Keisuke Hara - [Diary]
2002/07版 その3

[前日へ続く]

2002/07/21 (Sun.)

35度突破。暑い。 仕事のため早起きはしたのだが、チェスに逃避してしまつた。 将棋の羽生がどこかのチェスの大会に出てゐたとこの前聞いたので、 探してゐたら棋譜が三つほど見つかつた。 レイティングは不明。へぼなりに私が分析してみると、 やはり当然かも知れないが、タクティカルな読みが凄い。 それに中盤に深いポジショナルな理解が感じられる。 これは本格的に勉強してゐる証拠だと思ふ。 どれも何故かシシリアンディフェンスの Taimanov 変化で (流行してゐるのだらうか?)、 私は良く知らない定跡だが、よつぽど深い盤面理解がないとかうは指せないな、 (もちろん私なら絶対に指せない)と思ふところがいくつかあつた。 しかし、エンドゲームがおかしい。将棋に対応する概念がないからだらうか。 とか研究してゐる内に午前終了…(泣)。

昼食はトマトソースとツナの二色スパゲティとワイン一杯。 午後は洗濯など家事をして、 夕方頃から本格的に仕事に入る。 夜はオムレツの他、納豆、漬物などありあはせの物で食事。 夜も仕事。


2002/07/22 (Mon.)

会議のため午前中から出勤。 京都は猛烈な暑さだが、明日はさらに、 明後日はさらにさらに暑いらしい… Y 田先生から、 L. Schwartz 自伝を先生御自身が部分的に抄訳されたもののコピーをいただく。 面白い。フルな翻訳でないかも知れないが英語版を買ふかな…

帰宅の途中、スーパーによつて、 加茂のはなまる胡瓜と鷄の砂ずりを購入。 12, 3 センチくらいの小さな胡瓜で、 私は糠漬にしてみやうと思つてゐるが、 もろみ胡瓜などに良いかもしれない。 砂ずりは焼いて塩で食す。


2002/07/23 (Tues.)

今日の最高気温は36度、明日の最高気温は予報によると37度とのこと。 酷過ぎる…

こちらが白番(先手)の第一手も送り、全てのゲームがスタート。 黒番のゲームの一つは既に最初の悩ましい分岐点に入り、 ヘボなりに長考(と言つても、二日だけだが)のあげく決断した。 悩んだのは、序盤にクイーンで辺境のポーンを取る是非である。 そう言へば、この前、将棋の序盤定跡がある時点で 革命的に変化したと言ふ話を聞いたが、チェスでもかう言ふ変化はあつて、 これも小さな問題ではあるが、現代では考へ方が変わつたものの一つらしい。

以前はかう言ふ序盤での Q によるポーン・ハントは絶対悪手とされてゐた。 しかし、最近ではこのタイプの手は「十分あり得る」(*1)とされてゐて、 定跡化してゐるものもたくさんある。 かう言ふことは指摘されてみれば、素人にさへ、 さうかも知れないなあ、と急に思へてくるのであつて、 不思議なことである。

*1: ...Qb6/...Qxb2 の是非:
(否定の立場)「そもそも序盤では一刻も早くマイナーピースたちを展開すべきで、 同じ駒を何度も動かすのも無駄なのに、 Q に何手もかけて一つ P を取つた所で居る場所は敵陣の辺境で、 その後も、相手は Q を苛めながら要領良く戦力展開するだらう。 かたや Q しか動かしてゐないのに、かたや全ての駒が前線に出てゐる。 展開の速度の差は圧倒的である。 その上、序盤でオープンファイルまで与へてしまつた。 とても P 一つの駒得に釣合ふはずがない。」
(肯定の立場)「まず、 この b2 の P を失なつて内側からじわりと弱くなる効果が大きい。 具体的には、斜め前の c3 の黒マスへの自動的な支援がなくなるために、 何らかの防御が必要になる結果、 序盤で中央付近に守備なく配置されるマイナーピースに、 中央から、特に黒マスから潜在的な圧力がかかる。 また、この Q ファイル側の P の形が悪くなり、 長期的にはエンドゲームを睨んだ影響を与へる。 それに、Q 以外にほとんど動かしてゐないと言ふが、 駒を動かしてゐない初期配置の形が守備として悪くない。 その上、P を一つ駒得してゐる…」


2002/07/24 (Wed.)

今日も朝から猛烈な日射しと熱波。 最近、多忙なので既にふらふらになつてきた。 週末までもつだらうか…

夕食は冷奴、韮砂肝炒め、素麺。


2002/07/25 (Thurs.)

今日も朝から叩きつけるかのやうな日差しと熱波。 会議の合間の昼休みに定期試験の採点でも少しやるかな、 と思つてぺらぺらと答案をめくつてみると、 問題が易しかつたせいで結構よく出来てゐた。 しかし一方、さつぱりなのもかなりゐて二極化が激しいやうだ。

数学については一言も書いていないくせに、 「この不景気に立派な会社に内定できたのに、 この単位を落とすと卒業できず、私の人生は真暗闇です、 今まで迷惑をかけてきた田舎の両親にも顔向けできません、 講義には一度も出ませんでしたが、一生懸命勉強しました、 努力を評価して下さい」、云々、 などと下らない作文を書いてゐる答案を抜き出して(複数枚あつた)、 とりあへず全部不合格にし、 評価欄には、地獄に墜ちろ(©高槻T部長)、 と書いて、サディスト心を満足させる。 昼頃、「あーはつはつは、愉快、ゆかい!」と言ふ笑い声が 聞こえてゐたとすれば、それは採点中の私です。


2002/07/26 (Fri.)

今日からしばらく自宅で作業日。 昼食。紫蘇おむすび、花丸胡瓜の糠漬、若布の味噌汁。 午後は少しボランティアの翻訳の仕事に逃避して (でも実際、やつてゐることは同じ)、また作業。

夕食はトマトソースのニョッキ。 じゃが芋を茹でて、つぶして小麦粉を混ぜてそれらしい固さに練り、 それらしい形に作つて、それらしく茹でる。 トマトソースは本格的に玉葱から炒めてゐるほど暇ではないので、 オリーブオイルで大蒜、唐辛子を炒めホールトマト缶を入れ、 塩胡椒、バジルで味つけし、30分ほど煮込むマリナーラソース。 ニョッキはこのレシピから分かるやうに、どう失敗した所で、 美味しく食べられる種類の料理なので安心だ。 私が今日作つたニョッキは柔らか過ぎた。 ワインは最近発見した、安物だがまあまあの味がする有機栽培ものの赤ワイン。

夕食後は「積分論」の採点。 ぱらぱらと先日目を通して、結構出来てゐるなと思つてゐたのだが (きつと、あんなに易しい問題にしたのだから、と言ふ思ひ込みもあつたのだらう)、 実際一枚一枚見てみると、 書いてあることが「ウソばつかり」だつた。 集合 {0, 1} がσ加法族であることは明らか、とか、 何を言つてゐるのかさつぱり分からない答案が続出で、 めくつてもめくつても不合格なのでうんざりしてきた所に、 「おや、珍しくこれは筋が通つてるな」と思つたらその答案は満点だつた。 その後もそんな調子で、できが極端。 採点基準を変へた方が良いかなあ…


2002/07/27 (Sat.)

朝は久しぶりに良く寝て、正午近く起床。 昨日作つたトマトソースでツナのパスタ。 午後は「積分論I」の採点。 夕食はこの前のニョッキ作りで余つた材料でポテトコロッケ。

7 割がたが箸にも棒にもかからなかつたので不合格にしたが、 受験者数が実際に講義を受けてゐた人数の三倍ほどもゐたので、 だいたい適切な採点と評価かと。 逆に良く出来てゐた方は A+ が 1 名、A が数名。 3 問から 2 問選択して答えよと言ふ出題なので、 3 問解いたからと言つて特に加点しない採点方針だが、 3 問全部に完全無欠の回答をした学生がゐたので、 流石にこの人だけは A+ にした。 実は数理科学科の講義を持つたのは移籍以来初めてで、 他の先生から色々と聞いてはゐて、 その度に心の中では、 みんな何だかんだ言つて無茶苦茶厳しいんだな、 いつまでも昔の大学の数学科のつもりでゐるのか、 今の学生のレベルを知らないで困つたものだ…、 などと秘かに思つてゐた。しかし、世間知らずなのは私の方で、 私の方こそ今の学生の学力水準を理解してゐなかつたやうで、 色々と思ふ所のある採点だつた。

この前、A 堀先生にちよつと笑へる回答として、 「これこれが成り立つことを証明せよ」と言ふ問題に対して、 「これこれは成り立たないことを示せば十分」 と答へ始めたと言ふ迷答例を聞いたが(確かに十分だが…)、 今回の積分論で出たちよつと笑へる回答。 問題「これこれの上にσ加法族の例を一つ構成せよ」に対し、 回答「…を含む最小のσ加法族を F とおく(!?)。 このF がσ加法族であることを示そう(???)」。 しかもこの後、解答用紙の表裏に渡つて、 このσ加法族 F がσ加法族であることが「証明」されてゐた。


2002/07/28 (Sun.)

Madame Klossowski 自宅で朝も仕事。 昼食はツナオムレツ、納豆、花丸胡瓜の糠漬、葱と豆腐の味噌汁。 昼食を食べてゐると執事を目撃。 訂正版リリース前で忙しいとか言つてゐたが、 前に比べればかなり楽勝ムードのやうだ。 午後も仕事。夕方に散歩がてら買い出しに行き、食材などを購入。 夕食は冷奴、オクラ、素麺など。夜も仕事。 明日から二日間、京大のユカワでシンポジウムがあるが、 どうしやうかなあ… 家で仕事をする方が無難だが、二、三聞きたい話もあるし。 明日の仕事の進み具合で考へるやうにしやう。


2002/07/29 (Mon.)

執事との月末チェス。黒番。Reti オープニング。 お互いあまりに序盤で時間を使つて、 しかもあまりにハイパーモダーンな趣向(ただのヘボ手とも言ふ)で、 時間がどんどんなくなり、 最終的には秒読みしながらのエンドゲームで、 白にポカが出て勝つ。

今日も終日入力編集作業。 昼食はアラビアータ、夕食は麻婆丼と唐辛子三昧。


2002/07/30 (Tues.)

今日も引き続き入力編集作業。 昼食。ポテトコロッケ、納豆、葱の味噌汁。 昼食時に執事を目撃。基本的にバグ報告待機なので、 午前もゲーム三昧だつたし、午後もゲーム三昧の予定らしい。 自分が移植したゲームで遊んで、楽しいのかだうかは知らないが…

午後も作業。夜はシンポジウムのため京都にやつて来ている K 大の S 君と RIMS の T 師匠と三条あたりで食事。


2002/07/31 (Wed.)

言ふまでもないが、今日も朝から暑い… 出勤してお仕事三昧。

昨夜 S 君から、私の CV に書いてゐる修士の名前が違ふ、 と指摘を受け訂正。 修士を貰つたときは既に数理科学研究科に移籍してゐたらしい… それくらい記憶しておけ、と言ふ御意見もあらうが、 それほど当時は混乱してゐたのである。 言われてみれば、変な時期に学生証の交換とかしたし、 学位の名前の後に括弧書きといふのは格好悪すぎなんじやないの とか議論した記憶が。

そんな多忙の中にも「クリプトノミコン (4 データヘブン)」 (N.スティーヴンスン)読了。 なかなか面白かつた。小さな気の効いたエピソードの 集まりで出来た小説だが、 この最終巻では主人公の一人がフィリピンで牢獄に入れられ、 そこで謎の暗号とその作者の秘密がついに明かされる ウィザードとの出会いがあつたり、 またその牢獄でラップトップの画面を盗聴傍受されながらも、 その裏をかいて秘かに第二次大戦中の究極の暗号を解いたり、 とハッカー心をそそる山場があつて楽しめる。 でも結末は四巻続いた長大な話がそこで終わりなの?と言ふ感じ。 おそらく続編が書かれる予定なのだらう。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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