Keisuke Hara - [Diary]
2003/04版 その3

[前日へ続く]

2003/04/21 (Mon.) IX-207

昼食に卵と刻み玉葱のサンドウィッチを食べながら、 エクセンダールのゼミ。 確率過程、Kolmogorov の拡張定理、ブラウン運動など。 続いて、卒研 A チーム。 簡単な確率の計算とか独立の概念とか。 続いて、卒研 B チームの Dym-McKean ゼミ。 1 次元トーラス上の L^2 空間と Fourier 級数。 帰宅は 7 時半頃。 茄子のパスタ、卵と玉葱と胡瓜のサラダの夕食を取りながら、 メイルベースの雑務。 パリ滞在中の A 堀先生から早速、面白そうな計算結果が届いてゐた。 みんなバカンス等で消え去つて閑でしやうがないとのこと。 景気の良い話で羨ましい。でも早く帰つて来てくれ、ホント。 食後は一時間ほどチェロの練習。 最近はメカニックな感じの基礎練習に凝つてゐる。 読書は「三人の科学者と神」(ロバート・ライト著/野村美紀子訳)。 好きな本の一つでたまに読み返す。 特にエドワード・フレドキンの章が面白い。

この後は、多分、Web を漂流してから、深夜は明日の講義の準備かな。


2003/04/22 (Tues.) IX-245

八時起床。朝は講義の予習をして出勤。 生協食堂でカレーライスを食べて、「確率過程論」。 重複 Wiener 積分の積の代数的性質、 重複積分と Wiener chaos との対応。 本日より聴講生向けに秘密ノート公開。 毎週アップデートされて行く予定。 続いて「計算機数学続論」。 剰余類、剰余系、中国剰余定理など。 雑務を少々して夕方帰宅。夕食を適当に作つて、珈琲を飲み、 お風呂に入り、チェロを少しだけ弾いて、 TeX で今日の講義の分の Malliavin 解析ノート作成。

科研費が当つたやうでめでたいが、 事務から書類の提出依頼と一緒に来ている、 この若手向けの「激励会」のお報せつて何だらう… もつと研究を頑張りたまへ、とか激励されるのかな。


2003/04/23 (Wed.) IX-281

簡単なお弁当を作つて出勤。 午後の最初は「積分論 I」。 カラテオドリの外測度、その意味での可測、 カラテオドリの定理、ホップの拡張定理の主張など。 次回からはこれら大きな定理の証明の予定。 続いて、M1 暗号ゼミ。 少しの合間に、神戸から仕事に来てくれてゐる Y 君に挨拶。 ちなみに最近、私はこの Y 君によく間違はれる。この前なんか、 私を Y 君だと間違へたまま 10 分くらい会話をした先生がゐた。 数学の話題だつたのだが、 「君の論文の確率過程の時間を逆向きに見て書き直す所がうんぬん」 と言はれて、たまたま私も昔にそんなトリックを使つたことがあつたので、 おかしいなあ、と思ひつつも、話を合はせてしまつたのであつた。 全然、似てゐないと思ふのだがなあ… 続いて教室会議。掲示板に「重要議題アリ」などと書かれてゐたので、 覚悟してゐたがやはり重くも長い会議であつた。 会議終了後、遅くなつたので K 川先生と生協食堂で食事。 その時、一題パズルを出題されたので、考へながら帰宅。

うまい解答は思ひつかなかったが、 帰宅後、ぎりぎりセーフ?くらいの解をメイルで送る。


2003/04/24 (Thurs.) IX-281

少し寝坊した。珈琲を飲んで目を覚ましてから、 科研費の書類を作成。 Word ではあるが、skkime が好調。 素晴しいソフトウェアだ… しかし、skkime のサイトがまた閉鎖中の模様。 作つた書類はメイルで事務に提出。 あといくつかメイルでの連絡。 昼食はオムライス。

午後は普段の朝メニュー、 つまり「確率解析」を読み、 フーリエ解析の演習問題を解く。 確率解析は D 作用素の双対作用素 D*、 確率解析で使ふ作用素あれこれの有界性など。 証明の計算の中で、 実質的には Wiener 空間上で部分積分している所があつたが、 Malliavin による実際の「部分積分公式」は、 応用として分布の滑かさを証明する後の章で現れる予定の模様。 フーリエ解析はチェザロ平均の意味で正則な二重数列の理論を 無限次元の線型代数と「シフト不変」の言葉で整理する一連の問題に入る。 今日は最初の部分なので、ほぼ自明でつまらない。 夜はチェロを弾いたり、テラカン(*1)を読んだり。

夜の 9 時から休憩がてら NHK 教育の「きょうの料理」を観る。 私が勝手に「キンゾー」と呼び捨てにして親しんでゐる、 我が家御用達の洋菓子屋の主人が ブランマンジェの作り方を説明してゐたので。 お菓子作りもやつてみたい気がしないでもないが、 やつぱり手間がかかり過ぎますよね…何にしろ。 烏丸まで行けば、キンゾーのお菓子が買えるし ;-)

*1: テラカン:寺沢寛一「自然科学者のための数学概論」。


2003/04/25 (Fri.) IX-281

また少し寝坊。少しずつ早起きに改善して行くと言う予定が、 逆向きになつてゐる。反省。 朝は少しだけ確率解析の秘密ノートを作り、 納豆、胡瓜の漬物、豆腐と若布の味噌汁の昼食を食べたあと、 午後も前半はその続き。 前回講義分は既にまとめ終へて、伊藤積分のあたりを勉強。 気分転換に少し散歩して、後半は自分の問題を考へる。 ふと郵便受けを見たら講読してゐるチェスの雑誌が来てゐて、 ついその最終ページのプロブレムなどを考へてしまひ、 今日の数学はやめてしまつた。 夕食は肉抜きの麻婆豆腐と卵のお清し、胡瓜の糠漬と冷や御飯。 夜はチェロの練習。

チェスのプロブレムは将棋で言へば詰将棋なのだらうが、 実際のところは似て非なるものである。 将棋の言葉で無理に説明するなら、 「非常にアーティフィシャルな必至問題」だらうか。 大抵は三手詰めか五手詰め(チェスの数へ方では二手と三手)なのだが、 最後の手以外はどの手も王手でなくてもよい。 と言ふより、ほぼ100パーセント王手ではない。 相手がどう受けやうが詰みになると言ふ、 一手目のキー・ムーヴを見つけなさい、と言ふのが問題で、 将棋だと三手詰や五手詰程度でそんなに難しいことになりさうにないのだが、 チェスの場合は色々な事情で相当深いものになる。 思ふに持ち駒がないせゐだらうか。 イメージで説明するなら、 それぞれに絡み合ひながら動く沢山の部品で出来てゐる機械のやうなもので、 あるところをうまく動かすと、全てが一斉に(しかし互ひに関係しながら)動いて、 カチリと音をたてて納まるべき所に納まつて、 一枚の綺麗な絵になるやうな感じである。 興味のある方には、 クセジュ文庫の「チェスの本」(F.ル=リヨネ著)がお勧め。


2003/04/26 (Sat.) IX-281

今日は予定通り起床。 朝は Malliavin 解析の勉強。 早めの昼食をとつて午後は膳所でチェロのレッスン。 夕方帰宅。 昨日、執事に慘めにボロ負けしたからと言ふわけでもないが、 オンラインでチェスを 2 ゲームほど。 1 ゲームはかなりの強敵で面白い試合だつた。 後手、クィーンズ・インディアン。 明らかなミスのほとんどない緊迫した序盤、中盤の末、 相手の指し過ぎを咎めて 1 ビショップ駒得したものの、 エンドゲームまでクィーンを残されてしまひ、難しくなる。 時間があれば勝てたかも知れないが、 持ち時間で圧倒的に不利だつたのでドローを提案。受け入れられる。

夕食は冷奴、納豆、胡瓜の漬物。 私は冷奴が好物の一つなので、 余程寒い季節以外は簡単におかずが一品できて便利だ。 私は豆腐を崩して盛ることが多いので、 実際は「奴」ではないのだが。 夜はヴィデオで「メメント」を観た。 さらに、K 川先生に借りてゐたスヌーカーのヴィデオも観終わつた。 ヒギンズ駄目だつたか…2003年度こそ優勝を期待。

ふと、気付くともうすぐ10万ヒット…


2003/04/27 (Sun.) IX-281

今日も早起き。 フーリエ解析の演習問題を一つ解き、 「確率解析」を読む。 準備編が終わつて、 Malliavin 解析を用いて分布の絶対連続性や 密度の滑らかさを示す章に入る。 昼食に炒飯を作って食べ、講義のノート作りを少し。 陽気が良いやうなので外出。 面白さうだつたので Emacs Lisp の入門書を買つた。 執事は真のプログラマとしてもちろん LISP はお手のものなので、 教へてもらへば良いのだが、まあ自分で勉強しないとね。 ちなみに LISP と聞いて思ひ出すのは、P.Graham の "Beating the Averages" (「普通のやつらの上を行け」Shiro Kawai さん訳)かな。

夕食は適当にパスタを作つて食べ、 夜はチェロを弾いたり、読書をしたり、 Emacs Lisp で遊んだり。


2003/04/28 (Mon.) IX-346

いつものやうに起床。簡単なお弁当を作つて出勤。 正午からお弁当を食べながら院生の自主ゼミ。 ブラウン運動の性質の残り、伊藤積分へのイントロなど。 続いて、卒研 A チーム。 確率変数、確率分布、離散的な場合の具体例など。 続いて、卒研 B チーム。L^1 空間でのフーリエ級数。 若干の事務仕事をして帰路につく。 バス乗り場で待つてゐたら偶然、経済の O 先生に会つた。 毎日10時、11時までキャンパスにゐるほど忙しいらしい。 しかも、そんな中で一年に 10 本論文を書くことを目標にしてゐるさうだ。 私の目標は生涯に 10 本なので、分野が違ふとは言へエラい違ひだ。

帰りの電車では LISP の入門書を読む。 基本的な概念は一通り終わつて「再帰」のところ。 最近の学生は再帰もわかつてゐない、とかおつしやる先生が多いけど、 やつぱり難しいと思ふな。 もちろん、階乗の計算なんかの自明な例なら誰でも分かるが、 リストの処理の巧妙なやつとかやつぱり易しくない。 説明されればなるほどと思ふが、 何だか話がうま過ぎて騙されたやうな気持ちになる。 多分、「本物の」再帰的プログラミングが実際に出来る不思議さ、 だと思ふ。でも、これは本当に LISP の本質が飲み込めてしまふと、 あまりに当たり前になりさうにも思ふ。 LISP の処理系自体がだうやつてかう言ふ概念を 実装してゐるのか興味が出てきた。 きつと LISP の処理系を書く一番良い方法も LISP 自身で書くことのやうな気がする… 自宅で簡単な食事を取つた後、 自分でリストに対する色々な処理を Emacs Lisp で書いて遊ぶ。 面白いので、今日はチェロはお休み。

風邪つぽい。熱があるやうで少し喉も痛い。 これが噂の肺炎?だつたら沢山休暇が取れて良いなあ。


2003/04/29 (Tues.) IX-346

予定では数学に費す予定の日だつたのだが、 風邪でダウン。 朝は少し来週の講義ノートをまとめたが、 午後は睡眠療法。 山は越したと思はれるので、 明日からは復帰できさうだ。

夜は読書とか、チェスの研究とか。 今月末の執事の給与の端数を賭けたゲームも含めて、 つひに三連敗となつて不調である。 最近ますます思ふのだが、 勝ちの盤面を実際に勝つことが本当に難しい。 最後の最後までは、 適度に不利な状況が続く方が良いのではないか、 と思ふくらいだ。

体調が悪いと頭が働かなくて、昨日のゼミあたりから調子が悪い。 ゼミに参加している学生からすれば「損をした」と言ふことになるのだらう。 程度の問題ではあるが、 少しでもアクティヴな作業は途端に能力が落ちる。 物質のやうな弱いものの中にアルゴリズムが閉じ込められてゐることには、 どこか理不尽な印象がある。 全ての知性が知性の中に、 全てのアルゴリズムがアルゴリズムの中に存在できれば良いのだが。 こんな陳腐なことを考へること自体、弱つてゐる証拠でせうね…


2003/04/30 (Wed.) IX-446

風邪で鼻水をすすりながら出勤。 通勤の往路はプルースト、復路は LISP。 午後から「積分論 I」。 カラテオドリの定理の証明、 有限加法族上の有限加法的測度から決まる外測度と、 それに対して可測な集合の族の性質など。 続いて、M1 の暗号ゼミ。 合間に K 大の Y 野君と会つて書類を書いてもらつたり。

講義で喉を使つたせゐか、今度は喉が痛い。 風邪の完治までにはまだ少しかかるやうだ。

夜、ヴィデオで「サイン」を観た。 史上最低の映画と言ふ触れ込みだつたので、好奇心で。 本当に凄かつた。どうしたシャマラン。 それにメル・ギブソン、どうしてこんな映画に出演承諾。 この映画が撮られたこと自体、オカルト。


[後日へ続く]

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Keisuke HARA, Ph.D.(Math.Sci.)
E-mail: hara@theory.cs.ritsumei.ac.jp
kshara@mars.dti.ne.jp (for private)

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