ジャミラ祈念日   

 

ジャミラ祈念日

新しい夢
など
なかった

空はいつも
上にあった
果てしなく広く
果てしなく遠く
あらゆる叫びと呻きを
唯吸い上げて持ち去った
誰も
答えてはくれなかったから
高みから見降ろしているものさえも
いなかったと言えるだろう

たとえばそれが
創造主と言われるもので
あったとしても
彼には

地球に帰ると
真空の中でひび割れていた彼の体には
いくすじもの雨がそそいだ

安らかに眠ってください
あやまちはくりかえしませぬから とは
彼が宇宙に捨てられる前に終わった
痛恨のつぶやき

宇宙は
平和のために開かれるべき
扉 であったのか
いたましい
美しい言葉をもって
彼を飾るな
または何の石碑も
そして彫り付けられた銘板も

新しい夢 など
なかった



松本 賀久子

「ジャミラ祈念日」・・・ジャミラ(棲星怪獣)
 身長50メートル。体重10,000トン。東京で開催 される国際平和会議を妨害する怪円盤。撃墜された円盤 から現れたのは、某国の有人衛星実験の失敗で変わり果 てた姿となった宇宙飛行士ジャミラだった。事態を予測 していた科学特捜隊パリ本部は、アラン隊員を派遣し、 日本支部に極秘の命令を下す。「会議の成功のため、ジャ ミラの正体を隠し、宇宙から来た一介の怪獣として処理 せよ」・・・国際平和会議が開催された当日、会場の片 隅には小さな墓碑が設置されていた。それが誰のものか を知るのは科学特捜隊の隊員のみである。
(出演作品「故郷は地球」)