お昼を御曹司N氏と御一緒し、京都駅にてお見送りする。
滞在中はほとんどおもてなしもしなかったが、
我が家で「人生居候日記」(種村季弘)の
「結婚式の客の半分以上が借金取りだった…」
と始まるエッセイなどを読みながら、
日頃の多忙から離れ落魄の美学に酔っていらしたようである。
継承権の低き故に嘆かわしくも、
某「えぬテーテー・えーテー」社で労働者の真似事などをしているようだが、
それも一つの修行である、
後で若き日の冒険と笑い話になることもあろう、
頑張っていただきたい。
私はそのまま大学へ。午後から期末試験の監督補助三昧。
昨日N氏によって店から我が家まで運んでいただいた電気カーペット。 妻のクロさんはこの貢ぎ物にめろめろの模様である。 カーペットの上でいつもの二倍くらいの長さになって、熟睡している。 私の方は、N氏からもらった備前焼の酒器で日本酒を少々、 しみじみと不景気に飲んでいる。
久しぶりだったので気合いを入れてお弁当を作ったら、 持って出かけるのを忘れた。 大学に着いてから気付いて、ショックのあまりしばらく呆然とした。 仕方なく生協でお結びなど買って食す。 やはりイギリスで牛肉を食べ過ぎたか、 アルジャーノン=ゴードン効果は今年も健在。
午後一番は3月の ファイナンス・シンポジウム準備のためのミーティング。 続いて卒論準備のゼミ。 二人とも内容については着々と進んでいる模様で安心。 しかし論文のようなものを書くのは初めてだろうから、 これから提出に向けて書き方指導が大変かも知れない。 その後、個研で答案とレポートの採点三昧。 温厚と穏やかな物腰で知られる私であるが根はサディストなので、 これを落とすと就職できません、 とか、人生無茶苦茶です、とか書いているほぼ白紙の答案を、 次々と容赦なく不合格にして溜飲を下げる。
残っていた採点を全て一気に終わらせて、 その達成感のあまり、そのまま帰路につくがバスが動き出してから、 明日の午前中が締切の提出物があって、 それこそ今日の事務仕事の目標だったことを思い出して、 また呆然とする。
今日の読書。「殺す・集める・読む」(高山宏)。
午前中は昨日し残した事務仕事。 お弁当は明太子ピラフ。 午後はちょっと厄介な他の仕事に手をつける。 夕方河原町に所用があったので、 午後の早い時間に帰路につく。
存外、その用はすぐ済んだ。 ついでに SBUX で珈琲豆(カフェ・ヴェローナ)、 本屋で「きょうの料理 2月号」を購入して、暗くなる前に帰宅。 紅茶をいれて食堂のテーブルで読書をしていると、 執事がやって来る。
「失礼ですが、そのお手元の御本はヴァン・ダイン全集では?」
「いかにも。僧正殺人事件だね」
「もちろん再読でいらっしゃいますか」
「もちろん。書庫はあの通り汗牛充棟だから、
再読の度に買うことにしてるんだがね」
「それは、暇があり余っているぞ、と言うアピールでございますか?」
「い、いや、けっしてそういうつもりではなかったのだよ、うん…」
最近執事は、副業の方が異常な多忙らしく、
普段の完璧なハウスキープの技を発揮できずにピリピリしていると見える。
ファイロ・ヴァンス家の家事万事を取りしきる老執事カーリーとは違って、
我が家の執事は若いので、未熟な主人に我慢ならない時があるのであろう。
とりあえず、「僧正殺人事件」を熟読。何度読んでも面白いなあ… でも決して暇なわけじゃなくて、むしろあれこれ大忙しです。 来週の月火水と三日間、無理矢理自主休暇にする秘密計画をたてていたのですが、 それもミーティングなどが入って無理そう。 明日から三日間土曜日までは阪大でシンポジウムのため、 日記はお休み。次回更新は土曜の夜です。
土曜日は雨。 阪大でのシンポジウム「大偏差原理と半(準)古典近似」、 最後はT師匠の講演で、夕方に終了。 また毎日飲んでいた。 Sさんに鰈を使ったパスタ料理のレシピを教えていただいたり。 Sさんは奥様の友人達に手作りのスパゲティを御馳走したりと、 お美しい奥様と一緒にファミリーな幸福を堪能しているらしい。 うらやましい限りである。そういった人生もあるのであるなあ… どこか遠く虹の根元のあたりには。
シンポジウム帰りに大宮駅近辺でワインと食材を買って帰宅。 Sさんとスパゲティ談議をしたからと言うわけではないのだが、 スパゲティを茹でてアーリオオーリオと、 作り置いてあったトマトソースを使ったスパゲティを作り、 二色パスタを肴に、 先程買ってきた安ワインを飲む。 モンペザ のテーブルワイン。 食後は某○TT-ATの 戦慄のケーブル屋N氏 がおいていってくれたゴーダ・チーズなどをいただく。
先日、某S○NY社製ゲーム機のソフトをマスターアップしてバグ報告待機に入り、 副業の方が暇になったらしい執事が、 「占星術殺人事件」を持ち歩いたりして暇っぷりをアピールしていたので、 こちらも負けずに「黒死館殺人事件」(ハヤカワ・ポケミス版)を再読する。 執事も久方の(やや)暇モードだとは言え、 久しぶりに手合わせしてみたら、 クイーン、ナイト、 ビショップと三手連続タダ捨てと言う華麗な手筋を見せていた所を見るに、 まだ相当に疲れがたまっているのであろう。
ちょっと風邪気味かなと言う感じで起床。 最近、休んでいないので疲れているのだろう、 舌が腫れているように感じる。 今日の京都は晴れたり、冷たい雨が降ったり。
昼食を仕度する。 鮭の切り身、大根の糠漬け(自家製)、梅干し、若布の味噌汁。 伊丹流ねこまんま。食後、ほうじ茶。食後は洗濯など。
夕方、近所のパン屋に行く。徒歩5分くらいの近さなのだが、 普段全く使わない道沿いにあるので、今日が初めてであった。 何でも有名なパン屋だそうで、 つい最近、京都に住んでいない人に教えてもらったのである。 一番プレーンなライ麦パンと、 じゃが芋が入っていると言うパンの二種類購入して帰宅。 夕食はポテトサラダ、トマトソースのオムレツなど。 夕食後は、少し裁縫をして、 夜は雑用をしながら、「俺たちは天使じゃない」を観る。 今も視聴中。カラーで観るボギーってちょっと変な感じ。
"Death is a lonely business." 死ぬ時は誰もひとりぼっち、なのであろうが、 一人で長いエンドゲームをすることになるかも知れないな、 と言う覚悟から、私は若き日から家事に堪能になろうと努めてきた。 家事に長じることがライフワークの一つと言ってもよい。目指せ幸田露伴。 もちろん、裁縫も出来る。ちなみに、複式簿記も付けられる。 どちらも自分で学んだ。母は裁縫のプロ、 父は経理のプロであったが、それはたまたまである。 しかし、今のところ掃除だけはどうしても駄目で、 美しい状態を長期に保てた試しがないのだが、 現在、「プロ」を自称する執事を秘かに観察して勉強中である。
昨夜のこと、暇そうにしている執事とまたチェスをする。 黒番、フレンチディフェンス。 今回は序盤で私が大ポカをし、不利なゲームを防戦する。 時間切れに救われて結局ドロー。 私の方がお疲れ気味なのだろうか…
起床して、メイルなどをチェックし、 食堂のテーブルでお仕事を少々。 昼食は鮭の切り身を焼いて、ホワイトソースを作る。 ポテトサラダの残りとともに食す。 卵料理と並んでホワイトソースと言うのも、 いくらやっても満足に出来ないものの一つだなあ…
魚など焼いていると、妻のクロさんが寄ってきて、 「ちょうだいよ、ちょうだいよ、美味しそうな匂いがするわ、 ちょうだいちょうだいちょうだい、ったらちょうだいよー」 と憶面もなく鳴き続ける。 猫とはプライドの高い生き物ではなかったのか、 それでは人間の子供と変わらないではないか、 ちなみに私は人間の子供は大嫌いなのだ、 私は子供に生まれなくて本当に良かったとほっと胸を撫で下ろしている所です、 猫として恥ずかしくないのか、君はそれでいいのか、 猫は食わねど高楊枝と言うではないか。 とトウトウと説教してみるのだが、今の所、効き目はない。
午後も自宅で仕事をちょっとして、 その後、京都駅隣りの郵便局に投函しに行く予定。
訳あって、祇園の某所から出勤。 昼に数理ファイナンスシンポジウム2002の開催準備ミーティング。 A堀先生には「どうしてスーツなんか着てるの」と訊かれたので、 「社会人として当然では」と答え、 Y先生とW先生には「今日はフォーマルですか」と訊かれたので、 「冠婚葬祭でして」と素直にお答えしておく。 プログラムも大体決まって、おおよそ形になってきた模様。 二週間毎だったミーティングも最近は毎週である。
ちょこちょこっと事務をして、夕方に帰路につく。 夕食も祇園。フィリップ・オブロンの店で食す。 オブロンは滋賀でビストロをやっていて、 そのお客の紹介で祇園に店を出したと噂に聞いたが、 その滋賀のビストロはまだやっているのだろうか。 祇園の店は素晴しいことは確かで、 私のような労働者階層には「奢りの頂上」であるが、 やはり普段の食事は気楽な方がいいので、 ビストロがあるならそちらに行ってみたい。
ところで、「ビストロ」って語源はロシア語なんだそうな。 意味は「早く」。 ロシア人が店にやってきて「はやく出せ、はやく」と、 急かした所から普通名詞になったとか。
風邪で体調が悪く、午後は昼寝。
昔東京でお世話になった方から今京都に来ていると電話があり、 夕食を御一緒することになる。 風邪薬を飲んで夕方から外出し、 その関係で知り合いの西陣の若旦那Iさんを交えて、 「たん熊」で夕食。 昨日までに引き続き、またしても奢りの頂上。 IさんはTK大のS君のサークルの先輩にもあたる方だが、 私は今までほとんど面識がなく、 今日御一緒して色々話が出来て楽しかった。 最初に待ちあわせて、さあどこに行きましょうか、 となった時に、 さすが西陣の若旦那である、 店に入るなり芸妓さんがいずこからか現れて、 数人はべってくるような場所しか知らないらしく、 さすがにそれでは、と色々議論した所、 待ち合わせ場所の近所の「たん熊」でけりがついた。 恐しい世界である。
私がフィールズ賞を取ったら、 美智子さまが手づから桑の葉をお与えになる蚕から取れる絹で、 Iさんが紋付羽織袴を仕立ててくれるそうだ(笑)。
熱でふらふらしながらTVニュースを見ていたら、 アンケートでは田中外相更迭に反対が圧倒的多数派となっていて、 ちょっと驚く。私が私の狭い世間から受けている印象では、 いつ辞めさせられても不思議はないと思っていた。 さらに疑問なのはどうして田中外相は 「庶民派」「庶民感覚」と思われているのだろうか。 日本で最も権力を持っていた人の娘で、 実家の階段の踊り場さえ一般人の家の居間より広いのに。 いや、私は政治音痴なので、そういうことを言いたいのではなくて、 私自身が、 一般大衆の意見とか支持率と言うものを全く理解も予想もできなくなっているようで、 それがちょっと恐い、と言う話である。
自宅で昼食をとり風邪薬を投薬して出勤。 まず修論ゼミ。 その後、卒論ゼミの前に謎の中年男が 何十万円もする美術全集を売り込みにやってくる。 残念ながら私にはそのようなものを楽しむ典雅な趣味はなく、 そんな私費があったらワイエルシュトラス全集と フォン・ノイマン全集を買いたいくらいなので、 さっさとお帰りいただく。 だいたい、真っ昼間に大学の個研にいる教員はもちろん仕事中なのだから、 セールスの相手などするはずがないと思うのだが、 向こうはそう思っていないのだろうか。謎だ。 続いて卒論ゼミ。しっかりコードも書いていて、 論文の草稿も事前に届けてくれ、安心の学生達である。
卒論も修論もあとは書くだけ、という状況になったので、 以降は草稿を出してもらっては添削して返し、 と言うゼミなし臨戦態勢に入る。 草稿を出してくれればそれに対し確実に添削するので、 添削回数は学生の熱意に依存する。
昨日暇そうにしていた執事との対話。
丁度TVのCMで、
若い夫婦が近所の友人たちを呼んで何かパーティっぽい
ことをやっている映像が流れた直後。
B: 「ああいうハイソサイエティな生活もどこかにはあるのですねえ」
I: 「まあ、どこか遠くにはねー」
B: 「それは遠くて高い所でございましょうね…丘のような」
I: 「(丘?) そうねえ、きっと虹の根本のあたりとかね(笑)」
B: 「やっぱり、そこにはお花畑とか
あるんでございましょうね…(真顔)」
ちょっと人生に疲れているのかも知れない。
この日記は、GNSを使用して作成されています。