Keisuke Hara - [Diary]
2000/12版 その3

[前日へ続く]

2000/12/21 (Thurs.)

18日、膳所でチェロのレッスンを受けてから、午後に東京に移動。 19日から21日までTK大でのシンポジウム。 もちろん毎晩宴会。

21日のTK大S君の講演を聞いてから、新幹線で京都に戻る。 帰宅しないで、そのまま瀬田でのファイナンス研秘書Nさんの 退職記念忘年会に出席。 宴会ではA堀先生に数学者らしからぬ態度に気をつけろとからまれながら、 宴会後の帰路ではファイナンスでルベーグ積分を根底から教えてどうするんだ とからみながら帰宅。


2000/12/22 (Fri.)

今日は今年最後の講義日。 朝は「数学解析」、フーリエ級数の話。 午後は「確率・統計」、区間推定の話。 続けて「プログラミング演習」。

夜は山科のO先生の自宅に集合して、 綾辻行人・有栖川有栖「安楽椅子探偵3」の問題編のビデオをすり切れるほど観て、 賞金100万円を目指し検討を重ねる。 一見して、大筋はこうであろうな、ということは私も見当がついたが、 細かい所がいろいろとあって全部つめていくのは難しそうだった。

前回のPart2の再放送を最近観たのだが、 やっぱり推理の大筋とでも言うか、作者のたくらみのポイントは すぐにわかるのだが、 その後、「だからこの人が犯人」というところまで細かく つめていくのはさっぱりわからず、と言うより、 どの人もそれぞれに犯人に出来そうで、 解答編を観ても、「そりゃそうかも知れないが、 他にどうとでも説明できるのでは…」という印象だった。 いわゆる矢吹駆言うところの現象論効果ですか、 今回もそんな気分で、 むしろ出題者の心理にこちらの気持ちをあわせて行くことがポイントかと。 そうじゃなければ、現象学的直観するしか(笑)

でも最初に直観した大筋が、 いかにもミステリ読みが一発で陥りがちな筋なので、 案外これはトラップであって (私曰くチェスタトン・トラップ)、 用意されている解答はまったく全然、違ったりして。


2000/12/23 (Sat.)

昼はO先生とF秘書のNさんと三人で山科の蕎麦屋で蕎麦を食べ、 またO先生宅で「安楽椅子探偵」の最終解答を詰める。 私は夕方から忘年会のため先に帰ったが、 またビデオをすり切れるほど観ている内に、 見落としがみつかったようで、その後どうなったのか。

夜は大阪で忘年会。 恐れていたのだが、三次会は山科の我が家と言うことになる。 っていうか、遠くから関西まで忘年会に来た人は どうしてホテルとってないの?(泣)

そういうわけで、 徹夜で「ザ・会議室」と「ロックンロールスライダーズ・スライドショー」 のビデオを観てすっかり、みうらじゅんの毒まみれになって、 翌日には知能指数が3分の1くらいになる。


2000/12/24 (Sun.)

午後になって忘年会のメンバーが起きてきて、 「自前でザ・会議室」みたいな馬鹿話をして時間をつぶし、 夕方から近所で夕食を食べ山科駅で全員の帰宅を見送る。

一人で宴の後の掃除をして、 食べ残しのサンドイッチを食べながら、 宴会で残ったウィスキーを飲む、 20世紀最悪のとことんわびしいクリスマスイブ。


2000/12/25 (Mon.)

午後から大学へ。
生協で本を買って、プログレッソでちょっと読書。 「ダーク・ネイチャー」(L.ワトソン)、 「あなたの情報はこうして盗まれている」(ジェニングス、フィーナ)。
夕方からM2の修論ゼミ。 まだ何も出来ていないようだが、 なんとか提出日まで形になるように祈りたい。

帰宅の途中、南草津駅でO先生と事務のTさんに会い、 山科まで一緒に帰る。 O先生と山科で食事。

食後のコーヒーで、 これこれの趣向でミステリからベスト・スリーを選ぼう、 などと言う遊びをやっていたら、 最後に「じゃあ、ワースト・スリーを選ぼう」と言うことになる。 O先生が「本陣殺人事件」などと言う佳品を挙げようとするのを、 言下に却下して私の思う世界ワースト・スリー 「1.清涼院流水、2.清涼院流水、3.清涼院流水。(作品は任意の3つ)」 を主張する。 O先生は幸福にも未読だと言うので、 今すぐにでも買って読むように熱烈に主張して、 近所の本屋に行き「コ○ミック」「ジョー○ー」の文庫版各上下四冊を 無理矢理に買っていただく。 「コズ○ック」だけでもう十二分に 流水小説の真髄が分かっていただけるはずだが、 文庫版では「コズ○ック」「○ョーカー」をあわせ読むと何やら 趣向があるようなことが書いてあるので、 この年末、存分に流水小説の世界を堪能 していただくことにする。 こうして、O先生にも世紀末らしい不幸なクリスマスをプレゼントでき、 大変に満足した一日であった。


2000/12/26 (Tues.)

正午まで寝てしまう。 昨夜は遅くまで「安楽椅子探偵の聖夜」の解答編を観ていたせいだろう。 筋も犯人も当たっていたが、最後に残った二人の容疑者の片方を 落とすロジックに気付いていなかった。 見落としは全く無かった上に、 見てはいけない所まで見てしまっていたくらいだが、 ポイントになるロジックを一つ逃した以上、 正解者の中には入れてもらえないだろう。残念である。

午後からは久しぶりに三条方面に出て、 本屋やCD屋を散歩する。 ボランティアで学会通信のHTML化をする作業用に、 スタイルシートのマニュアルを買ったり。

夜はこれまた久しぶりにチェロの練習。 木曜日に東京から帰ってから忘年会でばたばたして、 ずっと弾いていなかった。 バッハのアリオーソを練習するも、音程がメタメタ。

深夜の読書。「私家版」(ジャン=ジャック・フィシュテル)。


2000/12/27 (Wed.)

パリのリュクサンブール公園の近くに、 "La Bibliotheque"(図書館)という名前の喫茶店がある。 ガリマール社のミステリシリーズ、セリ・ノワール(暗黒叢書) の膨大なコレクションが壁一面に詰まっていることで その筋には有名である。 他にはイスラエル関係の本と哲学書がぎっしりたくさんある (ミステリ、イスラエル、哲学の三題話のオチは不明)。 小さなテーブル三つとカウンターだけの狭い店で、 いつもスーツにネクタイ姿の渋い中年男性が、 店主でギャルソンも兼ねている。 表にはネオンや装飾の類はなく、 単に扉に「珈琲、酒、本などを売ります」と書いてある。 客は常にほとんどいないらしい。 噂によれば、この店主の表の顔は哲学教授で、 この店においてある哲学書はこの方が出版しているものだとか。

突然こんなことを書いたのは、 人生に逃避気味になると、実際は一度も訪れたことのない、 この店のことを思い出して、いいなあ、シビれるよなあ、 学校やめて人気のない古本屋かバーやりたい…などと思うからである。 実際はいろいろ面倒なことがあるんでしょうけど。

ちなみに今まで二度チャンスはあったが、 この店を訪ねなかったのは、 「ひょっとして、行ってみたら僕のイメージと違うかもしれない」 と毎回、思ってしまったもので。 次に機会があれば今度こそ行ってみたいです。


2000/12/28 (Thurs.)

ほとんど家にいた。 「私家版」(ジャン=ジャック・フィシュテル)、読了。 「私家版」は香り高いよい小説でした。 こんな作品がちゃんと推理小説大賞を受賞する国は大丈夫。 清涼院流水の小説を文庫化してる国はかなりまずい。

今年中の後数日プラス三が日は一切仕事をしないことにして、 読書に励むことにする。 この年末年始の目標。

今度こそ、「失われた時を求めて」読破。

何回目かわからないが、第一巻読了 (ちくま文庫版、第一篇「スワン家のほうへ」)。 井上究一郎先生の翻訳がいいのか悪いのか私にはわからないが、 ちくま文庫版が手軽なので。 それにずっと前から既に全十巻持ってるし…


2000/12/29 (Fri.)

日銀裏、「一之舟入」で忘年昼食会。 その後、お茶を飲んで、山科に移動したのだが、 結局夕飯を草津の大学のさらに向こうでとることになり、 長いドライブの結果、10時半くらいに帰宅。

今日の「失なわれた時を求めて」。 第二巻の20ページ目。


2000/12/30 (Sat.)

昼から高槻のT部長がやってきて、 大掃除を手伝ってくれる。 「ついでに抜本的に模様替えしたい」 という僕の無茶な意見を聞き入れてくれ、 二人で無茶な計画をたてる。

午後一杯および夜は深夜までかけて計画通り、 居間と寝室の間をぶち抜き、 全て居間に収めていた本棚8つを再配置、 いまや一部屋になったもと二部屋の内側の 壁全面に並べるべく、 おそらく三千冊近くあると見積もった本を、 一旦本棚から全部出して、移動して収めなおす。 その他、 台所に無駄におかれていたテーブル類を 仕事が出来るよう居間に移動、などなど。

深夜になってようやく一段落ついて、 二人してウィスキーを飲みながら 今年のヒットチャート番組を観ながら、 J Pop 批判というより J 文化批判をして無駄な年末を過す。


2000/12/31 (Sun.)

昨日の疲れで午後まで寝る。 夕方までだらだらとT部長と雑談をし、 その後、三条に出て一緒に本屋を周る。 僕の購入本は セネカ「人生の短さについて 他二篇」、 浅田彰「『歴史の終わり』を超えて」と、 「H」の二月号。 「H」は中谷美紀がカヒミ・カリィとコンビで被写体になっていたので。 後のインタビューを読んだら、 もちろん彼女が言い出しっぺの仕事だった。 なんて言いますか、こういきいきして写っているのは、 いい仕事をしたと言う充実感のせいでしょう。 と、日記には書いておこう。

T 部長はビュートルの「時間割」とか、 やけに渋い本を買っていた。それに比べ、 業とは言えくだらない雑誌を買ってしまった私が恥ずかしい。

喫茶店で二十世紀を無理にまとめてから別れ、 僕は実家に向かう。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp, kshara@mars.dti.ne.jp

この日記は、GNSを使用して作成されています。