Keisuke Hara - [Diary]
2000/03版 その2

[前日へ続く]

2000/03/11 (Sat.)


2000/03/12 (Sun.)


2000/03/13 (Mon.)

11日(土)、東京に移動。 夕方から渋谷のエルミタージュで映画 「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」(原題 "Hilary and Jackie")を観る。 壮絶な映画だった。 欧米、特にイギリスでは公開に対して抗議のストが起きたりと、 音楽関係者の中からも非難轟々だったらしい。 私自身は兎に角、すさまじい、感動的な映画だと思いました。 その感動の種類は人によっては、 自分から進んで味わいたくないと思う類の感動かもしれませんが… デュプレを演じたエミリー・ワトソンの鬼気迫る演技、 特にチェロ協奏曲を弾く所など鳥肌が立ちました。

12日(日曜)。高輪の八芳園にて、兄弟子である S さんの結婚式に出席。 めでたい限りである。 時間ぎりぎりに式場に着き、クロークで TK 大の N さんに会った途端、 「はらさんが来ると知ってたら、 散髪に行く必要も白ネクタイを買う必要もなかったのに」 と言われたりして、社会人としての常識のなさを競ってみたり ;-) しかし、 出席した残りの数学関係者は常識ある方々ばかりだったので、 とっぴょうしもない暴言が飛び出す危険もなく、 N 先生、T 師匠、K 先生と、 落ちついたしんみりとした良いスピーチが続いた。 新婦側の出席者のアトラクションも楽しく、 全体として非常に楽しめた良い結婚式でした。 いや、兎に角、目出たい。 少なくとも新郎 S さんの花笠音頭が観られたことだけでも、 歴史に語り継がれるべき素晴しい式だったと断言できましょう。 ただ一つ悔やまれることは、 デジタルカメラを持って行かなかったことくらいです。

13日(月曜)、京都に帰ってくる。疲労困憊して即昼寝。


2000/03/14 (Tues.)


2000/03/15 (Wed.)

午後より大学へ。いくつか打ちあわせなどをする。 今日の院生歓送会に出席するため三田の I 大先生が研究室を訪ねられて、 一時間ほど二人で数学の議論をする。 夕方から草津にて、研究室を今年卒業する院生の御苦労様会、 兼、来月から他大学にポストを得た現助手の S さんの歓送会。

これはTK大の小室哲哉、N さんから聞いた話である。
ある非常に高名な数学者 S 先生は、 学生達が数学の質問をする度に、 「そんなことはこの教科書に丁寧に全部書いてあるではないか、 何を分からないことがあるのだろうか」 と常々思っていらしたそうである。 ところが、最近になってコンピュータを使うようになり、 そのマニュアルを読むようになって、 そういう質問をする学生の気持がようやく分かるようになった、 と冗談におっしゃっていたと言う。 ちなみに、S 先生がその悟りを得たのは国立大学を退官し、 さらに別の大学を退官したその後であった。 自分にとっていかに自明に見えることでも、 他の人にとっては全く自明ではないかも知れない、 ということを悟るのは非常に難しいという教訓である。


2000/03/16 (Thurs.)

午後から大学へ。多分これが今期最後の学生委員の仕事で、 休学希望の学生の面接を一件。 その後、数学科の Y 先生、A 先生と一緒に W 先生のゼミに参加。 田中の確率微分方程式の解に関係して、 具体的にノイズを構成する話だった。 ある簡単な変換群の上に測度を入れる話に持ちこむ所など、 なかなか面白かった。 問題をこういう枠組にすっと持ち上げるのが W 先生らしいな、 とふと思ったが、どうなのだろう。

昨日、I 先生が言っていたある小さな予想が正しいことが、 電車の中での計算で判明。なんてことない話ではあっても、 こういうのはちょっと嬉しい。

チェロっていくらくらいのものですか?と聞かれることが多い。 私が色々と調べた結果、ほぼ完璧な答を得た。 ずばり、「7万8千円と2億3千万円の間である」。 ちなみに、 これは上からも下からもぎりぎりのかなり精密な評価のはず。

まあ、冗談はさておき、 楽器の値段はあってないようなものとでも言いますか、 よくわからないものですね。 木に弦が張ってあるだけで、こんなに色々と値段の差があるのも、 不思議な話です。 例えばストラディバリウスのなにがしとか、 本当に億単位のお金を払う意味があるのでしょうか… ちなみに僕のチェロは、 私の年くらいのサラリーマンが貯金をはたけば、 借金をせずに何とか払える程度の値段でした。


2000/03/17 (Fri.)

午後から大学へ。雑務など少々。 夕方から長浜まで遠出して、経済方面の方々と年度末の宴会。 ほとんどの方は一泊して、 温泉とか近所の散策とかを楽しまれるらしいが、 私は所用があり宴会のみの参加で残念だった。 宴会では、 経済学部方面の生臭い話を聞かせてもらったり、 「A 先生、香港で万馬券あてるの巻」や、 経済学部の各先生の形態模写など、 盛りだくさんの内容を堪能。 京都行きの終電で帰宅。

この日記の読者が意外な所にまで拡がっていることは、 この前の S さんの結婚式でも気付かされたが、 アクロス方面にもおられるようだ。 数学科の A 先生が言うには、 私の日記は経済学部の学生にはかなり読まれているらしいが、 一方数学科の学生には人気がないそうである。 かたや、同僚の T 先生の日記は数学科の学生に、 圧倒的かつ絶大な人気を誇っているそうだ。 やはりパッションの差だろうか…


2000/03/18 (Sat.)

昨日、A 先生に言われたのだが、 私は「斜めになって」歩いているらしい。 そうだろうか…姿勢が悪いのは自認しているのだが、そこまでとは。

先生の形態模写や声色を得意とする学生が必ずいるものである。 僕もよく T 師匠の物真似をやったりしたものだ。 ステップの踏み方がポイントなのだが、 そこがなかなかマスターできなくて今ひとつの芸ではあったが。 そんなこんなで、 僕などはまだ学生気分が抜け切れておらず、 いつまでも学生の立場として先生の物真似芸をする学生達を 楽しく見ていたのだが、 ふと気がつくと自分や自分の同級生などがもう先生になっているのである。 とすると、僕や、A 先生の物真似をする学生なども出てくるのだろうか。 いや、もう既にいたりするのか? TK大には S 君の物真似をする学生とかがいるのか? 一度見てみたいものである。

今までこの日記の初期からの習慣で一人だけ実名報道していましたが、 今日からイニシャルにそろえてみました ;-)


2000/03/19 (Sun.)

京都は雨。 夕方食材を買いに出た以外は一日家にいて、 仕事をしたりチェロを弾いたりしていた。

今日の読書。「ヴァイオリン演奏の技法」(カール・フレッシュ)。
伊丹十三が名著「ヨーロッパ退屈日記」の中で、 「カール・フレッシュのこの本に出会っただけでも、 ヴァイオリンをやったかいがあった」とまで絶賛していたので、 本屋で立読みしたところ非常に面白かったので即座に購入し、 それ以来、おりをみては再読して楽しんでいる。 翻訳では特に下巻が面白いので、 ヴァイオリンを弾かなくても音楽に興味がある方には是非おすすめ。

伊丹十三はアマチュアではあるが、 かなりの腕のヴァイオリン弾きだったそうである。 ちなみにその腕の程は、 ポルノ映画「ドレミファ娘の血は騒ぐ」で披露されていることは、 識者諸氏(?)の御存知の通りである。


2000/03/20 (Mon.)

正午頃起床。 昼食はみぶ菜の炒めものと海老チリ。 午後は自宅で、 先月末東京でのファイナンス・スクールの講演ノートを TeX でまとめる。 夜もチェロの練習をしてから、また TeX 書き。 昨日の鍋の残りのだしを使って鷄雑炊を作り夜食にする。

クロッテッドクリームなるものを御存知か。 私もそのもの自体を見たことはなかったのだが、 今日、山科の大丸地下食材売場でふと発見した。 スコンなるイギリスの食べ物(お菓子?)に、 ジャムなどと共に塗ると言うより盛って食す、 かなり固めのクリーム状の乳製品で、 クリームと言っても甘みはなく、 単に乳脂肪の純粋な固まりと言った風情のものである。 林望先生の意見によれば、 味があるようなないようなスコンなる焼き菓子に、 ジャムの甘みと酸味、 クロッテッドクリームのねっとりした乳脂肪の濃厚な風味、 この三位一体こそがスコンの醍醐味であると言う。 これと共に、熱くしかも大量のミルクティを鯨飲する。 これぞ、「クリーム・ティ」と称される英国伝統の食習慣であるそうである。 林望先生によればまだ本場ものに比較して不満ありと言うことだが、 日本ではナカザワ乳業から販売されているので是非お試しあれ。


[後日へ続く]

[最新版へ]

Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp, kshara@mars.dti.ne.jp

この日記は、GNSを使用して作成されています。