昔、私が似合わぬ悪事をなしていた頃に知りあった某女性から、 昨日久しぶりにメイルで連絡を頂き、 十ほど年下の伴侶を得られたと聞いて、 なかなかに感慨深いことであった。 与謝野賞か何かを受賞した才女で、 昔は世を捨てて紙漉き職人にでもなりたいとか言っていたが、 今はどう思っているのだろうか。 兎に角、末長くお幸せに。
今日の読書。篠田節子「弥勒」。 うーむ、やはり篠田節子ただものではない。
昼食は関鯵のひらきを焼いて、大根しめじ油揚の味噌汁と沢庵。 午後はポリヤ=セゲーの問題集をやる(先生だって筋トレやってます)。
夜は膳所でチェロのレッスン。 ヴェルナーからの題材でビブラートをかけながらのスケールの練習をして、 シュレーダーから親指のポジションのエチュード。 チェロは本来はヘ音記号あたりの低音がパートで弾き易いのだが、 このエチュードはほとんどその上の上のト音記号の高音で、 とても難しい。年内どころか、冬の間に 「まあ、このあたりにしておきましょう」と言ってもらえたら、 上出来かも知れない。 課題曲はマスネの「エレジー」。 物哀しくて秋らしい良い曲である。
夜遅くなり御飯を炊く時間がないので、 ハムの最後の残りを入れたアーリオオーリオ。 いい食材はすぐになくなる。 作り置きのじゃが芋のコンフィをつけあわせて、 赤ワインで食す。
年末調整の関係で父から書類を郵送でもらったら、 近況を書いた手紙が入っていた。 父は既にセミリタイアしているのだが、 退職後の暇つぶしに県の大学の公開講座で地質学の勉強をしているそうだ。 身近な根来断層がテーマらしくて、 高校生などにまじって楽しくやっているようだ。 今まで仕事のみで全く無趣味な人だったので、 優雅に退職生活を送ることもできず (私なら今すぐ隠居したいくらいなので楽勝だが)、 退職後に長い間忘れてきた知的好奇心を思い起こして、 公開講座を受講してみたのだろう。 まあ元気そうで結構なことである。
3日、土曜日。 雨。 執事がメンテナンスに励んでいたので、 関鯵の開き、だし巻き、白菜の漬物、大根しめじの味噌汁の昼食をふるまう。 午後は、自宅で月曜の講義の準備をして、 ポリヤ=セゲーの問題集から幾つかを解く。 夜はいつものようにチェロの練習をし、サムポジションに苦しむ。 平凡な自宅での一日であった。
4日、日曜日。 昼食はアーリオオーリオと作り置きのじゃが芋のコンフィ、白ワイン。 午後は三条あたりをぶらぶらしに行く。 十字屋でチェロの楽譜とポッパーのチェロ曲のCDを買い、 本屋を周って、カフェ Rで一服して帰る。 夕食は鰤の照り焼き、豆腐としめじの味噌汁、 白菜の漬物。休日なので日本酒つき。銘柄は「雨晴」。
急に気温が下がったせいか、少し風邪っぽい。
自宅で昼食を取って、午後から大学へ。 同僚のT山先生のドイツ日記の本が出来上がったようで、一冊貰う。 自筆のスケッチとか論文の一部とかがデザインに使われていて、格好良い。 内容はウェブで既に読んだものだが、 やっぱり紙に置いた活字は落ち着いて読めて良い。
夕方は「数学解析」。 数百人を収容できる大講義室で、 数名の学生を相手に細々かつ寒々と講義をする。 事務方が再履修科目であることに気付かず、 例年のつもりで部屋を取ってしまったのだろう。 今日は加法公式を使って、楕円関数の定義域を実数全体に、 さらに複素数全体に拡げる。 もちろんただ拡げるのはどう拡げても勝手だが、 これが本当に自然で良い拡げ方であることはおいおい分かると言うことで、 また今日もがりがり計算しまくる。 ちょっと自分が考えている問題と関係がありそうなので (と言うか、それが目的でこのテーマを選んだ)、 テータ関数とか、 非線型波動と関係のあるような所とかをやりたいのだが、 随分先になりそうだ。
引越し前に実家に預けておいたコートを送ってもらう。 今日はすっかり冷え込みましたが、 もう冬なんでしょうか…
木枯しが吹いたらしい。 やはりもう冬になったようだ。 今年初めてコートを着て大学へ。 A堀先生の山ほどあるゼミの一つで、 そろそろスツルム=リウヴィル理論に入ると言うので参戦のため、 通勤途中ではスペクトル理論の教科書の最初のあたりをおさらいする。
生協で蕎麦を食べて、正午から卒研ゼミ。 前回から続いてトランプのシャッフルの確率論的考察。 大体何回リフルシャッフルすれば充分混ざるだろうか、 という疑問に数学的な答の一つを与えることが目標なのだが、 今日はまだその途中で結論は来週に持ち越し。 引き続き、M1「代数」ゼミ。 何故、私のゼミで代数なのか私も分からないが、 学生本人がA堀先生のゼミでは疑似乱数の発生の問題をやっていて、 それがほとんど代数なのだそうなので、 その後方支援をやっているのだと納得しておく。
今日の夕食。うるめの丸干し、豆腐の玉子とじ、 白菜と大根の漬けもの。 夜はチェロの練習をしたり、ポリヤ=セゲーの問題を解いたり。 年末に向けて暗号関係の原稿を書かねばならないのだが、 しばらく休んでいたせいで再びエンジンをかけるのが難しい。
寒いと思ったら、もう立冬ですか。
労働者らしくワークブーツを履いて、
「聞け万国の労働者」を口遊みながら出勤。
♪汝の部署を放棄せよ、汝の価値に目覚むべし、
全一日の休業は、社会の虚偽を打つものぞ♪
(一高寮歌「アムール河の流血や」の節で)。
通勤途中では線型作用素論のお勉強。
正午からM2の修論ゼミ。一人無断欠席。 しばらく真面目に顔を出していたが、また危険な予感。 残りの二人はまあまあ進展している模様。 続いて「プログラミング演習」。 初めての本格的なレポート課題を出す。 続いて、 A堀先生と学生のT君がマンツーマンでやっているゼミに参加させてもらう。 秘書室長とはT君であったのか。 スペクトル分解が終わって、 スツルム・リウヴィル理論に入ろうとする手前のあたり。 今日はモーメント問題の途中で終わった。
夕方、帰路につく。 帰りの電車の中ではポントリャーギンの 「最適制御理論における最大値原理」に付録としてつけられた小自伝を読む。 行間に泥臭いことがちらりちらりと見えて、結構おもしろい。 夕食はアーリオオーリオとじゃが芋と玉子のサラダ。 あれこれ一緒に準備しようとして、 うっかりオリーブオイルの中の大蒜を焦してしまい、 久しぶりに失敗する。結局、オイルを作り直したので、 熱々のスパゲティと言うわけにはいかなかった。
最近、眠る前には、 「魔都」(久生十蘭)を二、三章読んでから、 「自省録」(マルクス・アウレリウス帝)をほんの少し読んで、 一日の反省をする習慣である。 この二冊の組みあわせの悪さが私を表しているような気がする。
昼にメンテナンスに来た執事に「ええっ、御出勤ですか?」 と驚かれながら出勤。 個研で事務的な仕事に専念する。 一杯ハンコを押して、たくさん署名をして、 書類を一杯作った。 さて、明日は出張なので、次回更新は日曜か月曜の夜。
R大学では各専任教員に個人研究室(略称:個研) と言う個室が与えられている。研究室と言う名前ではあるが、 私は個研で研究しない。主に事務をする。理由の一つは、 単に昔から机に向かって勉強するのがあまり好きではないこと。 次に、色々と邪魔が入り過ぎる。 数学のように尋常でない集中力が必要なことをする時には、 邪魔が入らないことと、邪魔が入るのではないかと 気にさえならないことが大事である。 それに、個研が殺風景過ぎる。 事務系独特の什器類(○クヨとか)を見ていると憂鬱になる。 この三番目の理由は、 個研が嫌いで、嫌いだから手を入れないので、 さらに嫌いになり、嫌いだから…という悪循環なので、 理由にならないかも知れない。
私の少ない経験から言うと、 非常に居心地のよさそうな個研を維持しておられる先生もいる。 これは綺麗と言う意味ではない。適度に乱雑で、 私的で温かいムードがあって、ここなら居ついてもさもありなん、 という感じのことである。 また、以前に、アクロス方面の事務の方に聞いたのだが、 ホテルの応接室かと見擬うような個研もあるそうである。 実際、大学の先生の個研の重要な機能の一つは「応接」なので、 大抵の個研には小さなテーブルとソファといった応接セットがあるようだが、 それに特化してしまっている所が凄い。それも見識であろう。
私の個研は以前はもっと殺風景だった。 本当に、事務机が一つと、ほとんど空の本棚しかなかったのである。 しかし、既にR大学を退職されたI大先生が、 「はらさん、いくらなんでも格好ってものがあるでしょう」 と言って、御自分が退職なされる時に、 大きなテーブルと数脚の椅子と (本棚を埋めるための)大量の本や論文雑誌を譲ってくれたのである。 個研も先生によって様々なので、 学生の方はチャンスがあれば各部屋を訪ねてみると面白いかも知れない。 私は滅多にいませんけどね(笑)
この日記は、GNSを使用して作成されています。