Keisuke Hara - [Diary]
2002/06版 その3

[前日へ続く]

2002/06/21 (Fri.)

曇りだつたり雨だつたり。 夜更し型に生活をシフト中。 講演の準備など。

多忙らしく最近全く見かけない執事を、夕方たまたま見かけたので、 以降主従間の通信を暗号化するため、 GPG をインストールするやうに言いつけておく。 確か執事は Meadow + Mew だつたやうに思ふので親和性が良からう。

今年の京都賞の基礎部門を幾何学者のグロモフが受賞。


2002/06/22 (Sat.)

講演の準備など。 ファインマン積分に関係した数学と言ふ荒つぽい括りのシンポジウムなので、 あまり細かいことを話すのは難しからうと思ひ、 考へ方自体と一番簡単な例の説明にほとんどの時間を使ふことにする。 しかし、外国語での講演つて嫌だなあ…質問も良くわからないし。 引き受ける時点では、今度こそしつかり準備をして良い講演を、 と思ふのだが、結局その日になつてみると後悔の固まりみたいになつてゐて、 情けない講演をしてしまふのである。

ところで、講演スケジュールが分つたのが一昨日、 大学近辺地図がメイルで届いたのが昨日金曜深夜 (自宅でメイルが読めて良かつた)、 と言ふヨーロッパ的なおほらかさに触れるにつけ、 今から来年二月のシンポジウムの準備をしている我々の立場は、と(笑)。

糠床に塩を敷いて冷蔵庫に保存し、 包丁を研ぎ、データを暗号化し二重にバックアップする。 後は執事にクロの世話を頼むくらいか。 未だに色々なことが謎のまま、月曜の朝、出発予定。 次回の日記更新は無事帰還すれば、一週間後の6月30日(日)深夜。


2002/06/23 (Sun.)


2002/06/24 (Mon.)


2002/06/25 (Tues.)


2002/06/26 (Wed.)


2002/06/27 (Thurs.)


2002/06/28 (Fri.)


2002/06/29 (Sat.)


2002/06/30 (Sun.)

取りあえず、30日(日曜)の午前中に、西果ての国より無事帰国。 愛妻クロの歓待を受ける。こちらがヨーロッパ大陸の西の果てで、 極東のR大学の名を知らしめるために孤軍奮闘してゐる間に、 出張中の金曜日までにこれこれの書類を提出しろ、 と言ふメイルが二通来ていた。 一通はずつと前に出したものが、 質と量ともに不十分だから再提出してくださいと言ふもので、 もう一通の方は私が疲労困憊してゐるせゐなのか、 何を要求されてゐるのかだうしても分からない。 どうせ私は word も pdf ファイルも扱へないので、 分かつた所でだうしやうもないが。 結局、リーダーであるA堀先生に助けを求めるメイルを書く。 午後に軽く仮眠を取つた後、もう一方の書類を泣きながら作成。 数日で南欧ボケの私には、かう言ふことごとの全てが無駄で、 自分も含め皆の人生に対してマイナスだとしか思へない。 我々の短い人生で本当にこんなことをする価値があるのだらうか。 その時間でお茶を飲んだり、美味しいものを食べたり、 川岸を散歩したり、詩や愛や数学を語つたりするべきなのではないのか。 明日はいきなり講義二つと卒研ゼミと沢山の書類提出である。 当日はなんともなかつたのだが足が痛くて動かせない。 最終日にテージョ川のベレン塔の階段を上まで登つたのが今、効いてきたらしい。 ずばり年のせゐだ。

ポルトガルはなかなかのんびりとした良い国であつた。 みんな朝適当に珈琲を飲んでだべつた後、 少し仕事をして、12時から2時まで二時間かけて昼食をとり、 ちよつと働いてまたお茶の時間があり、 ちよつと働いて5時に仕事が終わりで、 その後8時くらいから夕食の店が開く。 一ヶ月ゐたら人間が駄目になつてしまひさうなペースである。 私も数日ゐただけで、こちらが正しくて、 日本やアメリカの方が間違つてゐるのだと思ひさうになつた。 とは言へ、私の講演は最終日だつたので、 初日に夕方(お茶の時間以降)リスボンの街を歩いたくらいで、 あまり気を抜く暇がなかつた。 残念なことであつたが、来年はリスボンで ICMP2003 があるので、 また来るチャンスがあるかも知れない。

最終日の午後が招待講演者達のエクスカーションとディナーの予定で、 サボつて美術館にボシュの「聖アントニウスの誘惑」 を見に行かふかと随分と迷つたのだが、 結局予定通りエクスカーションに参加。リスボンの街のあちこちを案内してもらふ。 夜はそのままテージョ川の対岸に船で渡り、 カシーリャスの川岸(と言つても海岸にしか見へないが) にあるその名も「最終地点」と言ふ店で夕食。 テージョ川の向ふ岸に浮かぶリスボンの街を夜景に見つつ、 店の外に出された川岸のテーブルで食す。 ポルトガルは基本的に魚料理と、肉は臓物料理が美味しい。 味つけや料理法はどちらも日本人好みと言ふか、同質のセンスを感じる。 それから意外にお菓子が充実してゐるやうだつた。私はこの店では、 鮟鱇の臓物入りトマト味の米雑炊と言つた感じの料理を食べて、 なかなかの美味であつた。 夜遅くホテルに帰り、すぐに早朝空港へ。 空港では時間待ちの間にタブッキの「レクイエム」を読み、 ポルトガル気分を振りかへる。 シャルルドゴール2で乗り替へて関空着まで計17時間。 一週間ぶりの日本は、じめじめと暗く湿つてゐた。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

この日記は、GNSを使用して作成されています。