index3月10日|3月11日|3月12日3月13日3月14日3月15日
3月11日(木曜日)くもり1時雪

昨夜の疲れを取るためと、今夜に備える意味で今朝はゆっくり起きる....。というのはYの家に泊まった私とJのこと。ホテルに泊まった私の両親と妹は、8時前には夫に起こされたらしい。午前中ショッピングセンターを覗き、11時に私とJを迎えに来る。Oのお母さんたちとも待ち合わせ、一緒に昼食に出る。

昼食
昼食

夕方からはKの結婚式。会場はYのときと同じ、キャンプウイリアムズの将校クラブである。アメリカでは結婚式の費用は花嫁の父親が出すことになっている。それを聞いたときには、日本の習慣とあまりに違うので驚いた。私の父親など「のしをつけてもらってもらわなければならないような娘ではない」といきまいていた。それでも「花嫁のパパ」という映画で、花嫁側が式の準備をしているのを見て、何とか納得したものだった。その後Yに言われるままに費用を送り、結婚式の前日にアメリカに着いた。Yたちの結婚式は、日本のものに比べてあまりにも質素だったのに驚いて、出席している人に私たちがお金を出さないからこんな式なのかと聞いたものだった。このあたりの結婚式は似たり寄ったりだと言うのをと聞いて安心した。

朝から天候がすぐれず、昼過ぎに降り始めた雨は、式場へ向かう途中には雪になる。見る間に積もり始め、キャンプにつく頃には路面も滑りやすくなっている。式の出席者の足の便、帰りのことなどを考えると気がきではない。準備をしている間にも、外の様子が気にかかる。

キャンプウイリアムスの将校クラブ
降り止まぬ雪

花嫁の支度をしていると、誰か入ってきてKになにかつげている。KとOの結婚の許可証がないというのである。それでも何とかなるといわれて準備を続けていると、「二人で許可証をもらいに行かなくてはならない」ということになってしまった。ウエディングドレスを脱ぎ、洋服に着替えてKとOはソルトレークシティーに向かう。許可証を発行してくれる人は本来5時が仕事終了時間だが、事情が事情だけに時間を延長して待っていてくれるらしい。雪はますますひどく、「動揺した気持ちで運転しては心配だ」とYが運転を買って出てくれる。本人たちの動揺もさる事ながら、い合わせた人たちの驚きようも半端ではない。

周囲の人たちは、折に触れ準備はどうか、なにか手伝えることはないかと気にしてくれていた。ところが結婚許可証のことは、あまりにも当たり前のこと過ぎて誰もたずねてはくれなかった。もともと、結婚許可証は、本来式の立会いをしてくれるビショップが「あなたたちが準備するものは」と言ってくれるものの中に入っているらしい。それがあったかなかったかは水掛け論として、二人を待つビショップの姿には「気の毒に」とか「申しわけない」といった表情は見られない。外を見て、二人の帰ってくることをしきりに気にしている私を見てYのお母さんは、「そんなに気にしても仕方ない、時間がくれば帰ってくるのだから」と慰めてくれる。そうは思うのだが....気が付くと私は窓に張りついている。

花嫁の付き添い人たち
微かに電気がついた会場

式場の準備はすっかり整い、二人を待つばかりとなる。お客さんも続々と集まり、なんとなく私たちも手持ち無沙汰になってくる。時間がずれ込んだこともあり、本来の予定とは順序が違うが料理を出して食べていただこうということになり、手分けして並べる。そうこうしているうちに、ふっと会場が暗くなる。停電のようである。非常用の発電装置が動いてはいるようだが、電圧が足りないため微かに電気がついているという程度の明るさしかない。それすらもしばらくすると消えてしまう。

係りの人の「しばらくお待ち下さい、いま復旧作業をしています」という一言があったのみで、一向に復旧しそうにない。作業の進捗状況などの情報をこまめに流す必要があると、なにか障害が発生した際に言われることだが、本当にそう感じる。仮にこのまま復旧しないとして、電気がつかないことが式に及ぼす影響を考える。照明はキャンドルで代用できるが、ウエディングマーチは代わりがない。「誰かピアノを弾ける人」と募集したが誰もいない。Kと同じ大学で学ぶ青年たちが考えてくれたのが、「車でCDをかける。キャンプの兵隊から借りたラジカセでその音をひろう」という方法である。すごい音になるだろうが、この際音の良し悪しなど言っていられない。バタバタと動き回っているところへ二人が戻ってくる。急いで花嫁の支度をするが、今度は会場のほうが間に合わない。どうにも電気が間に合いそうもないので、Yが再び車でキャンドルを買いに出る。

KとO
KとO

6時を回って、このまま電気の復旧を待ったのでは時間が足りなくなると判断したのか、ビショップはキャンドルの微かな灯りを頼りに式を開始するという。Yが戻っていないがし方がない。式自体は1時間半以上遅れている。そうしてすでに、その後のレセプションの時間になっている。暗闇の中、数本のキャンドルの灯りを頼りに式が始まる。バージンロードを歩く花嫁と夫のバックには、小さなちいさなラジカセからものすごい音質のウエディングマーチが流れている。式は滞りなく終わる。Yのときと比べ幾分短いような気がするのは、2度目の結婚式で慣れたせいなのだろうか。


index3月10日|3月11日|3月12日3月13日3月14日3月15日