Back Numbers : 映画ログ No.19



今月の一言 : ヴァンサン・カッセルがお侍さんの格好で出てくるマツダのファミリアのCMって、なかなかよろしんじゃないかと思う。うーぴー共々大ファンである。

【アンドロメディア】三星半
コンピュータの中の擬似人格、というテーマはSFとしては特に目新しいものではないだろうが、アイドル映画としては新鮮に感じるので、いい目の付けどころなのかもしれない。お話的には、恋愛・友情・別れ・そして♪独りじゃない~、とコーラスするエンディングの歌と、由緒正しい青春ものの基本をきっちりと押さえてあり悪くなかったと思うのだが、いかんせん、敵の絶対的な人数が少なすぎたり秘密基地が安っぽすぎたりして、その存在感が薄っぺらくなってしまい、その結果、全体的な印象もかなり安上がりになってしまったように感じる。CGもかなり頑張ってはいたのだが、実写部分の演出のきめ細かさ(最初のキスシーンと最後の別れのシーンは秀逸 ! )とのバランスを考えると、やはり平べったい感じに見えてしまったかもしれない。うーん、もう少し予算とかがあったらねぇ……これなら結構、世界中のどこに出しても恥ずかしくないような良く出来たエンターテイメント作品に化けていた可能性もあったような気がするんだけど。
おまけ : SPEEDのどれが誰さんなのだか、私は今だにじぇんじぇん分かりましぇん。それはそうと、結構大々的に出演が報じられていたDA PUMPの皆さんの、いかにも取って付けましたというような出番には笑ってしまった(しかも劇中で、ストーリー的には全く必然性の無い歌を一曲フル・コーラスで歌って戴けるという気前のよさである ! )。う~ん、さすがは王道を行くアイドル映画だのう。
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【アンラッキー・モンキー】四つ星
最初から「んな阿呆な」って勢いで飛ばしまくり。ギャグとシリアスの絶妙のさじ加減が独特の切れ味を生む、一級品の不条理劇である。ここへ来て、借り物の色を完全に払拭したサブさん独自の世界が、初めてはっきりと見えてきた気がする。サブ監督のこれまでの3作中では、私は本作が一番好きだ。
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【L.A.コンフィデンシャル】四星半
カーティス・ハンソン監督のインタビューで「実は【激流】の撮影中からもうこの映画のことで頭がいっぱいだった」といったようなことが書いてあった。これは【激流】は手を抜いたということではないとは思うのだが(笑)、今回のこの作品が監督にとっていかに入魂の一作であったかということを表しているエピソードだとは思う。いかに面白いものを創りだすことが出来るかは、マーケット・リサーチの結果でなく、ましてや予算の大小でもなく、本当に納得の行くものを創りたいという志(こころざし)こそが一番重要で、それぞれの現場にいる最前線の人がそれぞれの制限の中でどこまでふんばれるかに最終的には掛かっているのではないか。予算などの面では豊かな一面、非常に制約も多いハリウッド映画の中で、たまにこのような“創りたいものを創ってしまった”作品を観ることが出来ると、とても嬉しくなる。
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【キングダムII・第3章/第4章】四星半
ユーモアと恐怖の奇妙なねじれ感覚、一瞬たりとも飽きさせない密度の濃さ(中身が濃すぎて普通の映画の10倍くらい疲れてしまうのだけが欠点だ)、全体を貫く流れを見越した緻密な構成……【キングダム】は天才ラース・フォン・トリアー監督の代表作の一つになることは間違いないであろう。この上は、一刻も早い完結編の完成(来年の予定だそうだ)を待ち望むだけである。
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【GODZILLA/ゴジラ】二つ星
まぁ予想はしていたんだけど、要するに【ジュラシック・パーク】みたいなのを作るのに、何でもいいからてきとうな爬虫類を担ぎ出したかったんだろうなぁと。(“ゴジラの巣”以降のシーンなんて、まるっきりそのまんまやないかい ! )ストーリーには全然工夫も仕掛けもありゃしないし、いかにも付け足しのラブ・ストーリーに至っては、あまりにも陳腐極まりない。また、基本的に軍隊とドンパチやっているだけなので、ゴジラに襲われる民衆の心理的な恐怖みたいなのも盛り上がらないこと夥しい。極め付けは、ゴジラが“フランスの度重なる核実験”によって生まれてきたとかいう設定である。(ジャン・レノは“フランス政府の不始末”の尻拭いをするために送り込まれた人物なんだそうだ)……ちょっと待て。人類が核兵器を持ってしまったことの責任は皆フランスに押しつけて、アメリカは知らぬ存ぜぬを決め込むつもりかい ? フランスでの興行成績を最初から犠牲にしてまで(フランス人は怒るだろこりゃ)自国の核保有の是非は不問に付したいというのなら、やはりそもそもゴジラってイコン自体にお気軽に触れるべきじゃなかったんじゃないの ? なんかもう、笑うのも通り越して、ひたすら開いた口が塞がらなかったんだけどさー。
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【ねじ式】三つ星
石井輝男監督はその昔、【網走番外地】のような作品を撮る一方、エログロどばーってな映画をいくつか作っていて、一部では熱心なファンがついていたのだそうだ。その石井監督がどこでどのようにして“つげ義春”という作家に共鳴するようになったのかはよく知らないのだが、この映画では多分、監督の創りたかったようなつげ義春的な世界が、監督独自の解釈に忠実に創られていたのではないかと思う。もともと、『ねじ式』のような独自の色が強い世界を映画化するのはとても難しいことだと思われるし、映画化された作品が必ずしも原作のタッチに忠実である必要は無いだろうから、その意味ではこの作品はこのやり方でありなのだろうなとは思う。しかし私個人の感覚では、60~70年代に作られたならともかく、今の時代にこのタッチというのはカルトというよりはあまりにもレトロであって、何も考えずに素直に楽しむのは少し難しかった。
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【BLUES HARP】三星半
ストーリー自体はよくある話の組合せのようでも、まずはブルースハープ(ハーモニカの一種)のかっこよさがすごく出ていたので、この映画は根っこの命脈は出来上がっていたのではないかと思う。しかし、主役の一人の田辺誠一さんが、色気はとてもあるのだけれど(もう一人の主役の池内博之くんのすっ裸の寝姿を見つめるシーンはgood ! )、残念ながらTVドラマっぽい“セリフ喋ってますー”式の演技になってしまっていたきらいがあり、役柄に少し膨らみが欠けてしまったような気がする。この役にもっともっと存在感を与えることが出来ていれば、映画自体にもっと厚みが出て、これはかなりの名作になっていた可能性があったのではないかと思われるのだが。
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【プルガサリ・伝説の大怪獣】三つ星
技術的な水準の話などをすれば、あんまりにも分かり易すぎるような合成のシーンなども含めて“うーん手作りの感じが懐かしい”といったことになってしまうのだが(感情表現的にも嘆き悲しんでいる場面がほとんどだしなー)、しかし“北朝鮮の映画”と言われて通常思わず連想してしまうような硬直化した教条的なイメージとは違い、もっと普遍的な部分に訴え掛けることを意図しているような映画であるように見受けられる(あのちびプルガサリの異様なまでの可愛らしさってば一体何なんだ ! )。これ一本で北朝鮮の映画や文化についての全てが分かる訳ではないにしても、そのほんの僅かなよすがとして、この映画はやっぱり見ておいた方がいいに違いない。
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【真夜中のサバナ】三つ星
このお話の一番の主役は、一皮剥けば様々な矛盾やどろどろとした人間臭さを内に抱える、アメリカ一美しいと言われる街・サバナ自体であって、奇妙な住人たちも主人公の二人も、いわばその街のありかたを示しているパーツの一部に過ぎないのではないかと思う。しかるに本編は、あくまでも主人公達を中心にした方式の展開に終始しているので、悪くはないんだけどなんかこじんまりとまとまったフツーの映画、という印象で終わってしまっているような気がする。折角イーストウッド様が監督なさっていることだし、題材的にももっと面白くなってしかるべきだったんじゃないかと思うんだが、なんか勿体ないような。
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【冷血の罠】三星半
悪の所在を突き止めるために自ら悪に成り代わる男……って、うーむこれはお話としてはアリなのかもしれないが、凍りつくようなシュールな感覚を伴った瀬々敬久監督の独特のリアルさを紡ぎ出す演出とは、ちょっとばかり相性が合わなかった気もする。哀川翔さんや西島秀俊さんなんてメジャーな人達の存在感が瀬々監督の世界の中で浮いたりしないのかなぁ、といった危惧は全く杞憂に終わり、全体的な水準としては悪くなかったのだけれど、監督の持ち味が100%大爆発する、というまでには至らなかったようなので、少し残念だった。
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