[第87回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会]



拓殖大学がトップ通過!


 10月16日(土)、第87回東京箱根間往復大学駅伝競走の予選会が立川市の国営昭和記念園周辺コースで行われ、本大会に出場する9校が決まりました。
 午前8時30分、36チーム415人がいっせいにスタート、拓殖大学が10時間11分39秒でトップ通過、2位には國學院大、3位には帝京大が入りました。その一方で、43年連続出場の大東大が脱落、法大、亜大、順天堂大、国士舘大など常連校といわれる伝統校が出場権をのがしました。


◇ 日時 2010年10月16日(土)午前8時30分スタート
◇ 場所 国営昭和記念公園(立川市)
◇ コース 陸上自衛隊立川駐屯地スタート〜立川市街地〜昭和記念公園内ゴール(20.0km)
◇天気:くもり  気温:19.3度  湿度:67%   風:2m

拓殖大、國學院大、帝京大…
(2010.10.17)

下克上の傾向が顕著に!

 久しぶりに立川まで行ってみようと思っていたが、昼まえからヤボ用ができてしまい果たせなかった。予選会に出場した415人が立川市街を走っているころ、ぼくは所沢の航空公園の周回コースを走っていた。
 少し湿度は高そうだったが、樹々のあいだをぬけている風が心地よかった。中学駅伝の予選が間近にあるからだろう。園内は市内の中学生たちが、あちこちに、たむろして、思い思いにアップをしたり、引率の教師の指示にしたがってコースを走ったりしていた。やたら賑やかだった。
 ぼくのランニングのコーチである元箱根ランナーも中学校の教諭である。社会科の先生だが、箱根ランナーの経歴を買われて、いまは駅伝チームのめんどうをみている。きっといまごろ、どこかで生徒たちの練習をみまもっているのだろうと思った。
「法政はギリギリだと思いますが、セーフでしょう」
 2日まえに電話で話したとき、かれはそのように言いきった。
 母校の本戦出場を固く信じて疑がうことはなかった。予選会に見に行くのなら、結果が判明しだい携帯で一報してほしい……というのだった。
 だが予選会にはゆけなかった。
 結果的にみて、たとえ出かけられたところで、かれに電話は出来なかった。法政は最後の1つを専修と争ってあえなく敗れてしまったのだから……
 いつもなら録画によるテレビ中継は1週間おくれだが、今回は当日の午後3時30からであった。繰りあがったのは箱根駅伝そのものがスポーツ中継でも人気番組となり、ますます巨大化しつつある証というものだろう。駅伝中継のなかでも、いまや箱根だけは別格になっている。
 2〜3年まえから、俗にいうところの下克上の傾向が顕著になってきた。それは箱根人気がたかまりとパラレルの関係にあるだろう。箱根駅伝は関東地区の駅伝大会だか、いまや高校野球でいうところの甲子園とおなじぐらいのポジションを占めている。関東の各大学が箱根出場獲得に血眼になるのはムリからぬ話なのである。陸上競技のなかでも駅伝の強化にのりだし、かくして各大学の実力差はかぎりなく接近してゆくことになる。
 予選会のエントリーをみるとかつての箱根の覇者であり、昨年は出雲と全日本を制した学生2冠の日大の顔があり、さらに順天堂大学、大東文化大学、亜細亜大学、さらには神奈川大学の名もある。箱根を制した5校がなんと今回の予選会で出場権の獲得をめざしているのである。
 3時からの録画中継をみると、法政は終始ボーダライン上にあり、15qまではなんとか持ちこたえていたが、最後の5qでライバルの専修大にふりきられてしまった。法政(10位)だけではなかった。かつての覇者をふくめて伝統校、常連校といわれる大学のいくつもが、あえなく出場権を失した。


留学生いがいはドングリの背比べ

 今回からは出場資格が5000mで30秒、10000mで1分きびしくなった。出場選手が500人から415人に減ったのはそのせいだろう。コースも一部変更されている。いままでより市街地を走る距離が約2qのびて、昭和記念公園内の距離が1周半から1周になった。アップダウンのはげしい公園内の距離が減り、平坦な市街地コースがふえたのだから、ハイペースのレースになりそうな気配だった。
 500人から400人あまりになったとはいえ、立川駐屯地の滑走路(幅45m)をいっせいにスタートするさまは壮観である。
 レースはスタート直後からハイペースで幕あけた。留学生のジョン・マイナ(拓殖大)とガンドゥ・ベンジャミン(日大)が抜けだして、終始はげしくトップを争うという展開であった。
 5q=14:33 速い! だが速いのはトップ争いをする2人の留学生だけで、ちぎられた3位集団の日本人選手たちのペースはそれほどでもなかった。トップ集団の10qは29:00、この時点で3位集団との差は55秒にもひろがっていた。
 レースに動きがあったのは15qあたり。マイナーが積極的にしかけてベンジャミンをひきはなにかかる。後続集団でも14qあたりで早川翼(東海大)が前に出て日本人トップに立つも、前をゆくマイナとの差は1:35とおおきく水をあけられていた。
 個人のトップはマイナ(拓殖大)で58:23、2位は20秒遅れで日大のベンジャミン、東海大の早川が60:03で日本人トップの3位、4位には上武大の長谷川祐介が60:12でつづいたが、タイム的にみるかぎり、それほどレベルの高くはなかったといえる。1時間を切った選手が昨年は11人もいたが、今年は2人の留学生だけだったという事実が、それをよくものがたっているだろう。
 故障で欠場した村澤明伸(明治)のように、主導権をにぎって自力でレースを左右できるトップクラスの選手がいたら、かなりちがったものになっていただろう。だが現実はよくもわるくもドングリの背比べ、予選会という性格も多分に影響しているだろうが、積極的にしかけてゆく選手が少なかったのが残念である。


好対照をなす神奈川大と大東文化大……


 終わってみると今回の予選会はいがいに平穏に終始したようである。昨年の駒澤大や日本体育大のように図抜けたチームが不在だったせいもあり、いまひとつタイム的にも不満なものがり、盛り上がりを欠いていた。
 のちになってかえりみると5q通過の時点でほぼ大勢が決していた。5q通過の順位は帝京、神奈川大、中央学院大、東海大、國學院大、拓殖大、日本大学、順天堂大学、法政大……である。
 このうち上位7校までは順位の入れ替えはあるが、圏内から動くことなく、8位の順天堂大と法政大が落ちて、上武大と専修大がもぐりこんだのである。
 トップ通過の拓殖大はマイナーの爆走もあるが長い距離には自信を持っているようだ。5qでは6位、10qでは2位、15qではトップに立つというように、距離がのびるにつれて順位をあげてているのである。
 2位の國學院大學は大健闘ではないか。6月の全日本の予選では10位におわっている。帝京大や拓殖大、国士舘にさえ負けているのに、そこから建て直してきた底力にみるべきものがある。
 帝京大(3位)、中央学院大(4位)、上武(5位)もそこそこ粘りがありそうだ。
 6位の東海大は村澤明伸(前回の1位)を欠いているが早川翼などの活躍でなんとか無事に通過した。まだまだ上積みがありそうである。
 日本大学も7位で通過したが、ベンジャミンの快走があったものの、インカレポイントがなければ全体では9位という成績である。今シーズンも本戦にいっても、かなりきびしそうである。
 かつての覇者のかなかでは神奈川大学が8位に入って、2年ぶりに返り咲いたが、過去4回制覇の大東文化大学は11位となり、連続出場は43回でとだえた。過去11回制覇の順天堂は13位におわり、今回も復活はならなかった。亜細亜大学も今回から拓殖大学の指揮をとることになった岡田正裕が監督だったときに箱根制覇を果たしているが、凋落は否めずに今回は12位に沈んだ。
 注目していた法政大はインカレポイントを3分も持ちながら10位、国士舘大は14位である。予選会で上がるか下がるかはまさに天国と地獄、いちど落ちたチームの復活はかなりのエネルギーを要するだろう。
 ところで今回の予選会あがりの9チーム、本戦ではどれだけやれるだろうか。今回は総じてシード組と比較では、かなり差があるのではないかとみている。そんななかでシードを奪える可能性のあるのは、かろうして拓殖大と東海大ぐらいではないか。


出場チーム&過去の記録

出場チーム
城西大学男子駅伝部
山梨学院大学陸上競技部
中央学院大学陸上競技部
法政大学陸上競技部
明治大学競走部
神奈川大学陸上競技部
國學院大學陸上競技部
国士舘大学陸上競技部
東京農業大学陸上競技部
帝京大学競走部
上武大学駅伝部
平成国際大学陸上競技部
関東学院大学陸上競技部
青山学院大学陸上競技部
筑波大学陸上競技部
流通経済大学陸上競技部
立教大学陸上競技部
創価大学陸上競技部
松蔭大学駅伝部
東京大学陸上競技部
東京学芸大学陸上競技部
国際武道大学陸上競技部
慶應義塾競走部長距離パート
駿河台大学陸上競技部
横浜国立大学陸上競技部
学習院大学陸上競技部
一橋大学陸上競技部
東京工業大学陸上競技部
東京理科大長距離ブロック
埼玉大学陸上競技部
成蹊大学陸上競技部






関 連 サ イ ト

箱根駅伝公式サイト
関東学連公式HP




駅伝TOP
駅伝ひとくちメモ
駅伝BBS







最 終 成 績
<順位 チーム名 最終記録 IC 予選会記録
拓殖大学 10:11:39 - 10:11:39(01)
國學院大學 10:15:46 - 10:15:46(02)
帝京大学 10:18:22 - 10:16:22(03)
中央学院大学 10:16:40 - 10:16:40(04)
上武大学 10:17:49 - 10:17:49(05)
東海大学 10:20:10 - 10:20:10(06)
日本大学 10:19:26 03:35 10:23:01(08)
神奈川大学 10:21:27 00:30 10:21:57(07)
専修大学 10:22:46 00:45 10:23:31(09)
10 法政大学 10:24:35 03:00 10:27:35(11)
11 大東文化大学 10:25:44 02:15 10:27:59(12)
12 亜細亜大学 10:26:52 00:40. 10:27:32(10)
13 順天堂大学 10:29:56 03:40. 10:33:36(13)
14 国士舘大学 10:31:57 03:25. 10:35:22(14)
15 松蔭大学 10:36:16 00:10. 10:36:26(15)
16 創価大学 10:38:17 01:25. 10:39:42(16)
17 流通経済大学 10:41:28 01:40. 10:43:08(17)
18 平成国際大学 10:42:58 02:25. 10:45:23(19)
19 麗沢大学 10:43:05 00:10. 10:43:15(18)
20 関東学院大学 10:50:09 00:10. 10:50:10(20)
21 武蔵野学院大学 10:57:17 -. 10:57:17(21)
22 東京経済大学 10:59:55 00:30. 11:00:25(22)
23 慶應義塾大学 11:12:43 02:45. 11:15:28(23)
24 東京大学 11:16:35 00:20. 11:18:55(24)
25 東京学芸大学 11:23:03 02.10 11:25:13(26)
26 立教大学 11:24:20 01:10. 11:25:30(27)
27 学習院大学 11:24:24 00:10. 11:24:32(25)
28 国際武道大学 11:31:31 02:45 11:34:16(28)
29 筑波大学 11:32:41 03:50. 11:36:31(30)
30 東京理科大学 11:34:18 00:20. 11:34:38(29)
31 横浜国立大学 11:46:19 01:15. 11:47:34(32)
32 筑波大学大学院 11:46:42 00:10. 1146:52(31)
33 千葉大学 11:54:24 00:20. 11:54:44(33)
34 東京大学大学院 12:00::14 00.10 12:00:24(34)
35 防衛大学校 12:01:17 00:10. 12:01:27(35)
36 駿河台大学 12:06:23 00:50. 12:07:13(36)


個 人 成 績
順位 選手名 所属 タイム
J・マイナ 拓殖大学 58:23
G・ベンジャミン 日本大学 58:43
早川 翼 東海大学 1:00:03
長谷川裕介 上武大学 1:00:12
荻野 皓平 國學院 1:00:12
小林 光二 中央学院大学 1:00:16
谷川 智浩 拓殖大学 1:00:17
仁科 徳将 國學院大学 1:00:26
中村 亮太 帝京大学 1:00:26
10 堂本 尚寛 日本大学 1:00:34
11 大沼  睦 帝京大学 1;00:38
12 五十嵐祐太 専修大学 1:00:41
13 田村 優宝 日本大学 1:00:43
14 西山 容平 拓殖大学 1:00:45
15 大谷  克 中央学院大学 1:00:07
16 塚本 千仁 中央学院大学 1:00:48
17 氏原 健介 上武大学 1:00:53
18 奥  龍将 國學院大学 1:00:58
19 福島 法明 創価大学 1:01:02
20 野本 大喜 拓殖大学 1:01:04
21 梶原 有高 松蔭大学 1:01:04
22 安島 慎吾 専修大学 1:01:12
23 樋口 正明 創価大学 1:01:13
24 藤井 啓介 中央学院大学 1:01:17
25 金子 太郎 東海大学 1:01:21
26 田中 瑞穂 中央学院大学 1:01:21
27 小杉新太郎 神奈川大学 1:01:23
28 土久岡陽祐 帝京大学 1:01:23
29 清谷  匠 法政大学 1:01:25
30 近藤 洋平 法政大学 1:01:26





バックナンバー
22009-2010 駅伝時評プロローグ
第21回 出雲全日本大学選抜駅伝
第86回 箱根駅伝予選会
第27回 全日本大学女子駅伝
第20回 東日本実業団女子駅伝
第41回 全日本大学駅伝
第25回 東日本女子駅伝
第25回 FUKUIスーパーレディース駅伝
第21回 国際千葉駅伝
第29回 全日本実業団女子駅伝
第7回全日本大学女子選抜
男子60回・女子第21回高校駅伝
第54回 全日本実業団駅伝
第86回 箱根駅伝
第28回 都道府県対抗女子駅伝
第15回 都道府県対抗男子駅伝
2009-10駅伝時評 エピロローグ
Topへ][駅伝トップへ






Copyright (c) 2011 FUKUMOTO TAKEHISA. All Rights Reserved.