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またしても先行、逃げきりの圧勝劇!
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(2010.10.25) |
異次元の戦いをくりひろげる! 佛教大と立命館大
3分40秒……
2位と3位のタイム差である。女子の大学生ランナーとはいえ1qのラップはだいたい3分10〜15秒だから、距離にすれば1000mをはるかにこえている。
さらに……。5区から6区のタスキ渡しのとき、すでにして2位の立命館大と3位の名城大との差は3分13秒、ここでもやはり1000mの差がついていたことになる。1000mの差といえば大差である。もはや背中をみることもできない。
つまり……。26チームが出場した全日本大学女子駅伝とはいえ、優勝した佛教大と立命館大の両チームはまるで異次元のところで戦っていた。
レースは二極分解していた。一方は佛教と立命による宿命の対決、もう一方は両校をのぞく24チームの対決……という構図になっていたのである。レベルの異なる二つのレースが同時におこなわれていたとみるべきだろう。
両チームは後続を大きくぶっちぎり、区間賞も五区をのぞいて、すべてワン・ツウで決めているのである。
こんなふうに見てゆくと、大学女子のレベルがあがったというよりも、佛教大と立命館大が別格の存在というべきだろう。両チームをのぞくと、あとのチームは、いままでの大学女子の平均的なレベルとみていい。とても大学女子のレベルが総じて底上げされたとはいいがたいのである。
2連覇を果たした佛教大と立命館大の現在の実力をもってすれば、実業団のなかにはいっても上位争いができるだろう。佛教大などは優勝争いに絡めるかもしれない。アジア大会代表の吉本ひかり、ユニバの覇者・西原加純というような若くて勢いのあるエースがいるのだから……。両エースは今回もフル回転、佛教大に連覇をもたらした。
敗れたとはいえ立命館大もデキが悪いわけではなかった。チームとしての記録を更新しているのだから、佛教大のデキがうわまわったのだとみなければなるまい。
勝負のアヤは1区に?
結果的にみて、勝負は1区で決した。予想通りというべきか?
昨年は2区の森唯我が追いすがる立命館大の沼田未知をぶっちぎって優勝への足がかりをしっかりきずいた。今回は森知奈美がその役割を果たした。宿敵・立命館の夏原育美を30秒も後ろに置き去りにした。森の区間1位の快走で佛教大はリズムにのってしまった。 立命館大が王座を奪還するには1区で佛教に先んじるか、少なくとも互角の形勢にもちこむ必要があった。事実、関西地区予選では1区で先行、そのまま逃げ切っているのである。
予選と同じように本戦でも1区に竹中を配して先手をとろうとする作戦に出るものと思われた。ところが区間エントリーでは1区に夏原育美を起用していた。それほど調子が上がっているとは思えない夏原の起用、ヤジ馬の時評子などは、オヤッ…と驚いたが、傍目にはわからない権謀術策があるものと興味深く注目していた。
だが、結果的にみると、みごとに裏目になった。夏原は高校時代ならともかく、大学生になってからみるべきものがない。予選もAチームにはいなかった。とても正攻法の作戦とはいいがたいとみるのは小生だけだろうか。
1区は予想通り、それほどハイペースにはならなかった。1q=3;15、3q=9:51だかrまあまあ並のペースか。3q付近ではおよそ12チームがトップ集団をなしていた。速くもこのあたりで京都産業大、玉川大などブレーキ状態で脱落していった。
ペースはじりじりとあがるという展開で3,6qあたりでは、森知(佛教)、夏原(立命館)、浦川有梨奈(名城)、岡小百合(大体)、田村紀薫(松山)の5人にしぼられてしまった。
集団の主導をにぎっていたのは佛教の森知であった。1q〜2qは3.15、2q〜3qは3;11、そして3q〜4qは3:09というように巧妙にペースをあげてライバルにゆさぶりをかけていたのである。じりじりとペースをあげるのから、周囲はそれほど警戒していない。だが気が付いたときにはもう遅いのだ。4qは浦川、そして夏原がおいてゆかれ、残り1qではけんめいにくらいついていた田村もふりきられてしまった。
森知奈美は小憎らしいまでの巧走で立命の夏原に30秒という大差をつけてしまった。先制しなければ勝ち目のない立命館、だが逆に後塵を拝するはめになって。勝負の流れは一気に佛教大のように傾いていった。
驚異の区間新! 3区では西原が快走
立命館大は竹中理沙がどの区間にもってくるのか。それも大きな注目のポイントであった。1区でなくて2区にもってきたということは、もし1区で紛れがあったときに、2区で軌道修正をはかろうという腹だったにちがいない。
ところが1区で30秒もちぎられては竹中でもいかんともしがたいものがあった。竹中はこれまで大学駅伝ではいまひとつの成績だったが、最近は復活気配だった。それゆえに期待がかかっていたが、区間1位こそもぎとったが、相手は石橋麻衣である。佛教大にかたむいた流れを変えることはできなかった。
24秒の貯金をもらった佛教大3区の西原加純は、スタートからすっとんでいった。1q=3:03、3q=9:24というから驚異的なハイペースといわねばならない。追ってくる立命館の田中華絵をあきらめさせてしまうという腹なのか。前半からハイペースで突っ込み、後半もくづれなかった。中間点で田中との差を41秒にひろげ、中継所では55秒差にしてしまった。昨年まで目の上のたんこぶだった小島一恵の区間記録を23秒もうわまわる区間新記録の爆走、エースとしての役割をしっかり果たしたといえる。
立命館大の田中華絵は西原に遅れること31秒で区間2位だから悪くはなかった。けれども力負けしてしまったのは、佛教へ転がりはじめたレースのアヤのせいだろう。
3区で注目すべきは名古屋大学の1年生・鈴木亜由子の快走である。区間3位ながら8人抜きで20位から一気に12位へと順位をおしあげてきた。
さすがは日本代表というべきか!
佛教大の各ランナーはタスキをうけると同時にハイペースですっとんでゆく。4区でも佛教大の川嶋利佳がハナからハイペースで突っ込んだ。最近になって急成長をとげたランナーだが、1q=3:04である。
これだけ気合いをいれて入られては後続はたまらない。立命館大の4区は区間記録保持者の沼田未知だった。彼女も1q=3:04と同タイムではいったが、差はいっこうにつまらない。逆に立命館がたのみとするこの区間で23秒もかせがれて、その差を1分18秒にひらけれてしまうのである。
佛教のウイークポイントは唯一4q区間の5区だったが、1分をこえる差があれば、それだけで十分に心の支えになるだろう。
立命館はこの区間、高校駅伝のスターで、1年生にして3000mで日本ランク2位、1500mの関西インカレチャンプの藪下明音、ほとんど背中がみえない状況での追撃だったろうが、懸命に追いかけた。さすがは駅伝巧者というべきか。短い距離ながら32秒も差を詰めて、46秒差まで追いあげたが、時すでに遅し……。
佛教大のアンカーはもう一枚のエース・吉本ひかりである。46秒もの貯金で心の余裕をもって入られてはなすすべがなかった。
吉本も西原と同じく、ハナからハイペースで突っ込んでゆき、5q=15:20という驚異的なハイペース、いかにも日本代表にふさわしい走りで、自身の区間記録を21秒も更新、史上5校目の連覇のゴールにとびこんでいった。
西原といい、吉本といい、競っている状況ではなく、かなりの余裕のある状態でタスキをもらっている。しかし彼女たちは勝つためのレースをするというのではなく、持てる力をフルに回転させるという姿勢をつらぬいてハナからフルスピードですっとんでいった姿に清々しいものを感じた。
2強対決! いつまで続く……
佛教大の連覇! 史上5校目の連覇達成! 終わってみれば勝つべくして勝った…というべきか。
絶対的なエースというべき2枚の看板選手をもち、それが実力通りにフル回転した。さらに……。たとえば前回の初優勝メンバーのひとり竹地志帆を欠いても、代役の川嶋が区間賞の快走をみせるなど、選手層が厚くて、替わりはいくらでもいる。
ほとんど全員が本番でベストの走りをするなど、コンディションの調整にもぬかりがなかった。
そして選手一人ひとりが自分の果たすべき役割をしっかりわきまえている。それがモーティベーションの高さをもたらしているとみた。
佛教大にふたたび敗れたとはいえ、立命館大も致命的なミスがあったわけでもない。ベスト記録を更新している。にもかかわらず勝負に敗れたということは、力負けしてということになる。同じパターンで二度までも敗れただけにショックは大きいはずだ。
勝負の厳しさ、険しさ…というものをいやがうえにも思い知らされたことだろう。それを乗り越えるには、やはり、この「悔しさ」をバネにしてするほか道はない。
大健闘したチームをあげれば、4位の松山大、6位の鹿屋体育大の2チームである。松山大は1区から好位置につけて、最後まで上位に粘りぬいた。鹿屋体育大も最終区でシード権をもぎとった。関東と関西の両地区いがいでシード権を獲得したのは初めてのケースである。両校のチーム力向上のせいもあるが、逆にいえば大体大(14位)や京産大(16位)のように、かつての強豪チームがおおきく凋落したせいもある。
2強対決は今しばらくつづくのだろう。ひるがえって考えてみると、果たしてそういう状況でいいのだろうか……という疑念もないわけではない。
いわば「2強24弱」というように実力が乖離した大学女子駅伝の状況……。優勝争いは2校にしぼられ、残りの24チームで3位とシード権をはげしく争う。きわめて特異な現象である。これでは大学女子駅伝の全般的な底上げにもつながらす、それゆえに、大学女子の駅伝そのものの人気も、いまひとつもりあがらないだろう。
それでも西原や吉本のようなジャパンレベルの選手がいるときはまだいい。スター性のある選手がいなくなったり、名門といわれ、強豪といわれるチームが凋落してしまえば、スポンサーもつかずに、おそらくテレビ中継もなくなってしまう。「全日本大学女子選抜駅伝」が休止に追い込まれただけに、まったく、ありえない話でもないのである。
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