Keisuke Hara - [Diary]
2002/12版 その3

[前日へ続く]

2002/12/21 (Sat.)

京都は一日中、雨。終日、翻訳作業。 Williams はスタートレック・マニアなのだろうか… やけに練習問題にスタトレのネタが多い。 エンタープライズ号問題とか、カーク船長の航海日誌より、とか。 しかし、非常に良い問題が多いので、 Williams はこの練習問題の章をやつてこそ、 と強調しておこう。 補遺の章については、 少なくとも最初に読むときには、 省略してもいいんじやないかな、と思つた。 むしろ本文を通読する方に力を注ぎ、補遺を飛ばして、 練習問題の章を適切な指導者の下で演習形式でやるのが良かろう。

Linux JF 文書 Security Quickstart-HOWTO for Linux の翻訳を正式リリース。長かつた… 翻訳の質はダメダメかも知れませんが、 内容は非常に良い文書だと思ひます。 一応 Linux 向けと言ふことになつていますが、 unix 系 OS を使つてゐてインターネットに繋がつてゐる人なら、 初心者はもちろんのこと、詳しい方にも役に立つと思ひます。 ネットワークのセキュリティは誰にでも大事な問題です。 是非、興味を持つて下さい。

昨日、1st ROM を焼いて、 久しぶりに暇そうにしてゐる執事とチェスを二局。 両方とも情けない負け方で二連敗…ちよつと自信喪失。


2002/12/22 (Sun.)

午前、午後と Williams の翻訳。 夜は膳所でチェロのレッスン。 ロングトーン、親指のポジションのスケール、 シュレーダとヴェルナーからエチュード、 マルチェロのチェロソナタ。 9 時過ぎに帰宅して、また Willimas の翻訳。 そして、演習問題の章の翻訳を終へる。 これで私の担当部分は全て終了したと思はれる。

後、次の木曜の講義の準備をして、 定期試験と追試の問題を作つて、 卒論の原稿をチェックして、今週を乗り切れば今年も終わりかな。 明日は世間では祝日だが、R 大は通常営業。 どうせ、学生の方は来ないんだろうな…


2002/12/23 (Mon.)

鰹節を削り、梅おかかのお結びと沢庵、味噌玉のお弁当を作つて出動。 午前は「プログラミング演習」。いつもの通りの少人数教育。 キャンパスも少し閑散としてゐる印象。 午後は M ゼミの予定だつたのだが、 学生側の都合により木曜日に延期。 急に時間が出来てしまつたので、色々事務用をして帰路につく。 明るい内に帰宅すると執事がゐたので、 チェスを一局。白番、レティ・オープニング。 前二回で戦術的な見落としに懲りたので、 今回は地味にエンドゲームを目指し、ポーンエンディングを勝つ。

夕食は畑しめじとツナを作りおきのトマトソースで炒めてソースを作り、 スパゲッティを茹でる。適当に作つたわりに美味しかつた。

ネットワークインフラ屋 N 氏、 ボンベイ・サファイアをほどほどに飲んで四日で一瓶…?


2002/12/24 (Tues.)

午前中は積分論の講義の準備、 昼食は、ツナと胡瓜のサラダ、沢庵と胡瓜の浅漬、 里芋の味噌汁。 午後は試験問題を作つたり、 タリの棋譜を鑑賞したり、 残つてゐた里芋を煮染めにしたり。 夕方から RIMS に向かふ。 T 師匠と少々の打ちあはせのついでに、 近辺の人と忘年会(?)。 RIMS 近所の北白川の店で飲んで、お開きの後、 三条の餃子屋で小腹を満たして帰宅。 餃子屋では、客は化粧のはがれた水商売風の女性と私の二人きりで、 中島みゆきの描写するところの夜明け間際の蕎麦屋だか牛丼屋だかも かくやと言ふ風情が漂つて、年末を感じさせることであつた。

Security-QuickStart-HOWTO の RedHat バージョンもリリース。


2002/12/25 (Wed.)

午前、午後と定期試験の問題を作つたり、 卒論の草稿をチェックしたり。 夕方から、少しはクリスマスらしいことをしやうと思ひたち、 三条の朝日会館に映画「八人の女たち」を観に行く。 一言で言ふとミュージカル仕立ての「雪の山荘もの」である。 雪に閉じ込められた館で主人が殺害され、 犯人はこの八人の女の中にゐるはず…と言ふ筋立て。 感想。 メイド兼在宅愛人役のエマニュエル・ベアールが、 メイド服姿で踊り狂うシーンと、 そのセクシーぶりにノックアウト(それだけ?)。

他にはカトリーヌ・ドヌーヴが踊りながら歌うのが、 無理をしてゐるやうで、何だか常に少し痛々しいのと、 最後の大トリで老大女優ダニエル・ダリューが、 かつてアラゴン(*1)の詩をブラッサンス(*2)が歌つた名曲 「幸せな愛はない ("Il n'y a pas d'amour heureux")」 を歌うところは感動的。さすがに上手いし、 やはり貫禄と言ふか、格調の高さが違ふ。

*1: ルイ・アラゴン(1897-1982): 詩人、小説家。シュルレアリスム派から後に離脱、 共産主義、抵抗文学に移動。有名作家だが、 私が書庫に所有してゐるのは、アラゴンが 書いたらしいと言はれてゐるポルノ小説 「イレーヌのお×んこ」の翻訳だけ。

*2: ジョルジュ・ブラッサンス(1921-1981): 60年代から70年代に活躍した国民的歌手、詩人。 「独身主義者のバラード」「幸せな愛はない」など。 反逆の吟遊詩人などと呼ばれ、 葬儀が国葬なみの騒ぎになつたほどの大歌手らしい。 私が知つてゐる曲は上の二曲だけ。


2002/12/26 (Thurs.)

午後は「積分論 II」。 確率変数と特性関数の収束、中心極限定理。 続いて、M ゼミ。 ギャンブラー破産定理の章を終了。 合間に、卒論のチェックを学生に手渡したり、 定期試験とその追試の問題を事務に提出したり。

明日までが講義日だが、 私については今日で 2002 年中の講義とゼミは終了。 新年の講義開始は 1 月6 日。 やれやれと今年を振り返つて、落ちついて来年に思ひを馳せるには、 この連休は短か過ぎるやうにも思ふが、 のんびりと、数学の勉強でもしながら、 合間におせちを作つたり食べたり、読書でもしやう。

読書の予定は我が心の古典、 プルースト「失なわれた時を求めて」の全巻再読。


2002/12/27 (Fri.) I-120

予定されているイベントはありません。

九時起床。寝室の出窓から下に見える、 狭い路地の向かひの長々と黒く連なる瓦に雪が降つてゐた。 紅茶を淹れる。 メイルを読み、ニュースのサイトを見る。 米英がイラクを空爆。京都信金の立て籠り犯は逮捕。 プルーストを読む。 古典は現代のニュースを背景ノイズに押しやるが、 その背景ノイズは古典にとつて必要なものである、 とカルヴィーノが書いてゐた。 米を土鍋にかけ、同時に一番だしをひく。 生活の美は細部にある。火にかけられた土鍋の香りなどに。 昼食は沢庵、胡瓜の浅漬、里芋の煮染め、揚げと若布の味噌汁。 ほうじ茶を淹れる。食事の後片付けをし、紅茶を淹れる。 午後もプルーストを読んだり、 NHK の「シャーロック・ホームズの冒険」(「踊る人形」)の再放送を観たり。 夕方から買ひ出しに行く。おせちの食材にはまだ早いが、 薄口醤油、清酒などが切れつつあるので補充のため。 夕食はチーズオムレツなど。


2002/12/28 (Sat.) I-188

午前、午後と読書などでのんびり過す。 合間に、煮染めの材料として、 金時人参、海老芋、牛蒡、蓮根などを買ひ出しに行く。

東京方面から京都に癒されに来た N 氏と、 京都の薬屋 R 氏と執事との四人で、 祇園に忘年会に行く。 さらに河原町で飲み直して、深夜に帰宅。


2002/12/29 (Sun.) I-365

朝も遅い時間に起床。 昼食は N 氏と祇園にかき揚げ天丼を食べに行く。 汚れちまつた心を神社仏閣巡りで浄めたい、 と言ふ N 氏と別れ、 しばらく喫茶店で読書をして、本屋を周つて帰宅。 午後も音楽を聞きながら読書。

メモ:「八人の女たち」のメイドが、 ヒールのある編み上げブーツを履いてゐるのは、 ルイス・ブニュエル監督/脚本「小間使いの日記」での ジャンヌ・モローの衣裳の引用。

夕食は執事を従へて、 N 氏と先斗町のすきやき屋で忘年会二日目。

福島県岩代町民全員(約9600人)の住民基本台帳ネットワークシステムの データが盗まれた。 管理を民間委託した先で、データを記録してあった DAT をまるごと自動車から盗難された。 つまり、住民基本台帳ネットワークシステムは、 (a)データ管理を民間に委託しており、 (b)しかもその管理は特に厳重でもなく、 (c)さらに、そのデータは暗号化されてゐない平文である。 これからこの規模の流出は日常的に起こり、 ニュースにもならなくなるだらう。 岩代町では番号を振り直すさうだが、町民全員の 本名、住所、生年月日、性別のデータがまるごと流出しており、 それだけで充分なクロスリファレンスのキーを与へるので、 番号の振り直しには何の意味もない。

わりかたまともな社会人からも、 何故、本名、住所、生年月日、 などのそれほど秘密でもないデータが漏れて何が悪いのか (「じっさい、僕は漏れても全然、構はないしさ」)、 と言ふ意見を聞くことが多いのだが、 第一に想像力がなさ過ぎる、そして、 第二にデータベースと言ふものの概念が分かつてゐない。 上のやうなデータがデータの中身として危険なのではなくて、 データ整理と検索のためのキーとして危険なのである。


2002/12/30 (Mon.) I-455

昼近くになつて起き出してきたら、 既に N 氏は去つた後だつた。 お土産にラフロイグ 10 年(カスク・ストレングス)を有難うございました。 昼食はあつさりと漬物、味噌汁で御飯を食べる。夕食も同様。 去年の年末は酷かつたが、 今年はのんびりとした年の暮れである。

今日、明日と二日かけて煮染めを作る予定。 今日は色の薄いもので蓮根と海老芋を煮た。 明日は色の濃いもので人参と牛蒡。 煮汁を使ひ回すために、この順序。 蓮根だけは清浄な感じが良いかと思ひ、 鰹節を使はず昆布のみで二時間ほど下煮して、 薄口醤油と酒であつさりと味をつけて、だしごと保存。 色合ひから言ふと椎茸があると黒が入つて締まるのだが、 私はどうも子供の頃から煮た椎茸の傘の食感が苦手なので、 今年は上の四種のみで。


2002/12/31 (Tues.) I-645

午後は TV で南座の顔見世を見つつ、煮染めを作る。 牛蒡を昆布で下煮しつつ、海老芋を再度煮て冷まし、 金時人参を亀甲に切り煮染める。 人参は甘みを足すために少し砂糖と塩を入れる。 最後に、使つた煮汁を全て集め、 牛蒡をじつくり煮染めて完成。

煮染めを詰めて風呂敷に包み、実家を訪問。

岩代町の住民基本台帳ネットワークデータ盗難事件続報 をニュースで見て気になつたこと。 盗まれた個人データには氏名、生年月日、住所以外にも、 介護保険、健康保険、国民年金、の受給資格の有無を含む、 全15項目が入つてゐたそうだが、それは何故? この住民基本台帳ネットワークのデータは、 住所氏名生年月日の基本情報のみだと思つてゐたのだが。 しかも、そんなデータベースの管理を民間委託していると言ふのは、 今まで皆知つてゐたことなのだろうか。 少なくとも私は初めて知つた。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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