
「衆議院議員である○○大臣が参議院に顔を出してもよく、参議院議員である◆◆大臣が衆議院に出席しても良く、議員でない大臣であってもどちらの議会にも列席できる」
ということなのであります。
ところで、この中学生にも分かるような誤訳は単なる誤訳ではなく、何か意図するところがあったのでしょうか?
つまり、この表現により利益を得る輩がおったのか、今現在でも有利な人がいるのでしょうか?
であります、


国務大臣が担当しない議員の審議に際しては出席・発言権がどうたらとか、秘密会の場合はどうたらという解釈が司法試験に出るそうでありますが、もともとの文章が日本語として正しいか?という問題の出題をお願いしたいところであります。


本日の提案
日本国憲法の文章は非論理的で理解が困難です。
私たち国民は、日本国憲法を正しい日本語に書き直すことを要求します。
憲法論議はそれからです。


わかんねえ?わからない?






ななし様からお便りを頂きました。(04.01.29)

第63条について
この条文については、大日本帝国憲法の条文が下敷きになっています。
それは、第54条「国務大臣及び政府委員は、何時でも各議院に出席し、発言することができる。」(原文:国務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ発言スルコトヲ得)です。
それを踏まえて、問題点を整理してみます。
  1. 『「内閣総理大臣」を並べて書くのはおかしい』という問いは一応、次のように読めば間違いとは言い切れません。法律用語において「その他の」とあれば、前者は後者に含まれる関係であることを意味すると定義しています。したがって、内閣総理大臣も国務大臣であり、従って、並べて書いているわけではなく、一種の例示に過ぎないので、法文の表現に関しては間違ってはいません。ならば、内閣総理大臣を特に書き出した理由は何かと問われれば、国務大臣の中でも、内閣総理大臣が一番重要だからということでしょうか。
  2. 『「両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず」とはいかなる意味か』という問は、旧54条と対比してみると、判りやすいでしょう。つまり、現憲法下では、内閣の構成員に国会議員でない者がいる可能性があるため、その者にも内閣の連帯責任を果たすために必要な議院への出席権を与え、内閣の統一性を図ったのではないかという推測が成り立ちます。
  3. 『この表現により利益を得る輩がおったのか、今現在でも有利な人がいるのでしょうか』という問に対しては、国会議員が挙げられるでしょう。それは、条文の後半部分にある、内閣の構成員が国会に呼ばれた時は、その出席を義務づけられているという所にあります。つまり、国会議員が予算委員会で内閣総理大臣を揶揄できるのもこの条文のお陰なのです。しかし、現実はしばしば出席を拒否していますが。
しかし、この法文は確かに悪文です。旧54条の方がよほどすっきりしています。これは、内閣を憲法上の機関にするときに、明確な制度設計をしなかったことに起因しているのでしょう。


ご教示ありがとうございます。
ご説に反論するつもりはありませんが、「the House or not」を素直に解釈すれば「所属する議院であってもなくとも」であって、無理してむずかしく翻訳することもなさそうです。 

次に、『この表現により利益を得る輩がおったのか、今現在でも有利な人がいるのでしょうか』という意味は、
1.『両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず』(現憲法)
2.『その議院の議員であるか否かにかかわらず』(佐為ジジイ訳)
の比較を申し上げているわけで、二番目の文とは無関係です。
その件に関してはどちらの言い回しにしても国会議員にとって得失はなさそうです。
いかがでしょうか?

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