Keisuke Hara - [Diary]
2002/05版 その1

[前日へ続く]

2002/05/01 (Wed.)

朝方、寝室の外の階段の辺りで、 「とても眠いんだ、パトラッシュ…火事は僕のせゐじゃ…」 と弱々しい声が聞こえたやうに思ふのだが、 気のせゐだらうか。

今日はメイ・デーであるから、 闘う労働者としては断固として休み、 英気を養わねばなるまい。


2002/05/02 (Thurs.)

自宅で好きなやうに仕事をする。 趣味の翻訳とか、講義ノート作りとか、 ちよつと数学とか。

NHK教育の中国語講座で、講師の 相原先生 が毎回毎回「お菓子が二つ…私は幸せ」 と言ふのは、何か深い人生哲学を秘めてゐるのか。 お菓子が二つあること、それが人生の幸福の真相なのであるか。


2002/05/03 (Fri.)

Madame kuro 昨夜は少し数学を考へた後、頭を冷やすために読書などして、 夜更しをしたので、正午まで寝てしまふ。 オムレツを開くタイプのオムライスを作つてゐると、 執事が昼休みに掃除にやつてきて、 今月の収支の概算報告をして帰つていつた。 天下の公休でも火の吹いてゐるラインのプログラマに休日はない。合掌。 執事給与の端数をかけた月末マッチは、 多忙のためメイルで行なつてゐる。執事の先手白番で現在、
1. e4 b6 2. d4 Bb7 3. Nc3 e6.

午後は良い日和だつたので洗濯をして、 寝転んで「事件当夜は雨」(ヒラリー・ウォー)を読んでゐると、 眠くなつてしまひ、そのまま午睡。 夕食。御飯に、豆腐と若布の味噌汁を作り、 油揚と九条葱をさつと炒めて生姜と鰹節をかけて醤油を垂らして食す。

明日から本格的に三連休するので、 次回更新は来週火曜日7日の深夜。


2002/05/04 (Sat.)


2002/05/05 (Sun.)


2002/05/06 (Mon.)


2002/05/07 (Tues.)

連休明けは雨。 個人的三連休は嵯峨野で鯛豆腐だつたり、 この御時世のせゐか連休でも空いていた 荒神口のなり田屋で焼肉だつたりと食道楽で過した。 普段の食生活は一日300円もかかつていないので (200円以下かも知れない)、 あまりの差に身体の調子を悪くしさうである。

鯛豆腐とは鍋サイズの大きな鯛の塩焼が そのまま一尾入つてゐる湯豆腐のやうなもので、 豆腐を食べてしまつた後の雑炊が美味しいが、若干濃厚過ぎるやうにも思ふ。 そこで次のやうな贅沢を考へた。 鰤大根などは、鰤の味のしみた大根を食すので、 あくまで主役は大根であつて、 鰤はそのついでみたいなものだなどと通は言ふ。 それにアイデアを得て、 鯛豆腐を注文して鯛を食べないといふのはだうか。 普通は鯛の半身はむしつて豆腐と一緒に食べて、 残りの半身は店の人に頼んで、 骨を取つて雑炊に入れてもらふのが正調である。 そこをあへて鯛には箸をつけず豆腐だけを食し、 その後に雑炊を頼んで店の人に「鯛はだうしますか」と聞かれたら、 断固として「要りません」と答へるといふ、 ばちがあたりさうな贅沢である。 鯛一尾でダシをとる贅沢、いかがか(笑)

値段はたいしたものでないとは言ふものの、 食ひ意地がはつてゐる私には、 激しい精神的苦痛を感じる究極の贅沢なので、 やつてみたいと言ふ人がゐても、 絶対に私のゐない所でやつて下さい。

さあ、明日からまた真面目に働かふ。 来週末は九大のセミナーで話させてもらふ予定なので準備が大変さうだ。


2002/05/08 (Wed.)

午後はM1ゼミ。σ加法族とか確率測度とか。 続いて、大学院内部進学者の面接、さらに続いて教室会議。 内部進学者の多くが(いや、ほとんどが)数理ファイナンス希望でちよつと驚く。 帰宅が遅くなつたので、 御飯を炊く時間を待つておれずスパゲティを茹でる。 トマトと海老のスパゲティ。 うまく出来たと思つたら、ワインが一本残らず切れてゐてショック。 手間をかけてソースを作つたら、 パスタを砂糖で茹でてゐたことに気付いた時に次ぐショック。

連休中にあまり構つてやらなかつたせゐか、 クロが暴れまはつて、居間にある執事の作業用PCが壊れてしまつた。 Palm のシンクロ用に日常的に使つていたWindowsマシンなので困つてしまひ、 しやうがなくてサーバルーム(兼、物置)に鎮座している日記サーバの linux マシンのディレクトリ奥深くに残つてゐた、 Palm Pilot とのシンクロのコマンドを掘りおこした。 大昔に初期の pilot を使つていた時のものなので、 (念のため最新版でコンパイルし直したと言ふものの)、 ちやんと動いて驚いた。

いざと言ふ時にも頼りになる、 多分6、7年前の PentiumPro マシン、確か133MHz、 は異常なほど安定してゐるが、流石にそろそろ寿命だと思ふ。 何せ全てにおいて単位が違ふ時代である。 その時は手厚く葬つてやらねば。


2002/05/09 (Thurs.)

週末は来週のセミナー講演準備にあてたいので、 今日から来週の講義準備をしておく。 午後はチェロのレッスンに膳所に行く。 夕食は海老チリ。

夜は日本総領事館のニュース映像にブルーになつてみたり。

数理ファイナンスを専門にしてゐる人が(A堀先生とかね)、 「それつて儲かるの?」と聞かれて困惑してゐる図を良く見るが、 だうやつても儲からない、 と言ふのが数理ファイナンスの立脚点のやうなものなので、 かなりパラドキシカルな風景ではある。 儲かると言ふのは、結局、 本質的に同じものに二つの値段がついてゐたので、 安く買つて高く売るか、または高く売つて安く買い戻すかして、 その差額を儲けるのである。これを裁定と言ふ。 (「本質的に」同じもの、と言ふところがミソである。) しかし、もし、さういふ機会があつたとすれば、 既に誰かがその差をかすめ取つてゐるであらう。 そして、その差は価格の動きによつて調整され消え失せるであらう。 したがつて、世の中に儲け話は存在しない。ノー・フリーランチ。 今、某国の金利が異常に高いから、 その外貨に預けかへれば大儲けだらうか。もちろん、ノー。 金利が高いのは理由がたくさんあつて、 そのバランスの上に誰も儲からない値段と金利がその貨幣についてゐるのである。

しかし、理論的にはさうであらうが、 現実的には、「正しい」値段がついてゐないのではないか、 そして「正しい」値段に落ちつくまでにいくらか (一年、一日、または一秒?)時間があるのではないか、 そして私だけがそれを見抜けるのではないか、 そして市場がその後からついてくるのではないか、 (そしてA堀先生こそ、そのやうなウィザードなのではないか!) と言ふ方が沢山ゐる。さう言ふ人もゐて、 その合計として市場が正しく機能してゐるのであるが。


2002/05/10 (Fri.)

今、私の住む地方では、 木曜日の深夜に「少女に何が起こったか」 と言ふ昔のドラマを再放送してゐる。 ふと思ふのは、リアルタイムで大映ドラマを観ていた人は、 真面目に観てゐたのだらうか、それとも、 今再放送を観るやうに爆笑してゐたのだらうか。 その中間でイタイもの見たさもあり、 それはさておきわかつていながらも、 あの正視に堪へないストーリーに手に汗を握つてゐたのか。 私は現役世代であるが、連続ドラマが苦手なので (集中力が来週まで持たないのである)、 当時の気分があまり良く分からない。 そんなことを、タンバリンを持つて踊り狂ひながら、 小泉今日子にハンガリアン舞曲の真髄を教へる辰巳琢郎 (正視に堪へないでしょう?)を観て、考へる今日このごろである。

昔のドラマの再放送を観て楽しいことに、 お約束だつたシーンや名台詞に再び出会つて、 「ああ、さうだつた、さうだつた」と思ふことがある。 「少女に…」では、 毎回、12時になると「この、薄汚ないシンデレラめ」 と同じ台詞を言ひながら現れる石立鉄男とか、 「紙のピアノじゃ指が沈まないっ」だとか。 当時のドラマでは、かう言つた過剰なほどの、 お約束シーンがあつて、視聴者の方も「待つてました」 とそれを喜ぶ、と言ふのが特徴であつたやうに思ふ。 毎回、口で手袋を脱ぐ片平なぎさとかね。 その意味では古典芸能的と言ふか、芝居と言ふか、 まだそれほどTVドラマがその可能性に目覚めてゐなかつた頃のお話である。 しかし、では、TVドラマの可能性に気付いたTVドラマと言ふのが、 何なのかも良く分からない。 また今度、高槻のT部長に尋ねておかう。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

この日記は、GNSを使用して作成されています。