Keisuke Hara - [Diary]
2001/05版 その3

[前日へ続く]

2001/05/21 (Mon.)

朝早く目覚めたので、講義の準備をしてから、大学へ向かう。 午後から「数理計画法」。基底表現の枢軸変換について。 その後、 個研で何故か "Chelsea girl" などを聞いて退廃的な気分になりつつ、 次の講義の下調べをして、夕方は「確率・統計」。 共分散、相関係数の定義とその性質など。

聞き取り能力があまりないので、良く分からないのだが、 部屋番号が506だと言うだけで何故、憂鬱なのだろうか、 そこにどんな秘密が…聴き方を間違えてますか。

夜はチェロの練習。 チェロを初めて持った頃の情熱がごく最近、 また新鮮にリバイバルしていて、 時間が許せばいくらでもスケールの練習をしたい。 まさにこれぞ逃避、に他ならないのとは思うのだが。 私は以前から、この逃避における恐るべき情熱と集中力について、 何とか有効利用は出来ないものかと智慧をしぼっているのだが、 今の所名案は浮かんでいない。


2001/05/22 (Tues.)

自宅で原稿書きでもしようかと思っていたら、 A堀先生からミーティング呼び出し電話。 僕が当然大学にいるような口ぶりなので変だなーと思っていたら、 よく考えたら今日はW先生の講義日なのを忘れていた。 あわてて大学へ。

サンドウィッチを食べながらフォレストに向かい、 ぎりぎりW先生の講義に間にあう。 今日は、抽象ウィナー空間の定義をして、 確率解析らしくなってきた。 来週はその具体例として古典的ウィナー空間などをやるそうだ。 今日も最後に、 あくまでバナッハ空間に稠密に埋め込まれたヒルベルト空間の方が 主役であると強調されていたので、 その見方が薄かった(と言うか全く無かった)私には これからの展開が楽しみである。

今日もまた届いた速達を題材に原稿に手を入れる。


2001/05/23 (Wed.)

雨の中、大学へ。

エレベーターに乗っていると数学の学生に 「はらせんせーはまだ4階にいるんですか」 と聞かれた。 数学の人は主に最上階近辺に棲息しており、 私がいる4階は主に情報学科のフロアであるからだろう (余談ですが、数学教室が最上階にあることって多くないですか?)。 実は情報学科の人にも数学の人にも両方から まだ移らないのかと言われたことがあるのだが、 僕自身は多分、引越していいと言われても面倒なのでしないだろう。 引越し仕事に学生を使うのも悪いし。 もちろん、移って下さいと言われれば移りますけど。

個研に到着。4階フロアにマリア・カラスを響かせつつ論文書き。 夕方から学系会議。重い内容で非常に盛り上がって、 終わったのは7時頃だった。最近、教授会がまったくなくて平和だなあ、 と思っていたら、色んなところで色んなことが起こっているようだ。 大徳、三界に安きこと無く、猶ほ火宅の如し。 生協で夕食を食べて帰宅。


2001/05/24 (Thurs.)

朝からM2暗号ゼミの予定だったが、 寝坊したので時間を一時間ずらしてもらう。 あわてて大学へ。昼食を取りながら暗号ゼミ。圧縮アルゴリズムについて。 ハフマン符号がどうしたとか。 続いて卒研。2次元ランダムウォークの再帰性について。 続いてM1ゼミ。可測関数列の上極限の可測性についてなど。

個研ではなくて自宅は引越し予定で、 そう言うと必ず御結婚ですか、とか言われる。 おかしなことである。そういう予定はまったくないのだが。 桃井か○り(女優)いわく、 「籍入れてる人達ってさぁ、デキてるのよね、 それってフケツよねー」。 まったく、同感だ。 退廃にも慣れてしまうと気付かないのだなあ。


2001/05/25 (Fri.)

午前は再度、今日のセミナー講演の準備をして、 午後から三条を経由してK大に向かう。 関西確率論セミナーで一時間半ほど話す。 この前、準備不足で話して後悔したので、 今回はかなり前から少しずつ準備したのと、 一番簡単な例での具体的な計算に重点をおいたことで、 私にしてはうまく話せた方だろう。 少なくとも、面白かったと言ってくれた方が いたので私としては大満足である。 講演の後、K大のYさんと少し議論して帰路につく。

この前、ゼミの開始時間をちょっと遅らせたくらいで、 学生には「センセーって夜行性って感じっすよね」 とか言われたが、ダークなイメージがあるのかもしれない。 ほんとは陽気で爽やかななのに。

そういうわけで、 講演が終わった夕方でもまだ明るくて、 マシンガンでチョコレート工場を襲撃したいようなほがらかな良い天気なので、 陽気で爽やかでポップな曲を口遊みながらバスで三条まで帰る。 "Le roi soleil est à Versailles. Et je médite des représailles, je suis, même si je n'ai pa l'air. Révolutionnaire. ... Le roi soleil, le tender fer. Pour me punir ou bien me plaire...", "Tell me I'm allowed to play the Fender Jaguar, like the Velvet Underground. ...Is that all you ever wanted me to be? If you want me I'll be shooting with the junkies..." (*1)

三条では本屋をひやかして、暗くなってきた頃に、 Cafe R***** で珈琲を一杯いただいて地下鉄で帰宅。

*1: (*1) "Le roi soleil", "Lolitapop dollhouse" words-Momus, song-KahimiKarie:
「ベルサイユ宮殿に住んでる太陽王。わたしは復讐を企む。 そう見えなくっても、わたし革命派なの… 太陽王、優しい鉄の刃で。わたしをお仕置するの、それとも悦ばせるの?」 「言ってよ、フェンダージャガー弾いてもいいって、 ヴェルベット・アンダーグラウンドみたいに… あなたが私にして欲しかったのってこんなこと? だったら、あたし、ジャンキー達とキメまくっちゃう」 (翻訳は原の試訳)


2001/05/26 (Sat.)

午後は大学に休日出勤して論文の手直し。

南草津駅についてみるとバスは満員だし、 キャンパスにも結構な人がいた。 どうも父母懇談会とか言うもので、 良く知らないが、学生達のパパやママたちの集まりらしい。 つまりいわゆるPTAだろうか。

今日の通勤車中の読書。ミラン・クンデラ「不滅」。 以前、旅先で買ったものだが、 その間に読み終えられなくて、そのままになっていた。 夕べ本の整理中にふと手にとったら、 登場人物のアニエスに妙に感情移入してしまい、 また読み始めてしまったという次第である。 前はそれほどでもなかったのだが、不思議なものである。 ジョイスの「ユリシーズ」は寝る前にベッドで読んでいるのだが、 なかなか進まない。6月16日のブルームズ・デイまでには読み終えたい。


2001/05/27 (Sun.)

午後は大阪で論文の打ちあわせ。 午後三時から始まって、大量の珈琲を消費しながら、 五時間に渡ってあれこれ議論する。 ようやく収束しつつある予感で、 おそらく六月上旬には文章の手直しや誤字脱字の訂正 などマイナーな問題を除けば最終稿があがるだろう(…と信じたい)。

最近ちょっと話題にしたのですが、 自分の誕生日がどんな日だったかとかつい気にしたりしますね。 ちなみに私の誕生日はルジャンドルの誕生日にしてオイラーの命日。 それを知った時は変に嬉しかったことを覚えています、 妙に渋い人選(?)だなあと。 確か何かの科学雑誌のカレンダーで知ったんだった。 何も喜ぶ理由はないんですけどね。

明日は出張なので日記更新は明後日の火曜日です。


2001/05/28 (Mon.)


2001/05/29 (Tues.)

午後から大学へ。生協で食事をして、少し論文の手直しをし、 W先生の講義。前回で抽象ウィナー空間の定義を終えて、 今日からしばらく具体例の構成に入る。 今日は再生核の理論や、ヘルダー連続関数の空間などの準備。 御本人もおっしゃるように講義の進度は遅いが、 あいかわらず非常に親切かつ明解な講義である。 具体的な抽象ウィナー空間の例で一番普通なのは 古典的ウィーナー空間つまりブラウン運動で、 その場合は2分の1ヘルダー連続関数の空間が骨になっているのだが、 W先生の目論見は再生核の話などを紹介しつつ、 一般のヘルダー連続関数の空間に対応するfractionalブラウン運動まで 含めた議論をするということらしい。 ますます目がはなせないW先生の確率解析講義、 学生諸君は刮目して来週を待て。

A堀先生も聴講に来ていてその後で少し立ち話したところでは、 今年の夏の確率論ヤングサマーセミナー合宿にR命館の院生を大量に送り込み、 A堀先生の指揮のもと人海戦術で乗っとるという計画をたくらんでいるらしい。 とにかく、R命館に確率論を勉強してる奴が一杯いるぞ というアピールにはなるだろうが…でも人数で勝っても(笑)

個研に帰ってまた TeX 書き。胃が痛い…


2001/05/30 (Wed.)

ちょっと早めに大学に行き、 サンドウィッチの昼食を取りながら、TeX書き。 懸案だったヤング図形を picture 環境で書いていたら、 あっと言う間に時間がたつ。 途中で院生がLZやLZWの圧縮法についてゼミをしに来たので、 一時間ほどゴールドベルグ変奏曲を聞きながら相手をする。 移動窓アルゴリズムなど理解が若干あやふやなようだったので、 自分でプログラムを書いてみるよう言っておく。 こういう話の場合、 理解が完全ならばちゃんと動くプログラムが自分で書けるので、 本人が本当にわかってるかどうか判定しやすい。 夕方から教室会議。 遅くなったので、生協で食事をして帰宅。

昼間仕事をしたので、と言っても正味3時間くらいだが、 自宅ではもうその気になれず、 頭を使わなくてもいい原稿のスペルチェッカかけなどをする。 私はスペルを気にせずにがんがん書くだけ書いておいて、 後でスペルチェッカにかけて訂正するという自堕落な方式をとっているが、 この方法は効率はいいものの、 何度機械に注意してもらってもスペルの間違いが絶対減らない。 例えば、○ explicit × explicite などのありがちな覚え間違いの他に、 私は condition という単語が何故かタイプできないらしく、 conditon とか condtoin とかわけのわからないタイプをして、 有能なスペルチェッカにも呆れられたりしている。

ミラン・クンデラ「不滅」を昨夜読了。 現代小説では久々に面白かったです。


2001/05/31 (Thurs.)

また早目に大学に行って、 サンドウィッチの昼食を取りながら、 かつ痛む胃をおさえながら論文手直しのTeX書き。 実は今日が2回目の締切だったのだが、 また締切を守れなかった。 私はそもそも社会的に逸脱している部分が(ちょっぴりだけ)あるので、 こういう基本的な部分では是非とも約束を守りたいと常々思っているのだが… 明日は丸一日フリーなので明日こそ書き上げて、 共同研究者にお伺いをたて、最終チェックして来週提出としたい。

卒研ゼミは二つの独立なランダムウォークの交点について。 このあたりは現在も未解決の問題が多く、 (多分、本質的に組み合わせ論的な困難があるのだろう) モンテカルロで数値実験をするだけでも価値があることもあるので、 情報学科から来ていて卒論を書く義務のある学生は、 この周辺からネタ探しをすればよいのではないか、 とアドバイスしておく。 卒論で少しでも新しい事実、 少しでも他の人が興味を持ってくれる事実を調べて、 学問にコミットする喜びを味わってほしいと思う。 時代の流れに棹差しているとは思うけれど。 その後のM1解析ゼミは、測度空間の完備化など。 ゼミの後、またTeX書きをして、生協で食事して帰宅。

ひょんなことから、 私のチェロの製作者の奥様からメイルをもらい、 ちょっとほのぼのする。 大事な娘さんを預かっている私としては、 身の引き締まる思いでもありました。 大事に弾きますです。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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