Keisuke Hara - [Diary]
2002/05版 その3

[前日へ続く]

2002/05/21 (Tues.)

出張用のエアチケットを買いに行く。 自分では随分早めに手配しに行つたつもりだつたのだが、 往復同会社では、 週末の内に帰つてこれないとか帰りは東京着になるとかで、 もう素直なチケットはなくなつてゐて、 結局、往復を異なる航空会社で組みあはせて解決した。

昼食は素麺。葱と生姜ときざみ海苔。 麺つゆは昆布と鰹節でひいただしに醤油と味醂をあわせて、 葱を入れて少し煮たててから冷やして作つた。 夕食は野菜炒め、冷奴のちりめんがけ、青瓜の漬物、 大根、葱、お揚げの味噌汁。

久しぶりに執事を家で見かけた。今日は副業は休日らしい。 既にE3 が始まつており、展示は明日からなので、 兎に角デッドラインは過ぎてしまつた、と言ふことであらう。 しかし有能なプログラマの前には、 火を吹くラインはいくらでも待ち受けてゐるものである。 執事が本職に専念できる日は来るのであらうか。


2002/05/22 (Wed.)

M1の確率論ゼミ。 離散分布の期待値、分散の定義と性質など。 その後は事務三昧。書類を作り提出し、あれこれメイルを書く。 昨日予約したエアチケットを見たら、 往復とも同じ航空会社だつた。往復で違つたと思つてゐたが、 結局、日曜発を月曜発に変更して同会社でとれてゐたのであつた。 ちよつと安心。

夕食はトマトでマリアーナソースを作り、 その一部を使つてスパゲティアラビアータにする。 残りは作りおきで保存。 さう言へば、昨日素麺つゆの私の作り方を書いたら、 桜海老で水からだしを引く涼しげなレシピを メイルで教へて下さる方がゐた。多謝。

今日、電車で読んでゐた "Huygens and Barrow and Newton and Hooke" (V.I.Arnol'd)の一節。

This remarkable letter by Newton (...) begins with
an admission that he was finishing with philosophy and
had recently been concerned with other matters.
Apparently age was telling
(Newton was already 37, and this was the age when
it becomes difficult to be interested in
mathematics and in other branches of philosophy).

ニュートンによって書かれたこの注目すべき手紙は、 自身が「哲学」をやめつつあり、 最近はずつと他の問題に関つてゐるといふ告白から始まつてゐる。 明らかに、これは年齢から察せられる (ニュートンはこのとき既に37歳、これは数学や「哲学」の他の分野に 興味を持つことが難しくなる年齢であつた)。

翻訳は私の試訳。 上で「哲学」と括弧をつけたのは、 当時は philosophy と言ふ語が exact science 全体を示す言葉であつたからで、 今の通常の言葉使ひとは違ふため。 ニュートンはフックにあてた1679年のこの手紙で、 彼の重力理論の出発点になつた実験を提案する。 その後、プリンキピアが出版されたのは1687年。 ちなみに「他の問題」とは錬金術の類ひでせう。


2002/05/23 (Thurs.)

夕食にちりめんと紅生姜の混ぜ御飯、冷奴、 胡瓜の漬物、大根とお揚げの味噌汁。 冷奴と言ふのはそれが四角に切つてあるからだが、 私は手で大きめにちぎつて盛りつける。 醤油とか葱生姜などのつけあはせもよくからむし、 箸で取りやすいからだが、 これでは正確には「やつこ」とは言へない。

冷奴については、 絹ごしか木綿か、と言ふ永遠の宗教戦争がある。 確か、将棋の名勝負の最中かなにかで、 この論争がきつかけで大喧嘩したと言ふ話がなかつたつけ。 それはともかく、私は木綿派である。 絹ごしなんて、 あんなつるつるして柔らかいものは冷奴の風上にもおけん、 大事な食感といふ面でまるで物足りないし、 味まで薄い気がするではないか。 しかし、京都では絹ごしの方が上とされてゐるやうに感じる。 少なくとも家の近所では木綿の方が選択肢が少い。 残念なことだ。


2002/05/24 (Fri.)

昼食は梅炒飯と若布の味噌汁。 中華鍋でマヨネーズを溶かしたところに、 冷や御飯と梅肉を入れてざつと炒めて、醤油少々。 紫蘇か葱の刻みを混ぜて完成。 分とく山主人のレシピ。 簡単に出来て劇的に美味しいです。 梅とマヨネーズの酸味と醤油の組み合はせが絶妙。

帰宅して、夜は二色パスタ。 作りおきのマリナーラソースを使つて半分はアラビアータ、 これも作りおきのペスト・ジェネヴェーゼで半分はバジルソース。 それぞれ美味しかつたが、 唯一問題なのはこの二つが一つの皿に乗つてゐること。 色は赤と緑で綺麗だらうといふ思ひつきに夢中になつて、 味の組み合はせは考へてなかつた… 自分で作るとかう言ふ失敗もありますね。

明日は土曜日だが、 他の大学でのシンポジウム打ち合はせが入つてゐるので、 今日の内に講義の準備を始めておかないと。 一週間て早いですねえ。 某数学者(確かグラフ理論の人だつたと思ふ)が、 あまりに様々なことに有能でしかも業績も膨大なので、 どうしてそんなことが出来るのかと聞いたら、 「だつて、一週間には168時間もあるんだから」と答へたとか。


2002/05/25 (Sat.)

午後から京大へ。分担者会議。 立命館で企画したもの以外では、 今までシンポジウムには参加する一方であつたので、 初めてその舞台裏を覗き不思議な気分。 かうして確率論の一年間のシンポジウムの計画が 打ち合はせされてゐたのであるなあ。

T師匠から今、RIMSに滞在中の「マエストロ」Y教授 (S君の呼び方では「in law の魔術師」)が書いた確率論の問題集を一部もらい、 金沢からやつて来たそのS君と百万遍で夕食を取つて帰宅。 夜は自宅で講義の準備。

"in law" といふのは確率論の言葉で、 法則の意味で(等しい)、確率分布で見る範囲で(等しい)という意味である。 二つの確率変数が異なるものであつても、 法則の意味で等しいため、 期待値や分散などの特性量を計算する上では全く同じ、といふことがある。 Y教授はこのやうな in law で等しい確率変数をどこからか 魔法のやうに見つけ出して畏るべき計算をやつてのけるので、 そのあたりの事情をさしたものである。


2002/05/26 (Sun.)


2002/05/27 (Mon.)

「積分論I」。 前回失敗した単関数列とその積分の収束についての補題の証明、 Lebesgue積分の定義の後、収束定理。 今回は五つほど定理の証明をし、前回の雪辱を果す。 続いて、「数理計画法」、二段階法の続き。 続いて、卒研ゼミ。Lebesgue 測度。

夜は大学から直行で大阪駅にむかひ、 東南アジア帰りのj嬢の無事帰国を祝ふ会に出席。


2002/05/28 (Tues.)

今日の昼食は久しぶりに生協でとつた。ちなみにカツカレー。 でも、生協つて結構高いなあ…

昼は今年度(2003年開催)の数理ファイナンスシンポジウムの 第一回打ち合はせ。 続いて、M1のゼミ。本来は水曜日に行なつてゐるが、 明日からは京大数理研でシンポジウムなので今日に変更。 しかし、テキストは進んでゐない、と言ふことで、 数学の記号や特有の言ひまはし (「…と仮定して一般性は失はない」とか、 「任意の…に対して…が存在して…」とか)についてのゼミ。 数学科にいると自然と身につくものだが、 情報学科出身の学生なので、結構勉強になつたやうだ。 その時のややウケの質問。
「Y先生の講義で定理の後に T.Y. って板書されてたんですけど、 T.Y. つて何を示す記号ですか?」。

それはもちろん、Y先生の御名前のイニシャルである。 数学者はおくゆかしいので、 講演や講義の中で自分の定理や論文を紹介、引用する時には、 自分の名前は書かずイニシャルを示すにとどめるのである。 学生向けの講義のレヴェルで自分の定理が出てくるといふのは、 その分野の基礎をなす根本的な仕事をされたといふことなので、 学生諸君は襟を正して講義を拝聴せねばなりませぬよ。


2002/05/29 (Wed.)

朝からRIMSでのシンポジウムに参加。 夕方に終了後は百万遍で飲んで、 さらに三条でS大のHさんと、夜に金沢から到着したS君と三人でさらに飲む。 深夜、帰宅。明日も朝から同シンポに参加予定。


2002/05/30 (Thurs.)

朝から数理研でのシンポジウム。 午後はやむを得ぬ仕事のため、BKC に移動。 両方とも不便な場所にあるので、この移動は意外に大変。

明日も朝からシンポに参加予定。


2002/05/31 (Fri.)

朝から京大数理研でのシンポジウムに参加。 昼食時に大学の前を歩いてゐて、 「土曜日なのにお弁当屋さんが沢山出てますねえ」 と、つい、もらしてしまひ、 曜日感覚さへ失なはれてゐると言はれてみたり。 さうではなくて、 シンポジウムなんかに来るとつい休日かと思つてしまふほど、 平日は粛々と業務に励んでゐるのだと解釈していただきたい。

三日間早起きして、内一日はBKCへ移動したりで、 流石に疲れが溜つてゐるやうだつたので、 シンポジウムが終わると即帰宅。 夕飯は比較的早い時間にあつさりと、 御飯を炊いて柳葉魚、漬物などで食す。 晩酌は、 Jさん無事帰国に差入れしやうと思つてゐて忘れてしまつてゐた赤ワイン。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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