夜中にチェロが鳴る音を聞いて目が覚める。 昨夜は雨が降ったり止んだりしていたので、 湿度の変化に耐えられなかったのかA弦が切れていた。
午後から大学へ。 午後一杯を使って、別のシンポジウムの予稿のTeX打ち。 またしても締切り真近。 原稿をプリントアウトして、 京都駅の隣りの中央郵便局に出しに行く。
家に帰って、A 弦を張り替える。 家にあったスペアがスチール弦だけだったので、 やむなくそれを使う。 スチール弦ってこんなに細かったっけ… 他の三つの弦に比べて異様なほど細い。 弾いてみると指に触れる感じも妙に鋭くてやり難い。
疲れた私に今日の一曲。
グラナドス「嘆き、またはマハと夜鶯」(ルビンシュタイン演奏)
朝から大学へ。午前中はM2のゼミ。 今から修論のネタを相談する。 コンピュータウィルスについてやりたいと言うので、 そういうことにする。まあ何とかなるだろう。 午後はM1ゼミ。M君がハッシュ関数を使って 公開鍵暗号と共通鍵暗号を変てこな感じに組みあわせた システムを提案していた。 実際に出来るのかどうか知らないが、 自分のアイデアを現実化するために頑張るというのは、 非常によろしいことなので、 じゃあどんどんやって下さいと言っておく。
会議までの時間が空いたので、 ローム記念館に行き事務用を片付けてから、 アクロスのプログレッソにコーヒーを飲みに行く。 「ガウス過程」(飛田・櫃田)をちょっとだけ読む。
夕方から学系会議。 今日の会議は長かった。会議の後、 プレ卒研ゼミをする予定だったが、 遅くなりそうだったので中止。 会議は七時前には終わって、 半分眠りながら帰宅。
また昼まで寝る。寒い。 午後、洗濯をしてから三条に出る。 休日とは言え丁度客が回転した時間をうまく突いたらしく SBUXのソファが空いていたので、 ソファに陣どってしばらく計算などをする。 しばらくするとどっと客が押し寄せて、 またいつもの大賑いになったので店を出る。 その後、丸善に行って本を買ったり。 買った本、「ポストモダン解析学」(ヨスト)。
Warwick 大学の数学研究所に留学中の K 大の O さんから メイルをいただき驚く。O さんはこの前の夏にイギリスにやってきて、 次の春まで滞在するので、大体僕と入れ代わりという感じである。 メイルによると、O さんは以前から我等がT山先生の日記の読者で 「チェロばっかり練習しているように見えるH先生」 が私とは気付かず、しょっちゅう研究所で私と顔を合わせながら、 いつかそのイギリス滞在中の「H先生」 にどこかで会うかも知れないなあと思っていたそうである。 そしてついに何故か昨日、 (数学者らしく)突如として閃いたらしい、 私がそのH先生だったことに… 僕はイギリスでは毎日凛々しく数学研究に励んでいたので、 まさかT山先生の日記に登場する極楽蜻蛉H先生だとは、 よもや気付かなかったのであろう。
朝は「数学解析」。ラプラス変換の続き。 生協で食事して、午後の講義の準備。 午後は「確率・統計」、カイ二乗分布。 引き続き、「プログラミング演習」。 どうも今日の講義は調子が悪く、 あちこちで説明がもたもたしてしまった。
長年、芸術や科学において「モダンな」といえば、「新しい」、 「古いものとは異なる」、ときには「革命的である」といった 意味合いで使われ、常にある流派から、その継承者へと変遷 しているものというのと同義語であった…(略)… 今世紀になって、この傾向は変化した。建築や他の分野で、 抽象的な機能化が極度に推し進められるようになると、 この方向には新しい理論や発展をそれ以上進めることができ なくなり、数歩後退し「プレモダン(モダン以前)」の理論を 再考しなくてはならなくなった…
(「ポストモダン解析学」(ヨスト/小谷元子訳)、序文より)
朝は膳所でチェロのレッスン。 スケール、エチュードの後、バッハの「アリオーソ」。
午後からいよいよ講演の準備をせねば、 と思うのだがなかなかやる気が出ず、 夜になってようやく取りかかる。 結局、前日深夜にやることになるのか… 何故、もっと前からじっくり準備しておかないのか、 まったく謎だ。 明日朝、早く起きられそうにもないので、 ひょっとしたら徹夜かも。
そういうわけで、 明日から次の日曜日まで出張中です。 出張中の日記更新はありません。 メイルでの連絡も通じません。
朝から「はるか」で関西空港へ。 空港のロビーで同じ飛行機に乗る他の参加者数名に会い、 昼頃発のAF機でフランスに向かう。 夕方くらいに現地到着。 数時間早く東京から到着した H 大の T 君と、 パリ第六大(キュリー夫妻大学)の Y 教授が迎えに来てくれていて恐縮。 Y 教授に連れられて、 RER と地下鉄を乗り継ぎ、イタリー広場近くのホテルに到着。 近所のブラッスリーで夕食。 既にこの段階で、 朝八時から大学で数学の研究に取りかかると噂の Y 教授の 人並はずれた勤勉さと誠実さと、 同時に数学者らしい日常雑務の要領の悪さの絶妙のバランスが伺われ、 若干の不安が横切ったりする。
月曜からシンポジウム開始。 おおざっぱにテーマ別に曜日が別れており、 今日はMalliavin解析の日と言うことで、 僕も月曜組に入っていた。 (実は僕は M 解析をよく知らないが…) 講演の出来は兎に角、初日でデューティ終了し、 後は気楽に過せるとほっと一息つく。
夜は講演者たちでサン・ルイ島のM教授宅に招かれて食事など。 サン・ルイのどまんなかのアパートの最上階に住んで、 他にもいくつかアパートを所有して貸しているというのは、 ちょっとすごい。部屋にも古書類が山のようにあって、 テーブルや古そうなピアノの上になにげなく広げてある書籍にも、 ポワンカレなみと呼ぶ人もいるインテリぶりがうかがわれたり。
本日のテーマは対称空間上のブラウン運動など。 シンポジウムが行なわれたパリ第六大学(キュリー夫妻大学)、 第七大学(ディドロ大学)は、本来ジュシューにあったのだが、 現在はアスベスト問題の解決のためとかで、 シュバルレに引越している。 いつか元のジュシューに戻るのかどうかは知らない。
夜は Y 教授の薦めでノートルダム寺院にグレゴリオ聖歌を 聴きに行く。雰囲気もあると思うが、 非常に美しい歌声で思いがけなくも大変に感動した。
と、聖歌に聴き惚れていたら傍に座っていたS大のHさん以外の、 Y教授を含め一緒に来た他の人達に放って帰られてしまい、 おろおろしていたところ、 やはり別ルートでノートルダムに来ていた M 教授と、 K大の T さんに出会い、近所の地下鉄の駅まで送ってもらう。
朝は「それ以外のテーマ」の講演二つ。 午後はフリータイム。 のはずだったが、M 教授と Y 教授がルーブル美術館に 連れていってくれるとかで、もちろんその言いなり。
ルーブルではフェルメールの「レースを編む女」 「天文学者」などを見る。
今日のテーマは午前は「その他のテーマ2」と 午後「フィルトレーションの問題」。
夜はカルチェラタンのあたりで皆でギリシャ料理を食べに行く。 学者はカルチェラタンで妙に落ち着くものである。
この日記は、GNSを使用して作成されています。