Keisuke Hara - [Diary]
2001/03版 その1

[前日へ続く]

2001/03/01 (Thurs.)

終日、自宅で計算。 いざきちんとした論文にまとめようとすると、 いい加減な議論の穴が山ほど見つかって、 なかなかきちんと詰んでいかない。

昨日、学系会議でどの学生を優秀者として表彰するかと いうような議論があって、なかなかに数学らしい意見が多くて面白かった。 例えば「彼は試験はできても、数学がわかっていない」とか、 結局、数学がわかっている、 という所がポイントなのだが、これがどういうことか、 他の分野の人に説明するのは結構難しいと思う。 もちろんこういう議論が出来るのも、 数理科学科の学生数がまだ少なくて、 今の所は学生一人一人に目が届くおかげである。

数学は論理的に正しいことしかしないので、 その結果の評価はある意味、「美学」に依存する。 もちろんそれぞれの好みと個性もあるが、最低限の共通の土壌があり、 それは明文化されてはいないが、 はっきりと「数学者」と「それ以外の人」を分けるのである。 グレーゾーンはほとんどない。 さらに、これには強い定義と弱い定義があり、 強い意味では 「(一部の人は彼を数学者とみなしているようだが、私の定義では当然) 彼は数学者ではない」というような発言もありうる。 つまりこの弱い定義と オリジナルの強い定義の間のゾーンが本人のテイストである。 学生に対する評価の場合、 つまりまだ結果を出していない数学者の卵への評価の場合は、 弱い意味の定義で、 すなわちおおよそ数学者全体に共通の土壌で判断されるので、 学生の方はそれほど心配しなくてもいい…と思う。

出張のため、次の更新は日曜の夜だと思います。


2001/03/02 (Fri.)


2001/03/03 (Sat.)


2001/03/04 (Sun.)

金曜日の夕方に神保町の某A社に行って、 夜はR&Dメンバーの何人かと近所の居酒屋で飲む。 その後、続けて天才プログラマKさんと二人で、 近所の毒ビール屋「ブラッセルズ」で二時過ぎくらいまで痛飲する。 ワイン並のアルコール濃度であることを忘れていて、 つい飲み過ぎてしまった。 一軒目でかなり日本酒を飲んでいたのも良くなかったか。 最近はあまり飲めないのに、周りに飲む人がいると、 ついつい調子をあわせてしまうのがいけない。 ブラッセルズの後、 タクシーでホテルについた途端に倒れて、 翌日土曜の昼くらいまで意識を失なっていた。 よく覚えていないが、今年の晩夏あたりにアイルランドに酒を飲みに行こう、 とか約束したような気がする。

土曜の午後、日曜日と東京の休暇を過して日曜の夕方、 山科に帰宅。

最近の読書。 プルーストは第五篇「囚われの女」(ちくま文庫版第八巻)の冒頭のあたり。 その他、「『古楽器』よ、さらば!」(鈴木秀美)など。 この一見、逆説的なタイトルは、 演奏する曲によって使う楽器や奏法を変え、 それぞれの時代と曲の固有の響きと美を求めるべきであって、 モダン vs 古楽器と言う二項対立的に考えるのはおかしい、 という主張を標語的に表したものだろう。


2001/03/05 (Mon.)

午後から大学へ。 まず学系会議。卒業判定がテーマだったのだが、 よく考えてみれば私には今年の卒研生がいないのだった。 夕方まで暇なので、アクロス一階のカフェ、 プログレッソに行き珈琲を飲みながら勉強をする。 夜は南草津駅前のイタリア料理屋で数学の入試採点の打ち上げ。 さらに、同年代の数名で近所の「R^3」 (Rの肩に3と書いてどう読むのだろうか、まさか三次元ユークリッド空間か?) に二次会に行く。12時頃帰宅。


2001/03/06 (Tues.)

午前中は膳所でチェロのレッスン。 スケール、エチュード、課題曲はバッハ「G線上のアリア」。 この課題曲は今日で一応終わって、 次からはチャイコフスキの「感傷的なワルツ」。 今日は午後の早い時間から教授会だったので、 そのままチェロを抱えて大学に向かう。 教授会は結構ヘヴィーなテーマで荒れ気味だった。

夜は、昨日からセミナーのため京都に来ているHさん、 S君などに会いに行く予定。

ところで、 昨夜の採点打ち上げの宴会で、 A 堀先生御本人の口から良いニュースが正式発表された。 めでたいことである。


2001/03/07 (Wed.)

昨夜は遅くまで京都のT師匠宅に、 Hさん、S君とともに遅くまでお邪魔していたので、 今日も起きるのは遅かった。 流石に飲み疲れてきたらしい。

午後は河原町の丸善に行って数学の本を買う。 研究費の執行締切が迫っているため、 あわてて大量購入。 自分用に持っていなかった確率論の教科書をいくつか買った他、 可積分系、ソリトン理論など最近の興味に沿って、 「一応買っておきたいんだけど高いしなあ…」 という気分だった本を購入。 昨日、S君から薦められた「パンルヴェ方程式」の本も購入。

夕方よたよたしながら家まで本を持って帰り、疲れのあまり昼寝。

夜はいつものようにチェロの練習をしてから、 TeX で論文を書く。 ちなみに今日の練習メニュー。 ロングトーン、スケール、 Feuillard の「日々の練習」からポジション移動の練習をいくつか、 Schroeder のエチュード本から Dotzaur の重音の練習曲をやって、 チャイコフスキ「感傷的なワルツ」の音取りをする。


2001/03/08 (Thurs.)

午後から大学へ。学系会議。

以下は「LTCM伝説」(N.ダンバー/寺澤芳男監訳)からの引用。
「伊藤の定理と呼ばれるこの悪魔払いの数学は一九五一年に伊藤清が考案した。 伊藤は自称純粋数学者で、 自分の研究を現実世界に応用するのには無関心であった。 後年、経済学への貢献を祝う会議に出席した際、 あまりの騒ぎに困惑して、 そもそもそんな定理を導いた記憶はないと言い張ったほどである」

いくらなんでも伊藤の公式を導いたことを否定されないと思うが… それはともかく、 伊藤清先生をつかまえて「自称純粋数学者」 ってどういうこと(泣)


2001/03/09 (Fri.)

正午まで熟睡。疲れているのかな… 午後から京大へセミナーを聞きに行く。 エルデシュやカッツらによる間隙級数の古典的な問題の 最近の発展の話で、 証明の詳細には触れられなかったが大変おもしろかった。 きっと証明はフーリエ級数の古典的な計算とか、 恐るべき不等式評価をしまくりなんだろうなあ。

夜は TeX 書き。 ようやく指先に vi (実際はMac Vim)の感覚が戻ってきた。


2001/03/10 (Sat.)

寒い。京都にはまた冬が戻ってきている。 遅く起きたが、午前の間にちょこっと TeX 書きをして、 午後は珈琲豆を買いに三条の SBUX に行く。

ついでに別の喫茶店で珈琲を飲みながら、 ちょこっとお勉強をする。 手書きのレクチャーノートを読んでいると、 それを見た店の主人が「数学って眺めるぶんには綺麗なものですね」 と言っていた。 まったく同感だ。

楽譜ってのも見るぶんには綺麗ですね。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp, kshara@mars.dti.ne.jp

この日記は、GNSを使用して作成されています。