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駒澤大、東京農大、上武大、日本体育大学……
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(2009.10.21) |
まさに前代未聞の予選会!
箱根駅伝の予選会は、前回シード落ちしたチームにとって敗者復活戦、新参のチームにとってはチャレンジレースとなる。まずはこの予選会を勝ちぬくことから箱根駅伝ははじまる。だいたいは9〜10の本戦出場枠をめぐって争われる。今回の予選通過が11になったのは、きわめて異例の現象である。
理由はふたつあって、ひとつは前回の本戦で学連選抜がシード圏内の10位以内にはいったこと。もうひとつは日本体育大学の不祥事のせいである。日本体育大学は前回3位にはいりながら、陸上部員の不祥事でシード権を剥奪されたのである。
さらに……。異例というよりも椿事というべきか。今回は過去に箱根を制した覇者がなんと4チームも予選会にまわってきた。駒澤大学、日本体育大学、順天堂大学、神奈川大学……。いずれも箱根駅伝の一時代をきずいた強豪チームである。
日本体育大学の場合は突発事故というべきだが、駒澤、順天堂、神奈川……と、みわたして、とくに駒澤あたりが予選会に出てくるなんて、時代が変わったなあ。それとも箱根駅伝そのものが、裏側では地殻変動をきたしているのか。ちょっと考えさせられるレースとなった。
駒澤大学、あるいは日本体育大学など、予選会に出てきたことのないチームがいったいどんな戦いをするのか。順天堂大学、神奈川大学、法政大学など箱根の常連校は予選突破なるか。東京農大、帝京、城西、専修、国士舘など予選会の常連メンバーは、今回も強いところをみせるのか。青山学院、上武など新興チームは勢い位で乗りきるか?
タイムレースというかたちで、観るレースとしては、あまり見どころのないきわめて単調な駅伝だが、興味のマトは、まあ、そんなところにあった。
個人のトップはルーキーの村澤明伸(東海大)!
47チーム554人の選手たちが立川駐屯地をいっせいにスタートする。ヨコ広がりに選手たちがとびたつさまは、いつもながら壮観であった。山梨学院大が予選会にまわってこなかったので、毎年のようにペースメーカー役をつとめるケニア人留学生は昨年につづいて今年もいない。かわって先頭にたってひっぱったのは昨年の個人覇者・外丸和輝(東京農大)、宇賀地強(駒澤大)、そしてルーキーながら期待の星である村澤明伸(東海大)だであった。
1q=2:58、5q=14:48……。10をすぎても村澤を先頭にして、トップ集団には25人がくらいついていた。15qの通過が44:35とまずまずのペース、そこで外丸がスパートして集団からとびだした。村澤がおいかけ、高橋優太(城西大)がつづいた。
個人のトップ争いは3人にしぼられたが、勝負どころで強さを発揮したのは1年生の村澤だった。15.9キロでぬけだして、あっさりと後続をふりきった。最後の5qを14:32と自身のラップとしても最高をマークして堂々の1位でゴールにとびこんだ。
だがレースそのものの結果はすぐには分かるはずもなく、この予選会というものはなんとももどかしい。続々と折り重なるようにゴールする選手たちのユニフォームからチーム名を判断して、何人がゴールしたかを目安に順位に思いをめぐらすだけなのだから……。 10人がゴールした順番が上位でも、タイムでは思わぬ下位になっているケースもまれではないのである。さらに9位以下の3チームは関東インカレポイントというハンディを勘案して順位がきまるのだから、とにかく、ややこしい……のである。
過去の覇者・順天堂大、神奈川大は落選!
昭和記念公園のゴールちかくの広場でおこなわれる結果発表、いつもながら、まるでビックリ箱をあけるかのような緊張感がある。とくに9位いこうの3チームはまったくわからない。
1位:駒澤大学、2位:東京農業大学、3位:上武大学、4位:日本体育大学、5位:帝京大学、6位:城西大学、7位:専修大学、8位:青山学院大学……。(ここまでは予選会のタイムそのままの順位で決定)
問題の9位以降の3チームはけっきょく次の通りになった。9位:東海大学。10位:亜細亜大学、11位:法政大学……。
その結果、順天堂大は13位、神奈川大は16位であえなく落選した。毎年ボーダーライン上できわどくねばりをみせる国士舘大は12位で落選した。国士舘は過去においてインカレポイントを活かして、他校を泣かせてきた。今回も3:30というおおきなアドバンテージをもっていたが11位の法政との差は2分ちかくもあり、完敗であった。
逆に13位の順天堂はじつに3分50秒というおおきなインカレポイントをもちながらも、これを活かせなかったのだから、やはり完敗というべきであろう。
インカレポイントをめぐっては毎回、明暗がわかれる結果になり、その功罪が議論のマトになるが、今回に関しては、まったく矛盾点がなかったのはなによりというべきであった。
5qごとの順位変動からみえてくるもの!
おもしろいと思うのは5qごとの順位変動である。5q、10q、15q……の順位変動から各チームの戦略がほのかにみえてくる。
▽5q
1位:東京農大、2位:城西大、3位:専修大、4位:日本体育大、5位:東海大、6位:青山学院大、7位:駒澤大、8位:亜細亜大
9位:順天堂大、10位:法政大、11位:上武大、12位:国士舘大、13位:神奈川大、14位:帝京大
▽10q
1位:東京農大、2位:城西大、3位:駒澤大、4位:日本体育大、5位:東海大、6位:青山学院大、7位:専修大、8位:亜細亜大
9位:順天堂大、10位:上武大、11位:帝京大、12位:国士舘大、13位:神奈川大、14位:国士舘大
▽15q
1位:東京農大、2位:駒澤大、3位:日本体育大、4位:城西大、5位:上武大、6位:帝京大、7位:専修大、8位:青山学院大
9位:東海大、10位:順天堂大、11位:法政大、12位:亜細亜大、13位:国士舘大、14位:拓殖大
最終2位の東京農大は15qまではトップなるという実に安定した戦いぶりであった。本戦でも大いに期待出来そうである。
1位の駒澤大は5qでは7位、10qでは3位、15qでは2位と距離がのびるにつれて上位に進出、地力はさすがというべきであろう。
注目すべきは帝京大と上武大であろう。帝京は5qでは14位と下位にありながら10qでは11位、15qでは6位と順位をあげ、最終5位までやってきた。上武大も5qでは11位ながら、10qでは10位、15qでは5位、最終的には3位まであがってきている。日体大、城西よりも上位に来ているのは上出来である。距離がのびてこそ持ち味が発揮できそうなチームであり、それは箱根を意識したチームづくりの結果というものだろう。
最後にすべりこんだのは法政大だった!
結果的にみて、5qで7位までに来ている東京農大、城西、専修、日体大、東海、青山、駒澤が最終的にものこり、そこに上武、帝京、法政が加わったかたちである。そのうち上武、帝京は15qで安全圏にすべりこんでいる。タイム的にみても9位の東海と10位の亜細亜は大差がついている。
だから9位までは安全圏、あとは10位と11位という2つの椅子をめぐって亜細亜大、法政大、順天堂大が最後まで熾烈な争いをくりひろげていたことになる。過去52回連続出場記録をもつ順天堂は最後の最後で亜細亜、法政の後塵を拝してやぶれ去ったということになる。
箱根駅伝は回をかさねるたびに、上位と下位の差がなくなってくる。シード校と予選会あがりの各校との実力差もいぜんほどはなくなってきている。順天堂大や神奈川大のように過去の覇者でも、いちどシード落ちしたら、すぐに這い上がることもできないしまつである。
今回の本戦も激戦必至だろう。今回出場権を獲得したチームのうち本戦でも上位争いにくわわれそうなのはどこか? やはり駒澤、日本体育大、そして東京農大あたりが候補になる。なかでも注目は駒澤である。
予選会あがりで本戦も制した例もあるにはあるが、駒澤にそこまでの底力があるかどうか。さらに出雲を走り、予選会を走り、全日本大会も走る。過密なスケジュールがどのように影響するかという問題もある。
よほど実力的に抜けた存在ならともかく、最近のように上位と下位が実力接近している状態では、レース過多がマイナスに働くこともかんがえられる。だから駒澤についてはとりあえず全日本の戦いぶりに注目したいと思う。
個人的にはオレンジエキスプレスが最後にすべりこんだこと、わがランニングのコーチの出身大学だけにたいへん満足している。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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